子どもの声楽、続けてよかったこと。歌のほかにも身につく6つの力
「声楽って、続けて何になるの?」
習い事を続けていると、そんなふうに思う日もあるかもしれません。たしかに、声楽家になるお子様はほんのひとにぎりです。でも、歌を続けることで身につく力は、歌のほかにもたくさんあります。
この記事では、息子の声楽をそばで見てきたわたしが、続けてよかったと感じることをお伝えします。
1. 人前で堂々とできるようになる
コンクールや発表会で、たくさんの人の前でひとりで歌う。この経験をくりかえすと、人前に立つことへのこわさが少しずつへっていきます。学校の発表や、人前で話す場面でも、その力がいきます。
息子も、はじめのころは本番のたびに、舞台袖で不安そうにしていました。終わってから泣かなくなったのは、5回目の舞台のときです。人前で歌う経験を1回ずつかさねることが、そのまま力になっていったのだと思います。
2. 目標に向かってこつこつする力
本番の日に向けて、何週間も同じ曲を練習する。うまくいかない日があっても、少しずつできるようになっていく。この経験は、勉強やスポーツなど、ほかのことにもつながります。
3. ことばを大切にする心
童謡や歌曲を歌うときは、歌詞の意味を考え、ことばをていねいに届けます。そのうちに、日本語の美しさや、ことばのもつ気持ちを感じる力が育ちます。
4. よい姿勢と、のびのびした声
声楽では、まっすぐ立つこと、おなかから息を使うことを学びます。ふだんの姿勢がよくなったり、話す声が聞きとりやすくなったりすることもあります。
5. うまくいかない日とのつきあい方
コンクールでは、入賞する日もあれば、落ちる日もあります。くやしさをいっぱい味わって、それでもまた歌いはじめる。その経験こそ、大人になってからも大切な力になると思います。
落ちた日のお子様への声かけはこちら。コンクールで落ちた日に、親ができること。かけたいことば、さけたいことば
6. 学校の外の仲間と、すてきな大人との出会い
コンクールや発表会では、同じように歌が好きなお子様や、音楽を大切にしている先生たちに出会えます。学校とはちがう世界をもつことは、お子様にとって大きな支えになります。
6つの力は、どんな場面でいきる?
歌で身につけた力は、意外なところで顔を出します。たとえば、つぎのような場面です。
| 身につく力 | 歌の中では | 毎日の生活では |
|---|---|---|
| 人前で堂々とできる | 本番でひとりで歌う | 学校の発表、学級会での発言 |
| こつこつする力 | 1曲を何週間もかけて仕上げる | 漢字や計算の練習、運動の練習 |
| ことばを大切にする | 歌詞の気持ちを考える | 作文や音読、人の話を聞くとき |
| 姿勢と声 | まっすぐ立ち、息を使って歌う | あいさつ、電話、話すときの声 |
| うまくいかない日とのつきあい方 | 結果を受けとめて、また練習する | テストや試合のあと |
| 学校の外の仲間 | 発表会やコンクールでの出会い | 学校でなやんだときの居場所 |
すぐに目に見える力ではありません。でも、何年かたってふりかえると、「あのときの経験がいきているな」と感じる場面がふえていきます。
「続けてよかった」に気づくきっかけ
力がついていても、毎日そばにいると、なかなか気づけないものです。つぎのようなときに、「続けてきてよかった」と感じやすいようです。
- 先生や審査員の講評で、前よりよくなったところを言ってもらえたとき
- 何か月か前の動画を見て、声や姿勢のちがいに気づいたとき
- 学校の先生や親せきから、「声がよくとおるね」と言われたとき
- お子様が自分から「この曲を歌ってみたい」と言ったとき
こうした場面があったら、お子様にもそのまま伝えてあげてください。まわりの人のことばは、お子様が自分の成長を知る大切なきっかけになります。
年れいによって、身につくものはかわる
声楽を続けてよかったと感じるところは、お子様の年れいによっても少しずつかわっていきます。
幼児のころ
この時期は、「歌うって楽しい」という気持ちと、音を聞く耳が育ちます。上手に歌うことより、毎週先生に会って歌う時間そのものが、お子様の宝物になります。
小学校低学年
人前で歌うことに少しずつなれて、「本番で歌いきれた」という自信がつきはじめます。ことばの意味を考えて歌うことも、このころから少しずつできるようになります。
小学校高学年
自分で練習の計画を立てたり、先生のアドバイスを自分なりに考えたりできるようになります。くやしい思いをすることもふえますが、そのぶん、気持ちを立てなおす力も育っていきます。
中学生
声の変化や、部活や勉強とのかねあいもあり、続け方を考える時期です。それでも続けているお子様は、「自分で決めて続けている」ことそのものが、大きな自信になっていきます。声がわりの時期のことはこちらにまとめています。声がわりの時期の男の子と歌。続けていい?気をつけたいこと
親として感じたこと
はじめての本番の日、舞台袖で「あぁ、むりだ、どうしよう」と言っていた息子は、歌いおわってわたしの顔を見た瞬間、だきついて泣きました。それでも「出たい」と言いつづけ、5回目の舞台で、やっと終わってから泣かなくなりました。
1位をとった日、息子は涙を流してよろこび、「1位をとらせてくれてありがとう。がんばらせてくれてありがとう。歌をさせてくれてありがとう」と言ってくれました。今はコンクールを卒業しましたが、がんばった日々は、まちがいなく息子の人生の財産になっていると思います。
続けるために大切なこと
- 結果より、お子様の「歌が好き」を大切にする
- コンクールは、えらんで出る
- お金や時間は、ご家庭でむりのない範囲で
- つらそうなときは、お休みもあり
「やめたい」と言われたときの向き合い方はこちら。「歌をやめたい」と言われたら。すぐに答えを出さない、親の向き合い方
続けるための、おうちでの小さな工夫
長く続けるためには、レッスンの日だけでなく、ふだんのおうちでの過ごし方も大切です。むずかしいことはなく、つぎのような小さな工夫で十分です。
- レッスンのあとに、「今日はどんなことをしたの?」と聞いてみる
- 練習の時間は、生活のリズムの中に決めておく(夕ごはんの前など)
- 上手になったところを、具体的にことばにして伝える
- 歌っている姿を、ときどき動画にのこしておく
- のどがいたいときや、かぜのときは、むりに練習させない
動画は、何か月か前のものと見くらべると、お子様自身が成長に気づけます。「前より声がのびているね」と、いっしょに見る時間もすてきです。のどの調子が気になるときは、早めに耳鼻科で相談してください。
「続けてよかった」と思えないときは
正直なところ、続けていてつらい時期もあります。練習をいやがる、コンクールの結果が出ない、送り迎えが大変。そんなときは、「続けること」だけを目標にしなくてもよいと思います。
- レッスンの回数をへらして、少しペースを落とす
- コンクールは一度お休みして、楽しく歌うことにもどる
- 先生に、今のお子様の様子を正直に相談する
少し休んでも、歌が好きな気持ちがのこっていれば、また歌いたくなる日がきます。「やめる」か「続ける」かの二つだけでなく、そのあいだのえらび方もあることを、心の片すみにおいておいてください。
よくある質問
声楽家にならないなら、続ける意味はありますか?
あると思います。この記事でお伝えした力は、どれも歌のほかの場面でいきるものです。大人になってから、合唱や趣味で歌を楽しむ人もたくさんいます。「一生歌を楽しめる体と心」を育てていると考えると、続ける意味が見えてきます。
どれくらい続けると、力がついたと感じますか?
お子様によってちがうので、「何年」とは言えません。ただ、本番を何度か経験したあとや、1年前の動画と見くらべたときに、「変わったな」と感じるお父様・お母様は多いようです。目に見える結果より、小さな変化に気づいてあげることが大切です。
勉強やほかの習い事がいそがしくなったら?
レッスンの回数や時間を先生と相談して、ペースを落とすえらび方もあります。続けるか、やめるかだけで決めず、今のお子様に合う形をさがしてみてください。歌が好きな子におすすめの習い事は、こちらでもくらべています。歌が好きな子におすすめの習い事6つ。年れいと性格からえらぶ方法
まとめ
声楽を続けると、歌のほかにもつぎのような力が身につきます。
- 人前で堂々とできる
- 目標に向かってこつこつする
- ことばを大切にする
- よい姿勢と、のびのびした声
- うまくいかない日とのつきあい方
- 学校の外の仲間との出会い
歌が好きな気持ちを大切に、お子様のペースで続けていけますように。