歌の苦手意識をなくしたい大人へ。「わたしは下手だから」と思う気持ちのほどき方
「わたしは歌が下手だから」 「むかしから、歌は苦手」 「歌ってみたい気持ちはあるけれど、どうせうまくいかない気がする」
大人になってから、こんな気持ちを心の中にずっとかかえている方もいらっしゃると思います。人に聞かせる前から、自分の中で「苦手」と決めてしまっている。歌の苦手意識は、外から見えにくいぶん、ひとりでかかえこみやすいものです。
わたしは息子といっしょに、たくさんのコンクールに出てきました。
この記事では、人前で歌うときのはずかしさではなく、自分の心の中にある「歌が苦手」という思いにしぼって考えます。苦手意識がどこから来るのか、その気持ちをどうほどいていけばよいのか、ひとりでできる小さな練習もあわせてまとめました。
先にお伝えしたいのは、苦手意識があるからといって、歌を楽しめないわけではない、ということです。歌は、うまい人だけのものではありません。
人前で歌うのがはずかしいときの、なれ方については、こちらの記事にまとめています。人前で歌うのがはずかしい大人へ。少しずつなれていく方法
歌の苦手意識は、どこから来るのか
むかしの「ひとこと」が、心にのこっている
歌が苦手だと思うようになったきっかけを、ふりかえってみてください。子どものころ、だれかに歌を笑われた。音楽の時間に、ひとりで歌うのがつらかった。家族に「音がはずれているね」と言われた。
こうした小さな出来事が、大人になっても心のどこかにのこっていることがあります。言った人はもうおぼえていないようなことばでも、言われたほうには長くのこるものです。
そして、そのときの気持ちのまま、「わたしは歌が苦手な人」と、自分にラベルをはってしまうことがあります。
「うまい人」とくらべてしまう
テレビや動画では、とても歌のうまい人の声に、毎日のようにふれることができます。そうした歌を聞きなれていると、自分の声がものたりなく聞こえてしまうこともあります。
でも、それはプロや、長い時間をかけて練習してきた人の歌です。はじめたばかりの自分とくらべて落ちこむのは、少し気の毒なくらべ方かもしれません。
自分の声を、よく知らない
自分の声を録音して聞いたとき、「え、こんな声なの」とおどろくことがあります。ふだん自分の耳で聞いている声と、外に出ている声はちがって聞こえるものです。
このずれにとまどって、「わたしの声はへんだ」と思いこんでしまうこともあります。録音した声とのつきあい方は、こちらの記事にまとめています。録音した自分の声がへんに聞こえるのはなぜ?自分の声とのつきあい方
歌ってこなかったから、なれていないだけ
大人になると、声を出して歌う場面は、自分でつくらないかぎり、なかなかありません。歌わない時間が長いと、声の出し方やリズムのとり方に、なれていないだけということもあります。
それは「才能がない」のとはちがいます。ふだんしていないことは、だれでもはじめはぎこちないものです。
「下手だから」という気持ちを、ほどいていく
苦手意識に、気づいてあげる
まずは、「わたしは歌が苦手と思っているんだな」と、自分の気持ちに気づくところからはじめてみてください。
苦手意識をむりに消そうとすると、かえって気になってしまうことがあります。「そう思っている自分がいる」と、少しはなれたところから見てあげるだけでも、心がふっと軽くなることがあります。
「下手」ということばを、言いかえてみる
心の中で使っていることばを、少しかえてみるのもひとつの方法です。
- 「わたしは下手」を、「まだなれていない」に
- 「声がへん」を、「自分の声をまだよく知らない」に
- 「音がはずれる」を、「音をさがしている途中」に
- 「どうせできない」を、「ためしたことがない」に
ことばがかわると、気持ちの向きも少しずつかわっていくことがあります。はじめはしっくりこなくても、心の中でくりかえしてみてください。
「上手・下手」のものさしを、いったんおいておく
歌には、音程やリズムのほかにも、たのしさ、気持ちよさ、あたたかさなど、いろいろなよさがあります。上手か下手かだけで歌を見ていると、そのほかのよさに気づきにくくなります。
上手い・下手の基準については、こちらの記事でくわしく書いています。歌の上手い・下手の基準って?ふだん聞く人が「上手い」と感じるポイントここでは、「上手か下手か」ではなく、「歌っていて気持ちがいいか」を、まずのものさしにしてみることをおすすめします。
「できたこと」に目を向ける
苦手意識があると、できなかったところばかりが目に入ります。そこで、歌ったあとに、できたことをひとつだけさがしてみてください。
- さいごまで歌いきれた
- 声を出すことが、少し楽しかった
- 前より、息が楽に続いた
- 好きな曲を、ひとつ口ずさめた
どんなに小さなことでもかまいません。「できた」をつみかさねていくと、「苦手」という思いのとなりに、「でも、ここはできた」という思いが育っていきます。
音がはずれることを、こわがりすぎない
「音痴だったらどうしよう」という不安が、苦手意識のもとになっていることもあります。音がはずれる理由はいろいろで、練習で少しずつかわっていくこともあります。音痴について気になる方は、こちらの記事も読んでみてください。音痴は直る?大人も子どもも、音程が合うようになる練習のしかた
ひとりでできる、小さな一歩
だれも聞いていないところで、声を出してみる
苦手意識があるときは、まず、だれにも聞かれない場所で声を出すところからはじめてみてください。
- お風呂で、好きな曲を口ずさむ
- 車の中で、ラジオに合わせて小さく歌う
- 家事をしながら、ハミングをする
「練習」と思わなくてかまいません。声を出すことそのものに、少しずつなれていくことが、はじめの一歩になります。
好きな曲を、ひとつだけえらぶ
いきなりむずかしい曲に挑むと、うまくいかなくて、苦手意識が強くなってしまうことがあります。はじめは、自分が好きで、声の高さが無理のない曲をひとつえらんでみてください。
好きな曲だと、「歌いたい」という気持ちが自然にわいてきます。その気持ちが、苦手意識をやわらげる力になってくれます。
自分にやさしい声かけをする
歌ったあと、心の中で自分にどんなことばをかけているでしょうか。「やっぱりだめだ」と言っていたら、それを「今日も声を出せたね」にかえてみてください。
友だちが歌っていたら、きっとやさしいことばをかけるはずです。同じように、自分にもやさしくしてあげてください。
録音は、こわくなくなってからでいい
録音して聞くのは、上達のためにはよい方法です。でも、苦手意識が強いうちは、自分の声を聞くのがつらいこともあります。
そんなときは、むりに録音しなくてもかまいません。声を出すことになれてきて、「ちょっと聞いてみようかな」と思えたときに、ためしてみてください。
教室や先生をたよるという方法
「苦手」を、そのまま先生に伝えてみる
歌の教室では、はじめての方や、歌に自信がない方を受け入れているところもあります。体験レッスンのときに、「歌に苦手意識があります」と、そのまま伝えてみてください。
先生に気持ちを知ってもらえると、ペースや声のかけ方を考えてもらえることがあります。どんな対応をしてくれるかは教室によってちがうので、体験のときにたしかめてみると安心です。
ひとりで悩むより、早く楽になることもある
ひとりで練習していると、「これで合っているのかな」と不安になりがちです。先生に見てもらうと、自分では気づかなかったよいところを教えてもらえることもあります。
「下手だから教室に行けない」ではなく、「苦手だから、教えてもらう」と考えてみると、少し気持ちがかわるかもしれません。
合う場所を、ゆっくりさがす
教室には、声楽、ポップス、カラオケ、合唱など、いろいろな形があります。個人レッスンが安心な方もいれば、みんなで歌うほうが気が楽な方もいます。
どれが正解ということはありません。自分の気持ちに合う場所を、ゆっくりさがしてみてください。
苦手意識と、つきあいながら歌う
ゼロにしなくてもいい
苦手意識は、すぐになくなるものではないかもしれません。歌うたびに、少し顔を出すこともあると思います。
でも、苦手意識をゼロにしてから歌いはじめる必要はありません。「苦手だけど、歌うのは好き」という気持ちのまま、歌を楽しんでいる方もいらっしゃいます。
歌は、自分のためのもの
歌は、だれかに点数をつけてもらうためだけのものではありません。気持ちを晴らしたり、ほっとしたり、自分をはげましたりする、自分のためのものでもあります。
「わたしが楽しいから歌う」。それだけで、歌う理由としてはじゅうぶんです。
まとめ
- 歌の苦手意識は、むかしのひとことや、うまい人とのくらべから生まれることがある
- 歌ってこなかったために、なれていないだけのこともある
- 苦手意識に気づき、「下手」を「まだなれていない」と言いかえてみる
- 「上手か下手か」より、「歌っていて気持ちいいか」をものさしにする
- できたことをひとつさがし、自分にやさしいことばをかける
- だれも聞いていない場所で、好きな曲から声を出してみる
- 教室では、苦手意識があることをそのまま先生に伝えてみる
- 苦手意識をゼロにしなくても、歌は楽しめる
ひとりで声を出すことになれてきたら、自分に合う先生をさがしてみるのもひとつの方法です。お近くの教室や、オンラインで習える教室は、こちらからさがせます。歌の教室さがしそして、いつか自分の歌を形にのこしてみたくなったときには、こんな場もあります。こどもの歌声グランプリは、オンラインの動画審査だけで出られる歌のコンクールです。幼児からシニア(65歳以上)までの8部門があり、ジャンルは自由です。出た方には、講評とデジタル賞状がとどきます。こどもの歌声グランプリ