歌う前の準備運動。体と顔をほぐす、やさしいストレッチ
「歌いはじめると、すぐに肩に力が入ってしまう」 「声がかたい感じがして、のびのび歌えない」
こんなふうに感じたことはありませんか。歌は、のどだけで歌うものではありません。体ぜんたいをつかって声を出しています。そのため、体がかたいままだと、声もかたくなりやすいのです。
スポーツの前に準備運動をするように、歌う前にも、体をほぐす時間があると、声が出しやすくなることが多いです。
わたしは、息子といっしょに、たくさんの歌のコンクールに出てきました。会場のひかえ室では、肩をまわしたり、顔をほぐしたりしている子や大人の方を、よく見かけます。歌う前の準備は、上手な人ほど大切にしているように感じます。
この記事では、歌う前にできる、やさしい準備運動をまとめました。お子様にも大人の方にもできるものばかりです。家での練習の前や、本番の前に、ためしてみてください。
なぜ歌う前に体をほぐすの?
体のかたさは、声に出やすい
肩や首に力が入っていると、のどのまわりもかたくなりやすくなります。すると、声がつまったような感じになったり、高い声が出にくくなったりすることがあります。
また、背中や胸がかたいと、息をたっぷりすいにくくなります。息は声のもとなので、息がすいにくいと、声も小さくなりがちです。
気持ちもほぐれる
体を動かすと、気持ちも少しずつほぐれていきます。とくに本番の前は、緊張で体がかたまりやすいものです。ゆっくり体をのばすだけでも、「よし、歌おう」という気持ちになりやすくなります。
「声を出す前のあいさつ」と考える
準備運動は、きびしいトレーニングではありません。体と声に「これから歌うよ」とあいさつするような時間です。5分くらいでじゅうぶんなので、気楽にはじめてみてください。
はじめる前に気をつけたいこと
- いたいと感じるところまで、のばさない
- 反動をつけず、ゆっくり動かす
- 息をとめずに、ふつうに息をしながら行う
- けがをしているところや、いたいところは動かさない
- 小さなお子様は、お父様・お母様がいっしょにやってみせる
ストレッチは「気持ちいい」と感じるくらいが目安です。がんばりすぎると、かえって体に力が入ってしまいます。体のことで心配があるときは、むりをせず、お医者さんに相談してください。
体をほぐす準備運動
1 まっすぐ立って、深呼吸
まずは、足を肩はばくらいに開いて、まっすぐ立ちます。ひざは、ピンとのばしきらず、少しゆるめておきます。
その姿勢で、鼻からゆっくり息をすって、口からゆっくりはきます。これを3回ほどくりかえします。息をはくときに、体の力がすっとぬけていくイメージをもつと、リラックスしやすくなります。
2 肩を上げて、ストンと下ろす
息をすいながら、両方の肩を耳に近づけるように、ぐっと上げます。2〜3秒そのままにして、息をはきながら、ストンと肩を下ろします。
これを3回くりかえします。力を入れたあとにぬくと、「力がぬけた感じ」がわかりやすくなります。歌っているときに肩が上がってしまう方に、とくにおすすめです。
3 肩をゆっくりまわす
肩を前から後ろへ、大きな円をかくように、ゆっくり5回まわします。そのあと、後ろから前へも5回まわします。
お子様には「肩で大きなまるをかいてみよう」と声をかけると、楽しくできます。
4 首をゆっくりたおす
首は、とてもデリケートなところです。ぐるぐるまわすのではなく、ゆっくりたおすだけにしましょう。
- 右の耳を右の肩に近づけるように、首をたおす(5秒)
- 左も同じようにたおす(5秒)
- あごを少し引いて、下を向く(5秒)
上を向いて首を大きく後ろにそらすのは、体に負担がかかることがあるので、ここでは行いません。
5 体の横をのばす
両手を頭の上でくんで、体を右へゆっくりたおします。体の左がわがのびるのを感じたら、5秒ほどそのままにします。左も同じようにします。
体の横がのびると、息をすったときに、あばら骨のまわりがひろがりやすくなります。
6 背中をまるめて、のばす
両手を前でくんで、背中をまるめるように、手を前へおし出します。背中がのびるのを感じたら、5秒そのままにします。
次に、両手を後ろでくんで、胸を少しひらきます。背中がまるくなりがちな方は、胸がひらくと息がすいやすくなることがあります。
7 体をゆらして、力をぬく
さいごに、その場で体を左右に小さくゆらしたり、手首や足首をぶらぶらさせたりします。体のどこにも力が入っていない状態をつくるイメージです。
小さなお子様は、「タコさんみたいに、ふにゃふにゃになろう」と言うと、よろこんで体をゆらしてくれることが多いです。
顔と口のまわりをほぐす準備運動
声は、口や顔のまわりでもひびきます。顔がかたいと、口が開きにくくなり、ことばもはっきりしにくくなります。
1 ほっぺを手でまるくなでる
両手のひらを、ほっぺにあてて、ゆっくりまるをかくようになでます。力は入れず、あたためるような気持ちで行います。
2 顔をぎゅっ、ぱっ
顔のまんなかに、ぎゅっとパーツを集めるように、目も口もとじます。そのあと、ぱっと目と口を大きく開きます。これを3回くりかえします。
お子様といっしょにやると、おたがいの顔がおもしろくて、自然と笑顔になります。笑うと顔の力もぬけるので、それもよい準備になります。
3 口を「あ・い・う・え・お」の形に動かす
声は出さずに、口だけを「あ・い・う・え・お」の形に大きく動かします。ゆっくり2回行いましょう。
- あ たてに大きく開く
- い 口を横にひく
- う くちびるを前につき出す
- え 口を横にひらきながら、少し開ける
- お くちびるをまるくする
4 舌をぐるりとまわす
口をとじたまま、舌で歯ぐきの外がわをなぞるように、ぐるりとまわします。右まわりを3回、左まわりを3回。舌がほぐれると、歌詞がはっきり言いやすくなります。
5 くちびるをぶるぶるふるわせる
くちびるをかるくとじて、息をはきながら「ぶるるる」とふるわせます。うまくできないときは、両手の指で、ほっぺを少しもち上げるようにするとやりやすくなります。
これは、くちびるの力をぬく練習にもなります。むずかしいときは、むりにやらなくてだいじょうぶです。
6 あくびの口をつくる
口を大きく開けて、あくびをするときのような形にします。のどのおくがひろがる感じがわかるかもしれません。何度か、ゆっくりあくびのまねをしてみてください。
体と顔がほぐれたら、声を出してみる
準備運動がおわったら、いきなり大きな声で歌うのではなく、やさしい声からはじめましょう。
- 口をとじて「んー」とハミングする
- 小さめの声で、低い音から高い音へ「あー」とすべらせる
- 好きな歌を、いつもより小さな声で1回歌う
声の出し方の練習は、こちらの記事でくわしく紹介しています。おうちでできる子どもの発声練習。5分でできる遊びのような練習法
子どもと大人で気をつけたいこと
お子様の場合
小さなお子様は、長い準備運動にあきてしまうことがあります。3つか4つにしぼって、あそびのように楽しく行うのがおすすめです。
- 「肩でまるをかこう」
- 「ふにゃふにゃタコさん」
- 「ぎゅっ、ぱっの顔」
こんなふうに名前をつけると、お子様のほうから「やりたい」と言ってくれることもあります。体がやわらかいお子様でも、むりにのばしすぎないよう、お父様・お母様が見てあげてください。
大人・シニアの方の場合
大人の方は、仕事や家のことで、肩や首がこっていることが多いです。歌う前に体をほぐすだけで、「声が出しやすくなった」と感じる方も少なくありません。
シニアの方は、立ったままがつらいときは、いすにすわって行ってもだいじょうぶです。肩まわしや首たおし、顔のストレッチは、すわったままでもできます。ふらつきが心配なときは、かならず何かにつかまって行いましょう。
本番の前の準備運動
コンクールや発表会の本番の前は、会場で大きく体を動かせないこともあります。そんなときは、小さな動きでもだいじょうぶです。
- 肩を上げて、ストンと下ろす
- 手首をぶらぶらさせる
- 声を出さずに、口を「あいうえお」と動かす
- ゆっくり息をはく
緊張しているときは、とくに「息をはく」ことを意識すると、気持ちがおちつきやすくなります。
オンラインの動画で歌をとる場合は、とる前に家でゆっくり準備運動ができます。これも、動画での応募のよいところの一つです。
のどを大切にするために
準備運動をしても、のどがいたいときや、声がかすれているときは、むりに歌わないでください。そんな日は、声を休めることも大切な練習です。
- 歌う前後に、水を少しずつのむ
- 部屋がかわいているときは、加湿する
- 大きな声で長い時間歌いつづけない
いたみやかすれが何日も続くときは、耳鼻科などのお医者さんに相談しましょう。のどのいたわり方は、こちらの記事にもまとめています。子どもののどを守るためにできること。歌をがんばる子の毎日のケア
まとめ
- 歌う前に体をほぐすと、声が出しやすくなることが多い
- ストレッチは「気持ちいい」くらいで、いたいところまでのばさない
- 肩、首、体の横、背中をゆっくりほぐす
- 顔と口のまわり、舌、くちびるもほぐしておく
- ほぐれたら、ハミングや小さな声からはじめる
- お子様はあそびのように、シニアの方はすわってでもよい
- のどのいたみやかすれが続くときは、お医者さんに相談する
歌う前の5分の準備運動は、お子様にも大人の方にも、声をのびのびと出すための大切な時間です。ほぐれた体でとった歌の動画を、だれかに聞いてもらいたくなったら、こどもの歌声グランプリものぞいてみてください。オンラインの動画審査だけで出られて、幼児からシニア(65歳以上)までの8部門があり、ジャンルは自由です。講評とデジタル賞状がとどくので、練習をつづける楽しみの一つになると思います。こどもの歌声グランプリ