歌うときの唇の使い方。唇に力が入る・うまく動かないときの練習
「歌っていると、唇がぎゅっとかたくなってしまう」 「唇に力が入って、声がつまったように聞こえる」 「歌うときの唇の使い方が、よくわからない」
歌の練習をしていると、こんななやみが出てくることがあります。口の中の舌やあごにくらべて、唇は自分の目で見えるところです。それなのに、歌っているときには、どう動いているのか意外と気づきにくいものです。
わたしは息子といっしょに、たくさんのコンクールに出てきました。
この記事では、歌うときの「唇」にしぼってお話しします。唇に力が入ってしまう理由、歌うときの唇の使い方、唇の力を抜くための練習、ことばや高い音を歌うときに気をつけたいことをまとめました。お子様にも大人にも、そのまま使える内容です。
あごに力が入るときのことは歌うときにあごに力が入るとき。あごの力を抜いて、らくに口をあける練習、舌の位置については歌うときの舌の位置。舌の力を抜いて、声をひびかせるコツにくわしく書いています。あわせて読むと、口のまわり全体のことがわかりやすくなります。
歌うとき、唇に力が入るとどうなる?
声がかたく、せまく聞こえることがある
唇に力が入ると、口の出口がせまくなったり、かたくなったりします。すると、声が前に出にくくなり、こもったように聞こえることがあります。
また、唇にぎゅっと力が入っていると、そのまわりのほっぺたやあご、のどのあたりまで、いっしょにかたくなってしまうこともあります。どこか一か所に力が入ると、近くの場所にも力が広がりやすいのです。
ことばがはっきりしにくくなる
日本語には、唇を使って出す音があります。たとえば「ま行」「ぱ行」「ば行」、そして「わ」や「ふ」などです。唇がかたいと、こうした音がうまく出にくくなったり、のびのびと歌えなくなったりすることがあります。
反対に、唇に力が入りすぎて、ことばがかたい感じに聞こえることもあります。歌のことばが、なめらかにつながりにくくなるのです。
長く歌うと、口のまわりがつかれやすい
唇に力が入ったまま歌い続けると、口のまわりがつかれてしまうことがあります。練習のあとに、唇やほっぺたがこわばった感じがするときは、力が入っていたサインかもしれません。
唇に力が入ってしまう理由
「口をはっきり動かそう」とがんばりすぎている
「口を大きく、はっきり動かしましょう」と言われると、まじめな方ほど、唇に力を入れて動かそうとしてしまいます。大きく動かすことと、力を入れることは、同じではありません。
唇は、力をこめなくても、やわらかく動かせる場所です。がんばる気持ちが、そのまま唇のかたさになっていることがあります。
高い音や大きな声で、口まわりに力が入る
高い音を出そうとしたり、大きな声で歌おうとしたりすると、体のあちこちに力が入りやすくなります。そのとき、唇をぎゅっと横に引いたり、前につき出したりしてしまうことがあります。
緊張している
人前で歌うときや、本番が近いときは、気づかないうちに体に力が入ります。唇もそのひとつです。口をきゅっととじたまま歌いはじめたり、唇がふるえたりすることもあります。
口の形を、ずっと同じにしようとしている
「この形で歌いましょう」と習った口の形を、ずっとたもとうとして、唇をかためてしまうこともあります。口の形は、ことばや音の高さによって少しずつかわってよいものです。
歌うときの唇の使い方のきほん
唇は「やわらかく、軽く」が目安
歌うときの唇は、力を入れてかためるのではなく、やわらかく、軽く動かすのが目安です。息や声が、唇のあいだをすっと通りぬけていくようなイメージをもってみてください。
口をとじているときも、唇どうしを強くおしつけず、ふんわりとふれているくらいがらくです。
前歯が少し見えるくらいの、自然な口もと
鏡を見ながら、軽く「あー」と声を出してみてください。上の前歯が少し見えるくらいの、自然な口もとがひとつの目安になります。唇を横にぎゅっと引いたり、前に強くとがらせたりしていないか、見てみましょう。
ただし、ちょうどよい口の形は、人によってちがいます。顔の形や歯ならびもそれぞれなので、「こうでなければいけない」と決めつけず、らくに声が出る形をさがしてみてください。
母音によって、唇の形はかわっていい
「あ・い・う・え・お」の母音によって、唇の形は自然にかわります。
- 「あ」は、唇の力を抜いて、たてにひらく
- 「い」は、唇を横にぎゅっと引きすぎない
- 「う」は、唇を少しだけ前にまるめる。とがらせすぎない
- 「え」は、「い」と同じく、横に引きすぎない
- 「お」は、唇をまるくして、口の中を広く
ポイントは、どの母音でも「やりすぎない」ことです。とくに「い」と「え」は、唇を横に引っぱりすぎて、声がかたくなることがあります。少しだけ、たてにひらく気持ちをもつと、らくになることがあります。
唇の力を抜く練習
ここからは、おうちでできる、唇の力を抜くための練習を紹介します。どれも短い時間でできるものです。歌う前の準備として、取り入れてみてください。
唇をぶるぶるふるわせる「リップロール」
唇を軽くとじて、息をはきながら、唇を「ぶるぶるぶる」とふるわせる練習です。馬が鼻をならすような音になります。
- 唇の力を抜いて、軽くとじる
- 息を、ゆっくり長めにはく
- 唇が、ぶるぶるとふるえるのを感じる
唇に力が入っていると、うまくふるえません。ふるえないときは、両手の人さし指で、ほっぺたを口の横から軽くおさえてみてください。ふるえやすくなることがあります。
慣れてきたら、「ぶるぶる」に声をのせて、低い音から高い音へ、なめらかに上がったり下がったりしてみましょう。唇がやわらかくなる感じがつかめることがあります。
唇をやさしくほぐす
歌う前に、唇のまわりをほぐしてみましょう。
- 唇を「う」の形にしてから、「い」の形にする。これを、ゆっくり何回かくりかえす
- 口をとじたまま、唇を右・左にゆっくり動かす
- 指で、唇のまわりを軽くマッサージする
どれも、ゆっくり、力をこめずに行うのがコツです。強くやりすぎると、かえって力が入ってしまいます。
唇の音で、ことばの練習をする
唇を使う音を、軽くくりかえす練習もおすすめです。
- 「ま・ま・ま・ま」
- 「ぱ・ぱ・ぱ・ぱ」
- 「ば・び・ぶ・べ・ぼ」
ここでも、唇をつよくおしつけないのがポイントです。唇がふれたら、すぐにはなれる。そのくらい軽く、はずむように言ってみてください。慣れてきたら、少しずつ速くしていきます。
ことば全体をはっきりさせる練習については、歌の滑舌をよくする練習。ことばがはっきり伝わる歌い方にまとめています。
鏡で、自分の唇を見てみる
歌いながら、ときどき鏡で口もとを見てみましょう。
- 唇が横に引っぱられていないか
- 唇がふるえていないか
- 口のはしに、ぎゅっと力が入っていないか
動画にとって、あとから見るのもよい方法です。自分では気づかなかったくせが、見えてくることがあります。
場面ごとに気をつけたいこと
高い音のとき
高い音のとき、唇を横に引いて、むりに声を出そうとしてしまうことがあります。高い音ほど、唇を横に引かず、少しだけたてにひらくようなイメージをもつと、らくになることがあります。
また、高い音の前に、いったん唇の力をふっと抜いてから歌いはじめるのもひとつの方法です。
速いことばが続くとき
ことばが速く続く歌では、唇を大きく動かそうとすると、追いつかなくなることがあります。そんなときは、唇の動きを小さめに、軽くしてみてください。小さく、でもはっきり。この感覚がつかめると、速いところもすっきり歌えることがあります。
歌いはじめと、歌い終わり
歌いはじめに、唇をぎゅっととじてから声を出すと、声がかたくなりやすいです。歌う前は、唇を軽くひらいて、息の通り道をつくっておきましょう。
歌い終わりも、さいごの音のあとに唇をぎゅっととじず、やわらかく口をとじるようにすると、ていねいな印象になります。
お子様の練習で、お父様・お母様ができること
お子様が唇に力を入れて歌っているとき、「力を抜いて」と言っても、うまく伝わらないことがあります。そんなときは、ことばより遊びにするのがおすすめです。
- 「お馬さんのまね、できるかな」と、リップロールをいっしょにやってみる
- 「にらめっこ」をして、顔と唇をやわらかくする
- 「ま・ぱ・ば」を使った、短いことば遊びをする
お父様・お母様がいっしょにやってみせると、お子様もまねしやすくなります。うまくできなくても、楽しくやることを大切にしてください。
細かい口の形や発声のことは、レッスンの先生に相談すると安心です。教室さがしは歌の教室さがしからできます。
唇が痛い・かさかさするときは
唇がかさかさしていたり、切れていたりすると、歌うときに唇を動かしにくくなります。リップクリームでうるおいをたもつ、こまめに水分をとるなど、ふだんからケアしておくと安心です。
唇や口のまわりに痛みが続くとき、はれがあるときは、むりに練習を続けないでください。気になることがあるときは、お医者さんに相談しましょう。
まとめ
- 唇に力が入ると、声がかたく聞こえたり、ことばがはっきりしにくくなったりすることがある
- 「はっきり動かそう」とがんばりすぎたり、高い音や緊張で力が入ったりすることがある
- 歌うときの唇は、やわらかく、軽く動かすのが目安
- 母音によって唇の形はかわってよい。とくに「い」「え」は横に引きすぎない
- リップロールや、唇をほぐす練習で、力を抜く感覚をつかむ
- 高い音や速いことばのときは、唇の動きを軽くする
- お子様には、遊びの形で練習するのがおすすめ
唇の力がふっと抜けると、声もことばも、のびのびと前に出ていきやすくなります。練習でつかんだ、やわらかい唇の使い方を、ぜひ一曲通して歌ってためしてみてください。目標があると、練習にも張りが出ます。こどもの歌声グランプリは、オンラインの動画審査だけで出られる歌のコンクールです。幼児からシニア(65歳以上)までの8部門があり、ジャンルは自由です。出た方には、講評とデジタル賞状がとどきます。こどもの歌声グランプリ