年をとった親といっしょに歌う。介護や家族ですごす時間に、親子で歌を楽しむ工夫
「年をとった親と、何かいっしょに楽しめることがほしい」 「介護の毎日の中で、親子で笑える時間をつくりたい」 「高齢の親といっしょに歌ってみたいけれど、どう始めたらいいかわからない」
親の介護をしていたり、年をとった親のそばですごす時間がふえたりすると、こんなふうに考えることがあるかもしれません。毎日のお世話でいっぱいいっぱいの中で、少しでもおだやかな時間をもちたい、という気持ちもあると思います。
わたしは息子といっしょに、たくさんのコンクールに出てきました。
この記事では、施設やデイサービスの歌の会ではなく、家の中で、大人になった子どもと年をとった親が、いっしょに歌を楽しむ場面にしぼってお伝えします。
はじめにお伝えしたいのは、介護はとても大変なことで、歌はそれを解決するものではない、ということです。この記事でしょうかいすることは、「できそうな日に、できそうなことだけ」で十分です。歌うことが、お世話をする方の新しい負担にならないように、気楽に読んでいただけたらうれしいです。
家で親と歌うことのよさ
歌は、声をかけるきっかけになる
年をとった親との会話は、体調のことや、食事、薬、お金のことなど、どうしても「しなければならないこと」の話が中心になりがちです。
そんな中で、歌は、用事とは関係のない話をするきっかけになることがあります。
- 「この歌、知ってる?」
- 「お母さんが若いころ、どんな歌がはやっていたの?」
- 「お父さんが好きだった歌手は、だれだったっけ」
歌をきっかけに、親が若かったころの話や、子どもだったころの話が出てくることもあるかもしれません。
うまく歌えなくても楽しめる
歌は、上手に歌えなくても楽しめるものです。声がよく出ない日は聞くだけでもよいし、手びょうしをしたり、口ずさんだりするだけでもかまいません。
体を動かすのがむずかしくなった親でも、座ったまま、ねたままで、歌を聞いたり、いっしょに声を出したりすることはできます。
心や体へのはたらきについて
歌うことは、気持ちが明るくなる、口や体を動かすきっかけになる、などと言われることもあります。ただ、感じ方は人それぞれで、病気がよくなったり、ふせげたりするものではありません。
「健康のために歌わせなければ」と考えるより、「親子で少しでも楽しい時間になればいい」くらいの気持ちで向き合うほうが、おたがいに楽かもしれません。
親が好きな歌を見つける
親が若かったころの歌をさがす
親といっしょに歌う曲は、親が子どものころや、若かったころに親しんでいた歌から選ぶと、なじみやすいことがあります。
- 子どものころに学校で歌った唱歌や童謡
- 若いころにはやった歌謡曲やフォークソング
- 地元の民謡や、お祭りで歌われていた歌
- 家族の行事や、旅行の思い出とむすびついた歌
親に「どんな歌が好きだった?」と聞いてみたり、昔の写真やアルバムを見ながら話したりすると、思いがけない曲の名前が出てくることもあります。
親のきょうだいや、昔を知る人に聞いてみる
親が自分では思い出しにくいときは、親のきょうだいや、昔からの友人に「どんな歌が好きだったか」を聞いてみる方法もあります。子どもの自分が知らなかった、親の好きな歌が見つかるかもしれません。
好きな歌のリストを作っておく
見つかった歌は、メモやスマホに書きとめて、リストにしておくと便利です。
- 曲の名前と、歌っていた歌手
- 親が反応してくれた曲
- 親があまり好きではなさそうだった曲
リストがあると、歌う日に曲をさがす手間がへり、介護をする方の負担も少なくなります。
いっしょに歌いやすくする工夫
音源を流して、それに合わせる
伴奏をひける人がいなくても、スマホやテレビ、ラジオ、CDなどで音源を流せば、それに合わせて歌うことができます。原曲が高すぎるときは、キーを変えられるカラオケアプリをつかうと、歌いやすくなることもあります。
音量は、親の聞こえ方に合わせて調整してください。耳が聞こえにくくなった方と歌を楽しむ工夫は、こちらの記事にまとめています。耳が聞こえにくくなっても歌を楽しむ。シニアの方の工夫
歌詞は、大きな文字で用意する
歌詞を見ながら歌いたいときは、大きな文字で書いた歌詞カードを用意しておくと、親も見やすくなります。
- 文字を大きく、太めの字にする
- 行と行の間を、広めにあける
- 白い紙に、黒い字ではっきり書く
見やすい歌詞カードの作り方は、こちらの記事にくわしく書いています。シニアの歌の会で使う、見やすい歌詞カード・楽譜の作り方
座ったまま、楽な姿勢で歌う
親が立って歌うのがむずかしいときは、いすや車いす、ベッドの上など、楽な姿勢のままで歌ってかまいません。背中をクッションでささえる、足を床につけるなど、少し姿勢をととのえるだけで、声を出しやすくなることもあります。
座ったままでも気持ちよく声を出すコツは、こちらの記事でしょうかいしています。座って歌うときのコツ。いす・車いすでも気持ちよく声を出すために
子どもの側も、上手に歌おうとしなくていい
親といっしょに歌うとき、子どもの側が「ちゃんと歌わなくては」と思う必要はありません。音程がずれても、歌詞をまちがえても、おたがいに笑いあえれば、それで十分です。
親とのかかわり方で、気をつけたいこと
歌うことを、むりにすすめない
親の体調や気分によって、歌いたくない日もあります。「歌って」と何度もすすめるより、子どもの側が楽しそうに口ずさんでいるのを、親が聞いているだけでもかまいません。
親が「今日はいい」と言ったら、そのまま受けとめてください。
まちがいを、直そうとしない
歌詞をまちがえたり、音がずれたりしても、そのたびに直そうとしないことも大切です。直されつづけると、歌うことが楽しくなくなってしまうこともあります。
まちがえたところは、子どもの側が一緒に歌いながら、自然に流してしまうくらいでよいと思います。
子どもあつかいしない
いっしょに歌うときも、親は人生の先輩です。小さな子に話しかけるような言い方ではなく、ふだんの親子のことばで話しかけるようにすると、親もここちよく感じられるかもしれません。
体のようすに気をくばる
歌っているとちゅうで、むせる、せきこむ、息苦しそう、顔色がわるい、といったようすがあれば、すぐに歌うのをやめて休んでください。
食事のすぐあとは、歌うのをひかえる、水分をとりやすいようにしておく、なども心がけたいことです。気になることがあるときは、かかりつけのお医者さんや、ケアマネジャーさんなど、介護にかかわる方に相談してみてください。
介護をする方も、むりをしない
歌えない日があっても、だいじょうぶ
介護の毎日の中では、歌うどころではない日もあります。親の体調がすぐれない日、自分がつかれきっている日に、むりに歌の時間をつくる必要はありません。
歌は、「やらなければならないこと」のリストに入れなくていいものです。気持ちに少し余裕がある日に、ふと思い出して口ずさむくらいがちょうどよいのかもしれません。
自分ひとりでかかえこまない
親と歌う時間を、きょうだいや家族と分けあうのもひとつの方法です。電話やビデオ通話で、遠くに住む家族が歌を聞かせてくれるだけでも、親にとって楽しい時間になることがあります。
自分のための歌の時間ももつ
介護をする方自身が、好きな歌を聞いたり、歌ったりする時間をもつことも大切です。親のためだけでなく、ご自身の気持ちを休める時間として、歌をつかってみてください。
介護のつかれがたまって、ねむれない、気持ちがずっと落ちこんでいる、といった状態が続くときは、ひとりでがまんせず、お医者さんや地域の相談窓口に話してみてください。
まとめ
- 歌は、用事とは関係のない会話のきっかけになる
- 健康のためにと考えすぎず、親子で楽しい時間になればいい、くらいの気持ちで
- 親が若かったころの歌や、思い出とむすびついた歌をさがし、リストにしておく
- 音源をつかい、大きな文字の歌詞カードを用意し、楽な姿勢で歌う
- 歌うことをむりにすすめず、まちがいを直そうとしない
- むせる、せきこむなどのようすがあれば、すぐに休む。気になることはお医者さんや介護にかかわる方に相談する
- 介護をする方も、むりをしない。歌えない日があってもだいじょうぶ
親との時間の中で歌が楽しくなってきたら、ご自身も、もう少し歌を習ってみたいと思うことがあるかもしれません。家の近くの教室や、家から受けられるオンラインのレッスンをさがしてみるのもよいと思います。歌の教室さがし
年齢に関係なく、歌を聞いてもらえる場もあります。こどもの歌声グランプリは、オンラインの動画審査だけで出られる歌のコンクールです。幼児からシニア(65歳以上)までの8部門があり、ジャンルは自由です。出た方には、講評とデジタル賞状がとどきます。こどもの歌声グランプリ