「歌をやめたい」と言われたら。すぐに答えを出さない、親の向き合い方
「もう歌、やめたい」
ずっとがんばってきたお子様からこのことばが出ると、お父様・お母様もどきっとしますよね。「せっかくここまでがんばったのに」という気持ちも、「むりさせていたのかな」という気持ちも、どちらもあると思います。
この記事では、「やめたい」と言われたときの向き合い方をお伝えします。
まずは、すぐに答えを出さない
「やめたい」と言われたとき、いちばん大切なのは、その場で「だめ」も「いいよ」も言わないことです。
「そっか、やめたいくらいつらいんだね」と、まず気持ちを受けとめましょう。受けとめてもらえたと感じると、お子様は本当の理由を話しやすくなります。
「やめたい」が出やすいタイミング
「やめたい」ということばは、ある日とつぜん出てくるように見えて、じつは出やすい時期があります。
- コンクールや発表会が終わった直後(目標がなくなり、気がぬける)
- 新しくむずかしい曲に入ったとき(できないことがつづく)
- 学年がかわって、学校がいそがしくなったとき
- 友だちが別の習い事をはじめたとき
- かぜなどで、しばらくレッスンを休んだあと
こうした時期の「やめたい」は、一時的な気持ちのこともあります。「どうしてこのタイミングなのかな」と考えてみると、本当の理由が見えてくることがあります。
理由の聞き方
「なんで?」と聞くと、お子様はうまく答えられないことが多いです。こんな聞き方もためしてみてください。
- 「いちばんいやなのはどんなとき?」
- 「歌うことは好き?」(歌がいやなのか、ほかのことがいやなのかを分ける)
- 「もし魔法がつかえたら、何をかえたい?」
話を聞くときのコツ
- 車の中やおふろなど、顔を向かいあわせないリラックスした場所で聞く
- 一度で全部聞きだそうとしない。何日かに分けてもよい
- お子様の話をさえぎらず、さいごまで聞く
- 「でも」「だって」と、すぐに説得しない
「ちゃんと聞いてもらえた」と感じることが、つぎの話しあいへの第一歩になります。
よくある理由と、できること
| よくある理由 | できること |
|---|---|
| 練習がつらい・あきた | 練習の時間ややり方をかえる。好きな曲をまぜる |
| 先生がこわい・あわない | 先生に相談する。先生をかえることも考える |
| コンクールで落ちてくやしい | 少し休んでから考える。結果より成長をほめる |
| ほかにやりたいことができた | 時間のやりくりをいっしょに考える |
| 友だちと遊ぶ時間がほしい | レッスンの曜日や回数を見なおす |
| 親の期待が重い | 「どんな結果でも大好き」を伝えなおす |
とくにさいごの「親の期待」は、お子様が口に出しにくい理由です。コンクールで結果を出してきたお子様ほど、「入賞しないとがっかりされる」と感じていることがあります。
年れいによって、「やめたい」の中身はちがう
幼児〜小学校の低学年
この年れいの「やめたい」は、「今日は行きたくない」「つかれた」という、その日の気持ちのことも多いです。何週間も同じことを言いつづけるか、ようすを見てから考えても大丈夫です。
小学校の高学年
自分の考えがはっきりしてきて、「ほかにやりたいことがある」「友だちとの時間を大切にしたい」など、理由もはっきりしてきます。本人の考えを、ひとりの人として尊重する気持ちで聞きましょう。
中学生
部活や勉強がいそがしくなり、時間のやりくりがむずかしくなる時期です。また、声がかわる時期とかさなり、「前のように歌えない」ことがつらくなる子もいます。声のことは、先生とも相談しながら考えましょう。
先生にも相談してみる
親子だけで決めずに、先生に相談するのもひとつの方法です。先生は、たくさんのお子様を見てきているので、「この時期にはよくあることですよ」と、ちがう角度から話してくれることがあります。
- お子様の前ではなく、親だけで相談する時間をもらう
- 「やめさせたい」「つづけさせたい」と決めつけず、「なやんでいます」と伝える
- 練習の内容や曲をかえられるか、聞いてみる
先生が理由に関わっている場合は、むりに相談しなくても大丈夫です。先生をかえるときの伝え方はこちら。習い事の先生を変えたいとき、どう伝える?気まずくならない伝え方と例文
「お休み」というえらび方もある
「つづける」か「やめる」の2つだけでなく、「少しお休みする」というえらび方もあります。
- 1か月だけレッスンをお休みする
- コンクールには出ず、レッスンだけつづける
- レッスンの回数をへらす
はなれてみると、「やっぱり歌いたい」と自分から言い出すお子様もいます。
つづけると決めたときは
話しあって「もう少しつづける」と決めたら、何かひとつ、かえてみることが大切です。何もかわらないままだと、また同じ気持ちになってしまいます。
- 好きな曲を1曲、えらばせてもらう
- 練習の時間を短くする、曜日をかえる
- 「つぎの発表会まで」など、区切りの時期を決めておく
- 結果より「楽しかったこと」を話す時間をふやす
「自分で決めてつづけている」という気持ちがもてると、お子様の顔つきもかわってきます。
やめると決めたときは
よく話しあって「やめる」と決めたら、その決めたことを尊重しましょう。
- 「ここまでよくがんばったね」と、これまでをみとめる
- できれば「いつまで」を決めて、さいごの発表やレッスンで区切りをつける
- 先生には、お礼をそえて早めに伝える
習ってきたことは、むだにはなりません。合唱や学校の音楽、人前で話すときなど、いろいろなところでお子様の力になります。
やめたあとも、歌とつながる方法
教室をやめても、歌うことまでやめる必要はありません。こんな形で、歌とのつながりをのこしておくこともできます。
- 学校の合唱や音楽会で、思いきり歌う
- 家族でカラオケや、車の中で好きな歌を歌う
- 気が向いたときに、動画で出られるコンクールに出てみる
- 合唱団など、ひとりではなく、みんなで歌う場所に入る
「先生につかなくても、歌は楽しめるんだよ」と伝えておくと、お子様はまた歌いたくなったときに、自分からもどってくることができます。
よくある質問
「やめたい」を何回も言います。そのたびに話しあうべき?
毎回しんけんに話しあうと、親子ともにつかれてしまいます。「そう思うときもあるよね」と受けとめておき、何週間も続くようなら、時間をとって話しあう、というくらいで大丈夫です。
入会金や衣装代がもったいなくて、やめさせられません
その気持ちは、とても自然です。ただ、お金のためにつづけると、お子様はそれを感じとります。かけたお金は、お子様が得た経験そのものと考えると、気持ちが少し楽になるかもしれません。
やめたことを、あとでこうかいしないか心配です
どちらをえらんでも、こうかいする日はあるかもしれません。大切なのは、「自分で考えて決めた」という経験です。親子で話しあって決めたことなら、それはお子様にとって意味のある決断です。
親が自分に聞いてみたいこと
「やめたい」を聞いたとき、親の心の中もたしかめてみると、決めやすくなります。
- つづけてほしいのは、お子様のため?それとも自分のため?
- かけてきたお金や時間を「もったいない」と思っていないか?
- お子様が歌うとき、楽しそうか?
まとめ
- 「やめたい」と言われたら、まず受けとめる。すぐに答えを出さない
- 出やすいタイミングを知り、一時的な気持ちかどうかを見る
- 「歌がいや」なのか、「ほかのことがいや」なのかを分けて聞く
- 年れいによって、理由の中身はちがう
- 先生への相談や、「お休み」というえらび方もある
- つづけるなら何かひとつかえる。やめるなら、これまでをみとめて区切りをつける
どちらをえらんでも、「歌うことが好き」という気持ちがお子様の中にのこるように。それがいちばん大切だと思います。