メトロノームを使った歌の練習。リズムが安定するコツと、速さの決め方
「歌っているうちに、だんだん速くなってしまう」 「伴奏と合わせると、ずれてしまう」
歌の練習をしていると、こんななやみが出てくることがあります。自分では合っているつもりでも、録音して聞いてみると、テンポがゆれていることに気づく方も多いと思います。
そんなときに役立つのが、メトロノームです。メトロノームは、決まった速さで「カチ、カチ」と音を鳴らしてくれる道具です。置いて使う機械のほかに、スマホで使えるものもあります。
わたしは、息子といっしょに、たくさんのコンクールに出てきました。歌はメロディや声に目がいきやすいですが、リズムが安定すると、歌全体がぐっと聞きやすくなります。
この記事では、メトロノームを使った歌の練習にしぼって、速さの決め方、具体的な練習のしかた、お子様と使うときの工夫をまとめます。手拍子などをつかったリズム感の練習は、こちらの記事でまとめています。リズム感をよくする歌の練習。子どもも大人もできる手拍子・メトロノーム練習
メトロノームを使うと、どんなよさがある?
自分のくせに気づける
人は、歌っているうちに、知らず知らず速さがかわっていることがあります。
- 高い音や、むずかしいところで、おそくなる
- 歌いなれたところで、速くなる
- 長くのばす音を、みじかく切ってしまう
- 休符を待たずに、次を歌いはじめてしまう
メトロノームに合わせて歌うと、「どこでずれるのか」がわかりやすくなります。くせがわかれば、そこを集中して練習できます。
伴奏と合わせやすくなる
ピアノの伴奏や伴奏音源は、決まった速さで進んでいきます。ふだんからメトロノームで練習しておくと、伴奏と合わせたときに、ずれにくくなります。
練習の目安になる
「今日は、この速さで歌えた」と記録しておくと、少しずつ速さを上げていくときの目安になります。できたことが目に見えるので、練習がつづけやすくなる方もいます。
メトロノームの速さの決め方
楽譜に書いてある速さをたしかめる
楽譜のはじめに、音符と「=」と数字が書かれていることがあります。たとえば「四分音符=88」なら、1分間に四分音符を88回打つ速さです。メトロノームの数字を88に合わせれば、その曲の速さになります。
数字ではなく、「Andante(歩くような速さで)」などのことばだけが書かれているときは、先生に目安を聞いてみましょう。伴奏音源があるときは、音源に合わせて手をたたき、近い数字をさがす方法もあります。
はじめは、ゆっくりから
メトロノームの練習で、いちばん大切なのは、はじめから曲の速さで歌わないことです。
- まずは、楽譜の速さより少しおそくする
- その速さで、むりなく歌えるようになったら、少しずつ上げる
- 上げるときは、数字を4から8くらいずつにする
ゆっくりの速さで正しく歌えると、速くしたときも、くずれにくくなります。むずかしいところほど、ゆっくりからはじめてみてください。
メトロノームを使った歌の練習のしかた
練習1 まずは聞くだけ、手をたたくだけ
いきなり歌いはじめずに、まずはメトロノームの音を聞いてみましょう。
- 曲の速さにメトロノームを合わせる
- しばらく、音を聞くだけにする
- 音に合わせて、手をたたいたり、ひざを軽くたたいたりする
- 「1、2、3、4」と、声に出して数える
体で速さを感じてから歌いはじめると、合わせやすくなります。
練習2 歌詞をリズムだけで読む
次に、メロディをつけずに、歌詞をリズムだけで読んでみます。メトロノームに合わせて、音符の長さどおりに、ことばを言っていく練習です。
音の高さを考えなくてよいので、リズムだけに集中できます。のばす音の長さや、休符の長さも、ここでたしかめておきましょう。
練習3 メロディをつけて歌う
リズムが読めたら、メロディをつけて歌います。はじめは、小さめの声で、ゆっくりの速さからにしましょう。
むずかしいところだけをぬき出して、何回かくりかえすのもおすすめです。1曲を通して歌うより、短いところを集中して練習したほうが、ずれに気づきやすくなります。
練習4 鳴らす場所をかえてみる
メトロノームは、ふつうは1拍ごとに鳴らしますが、鳴らし方をかえると、ちがう練習になります。
- 1小節に1回だけ鳴らす:自分で拍を感じる力をつける
- 2拍目と4拍目で鳴らす:ポップスなど、はずむ曲のノリをつかむ
- 1拍を2つに分けて鳴らす:細かいリズムや、速い曲の練習に
2拍目と4拍目で鳴らす練習は、ポップスやジャズを歌う方によくつかわれます。数字を半分にして、鳴った音を「2」と「4」だと思って歌うやり方です。はじめは少しむずかしいので、なれてからためしてみてください。
練習5 音を少しずつ消していく
メトロノームに合わせて歌えるようになったら、次は、音にたよらずに速さをたもつ練習です。
- メトロノームといっしょに、4小節歌う
- メトロノームの音を小さくする、または止める
- そのまま、同じ速さで歌いつづける
- もう一度鳴らして、ずれていないかたしかめる
メトロノームによっては、何小節か鳴らして、何小節か音を消す設定ができるものもあります。本番では、メトロノームはありません。自分の中に速さを持てるようになることが、この練習の目標です。
練習6 録音して聞いてみる
メトロノームを鳴らしたまま、自分の歌を録音してみましょう。聞きなおすと、どこでずれているかが、よくわかります。歌いながらでは気づかなかったところが見つかることも多いです。
メトロノームを使うときに気をつけたいこと
音量と置き場所
メトロノームの音が小さすぎると、自分の声で聞こえなくなります。大きすぎると、歌に集中しにくくなります。少しはなれたところに置いて、聞こえやすい音量にしてみてください。イヤホンで聞く方法もありますが、自分の声が聞こえにくくならないように気をつけましょう。
機械のような歌にならないように
メトロノームはとても正確ですが、歌はいつも機械のように進むわけではありません。曲の終わりで少しおそくなるところや、フェルマータで音をのばすところもあります。
メトロノームは、あくまで「土台の速さ」をつかむための道具です。速さが安定してきたら、メトロノームを止めて、歌詞の気持ちや、ことばの流れを大切にして歌ってみましょう。
長い時間つづけない
メトロノームに合わせる練習は、思ったより集中力をつかいます。のども、気持ちもつかれやすいので、10分ほどでひと休みするなど、短い時間で区切るのがおすすめです。
のどがつかれたと感じたら、歌うのをやめて、リズム読みや手拍子だけの練習に切りかえてもだいじょうぶです。痛みやかすれが何日もつづくときは、むりをせず、耳鼻科などのお医者さんに相談してください。
練習時間の目安は、こちらの記事でもまとめています。歌の習い事、家での練習は何分がいい?時間の目安と、むりなくつづけるコツ
お子様とメトロノームを使うときの工夫
あそびから入る
小さなお子様にとって、メトロノームの「カチ、カチ」は、少しつまらなく感じることがあります。はじめは、あそびの形にすると楽しめます。
- メトロノームに合わせて、足ぶみをする
- 音に合わせて、ぬいぐるみをとんとんする
- 速さをかえて、「ゆっくり」「はやい」を体であらわす
歌の一部分だけで使う
1曲まるごとメトロノームで歌うのは、お子様にはたいへんです。「ここだけ、速くなっちゃうね」というところだけを、メトロノームといっしょに練習してみましょう。
できたことをほめる
「さっきより、ずれなかったね」「最後まで同じ速さで歌えたね」と、できたことを具体的に伝えてあげてください。メトロノームに合わせるのは、大人でもむずかしいことです。少しでもできたら、たくさんほめてあげましょう。
メトロノームの練習が向いているとき
- 歌っているうちに、速くなったり、おそくなったりする
- 伴奏と合わせると、ずれやすい
- 合唱で、まわりと声がそろわない
- 速い曲や、ことばが多い曲を練習している
- コンクールや発表会の前に、歌を安定させたい
反対に、歌いはじめたばかりで、まずは歌うことを楽しみたい時期には、むりに使わなくてもだいじょうぶです。お子様のようすを見ながら、取り入れてみてください。
まとめ
- メトロノームを使うと、自分の歌の速さのくせに気づける
- 速さは楽譜の数字をたしかめ、はじめはゆっくりから
- 聞く、手をたたく、リズム読み、歌う、の順にすすめる
- 鳴らす場所をかえたり、音を消したりして、自分の中に速さを持つ
- 速さが安定したら、メトロノームを止めて、歌の気持ちを大切にする
- 長い時間つづけず、のどがつかれたら休む
メトロノームは、歌の土台をととのえてくれる、心強い道具です。リズムが安定してきたら、練習の成果をだれかに聞いてもらうのもおすすめです。こどもの歌声グランプリは、オンラインの動画審査だけで出られて、幼児からシニア(65歳以上)までの8部門があり、ジャンルは自由です。講評とデジタル賞状がとどくので、練習をふりかえるきっかけになると思います。こどもの歌声グランプリ