歌の前の口腔体操。高齢者の方とできる、パタカラ体操と口や顔のほぐし方
「歌の会のはじめに、口の体操をとり入れたい」 「パタカラ体操を、歌と組み合わせてみたい」 「高齢者の方といっしょに、むりなくできる口のほぐし方を知りたい」
高齢者施設やデイサービスのスタッフの方、地域の歌の会の方、ご家族の方の中には、こんなことを考えている方もいらっしゃると思います。歌う前に口や顔をゆっくり動かしておくと、ことばを出す準備になり、歌の時間に入りやすくなることがあります。
わたしは息子といっしょに、たくさんのコンクールに出てきました。
この記事では、高齢者の方と歌の前にできる口腔体操(口の体操)について、パタカラ体操のやり方、くちびる・舌・ほおのほぐし方、歌の会での進め方、気をつけたいことをまとめました。
はじめにお伝えしておきたいのは、ここで紹介する体操は、あくまで「歌う前に口を動かす準備」として楽しむものだということです。体の病気をふせいだり、治したりするためのものではありません。
なお、立ったり体全体を動かしたりする準備運動はこちらの記事に、顔の表情の練習はこちらの記事にまとめています。歌う前の準備運動。体と顔をほぐす、やさしいストレッチ表情筋を使うボイトレ。顔をほぐして、歌の声を明るくする練習この記事では、高齢者の方が座ったままできる口の体操にしぼってお伝えします。
歌の前に口腔体操をするのは、なぜ?
口を動かす「準備」になる
ふだんの生活では、口を大きく動かす場面はあまりないかもしれません。いきなり歌いはじめるより、口のまわりを少しずつ動かしておくと、歌のことばを出しやすいと感じる方もいらっしゃいます。
歌の時間への、気持ちの切りかえになる
みんなで同じ動きをすることで、「これから歌の時間がはじまる」という合図にもなります。笑顔が出たり、声を出すことへのはずかしさがやわらいだりすることもあります。
声を出す前の、ようすを見る時間にもなる
スタッフの方にとっては、体操をしながら、その日の参加者の方の表情や、声の出しやすさを見ることができる時間にもなります。
はじめる前に、気をつけたいこと
座ったまま、らくな姿勢で
口腔体操は、いすに深めに座り、背中を少しのばした、らくな姿勢で行いましょう。車いすの方も、そのままの姿勢で参加できます。
むりに大きく動かさない
口や舌は、人によって動かしやすさがちがいます。
- 痛みが出るほど大きく動かさない
- できる範囲で、ゆっくり動かす
- つかれたら、とちゅうで休んでよいと伝える
「できるところまでで大丈夫ですよ」と、はじめに声をかけておくと、参加者の方も安心して取り組めます。
入れ歯の方への心くばり
入れ歯を使っている方は、大きく口を動かすと、入れ歯がずれて気になることもあります。ゆっくり、小さめの動きからはじめてもらいましょう。入れ歯の方の歌の工夫は、こちらの記事にもまとめています。入れ歯でも歌を楽しむ。シニアの方の発音と口の工夫
気になるようすがあるときは、専門の方に相談を
体操や歌のとちゅうで、むせる、飲みこみにくそうにしている、口や顔に痛みがあるなど、気になるようすが見られるときは、むりに続けないでください。お医者さんや、歯科の先生、言語聴覚士などの専門職の方に相談しましょう。
パタカラ体操のやり方
パタカラ体操とは
パタカラ体操は、「パ」「タ」「カ」「ラ」の音を、はっきり声に出して言う口の体操です。それぞれの音を出すとき、口の中の使うところがちがうので、口をいろいろに動かす準備として、歌の会でもとり入れやすい体操です。
- 「パ」:くちびるをしっかりとじてから、ぱっと開く
- 「タ」:舌の先を、上の歯のうらにつけてから、はなす
- 「カ」:舌のおくを、上あごのおくのほうへ持ち上げてから、はなす
- 「ラ」:舌の先を、上あごにつけてから、はじくように動かす
基本の進め方
- はじめに「パ・パ・パ」と、ひとつの音だけを何回か言う
- 同じように「タ」「カ」「ラ」も、ひとつずつ言う
- なれてきたら「パタカラ、パタカラ」と、つなげて言う
- 最後に、ゆっくり深く息をはいて、ひと休みする
はじめはゆっくり、はっきり言うことを大切にしてください。速さをきそう必要はありません。
歌のメロディーに合わせてみる
なれてきたら、知っている歌のメロディーに合わせて、歌詞のかわりに「パ」や「ラ」の音だけで歌ってみるのも楽しい方法です。
- 「ふるさと」のメロディーを、「ラ」だけで歌う
- 「春が来た」のメロディーを、「パ」だけで歌う
- 「うさぎとかめ」のメロディーを、「タ」だけで歌う
歌詞を思い出さなくてもよいので、歌うことに少し自信がない方も参加しやすくなります。ゆっくりしたテンポの曲からはじめて、なれてきたら、明るくはずむ曲にもちょうせんしてみましょう。
手びょうしと合わせる
「パ・タ・カ・ラ」に合わせて、手をたたいたり、ひざを軽くたたいたりすると、リズムを感じながら楽しめます。手を動かすのがむずかしい方は、声だけでも大丈夫です。
くちびる・舌・ほおのほぐし方
パタカラ体操の前に、口のまわりを少しずつほぐしておくと、動かしやすくなることがあります。どれも座ったままできる、かんたんな動きです。
くちびるの体操
- くちびるを前につき出して「ウー」の形にする
- 口を横にひいて「イー」の形にする
- 「ウー」と「イー」を、ゆっくりくりかえす
- くちびるを軽くとじて、「プー」と息を出してふるわせる
くちびるをふるわせるのがむずかしい方は、くちびるをとじて、ほおを少しふくらませるだけでもかまいません。
舌の体操
- 口を軽く開けて、舌を前に出し、ゆっくりもどす
- 舌の先で、右と左の口のはしを、交互にさわる
- 口をとじたまま、舌で歯ぐきの外がわを、ぐるりとなぞる
舌を出すのがはずかしいという方もいらっしゃいます。口をとじたまま、口の中で舌を動かす方法なら、まわりを気にせずに取り組めます。
ほおの体操
- ほおを空気で、ぷうっとふくらませて、ゆっくりもどす
- 右のほおだけ、左のほおだけ、と空気をうつす
- 両手で、ほおをやさしく円をえがくようにさする
手でさするときは、強くおさず、なでるくらいの力で行いましょう。
あくびのような大きな口
最後に、あくびをするように、口をゆっくり大きく開けて、ゆっくりとじます。あごに痛みがある方は、小さめの動きでかまいません。
歌の会での進め方の例
流れの一例
歌の会のはじめに、つぎのような流れで行うと、むりなく歌に入っていけます。
- あいさつをして、肩の力をぬく
- くちびる・舌・ほおを、ゆっくりほぐす
- パタカラ体操を、ひとつの音ずつ、つなげて
- 知っている歌のメロディーを、「ラ」だけで歌う
- ひと休みしてから、その日の歌へ
体操の時間は、参加者の方のようすを見ながら、長くなりすぎないようにしましょう。
進める人のポイント
- 進める人が、まず大きめにやって見せる
- 「パ」「タ」「カ」「ラ」の字を、大きく紙に書いて見せる
- 「いい声ですね」「口がよく動いていますね」と、声をかける
- うまくできたかどうかより、いっしょに楽しむことを大切にする
見本を見せるときは、参加者の方の正面に立ち、口の動きが見えるようにすると伝わりやすくなります。
季節の歌とつなげる
体操でメロディーだけを歌ったあとに、同じ曲を歌詞つきで歌うと、自然に歌の時間へ入れます。季節の歌をえらぶと、話もひろがります。
- 春:「春の小川」「朧月夜」
- 夏:「夏は来ぬ」「うみ」
- 秋:「赤とんぼ」「紅葉」
- 冬:「たき火」「雪」
高齢者の方の歌の会の進め方や、曲のえらび方は、こちらの記事にもまとめています。高齢者施設・デイサービスの歌の会。みんなで歌いやすい童謡・唱歌のえらび方と進め方
ご家族といっしょに行うとき
おうちで、ご家族といっしょに口の体操をするときも、考え方は同じです。
- テレビや音楽を流しながら、気軽に行う
- いっしょに同じ動きをして、楽しむ
- 「やらなきゃ」と、むりにすすめない
歌が好きな方なら、好きな歌のメロディーに合わせて「ラ」で歌うだけでも、楽しい時間になります。ようすが気になるときは、かかりつけのお医者さんや、歯科の先生に相談してみてください。
まとめ
- 口腔体操は、歌う前に口を動かす準備として、楽しく行うもの
- 座ったまま、らくな姿勢で、できる範囲でゆっくり動かす
- パタカラ体操は、「パ」「タ」「カ」「ラ」をひとつずつ、なれたらつなげて言う
- 歌のメロディーに合わせて「ラ」や「パ」だけで歌うと、歌の時間につながる
- くちびる・舌・ほおを、やさしくほぐしてからはじめる
- むせる、飲みこみにくいなど気になるときは、お医者さんや歯科、言語聴覚士などの専門職に相談する
口の準備がととのうと、歌の時間をより楽しめることがあります。歌をもっと続けてみたい方は、近くの歌の教室もさがしてみてください。歌の教室さがし
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