練習・発声のコツ

歌の腹式呼吸のやり方。子どもにも大人にもわかる、やさしい練習

更新日:2026年11月4日 ・ 書いた人:うみ

「歌は腹式呼吸で、と言われたけれど、どうやるのかよくわからない」 「おなかで息をするって、どういうこと?」

歌の教室やコンクールの話の中で、「腹式呼吸」ということばを聞いたことがある方は多いと思います。でも、いざやってみようとすると、どこに力を入れたらいいのか、これで合っているのか、わからなくなりますよね。

わたしは、息子といっしょに、たくさんの歌のコンクールに出てきました。その中で、先生から何度も聞いたのが「息を大切に」ということばでした。歌は、息にのせて声を出すものです。息のつかい方がかわると、声の出しやすさもかわってきます。

この記事では、歌の腹式呼吸について、できるだけむずかしいことばをつかわずにまとめます。お子様といっしょにできる練習や、大人の方がひとりでできる練習、よくあるまちがいも書いています。

腹式呼吸ってなに?

「おなかで息をする」と言われるわけ

腹式呼吸は、息をすうときに、おなかのまわりがふくらむような呼吸のしかたです。

じっさいに空気が入るのは、おなかではなく、胸の中にある肺です。肺の下には、息をすうとさがり、はくとあがる、うすい膜のようなところがあります。ここがさがると、おなかのまわりがおし出されて、ふくらんだように感じます。そのため、「おなかで息をする」と言われることが多いのです。

むずかしく考えなくてもだいじょうぶです。「息をすうと、おなかのまわりが、ふわっと広がる」。まずは、この感じをおぼえておいてください。

胸で息をするのとのちがい

もうひとつ、胸や肩をつかってする呼吸もあります。走ったあとに、肩を上下させて「はあはあ」と息をするときのような呼吸です。

胸や肩で息をすると、肩があがって、首やのどのまわりにも力が入りやすくなります。歌うときに肩やのどに力が入ると、声がかたくなったり、高い音が出しにくくなったりすることがあります。

腹式呼吸を練習するのは、肩やのどの力をぬいて、らくに声を出しやすくするためです。どちらの呼吸がよい、わるいということではなく、歌うときには、おなかのまわりをつかう呼吸が助けになることが多い、ということです。

腹式呼吸をおぼえると、歌でどんなことが助かる?

腹式呼吸になれてくると、歌の中でこんなことが助かると言われています。

  • 長いフレーズを、とちゅうで息切れせずに歌いやすくなる
  • 声が安定して、ふるえにくくなる
  • 肩や首に力が入りにくくなる
  • 小さな声でも、ふわっとした声を出しやすくなる
  • 息つぎが、あわてずにできるようになる

ただし、腹式呼吸ができたら、すぐに歌が上手になる、というものではありません。歌は、姿勢、口の形、ことば、音程など、いろいろなことが合わさってできています。腹式呼吸は、その土台のひとつと考えておくとよいと思います。

まずは、ねころんでたしかめよう

腹式呼吸の感じをつかむには、あおむけにねころぶのがいちばんわかりやすい方法です。ねころぶと、肩に力が入りにくく、自然とおなかのまわりがうごきやすくなります。

やり方

  1. あおむけにねころび、ひざを軽く立てる
  2. おなかの上に、両手をそっとのせる
  3. 口から、ゆっくり息を全部はく
  4. 鼻から、しずかに息をすう
  5. おなかの手が、ふわっと持ちあがるのをたしかめる
  6. また口から、ゆっくり息をはく。手がしずかにさがっていく

これを、3回から5回ほどくりかえしてみてください。

うまくいかないときは

おなかがうごく感じがわからないときは、おなかの上に、うすい本やぬいぐるみをのせてみてください。息をすうと本が持ちあがり、はくとさがる。目で見てわかるので、お子様にもわかりやすい方法です。

息を思いきりすいこむ必要はありません。「たくさんすわなきゃ」と思うと、かえって胸や肩に力が入ってしまいます。はく息をていねいにすると、すう息は自然に入ってきます。

立ってできる腹式呼吸の練習

ねころんで感じがつかめたら、次は立って練習してみましょう。歌うときと同じ姿勢で練習することが大切です。

姿勢をととのえる

  • 足を肩はばくらいに開いて立つ
  • ひざは、ピンとのばさず、少しゆるめる
  • 頭の上から、糸で軽く引っぱられているようなイメージで立つ
  • 肩の力をぬいて、腕はだらんと下ろす

肩に力が入っているときは、一度ぎゅっと肩をあげて、ストンと落としてみてください。それだけで、力がぬけやすくなります。

練習1 ゆっくり「スー」とはく

  1. 口から息を全部はく
  2. 鼻から、しずかに息をすう。おなかのまわりや、わき腹、背中のほうまで、ふわっと広がるのを感じる
  3. 歯を軽くあわせて、「スー」と細く長く息をはく
  4. 息がなくなる前に、むりせずやめる

はじめは5秒くらいからで、じゅうぶんです。なれてきたら、少しずつ長くしていきます。ただし、時間をのばすことだけを目標にしないでください。最後まで同じ強さで、しずかに息が出ているかを大切にします。

練習2 「スッ、スッ、スッ」と短くはく

犬が「ハッハッ」と息をするように、「スッ、スッ、スッ」と短く息をはいてみます。おなかのまわりが、ぴょこぴょことうごくのを、手をあててたしかめてください。

この練習は、歌の中の短い音や、はっきりした音を出すときの助けになると言われています。

練習3 息に声をのせる

「スー」とはいていた息を、そのまま「ふー」「はー」と、やわらかい声にかえてみます。息がとぎれないまま、声が出せたら上手です。

声を出す練習は、のどに力が入らない、らくな高さでおこないます。おうちでできる発声練習は、こちらの記事でもくわしく紹介しています。おうちでできる子どもの発声練習。5分でできる遊びのような練習法

お子様といっしょにできる、あそびの練習

小さなお子様に「腹式呼吸をしてね」と言っても、なかなかつたわりません。あそびの中で、自然に息のつかい方を知っていけるとよいと思います。

ティッシュふき

ティッシュを1枚、顔の前でぶらさげて、「ふーっ」と息をはきます。ティッシュがゆれつづけるように、長くはけるかな、とあそびます。

ストローでぶくぶく

コップに少し水を入れて、ストローで「ぶくぶく」と息をはきます。あわが同じ大きさで長くつづくように、ゆっくりはいてみます。水をすいこまないように、お父様・お母様がそばで見ていてください。

風船をふくらませるまね

本物の風船ではなく、「おなかの中に風船があるよ」とイメージします。息をすうと風船がふくらみ、はくとしぼむ。手をおなかにあてて、いっしょにやってみると楽しくできます。

ろうそくの火をふくまね

指を1本立てて、ろうそくに見立てます。「火が消えないように、そーっと」「今度は、ふっと消してみよう」と、息の強さをかえてあそびます。

どのあそびも、1回5分くらいでじゅうぶんです。お子様があきてきたら、そこでおしまいにしましょう。「楽しかったね」で終われることが、いちばん大切です。

よくあるまちがいと、気をつけたいこと

おなかに力を入れすぎる

「おなかをつかう」と聞いて、おなかをかたくしめてしまう方がいます。おなかをぎゅっとかためると、息がかえって出にくくなることがあります。おなかのまわりは、やわらかく、うごける状態にしておきましょう。

肩があがってしまう

息をすうときに肩があがるのは、胸や肩で息をしているサインです。鏡の前で練習すると、自分では気づきにくい肩のうごきがわかります。

たくさんすおうとしすぎる

いっぱいすおうとすると、体がかたくなります。必要な分だけ、しずかにすえればだいじょうぶです。

息を止めて、がまんする

息を長くはく練習で、苦しくなるまでがんばる必要はありません。くらっとしたり、気分がわるくなったりしたら、すぐにやめて、ふつうの呼吸にもどして休んでください。

のどがいたいのに、つづける

呼吸の練習でも、声を出す練習でも、のどにいたみやかすれがあるときはお休みしましょう。いたみやかすれが何日もつづくときは、耳鼻科などのお医者さんに相談してください。お子様ののどを守ることについては、こちらの記事にもまとめています。子どもののどを守るためにできること。歌をがんばる子の毎日のケア

毎日の練習のすすめ方

腹式呼吸は、一度で身につくものではありません。少しずつ、体がおぼえていくものです。

  • 1日5分くらいからはじめる
  • 歌の練習の前に、準備運動として取り入れる
  • 寝る前に、ねころんで深呼吸をしてみる
  • 歩きながら、「4歩ですって、8歩ではく」などとあそぶ
  • できた日は、カレンダーにしるしをつける

大人の方は、お仕事のあいまや、おふろのあとなど、生活の中で少しずつためしてみてください。お子様の場合は、お父様・お母様もいっしょにやってみると、お子様も楽しく続けやすいと思います。

家での練習時間のめやすについては、こちらの記事も参考にしてみてください。歌の習い事、家での練習は何分がいい?時間の目安と、むりなくつづけるコツ

まとめ

  • 腹式呼吸は、息をすうと、おなかのまわりがふわっと広がる呼吸のしかた
  • 肩やのどの力をぬいて、らくに歌うための土台のひとつ
  • まずはねころんで、おなかのうごきをたしかめる
  • 立ってするときは、姿勢をととのえて、「スー」とはく練習から
  • お子様は、ティッシュやストローなど、あそびの中で練習する
  • おなかに力を入れすぎない、むりにがまんしない
  • くらっとしたらすぐ休む。のどのいたみやかすれがつづくときは、耳鼻科などで相談する

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