練習・発声のコツ

座って歌うときのコツ。いす・車いすでも気持ちよく声を出すために

更新日:2026年11月7日 ・ 書いた人:うみ

「歌は立って歌うもの、と思っていたけれど、座ったままでもちゃんと声は出るのかな」 「車いすをつかっていても、歌を楽しみたい」

こんなふうに思っている方は、きっとたくさんいらっしゃると思います。歌の本や動画では、立った姿勢での説明が多いので、座って歌う方は「自分には合わないのかな」と感じてしまうこともあるかもしれません。

でも、座って歌うことは、まったくめずらしいことではありません。合唱の練習では、長い時間座ったまま歌うことがよくありますし、高齢者施設の歌の会や、おうちでの練習でも、いすに座って歌う方はたくさんいます。車いすをつかっている方が、歌の教室やステージで歌うこともあります。

わたしは息子といっしょに、たくさんのコンクールに出てきました。その中で、歌の楽しみ方は人それぞれで、立っても座っても、その人らしい歌があると感じています。

この記事では、座って歌うコツと、車いすで歌うときの発声の工夫を、やさしくまとめました。体の状態は、人によって大きくちがいます。お医者さんやリハビリの専門家から言われていることがある方は、そちらをいちばん大切にしてください。この記事は、その上で「こんな工夫もあるよ」という、ひとつの参考として読んでいただけたらうれしいです。

座って歌うのは、よくないこと?

座っていても、声はしっかり出せる

声は、息がのどを通るときに出ます。そして、その声が口や鼻のあたり、顔や体にひびくことで、歌声になります。立っているか座っているかよりも、息がらくに通るか、体に余計な力が入っていないかのほうが、ずっと大切です。

座っていると、足で体をささえる必要が少なくなるので、かえって肩や首の力がぬけやすい、という方もいます。立って歌うと緊張してしまう方には、座って歌うほうが合っていることもあります。

座って歌うときに起きやすいこと

ただ、座っていると、つい次のような姿勢になりやすいです。

  • 背中が丸くなって、おなかがつぶれる
  • 背もたれに深くよりかかって、あごが上がる
  • 足を組んで、体がかたむく
  • 楽譜や歌詞を見ようとして、首が前に出る

こうした姿勢が長く続くと、息がすいにくくなったり、声がこもったりしやすくなります。すこし気をつけるだけで、ぐっと歌いやすくなりますよ。

立って歌うときの姿勢とくらべてみると、ちがいがわかりやすいと思います。

いすに座って歌うときの、姿勢のコツ

いすには、少し浅めに座る

背もたれに体をあずけきってしまうと、背中が丸くなりやすいです。いすの前のほうに、少し浅めに座ってみましょう。おしりの下にある、すわるときにあたる骨(左右に1つずつあります)の上に、体がまっすぐのるようなイメージです。

ただし、体をささえるのがむずかしい方や、ふらつきやすい方は、無理に浅く座る必要はありません。背もたれをつかって、安全に座れる姿勢をいちばんに考えてください。

足の裏を、床につける

両足の裏を、床にぺたっとつけると、体が安定しやすくなります。足が床にとどかないときは、足の下に台や、たたんだタオルをおくのもひとつの方法です。

頭は、上から糸でつられているように

頭のてっぺんが、上から糸でそっと引っぱられているようなイメージをもつと、背中がのびやすくなります。あごは上げすぎず、引きすぎず、まっすぐ前を見るくらいがちょうどいいです。

肩と腕は、だらんと下ろす

歌う前に、肩をいちど上にぎゅっと上げて、すとんと下ろしてみましょう。肩の力がぬけると、首やのどまわりも、らくになりやすいです。手はひざの上に、そっとおいておくくらいで大丈夫です。

座って歌うときの、息のつかい方

おなかのまわりがふくらむように

息をすうときに肩が上がると、のどまわりに力が入りやすくなります。座ったまま、おなかやわき腹、背中のほうが、ふわっとふくらむようなイメージで、ゆっくり息をすってみましょう。

座っていると、おなかが前に出しにくいと感じることがあります。そんなときは、わき腹や背中のほうに息を入れるつもりですってみると、すいやすくなる方もいます。

はく息は、ゆっくり長く

「スー」と、細く長く息をはく練習は、座ったままでもできます。はじめは5秒くらいから、つかれない長さで大丈夫です。息を長くはこうとして、体に力が入りすぎないように気をつけましょう。

苦しくなる前に、息をすう

歌っていて苦しくなってから息をすうと、あわててしまい、肩が上がりやすくなります。歌詞の区切りのところで、早めに息をすうと決めておくと、座っていても落ちついて歌いやすくなります。

息をすう場所は、楽譜や歌詞カードに小さく印をつけておくと、わすれにくくなります。

車いすで歌うときの、発声の工夫

まずは、安全で楽な姿勢を

車いすをつかっている方の体の状態は、本当に人それぞれです。だからこそ、「正しい姿勢」を一つに決めることはできません。いちばん大切なのは、安全で、つかれにくい姿勢であることです。

ふだんの座り方や、体をささえるクッションなどについて、お医者さんや理学療法士さん、作業療法士さんなどのリハビリの専門家から言われていることがあれば、それを第一にしてください。歌のために、ふだんとちがう姿勢を無理につくる必要はありません。

体がかたむきやすいときは

体が左右どちらかにかたむきやすい方は、クッションなどでささえると、声が出しやすくなることがあります。ただ、クッションの入れ方は体によってちがうので、自分だけで決めずに、ふだん体のことを見てくれている方に相談してみると安心です。

声のひびきを、顔のあたりで感じる

座っていても、口をとじて「んー」とハミングすると、くちびるや鼻のあたりがむずむずとひびくのを感じられると思います。このひびきを感じながら、そのまま「まー」「のー」と口をあけていくと、声が前に出やすくなります。

ハミングは、大きな声を出さなくてもできるので、体への負担も少なめです。

首をむりに動かさない

歌うときに、顔を上に向けたり、首を前につき出したりすると、のどに力が入りやすくなります。楽譜や歌詞は、目の高さに近いところにおくと、首を動かさずにすみます。譜面台や、テーブルの上に立てられる台をつかうのもおすすめです。

歌う前の、座ったままできる準備

いきなり歌いはじめるより、体を少しほぐしてからのほうが、声が出やすくなります。どれも、つらいと感じたらすぐにやめてくださいね。

  • 肩をゆっくり前まわし、うしろまわし
  • 首を、痛くないはんいで、左右にゆっくりかたむける
  • 両手でほっぺを軽くなでて、顔の力をぬく
  • 口を大きくあけたり、とじたりする
  • くちびるを「ぷるぷる」とふるわせる

座ったまま体を動かす歌体操については、こちらの記事でも紹介しています。シニアの歌体操。歌に合わせて座ったままできる、やさしい体の動かし方

まわりの方ができるサポート

楽譜や歌詞の位置をととのえる

ご家族や教室の先生、歌の会のお世話をする方は、楽譜や歌詞が見やすい位置にあるか、気にかけてみてください。文字を大きめにするだけでも、首や目の負担がへって、歌に集中しやすくなります。

歌うテンポや音の高さに気をつける

息の長さや、出しやすい音の高さは、人によってちがいます。高すぎる曲や、息つぎのすくない速い曲は、つかれやすくなることがあります。伴奏の高さ(キー)を下げたり、テンポを少しゆっくりにしたりすると、歌いやすくなることが多いです。

「できること」を見る

「もっと大きな声で」「背中をのばして」と言いすぎると、歌う方が緊張してしまうこともあります。その日に気持ちよく歌えたことを、いっしょによろこぶ気持ちを大切にしたいですね。

気をつけてほしいこと

  • その日の体調を、いちばんに考える
  • 痛みや息苦しさを感じたら、すぐに休む
  • 長い時間、同じ姿勢で歌い続けない
  • 水をこまめにのんで、のどをうるおす

歌ったあとに、のどの痛みやかすれが何日も続くときは、無理をせず、耳鼻科などのお医者さんに相談してください。体の痛みやしびれがあるときも、まずはお医者さんや、ふだん体を見てくれている専門家の話を聞いてみましょう。

歌の教室で、座って歌いたいとき

歌の教室に通いたいけれど、座って歌えるか心配、という方は、体験レッスンの前に、教室に相談しておくと安心です。

  • 座ったままレッスンを受けてもよいか
  • 車いすで入れる入口やトイレがあるか
  • 発表会のとき、座って歌うことができるか

教室によって、できることはちがいます。わからないことは、遠慮せずに聞いてみてください。オンラインのレッスンなら、おうちのいつものいすや車いすのまま受けられる、というよさもあります。

まとめ

  • 座っていても、声はしっかり出せる
  • いすには少し浅めに座り、足の裏を床につける(安全がいちばん)
  • 頭は上から引っぱられるように、肩の力はぬく
  • 息はおなかやわき腹、背中がふくらむようにすう
  • 車いすの方は、お医者さんやリハビリの専門家の話を第一に
  • 楽譜は目の高さに。キーやテンポを合わせると歌いやすい
  • 痛みやかすれが続くときは、お医者さんに相談する

座って歌うことは、歌の楽しみ方のひとつです。いまの体で、気持ちよく声が出せる形を、ゆっくりさがしてみてください。いっしょに歌を楽しめる教室をさがしたいときは、こちらのページもつかってみてください。歌の教室さがしまた、こどもの歌声グランプリは、オンラインの動画審査だけで出られるので、会場まで行かなくても、いつもの場所で、座ったままでも歌を届けることができます。幼児からシニア(65歳以上)までの8部門があり、ジャンルは自由です。講評とデジタル賞状がとどくので、歌をつづける楽しみのひとつにしていただけたらうれしいです。こどもの歌声グランプリ

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