入れ歯でも歌を楽しむ。シニアの方の発音と口の工夫
「入れ歯にしてから、歌うとことばがはっきりしない気がする」 「大きく口を開けると、入れ歯が動きそうで気になる」
歌が好きなシニアの方の中には、入れ歯にしてから歌いにくさを感じている方もいらっしゃると思います。歌の会やカラオケで、思いきり歌えないのは、さびしいものですよね。
わたしは息子といっしょに、たくさんのコンクールに出てきました。
この記事では、入れ歯で歌いにくいと感じている方に向けて、歌の発音と口の工夫をまとめます。入れ歯で歌うときに気になりやすいこと、口や舌のやさしい準備、発音をはっきりさせる工夫、そして歯医者さんへの相談のしかたについてお話しします。
入れ歯でも、歌を楽しんでいる方はたくさんいます。あせらず、ご自分の口に合った歌い方を見つけていきましょう。
入れ歯で歌うときに、気になりやすいこと
発音がはっきりしにくい
入れ歯にすると、舌が歯や上あごにふれる感じがかわることがあります。そのため、話すときや歌うときに、ことばがはっきりしにくいと感じる方もいます。
とくに、次のような音が気になりやすいといわれています。
- サ行(さ・し・す・せ・そ)
- タ行(た・ち・つ・て・と)
- ラ行(ら・り・る・れ・ろ)
これらの音は、舌の先を歯のうらや上あごに近づけて出すため、入れ歯の形や厚みのえいきょうを受けやすいことがあります。
入れ歯が動く、ずれる感じがする
歌うときは、話すときより口を大きく開けたり、ことばを長くのばしたりします。そのときに、入れ歯が動く、ずれる、と感じて、口を思いきり動かせなくなる方もいます。
口のまわりがつかれやすい
入れ歯になれていないうちは、口のまわりの筋肉がつかれやすいこともあります。長い時間歌うと、ほおやあごがつかれたと感じるかもしれません。
気になって、声が小さくなる
「ことばがはっきりしないかも」「入れ歯がずれたらどうしよう」と気にするあまり、声が小さくなったり、歌うのをためらったりすることもあります。気持ちの面での歌いにくさも、大切に考えたいところです。
まずは歯医者さんに相談を
合っていないと感じたら、早めに相談
入れ歯が動く、痛い、話しにくい、と感じるときは、まずは歯医者さんに相談してください。入れ歯の合い方は、口の中の変化とともにかわっていくことがあるといわれています。自分で判断せず、専門の方に見てもらうことが大切です。
歌うことを伝えておく
歯医者さんに相談するときは、「歌うのが趣味で、歌うときに発音が気になる」「口を大きく開けると、ずれる感じがする」など、歌のことも具体的に伝えてみてください。どんなときにこまるのかを伝えると、相談しやすくなります。
入れ歯安定剤などを使うかどうかも、自分で決めずに、歯医者さんに相談してからにしましょう。
歌う前の、口と舌のやさしい準備
歌う前に、口のまわりや舌を軽く動かしておくと、口が動きやすくなることがあります。痛みがあるときや、入れ歯が合っていないと感じるときは、無理をせずに休んでください。
ほおと口のまわりをほぐす
- ほおを、手のひらでやさしくまるくなでる
- 口を軽くとじて、ほおをふくらませたり、すぼめたりする
- 口を「い」の形にして、そのあと「う」の形にする
ゆっくり、気持ちのよい範囲で動かしてください。
舌を動かす
- 口をとじたまま、舌で歯ぐきのまわりをなぞる
- 舌を、上あごに軽くつけてはなす
- 「ら・ら・ら」と、ゆっくり言ってみる
舌がやわらかく動くと、ことばを言いやすくなります。
口をとじてハミング
口をとじて「んー」とハミングすると、口を大きく開けずに声を出す準備ができます。入れ歯が気になる方でも、はじめやすい練習です。
発音をはっきりさせる工夫
口を「大きく」より「ていねいに」
歌の練習では「口を大きく開けて」と言われることがありますが、入れ歯が気になる方は、無理に大きく開けなくてもだいじょうぶです。大きく開けることよりも、ひとつひとつのことばを、ていねいに言うことを意識してみてください。
母音をはっきりさせる
日本語のことばは、「あ・い・う・え・お」の母音が中心になっています。母音がはっきりしていると、子音が少しあいまいでも、ことばが伝わりやすくなります。
- 歌詞を、母音だけで歌ってみる(「さくら」なら「あうあ」)
- そのあとで、ふつうに歌詞で歌う
母音で歌ってから歌詞にもどると、口の形をととのえやすくなります。
気になる音を、ゆっくり練習する
サ行やタ行など、気になる音があるときは、その音が入ったことばを、ゆっくり言う練習をしてみましょう。
- 「さかな」「すずめ」「せなか」
- 「たいこ」「つくえ」「とけい」
- 「りんご」「ろうそく」「れんげ」
はじめはゆっくり、なれてきたら少しずつ歌のテンポに近づけていきます。滑舌の練習については、こちらの記事でもまとめています。歌の滑舌をよくする練習。ことばがはっきり伝わる歌い方
ことばの最初を、少しだけ意識する
歌詞のことばの最初の音を、少しだけ意識して歌うと、ことばが聞きとりやすくなります。強く言いすぎると、のどや口に力が入ってしまうので、「少しだけ」がポイントです。
歌い方の工夫
テンポがゆったりした歌をえらぶ
ことばが速く続く歌は、口の動きがいそがしくなります。はじめは、テンポがゆったりした歌をえらぶと、ことばをていねいに歌いやすくなります。むかしからよく知っている唱歌や、ゆっくりした歌謡曲などは、歌いやすいことが多いです。
歌いやすい高さにする
高すぎる音や低すぎる音を出そうとすると、口やあごに力が入りやすくなります。カラオケなら、キーを下げたり上げたりして、らくに歌える高さにしてみてください。
こまめに休む
口のまわりがつかれたと感じたら、休けいしましょう。水を少しのんで、口の中をうるおすのもよいと思います。口の中がかわいていると、入れ歯がなじみにくく感じることもあります。
入れ歯になれていく時期のすごし方
新しい入れ歯にしたばかりのころや、入れ歯をなおしてもらったあとは、口の中の感じがいつもとちがうことがあります。そんな時期は、歌い方も少しやさしくしてみましょう。
はじめは、話すことからなれていく
いきなり歌うより、まずはふだんの会話や、声に出して本を読むことから、口をならしていくのもよい方法です。新聞のみだしや、絵本の文章をゆっくり読んでみると、どの音が言いにくいのかに気づきやすくなります。
短い歌から、少しずつ
なれるまでは、短い歌や、知っている歌の一部分だけを歌ってみてください。口がつかれる前にやめるようにすると、無理なくつづけられます。
歌ったあとの口のようすを見る
歌ったあとに、歯ぐきが痛い、口の中がこすれている、といった感じがあるときは、無理に歌いつづけず、歯医者さんに相談してください。気になることをメモしておくと、相談するときに伝えやすくなります。
歌っているところを録音する
スマホなどで、ご自分の歌を録音して聞いてみると、どのことばが聞きとりにくいのかがわかりやすくなります。はじめは気になるところが多くても、だいじょうぶです。なれてきたころにもう一度録音して聞きくらべると、ご自分の変化に気づけることもあります。
口の中をきれいにたもつ
歌う前に口をゆすいだり、入れ歯の手入れをしたりして、口の中をさっぱりさせておくと、気持ちよく歌いやすくなります。手入れのしかたは、歯医者さんに教えてもらった方法を守ってください。
気持ちの面での工夫
完ぺきな発音をめざさない
ことばが少しあいまいになっても、気持ちをこめて歌えば、歌は伝わります。発音を気にしすぎて歌えなくなるより、楽しく歌うことを大切にしてください。
歌の会の方や先生に伝えておく
歌の会や教室に通っている方は、先生やなかまの方に「入れ歯になれていないので、ゆっくり練習したい」と伝えておくと、安心して参加しやすくなります。先生によっては、口の動かし方をいっしょに考えてくれることもあります。
シニアの方の発声練習については、こちらの記事でもしょうかいしています。シニアのボイトレ。声の若さをたもつ、やさしい発声練習
まとめ
- 入れ歯にすると、サ行・タ行・ラ行などが言いにくく感じることがある
- 入れ歯が動く、痛い、話しにくいと感じたら、歯医者さんに相談する
- 歯医者さんには、歌うときにこまっていることも具体的に伝える
- 歌う前に、ほおや舌をやさしく動かしておく
- 口を大きく開けるより、ことばをていねいに言うことを意識する
- 母音をはっきりさせ、気になる音はゆっくり練習する
- ゆったりした歌、らくな高さをえらび、つかれたら休む
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