歌の滑舌をよくする練習。ことばがはっきり伝わる歌い方
「歌っていると、ことばがもごもごしてしまう」 「何を歌っているのか、聞きとりにくいと言われた」
歌は、メロディだけでなく、ことばを伝えるものでもあります。きれいな声で歌えていても、ことばが聞きとりにくいと、歌の気持ちが伝わりにくくなってしまいます。
わたしは、息子といっしょに、たくさんの歌のコンクールに出てきました。いろいろな方の歌を聞く中で、ことばがはっきり聞こえる歌は、それだけで心にとどきやすいと感じてきました。とくに童謡や日本の歌では、ことばを大切に歌うことが、よく話題になります。
この記事では、歌の滑舌(かつぜつ)をよくするための練習を、お子様にも大人の方にもわかるように、やさしくまとめます。滑舌とは、ことばをはっきり言えるかどうか、ということです。
歌の滑舌って、どういうこと?
ことばが、はっきり聞こえること
歌の滑舌がよい、というのは、歌っていることばが、聞いている人にはっきり伝わることです。早口で言えることではなく、ひとつひとつの音が、聞きとりやすいことが大切です。
話すときと、歌うときのちがい
ふだん話すときは、はっきり言えているのに、歌うとことばがもごもごする、という方は多いです。
- 歌は、ひとつの音を長くのばすことが多い
- 高い音や低い音で、口の形がかわりやすい
- メロディに気をとられて、ことばへの意識がうすくなる
こうしたことから、歌では、話すとき以上に、ことばを意識することが大切になります。
滑舌がわるくなりやすい原因
口があまり開いていない
口をあまり開けずに歌うと、ことばがこもって聞こえやすくなります。とくに「あ」「お」の音で、口が小さいままになっていないか、鏡で見てみましょう。
舌やくちびるに力が入っている
緊張したり、高い音でがんばったりすると、舌やくちびるに力が入ります。力が入ると、動きがかたくなり、ことばがはっきりしにくくなります。
母音と子音が、ぼやけている
日本語の音は、多くが「子音」と「母音」でできています。たとえば「か」は、「k」という子音と、「a」という母音が合わさった音です。
- 子音がよわいと、ことばのはじまりがぼやける
- 母音がくずれると、何の音かわかりにくくなる
歌の滑舌をよくするには、この2つを、どちらも大切にすることがポイントです。
息がたりない
フレーズのさいごで息がなくなると、ことばのおわりが、消えるように聞こえることがあります。息のつかい方は、こちらの記事にまとめています。歌の腹式呼吸のやり方。子どもにも大人にもわかる、やさしい練習
歌う前の、口と舌の準備運動
滑舌の練習の前に、口のまわりをほぐしておきましょう。1〜2分でじゅうぶんです。
口の体操
- 口を大きく「あ」と開けて、「い」と横に引く
- 「う」と、くちびるを前につき出す
- 「え」「お」と、ゆっくり口の形をかえる
- ほっぺたを、ふくらませたり、へこませたりする
舌の体操
- 舌を前にべーっと出して、もどす
- 舌の先で、上のくちびる、下のくちびるを、ぐるっとなめるように回す
- 舌の先で、ほっぺたの内側を、右、左とおす
- 「ラララ」「タタタ」と、舌の先をかるく動かす
くちびるの体操
- 「パパパ」「バババ」「マママ」と、くちびるをはじくように言う
- くちびるを「ぶるぶる」とふるわせる
家でできる、滑舌の練習
1. 母音だけで歌う
歌詞を、母音だけにして歌ってみます。たとえば「さくら」なら「あうあ」になります。
母音だけで歌うと、口の形がかわるところがよくわかります。「あ」「い」「う」「え」「お」の口の形が、はっきりかわっているか、鏡を見ながらたしかめましょう。そのあと、もとの歌詞にもどして歌うと、ことばがはっきりしやすくなります。
2. ことばを、ゆっくり読む
歌う前に、歌詞を声に出して、ゆっくり読んでみましょう。
- ひとつひとつの音を、ていねいに言う
- ことばの区切りを、たしかめる
- 意味がわかりにくいことばは、しらべておく
ことばの意味がわかると、どこを大切に歌えばよいかも見えてきます。歌詞をおぼえるコツについては、こちらの記事でくわしく書いています。子どもが歌詞と曲を早くおぼえるコツ。暗譜がにがてな子も楽しくできる6つの方法
3. リズムにのせて読む
歌詞を、曲のリズムにのせて、メロディをつけずに読んでみます。手拍子をしながら読むと、リズムとことばの関係がわかりやすくなります。
メロディがないぶん、ことばだけに気持ちを向けることができます。
4. 早口ことばを、ゆっくり言う
早口ことばは、滑舌の練習によくつかわれます。ただし、はじめから速く言う必要はありません。
- 「なまむぎ、なまごめ、なまたまご」
- 「あかまきがみ、あおまきがみ、きまきがみ」
- 「となりのきゃくは、よくかきくうきゃくだ」
まずは、ゆっくり、ひとつひとつの音をはっきり言います。正しく言えるようになったら、少しずつ速くしていきましょう。速さより、正しさを大切にしてください。
5. 子音を、少しだけ早めに
歌では、ことばのはじまりの子音を、音の頭より、ほんの少しだけ早めに出すと、ことばがはっきり聞こえやすいと言われます。
たとえば「かえる」の「か」なら、「k」の音を、メロディの音がはじまる少し前に出して、「a」の母音を音にのせるイメージです。むずかしく感じたら、まずは「ことばのはじまりを、はっきり」と意識するだけでもだいじょうぶです。
6. のばす音は、母音をかえない
「は〜な〜」のように、ひとつの音を長くのばすときは、とちゅうで母音がかわらないように気をつけます。「あ」でのばしているのに、とちゅうで「お」のような音になってしまうことがあります。
のばす音のさいごまで、同じ口の形をたもつようにしましょう。
お子様といっしょにできる、あそびの練習
動物のまねっこ
「ワンワン」「ニャーニャー」「パオーン」など、動物の鳴き声を、口を大きく動かしてまねします。お父様・お母様がやってみせると、お子様も楽しくまねしやすくなります。
早口ことば大会
かんたんな早口ことばを、家族で言ってみます。「ゆっくり、ていねいに言えた人が勝ち」というルールにすると、お子様もあせらずに取り組めます。
口パクあてっこ
声を出さずに、口の形だけで、ことばを伝えます。「りんご」「バナナ」など、何と言ったかをあてっこします。口を大きく動かさないと伝わらないので、自然と口の形を意識できます。
どのあそびも、1回5分くらいでじゅうぶんです。「楽しかったね」で終われることが、いちばん大切です。
曲で練習するときのコツ
- 聞きとりにくいところを、録音して見つける
- そのフレーズだけを、ゆっくり読んでから歌う
- ことばの意味を思いうかべながら歌う
- 口の形を、鏡やスマホの動画でたしかめる
コンクールでは、ことばが伝わるかどうかも、見られることが多いです。審査員が見ているところについては、こちらの記事にまとめています。歌のコンクール、審査員はどこを見ている?点数につながる7つのポイント
気をつけたいこと
- 口を大きく動かしすぎて、あごやほっぺたがつかれたら休む
- ことばをはっきりさせようとして、声を強くしすぎない
- 早口ことばは、まちがえても笑ってすませる
- のどのいたみや、声のかすれがあるときは、練習をお休みする
のどのいたみや、声のかすれが何日もつづくときは、耳鼻科などのお医者さんに相談してください。
ひとりで練習するのがむずかしいときは
滑舌は、自分では「はっきり言えているつもり」でも、まわりの人には聞きとりにくいことがあります。自分の声は、自分の耳には、ほかの人とはちがって聞こえるからです。
家族に歌を聞いてもらい、「どのことばが聞きとりにくかったか」を教えてもらうのも、よい方法です。それでも行きづまったときは、歌の先生にみてもらうのもひとつの方法です。先生は、口の形や舌の動きなど、自分では気づきにくいくせを見つけてくれることがあります。体験レッスンのときに、「ことばがはっきり伝わるように歌いたい」と伝えてみてください。近くの教室をさがすときは、こちらのページもつかってみてください。歌の教室さがし
まとめ
- 歌の滑舌は、ことばがはっきり聞こえること。早口で言えることではない
- 口が開いていない、舌やくちびるの力み、母音と子音のぼやけ、息のたりなさが原因になりやすい
- 歌う前に、口、舌、くちびるの体操をする
- 母音だけで歌う、ゆっくり読む、リズムにのせて読む、早口ことばをゆっくり言う練習が家でできる
- お子様は、動物のまねっこや口パクあてっこなど、あそびの中で
- いたみやかすれがつづくときは、耳鼻科などのお医者さんに相談する
ことばがはっきり伝わるようになると、歌にこめた気持ちも、聞いている人にとどきやすくなります。練習してきた歌を、だれかに聞いてもらいたくなったら、こどもの歌声グランプリものぞいてみてください。オンラインの動画審査だけで出られて、幼児からシニア(65歳以上)までの8部門があります。ジャンルは自由で、出場した方には講評とデジタル賞状がとどきます。こどもの歌声グランプリ