リモート合唱のやり方。はじめてでもできる、歌の重ね録りの手順
「合唱団の練習があつまれないとき、オンラインでいっしょに歌えないかな」 「遠くに住む家族や友だちと、1曲歌ってみたい」
はなれた場所にいる人どうしでも、それぞれが自分の歌を録って、あとでひとつに重ねれば、合唱のように聞こえる作品を作ることができます。これが、リモート合唱です。歌の重ね録りとも言われます。
わたしは、息子といっしょに、たくさんの歌のコンクールに出てきました。家で歌を録ることのむずかしさと楽しさは、少しわかるつもりです。
この記事では、リモート合唱のやり方を、はじめての方でも動けるように、手順ごとにお話しします。まとめ役の方がすること、歌う人がすること、そして、ひとりで何パートも重ねるときのコツも書きました。
リモート合唱とは?
リモート合唱は、ひとりひとりが別の場所で歌を録り、それをまとめ役の人がひとつに重ねて仕上げる合唱です。
- みんなが同じ時間にあつまらなくてよい
- 遠くに住む人とも、いっしょに歌える
- 自分のペースで、何度でも録りなおせる
一方で、オンラインの通話でいっしょに歌おうとすると、音がおくれて届くため、声をそろえるのはとてもむずかしいです。そのため、リモート合唱では「同じ見本を聞きながら、それぞれが録る」という形がよく使われます。
はじめに決めておくこと
曲と、パートの分け方
まず、歌う曲を決めます。はじめてなら、テンポがあまり変わらず、長すぎない曲がおすすめです。
- 2部か3部くらいの、パートが少ない曲
- 3分から4分くらいの曲
- とちゅうで速さが大きく変わらない曲
だれがどのパートを歌うかも、先に決めておきましょう。合唱のパートについては、こちらの記事でくわしく書いています。合唱のパートのちがい。ソプラノ・アルト・テノール・バスと、自分に合うパートの見つけ方
まとめ役の人
リモート合唱では、みんなの音を集めて重ねる「まとめ役」が必要です。音や映像の編集にくわしい人がいれば、その人にお願いするとスムーズです。
しめきりと、送り方
- いつまでに録って送るか
- どうやって送るか(ファイルを送れるサービスなど)
- ファイルの名前のつけ方(たとえば「ソプラノ・山田」のように)
ファイルの名前を決めておくだけで、まとめ役の人の手間がぐっとへります。
動画にするか、音だけにするか
顔をうつした動画にするか、音だけにするかも決めておきます。動画にするなら、スマホをたてにするか、よこにするかを、みんなでそろえておきましょう。そろっていないと、ならべたときに見た目がばらばらになります。
ガイド音源を作る
ガイド音源とは
ガイド音源は、みんなが録るときに、イヤホンで聞く見本の音です。全員がこれに合わせて歌うことで、あとで重ねたときに、タイミングがそろいやすくなります。
ガイド音源には、こんな音を入れることが多いです。
- 伴奏(ピアノなど)
- テンポを知らせる「カッ、カッ」という音
- 各パートのメロディー(あると歌いやすい)
歌いだしの前に合図を入れる
曲がはじまる前に、テンポに合わせた合図の音を何回か入れておくと、歌いだしがそろいやすくなります。テンポを一定にたもつ練習については、こちらの記事も参考になると思います。メトロノームを使った歌の練習。リズムが安定するコツと、速さの決め方
パートごとのガイドを用意する
自分のパートの音がわかりにくい人のために、そのパートのメロディーを少し大きめにしたガイドを、パートごとに作っておくと親切です。
歌う人がすること
1. ガイド音源で、しっかり練習する
録る前に、ガイド音源に合わせて何度か歌ってみましょう。歌いだし、息つぎの場所、曲のおわり方を、からだにしみこませておくと、録るときにあわてません。
2. 録る場所をととのえる
- まわりの音(テレビ、エアコン、車の音など)が少ない部屋
- かべに近すぎない場所
- 動画なら、顔が明るくうつる場所
カーテンをしめたり、ふとんやクッションがある部屋で録ったりすると、音のひびきが落ちついて、重ねたときに聞きやすくなります。
3. イヤホンでガイドを聞きながら録る
ガイド音源は、かならずイヤホンで聞きながら歌います。スピーカーから流すと、ガイドの音まで録音に入ってしまい、重ねたときに音がにごってしまいます。
片方の耳だけイヤホンをすると、自分の声も聞きやすくなります。イヤホンをつけて歌うときのコツは、こちらの記事でくわしく書いています。歌の練習でイヤホン・ヘッドホンを使うコツ。音量・片耳・録音との組み合わせ方
4. 録りはじめに「手拍子」を入れる
録画や録音をはじめたら、歌う前に、ガイドの合図に合わせて1回手をたたいておきましょう。まとめ役の人が、この手拍子の音を目じるしにして、みんなのタイミングを合わせやすくなります。
5. 何回か録って、いちばんよいものを送る
1回で完ぺきに歌えなくても、だいじょうぶです。何回か録って、聞きなおして、いちばん気持ちよく歌えたものを送りましょう。
録ったあとに聞くときは、「声がしっかり入っているか」「雑音が大きすぎないか」「歌いだしがガイドとずれていないか」を見ておくと安心です。
まとめ役の人がすること
1. 音のタイミングをそろえる
集まったファイルを、音を重ねられる編集のソフトやアプリに入れます。録りはじめの手拍子の位置を目じるしにして、全員のタイミングをそろえます。
2. 音量をととのえる
人によって、録音の音量はばらばらです。ひとりの声だけが大きすぎたり、小さすぎたりしないように、パートごとのバランスを見ながら、音量をととのえます。
3. ひびきを少しだけ足す
家で録った声は、ひびきが少なく、かたく聞こえることがあります。編集のソフトやアプリでひびきを少し足すと、みんなの声がなじみやすくなります。足しすぎると、ことばが聞きとりにくくなるので、ほんの少しにしておきましょう。
4. 映像をならべる
動画にする場合は、みんなの映像をならべます。人数が多いときは、パートごとにまとめたり、曲のとちゅうで見せる人をかえたりすると、見ていて楽しい作品になります。
ひとりで重ね録りをするときのコツ
リモート合唱は、ひとりでもできます。自分で何パートも歌って重ねる「ひとり合唱」です。
いちばん下のパートか、メロディーから録る
はじめに、曲の土台になるパートを録ると、そのあとのパートが歌いやすくなります。
- メロディーから録って、ほかのパートを足していく
- いちばん低いパートから録って、上に重ねていく
どちらがやりやすいかは、曲や自分の声によってちがいます。
前に録った声を聞きながら、次のパートを録る
2つめのパートからは、ガイド音源と、前に録った自分の声を聞きながら歌います。音がとりにくいときは、自分の声を小さめにして、伴奏を大きめにすると歌いやすくなることがあります。
声の高さに、むりをしない
ひとりで何パートも歌うと、自分の声に合わない高さを歌うことになりがちです。むりに高い声や低い声を出しつづけると、のどがつかれてしまいます。高さをかえられるなら、自分の声に合わせて調整しましょう。
のどに痛みやかすれを感じたら、その日はやめて声を休めてください。何日も続くときは、耳鼻科などのお医者さんに相談してください。
はじめてのリモート合唱で、よくあるつまずき
歌いだしが、人によってずれる
ガイド音源の合図を聞きのがすと、歌いだしがずれやすくなります。合図の回数を少し多めにしたり、歌いだしの前に「さん、はい」の声を入れたりすると、そろいやすくなります。
声の大きさが、ばらばら
スマホとの距離が人によってちがうと、声の大きさもかわります。「スマホから口まで、手のひら2つ分くらい」など、めやすをみんなで決めておくと安心です。
しめきりに、まにあわない人がいる
しめきりの少し前に、「録れましたか」と声をかけるだけでも、まにあう人がふえます。まとめ役の方の負担を考えて、しめきりにはよゆうをもたせておきましょう。
作品を公開するときに気をつけたいこと
曲の権利のきまりをたしかめる
できあがった作品をネットで公開するときは、使った曲や伴奏について、公開してよいかどうかのきまりをたしかめておきましょう。きまりは、曲や公開する場所によってちがいます。
顔や名前の出し方を、みんなで決める
参加した人の中には、顔や名前を出したくない人もいます。とくにお子様が参加するときは、お父様・お母様とよく相談して決めましょう。
まとめ
- リモート合唱は、ひとりひとりが録った歌を、あとで重ねて作る合唱
- 曲、パート、まとめ役、しめきり、ファイルの名前を先に決める
- 合図の音を入れたガイド音源を作り、全員がイヤホンで聞きながら録る
- 録りはじめに手拍子を入れると、タイミングを合わせやすい
- まとめ役は、タイミング、音量、ひびき、映像の順にととのえる
- ひとりで重ね録りするときは、土台のパートから録り、むりな高さはさける
- 公開するときは、曲の権利と、顔や名前の出し方をたしかめる
家で歌を録ることになれてきたら、その歌をこどもの歌声グランプリにおくってみるのもひとつの楽しみ方です。オンラインの動画審査だけで出られて、幼児からシニア(65歳以上)までの8部門があり、ジャンルは自由です。講評とデジタル賞状がとどくので、自分の歌のよいところを知るきっかけになると思います。こどもの歌声グランプリ