ほかの子とくらべてあせるお父様・お母様へ。歌の習い事で「うちの子のペース」を大切にする考え方
「同じころに始めた子は、もうソロをまかされているのに」 「あの子はコンクールで賞をとったのに、うちの子は……」
歌の習い事をしていると、ほかの子の歌声やがんばりが、どうしても目に入ってきます。そして、ふと気づくと、わが子とくらべてしまっている。そんな自分に、もやもやしてしまうお父様・お母様もいらっしゃるのではないでしょうか。
わたしは息子といっしょに、たくさんのコンクールに出てきました。
この記事では、習い事でほかの子と比べてしまう親の気持ちについて考えます。子どもを比べてしまうのは、だめな親だからではありません。その気持ちとどうつきあうか、そしてお子様のペースをどう大切にしていくかを、いっしょに見ていきましょう。
なお、きょうだいどうしでくらべてしまうときの話は、べつの記事にまとめています。きょうだいで歌を習うとき。くらべないコツと、通い方の工夫
習い事でほかの子と比べてしまうのは、ふしぎなことではない
比べてしまうのは、わが子が大切だから
ほかの子とくらべてしまう気持ちの奥には、「この子にも楽しい思いをしてほしい」「くやしい思いをさせたくない」という願いがあることがあります。
つまり、比べてしまうのは、お子様のことを大切に思っているからこそ、とも言えます。まずは、そんな自分を責めすぎないでください。
歌の習い事は、くらべやすい場面がある
歌の習い事には、ほかの子の歌を聞く場面があります。
- グループレッスンで、となりの子の声が聞こえる
- 発表会で、ほかの子の歌をつづけて聞く
- コンクールで、結果が順位や賞として出る
- 合唱団で、ソロやパートが決まる
歌は耳に入りやすく、ちがいがわかりやすいものです。そのため、くらべる気持ちがわいてくるのは、しぜんなことでもあります。
SNSや動画も、くらべる気持ちを強めることがある
いまは、ほかのお子様の歌の動画を、スマホでかんたんに見られます。上手な歌や、賞をとった話ばかりが目に入ると、「うちの子はおくれているのでは」と感じてしまうこともあります。
でも、画面に出てくるのは、その子のほんの一部です。練習でうまくいかなかった日や、なやんだ時間は、見えないこともあります。
子どもを比べてしまうと、どんなことが起きる?
お子様は、親の気持ちを感じとる
ことばにしていなくても、お父様・お母様のあせりは、表情や声の調子からお子様に伝わることがあります。
- 「もっとがんばらないといけないのかな」と思う
- 歌うことが、楽しみより「しなければいけないこと」になる
- 失敗をこわがって、思いきり歌えなくなる
もちろん、すべてのお子様がこうなるわけではありません。ただ、歌は、心の状態が声に出ることもあります。のびのびした気持ちでいられることは、歌にとっても大切です。
「ほかの子みたいに」は、とどきにくいことば
はげますつもりで、「ほかの子みたいに、大きな声で歌ってみたら」と言ってしまうこともあるかもしれません。
でも、お子様にとっては「いまの自分ではだめなんだ」と聞こえてしまうことがあります。お手本を伝えたいときは、ほかの子を引き合いに出さずに、「口を大きくあけてみようか」のように、することだけを伝えるほうが、とどきやすくなります。
あせる気持ちを小さくする考え方
声の育ちは、ひとりひとりちがう
歌声は、体の育ちとも関わっています。同じ年でも、体の大きさや、声の高さ、息の長さは、ひとりひとりちがいます。
ある時期にぐんとのびる子もいれば、ゆっくり少しずつのびていく子もいます。いま、ほかの子より目立たないからといって、この先もずっとそうとはかぎりません。
くらべる相手を「前のわが子」にする
くらべるなら、ほかの子ではなく、少し前のお子様とくらべてみてください。
- 前より、さいごまで歌えるようになった
- 前より、歌詞をおぼえるのが早くなった
- 前より、人の前で歌うのがいやではなくなった
- 前より、歌うときの姿勢がよくなった
こうした小さなのびは、ほかの子とくらべていると見のがしやすいものです。録音や録画をときどき残しておくと、あとで聞きくらべて、のびに気づきやすくなります。
「何のために習っているか」を思い出す
あせりが強くなったときは、歌を習いはじめたころの気持ちを思い出してみてください。
- 歌うことが好きだから
- 人の前で話したり歌ったりする自信をつけたいから
- 親子で楽しめることがほしかったから
もし「歌うのが楽しい」が大きな目的なら、ほかの子より早く上手になることは、いちばん大切なことではないかもしれません。目的にもどると、気持ちが少し軽くなることがあります。
結果は、その日のひとつの見方
コンクールの結果は、その日、その審査員が聞いた歌への評価です。お子様の歌のすべてを決めるものではありません。
結果がふるわなかったときのふりかえり方は、こちらの記事にまとめています。コンクールで思うような結果が出なかったとき。親子でのふりかえり方
「うちの子のペース」を見守るための工夫
お子様の気持ちを聞いてみる
お子様が自分でどう感じているかを、ときどき聞いてみてください。
- 「歌っていて、楽しいのはどんなとき?」
- 「つぎは、どんな歌を歌ってみたい?」
- 「むずかしいなと思うところはある?」
お子様が自分で「もっと上手になりたい」と思っているのか、「いまのままで楽しい」と思っているのかで、お父様・お母様の関わり方もかわってきます。
ほかの子のよいところは、そのままほめる
ほかの子の歌がすてきだったときは、「あの子の歌、きれいだったね」と、そのまま口にしてかまいません。くらべずに、よいところをみとめる姿は、お子様にとってもよいお手本になります。
大切なのは、そのあとに「それにくらべて、あなたは」とつづけないことです。
先生に、いまのようすを聞いてみる
おうちで見ているだけでは、お子様ののびがわかりにくいこともあります。そんなときは、先生に「いま、どんなところがのびていますか」と聞いてみるのもよい方法です。
先生は、ほかの子とのちがいではなく、その子なりのすすみぐあいを見てくれていることがあります。先生からのことばで、あせりがやわらぐこともあるでしょう。
お父様・お母様自身の時間も大切に
お子様の習い事に気持ちが向きすぎると、どうしても結果や順位が気になってしまいます。お父様・お母様が、自分の好きなことや、ほっとできる時間をもつことも、あせりを小さくする助けになります。
教室のふんいきが合っているかも見てみる
教室によっては、順位や競争を大切にしているところもあれば、楽しく歌うことを大切にしているところもあります。どちらがよいというわけではありませんが、お子様やご家庭の考えに合っているかどうかは大切です。
いまの教室のふんいきが、くらべる気持ちを強めていると感じるときは、ほかの教室を見てみるのもひとつの方法です。歌の教室さがし
お子様にかけたいことば、さけたいことば
あせる気持ちがあると、ついことばにも出てしまいます。ふだんの声かけを、少しだけ見直してみましょう。
かけたいことばの例 - 「今日の歌、楽しそうだったね」 - 「前より、声がよく出ていたね」 - 「その歌、聞いているとうれしくなるよ」 - 「つぎは、どこをがんばってみたい?」
さけたいことばの例 - 「ほかの子は、もうできているのに」 - 「なんで、あなただけできないの」 - 「このままだと、おいていかれるよ」
さけたいことばを言ってしまった日があっても、だいじょうぶです。あとから「さっきは言いすぎたね。いつも、がんばっているのを知っているよ」と伝えなおせば、お子様の気持ちもほぐれやすくなります。
自分をせめてしまうときに
「また比べてしまった」と落ちこむ日もあると思います。でも、くらべる気持ちを完全になくす必要はありません。
気づいたときに、「いま、くらべていたな」と心の中で思うだけでも、気持ちが少しずつ落ちつくことがあります。そして、お子様の歌のよいところを、ひとつ思い出してみてください。
才能があるかどうかで迷ったときの考え方は、こちらの記事もあわせて読んでみてください。「歌の才能がない」と思ったとき。才能より大切にしたいこと
まとめ
- 習い事でほかの子と比べてしまうのは、お子様を大切に思う気持ちから来ることがある
- 歌の習い事は、ほかの子の歌が聞こえやすく、くらべる場面がある
- 「ほかの子みたいに」より、することだけを伝えるほうがとどきやすい
- 声の育ちはひとりひとりちがい、のびる時期もちがう
- くらべる相手は、少し前のわが子にする
- 何のために習っているかを思い出すと、あせりが軽くなることがある
- お子様の気持ちを聞き、先生にもようすを聞いてみる
お子様のペースで歌をつづけていくなかで、ときどき、だれかに歌を聞いてもらえる場があると、はげみになることもあります。こどもの歌声グランプリは、オンラインの動画審査だけで出られる歌のコンクールです。幼児からシニア(65歳以上)までの8部門があり、ジャンルは自由です。出た方には、講評とデジタル賞状がとどきます。こどもの歌声グランプリ