年をとって声が出にくいと感じたら。歌がすきな方のための、やさしい発声練習
「むかしは、もっと高い声が出たのに」 「歌っていると、すぐに声がかすれてしまう」
年を重ねると、声の出かたがかわってきたと感じることがあります。歌がすきな方ほど、そのかわりに気づいて、少しさびしい気持ちになるかもしれません。
わたしは、息子の歌の習い事をとおして、声というものは、その日の体の調子や、気持ちによっても、とてもかわるものだと感じてきました。そして、ちょっとした体のつかい方で、声がふっと出しやすくなることがあるのも、何度も見てきました。
この記事では、声が出にくくなったと感じたときに、おうちでできるやさしい発声練習をまとめます。むりをせず、自分のペースでためしてみてください。
まず知っておきたいこと
声のかわりは、だれにでもある
年を重ねると、声の高さや、ひびき方がかわってくるのは、とても自然なことです。若いころと同じ声を目ざすより、いまの声を、いちばん気持ちよく出せるようにすることを考えてみましょう。
気になるときは、お医者さんに相談を
この記事で紹介するのは、あくまで、歌を楽しむための、やさしい練習です。つぎのようなときは、練習の前に、耳鼻科などのお医者さんに相談してください。
- 声のかすれが、長くつづいている
- のどにいたみや、つかえる感じがある
- 声がとつぜん、出にくくなった
- 食べものや、のみものが、のみこみにくい
持病のある方や、体調に不安がある方も、かかりつけのお医者さんに聞いてから始めると安心です。
練習の前の、3つの約束
- 1回5〜10分くらいで、じゅうぶん
- のどがいたい、かすれる、くらっとするときは、すぐにお休み
- 大きな声や高い声を、むりに出さない
練習は、「がんばる」より「ほぐす」くらいの気持ちで行ってください。
練習1:姿勢をととのえる
声を出しやすくするために、まずは姿勢をととのえます。立っても、いすにすわってもかまいません。
- 足のうらを、しっかり床につける
- 頭のてっぺんから、糸でかるく引っぱられているように
- 肩の力を、ふっとぬく
- あごを、少しだけ引く
いすにすわるときは、背もたれから少しはなれてすわると、息がすいやすくなります。キャスターのついたいすではなく、動かない、しっかりしたいすをえらんでください。ひざや腰が気になる方は、すわったままで練習してだいじょうぶです。
練習2:肩と首をほぐす
体がかたくなっていると、声も出にくくなります。歌う前に、やさしく体をほぐしましょう。
- 肩を、ゆっくり上にあげて、すとんと下ろす
- 肩を、うしろにゆっくり回す
- 首を、左右にゆっくりかたむける
首を大きくぐるぐる回したり、うしろに強くそらしたりするのは、さけてください。いたみを感じるところまでは、動かさないでください。「気持ちいい」と感じるくらいで、じゅうぶんです。
練習3:ゆっくり息をはく
口を少しすぼめて、「すー」と細く長く息をはきます。
- はじめに、鼻からゆっくり息をすう
- おなかのあたりが、少しふくらむのを感じる
- 口から、「すー」と細く長くはく
長くはこうと、がんばる必要はありません。くるしくなる前にやめて、息を止めたり、がまんしたりしないでください。3回ほどくりかえしたら、ふつうの呼吸にもどして休みましょう。もし、くらっとしたり、気分がわるくなったりしたら、すぐに練習をやめて、すわって休んでください。
長さより、息がやさしく、まっすぐ出ることを大切にしてください。
練習4:くちびるをぶるぶる(リップロール)
くちびるをかるくとじて、「ぶるるる…」とふるわせながら、声を出します。
のどに力が入りにくく、声を出す前の準備運動になります。うまくふるえないときは、両方のほっぺを、指でかるくおさえるとやりやすくなります。
なれてきたら、低い音から少し高い音へ、すべり台のように、なめらかに声を動かしてみましょう。高いほうは、らくに出せるところまでで止めてください。
練習5:ハミング
口をとじて「んー」と、鼻のあたりでひびかせるように声を出します。
- 鼻やくちびるが、むずむずするのを感じる
- 大きな声でなくていい
- ハミングで、すきな歌を口ずさんでみる
ハミングは、しずかにできるので、大きな声を出しにくい家でも練習しやすい方法です。
練習6:口と舌(した)の体操
ことばをはっきり出すために、口のまわりもほぐしておきましょう。
- 「あ・い・う・え・お」を、口を大きく動かして言う
- 口をとじたまま、舌で、ほっぺの内がわをぐるりとなぞる
- 「パ・タ・カ・ラ」を、ゆっくりはっきり言う
歌のことばが、聞きとりやすくなります。
練習7:話す声で歌ってみる
いきなり高い声で歌おうとせず、まずは、ふだん話している声の高さで、すきな歌を口ずさんでみましょう。
「この高さだと、らくに出せる」というところが見つかったら、そのあたりを大切にしてください。曲の高さ(キー)を下げて歌うのも、まったくはずかしいことではありません。カラオケでも、キーをかえて歌えることがあります。
5分メニューの例
| 順番 | 練習 | 時間 |
|---|---|---|
| 1 | 姿勢をととのえる | 30秒 |
| 2 | 肩と首をほぐす | 1分 |
| 3 | ゆっくり息をはく | 1分 |
| 4 | くちびるぶるぶる | 1分 |
| 5 | ハミング | 1分 |
| 6 | 話す声で1曲口ずさむ | 30秒 |
毎日ぜんぶやらなくてもだいじょうぶです。すきな練習を2つか3つえらんで、つづけてみてください。
子ども向けの発声練習の記事ですが、こちらも参考になると思います。おうちでできる子どもの発声練習。5分でできる遊びのような練習法
のどをいたわる毎日のコツ
- こまめに水をのむ(冷たすぎないもの)
- 部屋がかわきすぎないようにする
- 大きな声を、長い時間出しつづけない
- よくねむって、体を休める
- かぜのときや、声がかすれているときは、歌をお休みする
のどのケアについては、こちらの記事でもまとめています。子どもののどを守るためにできること。歌をがんばる子の毎日のケア
つづけるための工夫
発声練習は、少しずつでも、つづけることが大切です。でも、ひとりでつづけるのは、なかなかむずかしいものですよね。
- 朝のお茶の前など、練習する時間を決めておく
- カレンダーに、練習した日にしるしをつける
- 1か月に1回くらい、すきな歌を録音してきいてみる
- できなかった日があっても、気にしない
録音をきくときは、うまいかどうかより、「きょうは息がらくそうだな」「この高さは気持ちよさそう」と、声の調子をたしかめるつもりできいてみてください。自分の声の「ちょうどいいところ」が、少しずつわかってきます。
声が出やすい日、出にくい日がある
同じように練習していても、声が出やすい日と、出にくい日があります。朝おきてすぐは、まだ体が目ざめていないので、声が出にくいことも多いです。
天気や、部屋のかわき具合、その日のつかれによっても、声はかわります。歌う前に、あたたかいのみものをのんだり、かるく体を動かしたりしてから練習すると、声が出しやすくなることもあります。「きょうは出にくいな」と感じた日は、息の練習やハミングだけにして、早めにやめてしまってもかまいません。
声の調子に、まいにち一喜一憂しなくてだいじょうぶです。長い目で見て、「歌うのが楽しい」と思えていれば、それでじゅうぶんです。
人と話すことも、声の練習になる
歌の練習だけでなく、ふだんから人と話すことも、声をつかう大切な時間です。家族やお友だちと電話で話したり、すきな歌の話をしたりするのも、楽しい「声の時間」になります。
ひとりで練習するのがさびしいときは、教室や合唱団に入って、仲間といっしょに歌うのもいいと思います。大人から合唱団に入る方法は、こちらの記事にまとめています。大人から合唱団に入るには。はじめての方が知っておきたい、さがし方と見学のポイント
先生に見てもらうのも安心
ひとりで練習していると、「これで合っているのかな」と不安になることもあります。そんなときは、歌の先生に見てもらうのもひとつの方法です。
先生は、声の出し方のくせや、体のつかい方を見て、その方に合った練習を教えてくれます。家から受けられるオンラインのレッスンもあります。おうちでできるオンラインの歌のレッスン。スマホが少し不安なシニアの方へ
まとめ
- 声のかわりは、だれにでもある自然なこと
- かすれやいたみが長くつづくときは、耳鼻科などのお医者さんに相談する
- 練習は1回5〜10分、むりをせず「ほぐす」気持ちで
- 姿勢、息、くちびるぶるぶる、ハミング、口の体操などをためしてみる
- 高い声にこだわらず、らくに出せる高さで歌う
- 水をのむ、よくねむるなど、毎日のいたわりも大切に
いまの自分の声で、すきな歌を気持ちよく歌えたら、それはとてもすてきなことです。こどもの歌声グランプリには、シニア(65歳以上)の部もあり、おうちでとった動画で応募できます。いつかためしてみたくなったら、のぞいてみてください。こどもの歌声グランプリ