シニアのボイトレ。声の若さをたもつ、やさしい発声練習
「さいきん、声が出にくくなった気がする」 「話していると、声がかすれたり、小さくなったりする」 「年をとっても、楽しく歌いつづけたい」
年をかさねるにつれて、こんなふうに感じる方は少なくないと思います。声は、毎日つかうものだからこそ、少しの変化にも気づきやすいものですよね。
わたしは、息子といっしょにたくさんの歌のコンクールに出てきました。会場では、お子様だけでなく、60代、70代、80代になっても、元気に歌っている方にたくさん出会ってきました。どの方も、声を出すことを楽しんでいる姿が、とてもすてきでした。
この記事では、シニアの方がボイトレをするときに大切にしたいこと、家でできるやさしい発声練習、むりをしないための注意をまとめました。むずかしいことはしません。毎日の中で、少しずつ声を出す時間をつくってみませんか。
なお、声の出にくさの原因は、人によってさまざまです。この記事でしょうかいする練習は、体調のよいときに、むりのないはんいで行ってください。
シニアのボイトレで大切にしたいこと
「たくさん」より「毎日少し」
ボイトレというと、大きな声を長い時間出すようなイメージがあるかもしれません。でも、シニアの方にとって大切なのは、たくさん練習することよりも、毎日少しずつ声を出すことです。
1日5分から10分くらいでも、つづけることで、声を出すことになれていきます。
体ぜんたいをつかう
声は、のどだけで出すものではありません。姿勢、息のつかい方、顔や口のまわりのうごきなど、体ぜんたいがかかわっています。のどに力を入れるのではなく、体をほぐして、らくに声を出すことを意識してみてください。
楽しむことがいちばん
「うまく歌わなければ」と思うと、体に力が入ってしまいます。好きな歌を口ずさむ、昔よく歌った歌を思い出して歌う。そんな楽しい時間が、そのまま声のトレーニングになります。
練習の前に 体をほぐす
声を出す前に、まずは体をやさしくほぐしましょう。いすにすわったままでもできます。
肩と首をほぐす
- 肩をゆっくり上げて、ストンと下ろす(3回)
- 肩を前から後ろへ、ゆっくり回す(3回)
- 首をゆっくり左右にかたむける(痛みがない範囲で)
首を大きくぐるぐる回すのは、さけたほうがよいでしょう。ゆっくり、気持ちのよいところまでにしてください。
顔と口のまわりをほぐす
- 両手で、ほおをやさしくマッサージする
- 口を大きく「あ・い・う・え・お」と動かす(声は出さなくてよい)
- くちびるを、ブルブルとふるわせる
顔や口のまわりがやわらかくなると、ことばがはっきりしやすくなります。
姿勢をととのえる
- いすに、少し浅めにすわる
- 背中を、すっとのばす
- 肩の力をぬいて、あごを軽く引く
立って練習する場合は、足を肩はばくらいに開いて、ひざを少しゆるめると、体がらくになります。ふらつきが気になる方は、いすにすわって行ってください。
家でできる、やさしい発声練習
1.ゆっくり息をはく
まずは、息のつかい方から練習します。
- 鼻から、ゆっくり息をすう
- 口から「スー」と、細く長く息をはく
- これを3回から5回くり返す
息をすうときに、肩が上がらないように気をつけましょう。おなかのまわりが、ふわっとふくらむようなイメージでかまいません。苦しくなるまでがんばらず、らくに続けられる長さで大丈夫です。
2.ハミング
口をとじて、「んー」と声を出します。
- 自分の話し声くらいの、らくな高さで
- 鼻やくちびるのあたりが、少しふるえる感じをさがす
- 10秒くらいを、3回ほど
ハミングは、のどに負担をかけにくく、声を出す準備にぴったりです。大きな声を出しにくいおうちでも、やりやすい練習です。
3.「あー」と声をのばす
ハミングになれたら、口を開けて「あー」と声をのばしてみましょう。
- らくに出せる高さで
- 小さめの声からはじめる
- 声がゆれても気にしない
1回ごとに、ひと息ついてから次の声を出すようにしてください。
4.声の高さを少しうごかす
「あー」の声を、低いところから少し高いところへ、すべり台のように、なめらかにうごかしてみます。むりに高い声を出そうとしなくて大丈夫です。らくに出せるはんいの中で、声をうごかすことが大切です。
5.ことばをはっきり言う
- 「パ・タ・カ・ラ」を、ゆっくりはっきり言う
- なれてきたら、少しずつ速くする
- 早口ことばを、ゆっくり読んでみる
口や舌をよくうごかすことは、歌だけでなく、ふだんの会話にも役立ちます。
6.好きな歌を1曲歌う
さいごに、好きな歌を1曲、楽しく歌いましょう。昔から知っている歌や、季節の歌などがおすすめです。季節の歌については、こちらの記事でもしょうかいしています。シニアに人気の季節の歌。春夏秋冬、みんなで歌いたい日本の歌と歌い方のコツ
むりをしないための注意
のどに痛みや違和感があるときはお休み
のどが痛いとき、かすれているとき、せきが出るときは、声を出す練習はお休みしましょう。むりに声を出すと、のどに負担がかかってしまうことがあります。
痛みやかすれが何日もつづくとき、声の出にくさが急にかわったと感じるときは、自分で判断せずに、耳鼻科などのお医者さんに相談してください。
体調のよいときに
- 食後すぐや、つかれている日はさける
- 血圧が気になる方や、通院中の方は、かかりつけのお医者さんに相談してからはじめる
- 息を長くはく練習で、くらっとしたらすぐにやめる
ふだんの体調に合わせて、むりのないはんいで行うことが、なによりも大切です。
のどをうるおす
練習の前後には、水やぬるめのお茶を少しずつのみましょう。部屋が乾燥していると、のどがつかれやすくなります。加湿器をつかったり、ぬれタオルを干したりするのもよいと思います。
ふだんの生活でできること
ボイトレの時間だけでなく、ふだんの生活の中でも、声を出す機会をふやしてみましょう。
- 新聞や本を、声に出して読む
- 家族やお友だちと、電話でおしゃべりする
- 近くの人に、自分から「おはようございます」とあいさつする
- テレビの歌番組に合わせて、口ずさむ
ひとりでいる時間が長いと、声を出す機会がへってしまいがちです。少しでも声を出す時間をつくることが、声をたもつことにつながっていきます。
年をかさねて声が出にくくなったと感じるときのことは、こちらの記事でもくわしくまとめています。年をとって声が出にくいと感じたら。歌がすきな方のための、やさしい発声練習
教室で習ってみるのもおすすめ
家での練習になれてきたら、歌の教室で習ってみるのもよいと思います。
教室で習うよさ
- 先生が、いまの声に合わせた練習を教えてくれる
- まちがったくせに、早めに気づける
- 同じように歌を楽しむ仲間ができる
- 通うこと自体が、外に出るきっかけになる
教室えらびで見ておきたいこと
- シニアの生徒さんを教えた経験があるか
- 体調に合わせて、ペースを調整してくれるか
- 通いやすい場所か、オンラインでも受けられるか
- 体験レッスンがあるか
レッスンの回数や料金は、教室によってちがいます。いくつかの教室で体験レッスンを受けて、「ここなら楽しく通えそう」と思えるところをえらんでみてください。
練習をつづけるためのちょっとした工夫
時間を決めておく
「朝ごはんのあと」「お昼の散歩から帰ったら」など、練習する時間をだいたい決めておくと、毎日の習慣にしやすくなります。歯みがきのように、生活の流れの中に入れてしまうのがコツです。
記録をつける
カレンダーに、練習した日に丸をつけるだけでもかまいません。丸がならんでいくと、「今日もやってみよう」という気持ちになりやすくなります。ときどき自分の歌を録音しておくと、あとで聞きくらべる楽しみもできます。
仲間といっしょに
ひとりでつづけるのがむずかしいときは、家族やお友だちをさそってみるのもよいと思います。いっしょに歌う人がいると、練習の時間がぐっと楽しくなります。地域の合唱の集まりや、歌声喫茶のような場所に出かけてみるのも、一つの方法です。
できない日があっても気にしない
体調がすぐれない日や、いそがしい日は、お休みしてもだいじょうぶです。何日かあいても、また気が向いたときにはじめればよいのです。「つづけなければ」と思いすぎず、気楽に取り組んでみてください。
まとめ
- シニアのボイトレは「たくさん」より「毎日少し」が大切
- 声を出す前に、肩や首、顔のまわりをやさしくほぐす
- 息をはく、ハミング、「あー」と声をのばす、などのやさしい練習からはじめる
- のどの痛みやかすれがつづくときは、耳鼻科などのお医者さんに相談する
- 体調がよいときに、むりのないはんいで行う
- ふだんの生活の中でも、声を出す機会をふやす
声は、何歳になってもつかいつづけることで、のびのびと出しやすくなっていきます。先生といっしょに練習してみたい方は、お近くの教室やオンラインの教室をさがしてみてください。歌の教室さがし練習してきた歌を、だれかに聞いてもらいたくなったら、こどもの歌声グランプリもおすすめです。オンラインの動画審査だけで出られて、幼児からシニア(65歳以上)までの8部門があり、ジャンルは自由です。講評とデジタル賞状がとどくので、歌をつづける楽しみの一つになると思います。こどもの歌声グランプリ