60代・70代から歌を習いたい。はじめての方のための、やさしいはじめかた
「若いころから、ほんとうは歌がすきだった」 「時間ができたいま、なにか新しいことを始めてみたい」
60代、70代になってから、こんなふうに思う方は、けっして少なくないと思います。でも同時に、「いまさら習うなんて、はずかしい」「声が出るかしら」と、一歩をふみ出せずにいる方も多いのではないでしょうか。
わたしは、息子といっしょに、たくさんの歌のコンクールや発表会に足をはこんできました。そのなかで、おとなの方、とくにシニアの方が、とても楽しそうに、そしてのびのびと歌っている姿に、何度も心を動かされてきました。
歌は、何歳からでも始められる習い事だと、わたしは思っています。この記事では、60代・70代から歌を始めたい方のために、はじめかたをやさしくまとめます。
「いまからでもおそくない」と思っていい
まず、いちばんお伝えしたいのは、歌を始めるのに、おそすぎることはないということです。
歌は、楽器のように、何かを買いそろえなくても始められます。自分の体そのものが楽器なので、思い立ったその日から、口ずさむことができます。
もちろん、若いころとくらべると、声の出かたがかわったと感じることもあるかもしれません。でも、それはだれにでもあることです。いまの声で、いまの自分らしく歌うことを楽しめば、それでじゅうぶんです。
声が出にくいと感じるときの練習は、こちらの記事にまとめています。年をとって声が出にくいと感じたら。歌がすきな方のための、やさしい発声練習
どんな「歌いたい」があるか考えてみる
歌の習い事といっても、いろいろなかたちがあります。まずは、自分がどんなふうに歌いたいかを、ゆっくり考えてみましょう。
- 若いころにすきだった歌謡曲を、気持ちよく歌いたい
- カラオケで、もう少しじょうずに歌えるようになりたい
- クラシックの歌曲や、日本の歌を、ていねいに歌ってみたい
- 合唱で、みんなと声を合わせてみたい
- いつか、発表会やコンクールに出てみたい
「これがやりたい」がはっきりしなくても、だいじょうぶです。「なんとなく歌ってみたい」という気持ちも、りっぱなきっかけです。
歌のジャンルによるちがいについては、こちらの記事も参考になると思います。声楽・ミュージカル・ボーカル、子どもにはどれ?3つのちがいをやさしく解説
習い方は、大きく分けて4つ
おとなの方が歌を習うときの、おもな習い方を紹介します。
カラオケ教室
「まずは知っている歌から」という方の、さいしょの一歩にえらばれやすい習い方です。カラオケにはよく行くけれど、だれかに教わったことはない、という方にも合いやすいと思います。いつもの歌が、少しずつ変わっていくのを楽しめます。
ボイストレーニング
「歌う曲はまだ決めていないけれど、声をのびのび出してみたい」という方に合いやすい習い方です。曲より先に、息や姿勢のことから教わるので、歌にあまり自信がない方でも、あせらずに始められます。
声楽のレッスン
学生のころに音楽の時間がすきだった方や、むかし合唱をしていた方が、「もう一度ちゃんと歌ってみたい」と始めることもある習い方です。はじめは発声の練習が中心になることが多いので、じっくり型の方に向いています。
合唱団・コーラス
決まった日に集まって歌うので、生活のなかに「歌う日」というリズムができます。家にいる時間がふえて、人と会う予定がほしいと感じている方にも、きっかけになりやすい習い方です。
それぞれのちがいは、こちらの記事でくわしく書いています。シニアの歌の教室えらび。カラオケ教室・ボイトレ・声楽・合唱のちがいと、自分に合う教室の見つけ方
教室のさがし方
家の近くでさがす
まずは、通いやすい場所にある教室をしらべてみましょう。地域の音楽教室や、公民館などの集まりで、歌の講座がひらかれていることもあります。
オンラインでさがす
足が少し心配な方や、近くに教室がない方は、おうちで受けられるオンラインのレッスンもあります。スマホやタブレットがあれば、はじめられることが多いです。くわしくは、こちらの記事にまとめています。おうちでできるオンラインの歌のレッスン。スマホが少し不安なシニアの方へ
まわりの人に聞く
お友だちやご近所の方で、歌を習っている方がいれば、話を聞いてみるのもいい方法です。じっさいに通っている方の話は、とても参考になります。
教室をさがすときは、こちらのページも使ってみてください。歌の教室さがし
はじめる前に、気にしておきたいこと
体験レッスンを受けてみる
多くの教室では、体験レッスンを受けられます。いきなり入会するのではなく、まずは1回、ためしてみましょう。先生の話し方や、教室のふんいきは、じっさいに行ってみないとわからないものです。
体験レッスンで見ておきたいことは、こちらの記事にまとめています。歌の体験レッスンで見るべき5つのこと。聞いておきたい質問リストつき
かかるお金を聞いておく
月謝や入会金、発表会のときにかかるお金などは、教室によって大きくちがいます。あとで「思っていたのとちがった」とならないように、さいしょに聞いておくと安心です。
通う回数を考える
月に何回通うかも、教室によってさまざまです。はじめは、むりのない回数から始めて、なれてきたらふやしていく方法もあります。
のどと体を大切にしながら歌う
歌は、体をつかう習い事です。とくにはじめのうちは、むりをしないことを大切にしてください。
- 歌う前に、かるく体をのばしたり、ゆっくり息をしたりする
- くらっとしたり、気分がわるくなったりしたら、すぐにすわって休む
- 大きな声や高い声を、むりに出そうとしない
- のどがかわいたら、こまめに水をのむ
- つかれたときは、えんりょせずに休む
もし、声のかすれが長くつづいたり、のどにいたみがあったりするときは、ひとりでなやまずに、耳鼻科などのお医者さんに相談してみてください。持病がある方は、始める前に、かかりつけのお医者さんに聞いておくと安心です。
のどのケアについては、こちらの記事でもふれています。子どもののどを守るためにできること。歌をがんばる子の毎日のケア
「じょうずに歌う」より「楽しく歌う」
おとなになってから習い事を始めると、「早くじょうずにならなくては」と、自分に高いハードルをかけてしまうことがあります。
でも、歌は、楽しむことがいちばんです。先生に教わったことが、ひとつできるようになった。すきな歌を、さいごまで歌いきれた。そんな小さな「できた」を、ひとつずつよろこんでいけばいいと思います。
また、歌の教室や合唱団では、同じように歌がすきな仲間と出会えることもあります。レッスンのあとに、すきな歌の話をする時間も、きっと楽しいものになるはずです。
つづけるためのちいさなコツ
- 家でも、すきな歌を口ずさむ時間をつくる
- 歌えるようになった曲を、ノートに書いておく
- ときどき自分の歌を録音して、きいてみる
- 「発表会に出る」など、ちいさな目標をつくる
自分の歌を録音してきくのは、はじめは少しはずかしいかもしれません。でも、何か月かたってからきき直すと、「前より声が出ている」と気づけることもあります。
はじめの3か月は「なれる時間」
習い始めてすぐのころは、教室の場所や先生の話し方、レッスンの流れになれるだけで、けっこうつかれるものです。思うように声が出ない日があっても、自分をせめないでください。
はじめの3か月くらいは、「なれる時間」と考えてみるといいと思います。そのあいだに、こんなことを見てみましょう。
- レッスンの日が、少し楽しみになっているか
- 先生に、わからないことを聞きやすいか
- 家でも、歌のことを思い出す時間がふえたか
- 体やのどに、むりがかかっていないか
もし「なんだか合わないな」と感じたら、ほかの教室や習い方をためしてみるのも、わるいことではありません。自分に合う場所は、少しずつ見つかっていくものです。
ご家族にも話してみる
歌を始めたいと思ったら、ご家族にも話してみてください。「いいね」と言ってもらえるだけで、ふしぎと気持ちが前向きになります。
はなれてくらすお子様やお孫様に、練習している歌を電話ごしに聞いてもらうのも、すてきな楽しみ方です。発表会があるときは、見に来てもらえるかもしれません。
まとめ
- 歌を始めるのに、おそすぎることはない
- まずは、自分がどんなふうに歌いたいかを考える
- 習い方は、カラオケ教室、ボイトレ、声楽、合唱などがある
- 体験レッスンを受けて、かかるお金や回数もさいしょに聞いておく
- のどや体を大切にし、気になることがあればお医者さんに相談する
- じょうずさより、楽しく歌うことをいちばんに
歌を習い始めて、少しなれてきたら、だれかに聞いてもらう場があると、はりあいになります。こどもの歌声グランプリには、シニア(65歳以上)の部もあり、おうちでとった動画で応募できます。いつか「ためしに出してみようかな」と思えたときに、のぞいてみてください。こどもの歌声グランプリ