歌うときにあごに力が入るとき。あごの力を抜いて、らくに口をあける練習
「歌っていると、あごがこわばって、つかれてしまう」 「口を大きくあけなさいと言われるけれど、あけるほど、あごに力が入る気がする」
歌の練習をしていて、あごのことでなやむ方は、じつはとても多いです。高い声を出すときや、大きな声を出すときに、知らないうちにあごをぐっとかためてしまうことがあります。
わたしは息子といっしょに、たくさんのコンクールに出てきました。歌は、のどだけでなく、口のまわりや顔のこわばりでも、声の出やすさがかわると感じています。
この記事では、歌うときのあごにしぼってお話しします。あごに力が入りやすい理由、力が入っているかどうかのたしかめ方、あごの力を抜く練習、歌うときのあごの開け方のめやすをまとめました。
歌うときに、あごに力が入りやすい理由
高い音を「上に押し上げよう」とする
高い音を出すとき、あごを前につき出したり、上に向けたりしてしまう方は多いです。「上の音にとどかせよう」という気持ちが、そのまま体の動きになってしまうのですね。
あごがつき出ると、首のまわりまでかたくなりやすく、かえって声が出しにくくなることがあります。
「口を大きく」をがんばりすぎる
「口をしっかりあけて歌いましょう」と言われて、あごを力いっぱい下に引き下げてしまうこともあります。口はあいていても、あごの関節のまわりがかたまっていると、声はのびのびしにくくなります。
ふだんの、かみしめのくせ
考えごとをしているときや、パソコン作業をしているときに、歯をぐっとかみしめるくせがある方もいます。ふだんからあごに力が入りやすいと、歌うときにもそのくせが出やすくなります。
緊張しているとき
人前で歌うときや、本番前など、緊張しているときにも、あごや肩に力が入りやすくなります。体の力みは、気持ちともつながっています。
あごに力が入っているか、たしかめる方法
耳の前をさわる
耳のすぐ前、口をあけしめすると動くところに、指をそっとあててみてください。ここが、あごの関節のあたりです。
この状態で歌ってみて、関節のまわりがかたくもり上がる、ぐっと押しかえされる感じがするなら、あごに力が入っているサインかもしれません。
ほおの下のほうをさわる
奥歯をかみしめると、ほおの下のほうがかたくなるのがわかると思います。歌っているときに、ここがかたくなっていないかもたしかめてみましょう。
鏡で横顔を見る
鏡を横にして、歌っている自分の横顔を見てみます。
- あごが前につき出ていないか
- 高い音のときに、あごが上を向いていないか
- 首のすじが、ぐっとうき出ていないか
スマホで横から動画をとってみるのも、わかりやすい方法です。
あごの力を抜く練習
ここからは、あごの力を抜くための、かんたんな練習をしょうかいします。どれもやさしく、ゆっくり行うことが大切です。
練習1 ほおをやさしくほぐす
両手の指先を、ほおの下のほう(奥歯のあたり)にあてて、小さな円をかくように、ゆっくりさすります。強く押すのではなく、なでるくらいの力で十分です。
30秒ほどほぐしたら、口をぽかんと少しあけて、あごの重さを感じてみましょう。
練習2 あごをストンと落とす
口をとじたまま、上の歯と下の歯のあいだに、少しすきまをつくります。そこから、あごの力をふっと抜いて、重さで下にストンと落ちるようにします。
あごを「下げる」のではなく、「落ちるのにまかせる」感じです。口が少しあいたら、そのまま「はー」と息をはいてみましょう。
練習3 あくびのまねをする
あくびをするときのように、ゆったりと口をあけてみます。ほんもののあくびのように大きくあけなくても、はじまりの「ふわっ」とした感じだけで十分です。
あくびのはじめは、あごがらくに下がり、のどの奥も広がりやすくなります。その感じをおぼえておくと、歌うときにも生かしやすくなります。
練習4 「まーまーまー」と声を出す
あごの力を抜いたまま、「まーまーまー」と、話し声くらいの高さで声を出してみます。「ま」のたびに、あごが軽く上下にゆれるくらいがめやすです。
あごをかためて「まーまー」と言うより、ずっとらくに声が出るのを感じられると思います。
練習5 手であごをささえて歌う
ほおづえをつくように、両手のひらで、あごの下を軽くささえます。手であごの重さを受けとめたまま、知っている歌の一部を、小さめの声で歌ってみましょう。
あごが下に引っぱられたり、前に出たりしにくくなるので、あご以外のところで歌う感覚をつかみやすくなります。
歌うときのあごの開け方のめやす
大きくあければいい、わけではない
歌では、口をしっかりあけることが大切だとよく言われます。ただ、あごを力いっぱい下げることが、いつもよいとはかぎりません。
口の中、とくに奥のほうが広がっていれば、口の前のほうは、そこまで大きくあけなくても、声はひびきやすくなります。
たての指のめやす
よく言われるめやすに、「上と下の前歯のあいだに、指が1本から2本たてに入るくらい」というものがあります。高い音や「あ」の母音では少し大きめに、話すような部分では小さめに、と歌に合わせてかえていきます。
あくまでめやすなので、人によって合う大きさはちがいます。あごがらくに感じる大きさを、さがしてみてください。
高い音でも、あごはつき出さない
高い音になるほど、あごは前や上に向かいやすくなります。高い音のときこそ、あごは少し引きぎみにして、顔は前を向いたまま歌うことを心がけてみましょう。
「た」で口のあけ方をたしかめる
「たーたーたー」と、ゆっくりした「た」で歌ってみると、あごの動きがわかりやすくなります。「た」のたびに、あごがやわらかく下がり、またもどってくるかを、耳の前に指をあててたしかめてみてください。
顔のまわりの筋肉をほぐす練習については、こちらの記事でもしょうかいしています。表情筋を使うボイトレ。顔をほぐして、歌の声を明るくする練習
ふだんの生活でできること
あごの力みは、歌っているときだけのものではないことも多いです。ふだんの生活でも、少し気にしてみましょう。
- ふとした時に、歯をかみしめていないかチェックする
- 口をとじているときも、上と下の歯のあいだに、少しすきまをあけておく
- 肩や首をゆっくり回して、上半身をほぐす
- パソコンやスマホを見るとき、あごをつき出していないか気にする
こうした小さなことでも、歌うときのあごのらくさにつながっていきます。
あごの練習でよくあるなやみ
力を抜くと、口があかなくなる
あごの力を抜こうとして、口のあきがとても小さくなってしまう方もいます。そんなときは、練習3のあくびのまねで、「らくにあく大きさ」をさがしてみてください。力を抜くことと、口をあけることは、両方できるものです。
あごがカクッと鳴る
口をあけしめしたときに、あごの関節が音を立てることがあります。痛みがなければ、気にしすぎなくてよいこともありますが、気になるときはむりに大きくあけないようにしましょう。
あごや顔が痛い
あごの関節のまわりや、ほお、こめかみなどに痛みがあるとき、口があけにくいときは、練習を休んでください。痛みが続くときは、むりをせず、歯医者さんや口腔外科などのお医者さんに相談しましょう。のどの痛みや声のかすれが続くときは、耳鼻科に相談すると安心です。
先生にみてもらうよさ
あごの力みは、自分ではなかなか気づきにくいくせのひとつです。声の先生にみてもらうと、歌っているときのあごの動きを、外から見て教えてもらえます。
体験レッスンのときに、「あごに力が入りやすいのが気になっています」と伝えてみると、その人に合った練習を考えてもらえることが多いです。近くの教室やオンラインの教室をさがすときは、こちらのページもつかってみてください。歌の教室さがし
まとめ
- 歌うときにあごに力が入るのは、高い音を押し上げようとする、口を大きくあけすぎる、ふだんのかみしめ、緊張などが理由になりやすい
- 耳の前、ほおの下、横顔の鏡で、力が入っていないかたしかめる
- ほおをほぐす、あごをストンと落とす、あくびのまね、「まーまー」、手でささえて歌う、などの練習で力を抜く
- 口は大きければいいわけではなく、らくにあく大きさを歌に合わせてさがす
- 高い音でも、あごはつき出さない
- 痛みが続くときは、歯医者さんや耳鼻科などのお医者さんに相談する
あごの力が抜けて、らくに歌えるようになってきたら、その歌をだれかに聞いてもらうのも、練習のはげみになります。こどもの歌声グランプリは、オンラインの動画審査だけで出られて、幼児からシニア(65歳以上)までの8部門があり、ジャンルは自由です。講評とデジタル賞状がとどくので、いまの歌のよいところを知るきっかけにもなると思います。こどもの歌声グランプリ