「歌の才能がない」と思ったとき。才能より大切にしたいこと
「わたしには、歌の才能がないのかもしれない」 「まわりには、才能がある人ばかりに見える」
歌を習っていると、こんなふうに思ってしまう日があります。大人の方だけでなく、お子様が「ぼくは歌がへただから」「わたしには向いてない」と言うこともあります。
わたしは息子といっしょに、たくさんのコンクールに出てきました。
この記事では、「歌の才能がない」と感じたときの気持ちに目をむけてお話しします。才能がある人とくらべて苦しくなったときの考え方や、お子様がそう言ったときの声かけ、そして、才能よりも大切にしたいことをまとめました。
歌が上手い人に多い特ちょうや、練習でのばせるところについては、こちらの記事でくわしく書いています。歌が上手い人の特徴とは?生まれつき?練習でのばせることと、のばし方この記事では、練習のやり方よりも、心のほうにしぼって考えていきます。
「歌の才能がない」と思ってしまうのは、どんなとき?
がんばっているのに、思うように歌えないとき
練習をつづけているのに、高い声が出ない、音がずれる、声がふるえる。そんな日がつづくと、「やっぱり才能がないのかな」と思いやすくなります。
がんばっている人ほど、こう感じやすいものです。できないところに気づけるのは、それだけ歌にまじめにむき合っているからでもあります。
ほかの人の歌を聞いたとき
発表会やコンクール、動画などで、自分と同じくらいの年の人がのびのびと歌っているのを聞くと、心がざわっとすることがあります。
- あの人は、はじめから上手だったのかな
- わたしは、何年やってもあんなふうにはなれない
- 才能がある人には、かなわない
こうした気持ちは、とても自然なものです。歌が好きだからこそ、くらべてしまうのだと思います。
だれかに何か言われたとき
「声が小さいね」「音がちがうよ」と言われて、心にのこってしまうこともあります。言った人にとっては、軽いひとことだったかもしれません。でも、言われたほうは、ずっと気にしてしまうことがあります。
「才能がある人」は、どう見えている?
見えているのは、いまの姿だけ
上手に歌っている人を見ると、「生まれつきなんだろうな」と思いがちです。でも、わたしたちが見ているのは、その人の「いま」だけです。
その人が、どれくらいの時間、どんな練習をしてきたのか。うまくいかない日をどうすごしてきたのか。そこまでは、なかなか見えません。
才能のかたちは、ひとつではない
「歌の才能がある人」と聞くと、高い声がきれいに出る人や、声量がある人を思いうかべるかもしれません。でも、歌のよさは、それだけではありません。
- やわらかくて、聞いていてほっとする声
- ことばが、はっきりと伝わる歌い方
- 歌うのが楽しそうで、見ている人も笑顔になる
- 小さな声でも、気持ちがこもっている
- まわりの声をよく聞いて、合わせるのが得意
どれも、歌の大切な力です。自分では「ふつう」だと思っていることが、まわりから見ると、その人らしいよさになっていることもあります。
声は、ひとりひとりちがう楽器
声は、体そのものが楽器です。体の大きさや、顔のかたち、話し方のくせなどによって、ひとりひとりちがう音になります。
だれかと同じ声を目ざすより、「自分の声は、どんなところがすてきかな」と考えてみると、見え方が少しかわってきます。
くらべて苦しくなったときの考え方
くらべる相手を「前の自分」にかえてみる
ほかの人とくらべると、どうしても「足りないところ」ばかりが目に入ります。そんなときは、少し前の自分とくらべてみてください。
- 前より、息が長くつづくようになった
- 前より、人前で歌うのがこわくなくなった
- 前は知らなかった歌を、1曲歌えるようになった
小さなことでかまいません。前の自分とくらべると、ちゃんと歩いてきたことに気づきやすくなります。
録音をのこしておく
自分の声の変化は、毎日聞いていると気づきにくいものです。ときどきスマホで録音しておくと、しばらくたってから聞きくらべることができます。
「前は、こんなふうに歌っていたんだ」と思えると、それだけで少し心が軽くなることがあります。
「できないこと」と「まだできないこと」を分ける
「わたしは高い声が出ない」と思うのと、「わたしは、まだ高い声が出ない」と思うのとでは、気持ちが少しちがいます。
いまできないことは、ずっとできないとはかぎりません。「まだ」ということばをつけるだけで、先を楽しみにする気持ちがのこります。
苦しいときは、少し休んでもいい
くらべる気持ちが強くて、歌うのがつらくなってしまったときは、少しだけ歌からはなれてもだいじょうぶです。好きな歌を聞くだけの日や、ハミングだけの日があってもかまいません。
歌は、がまんしてつづけるものではありません。また「歌いたいな」と思えたときに、もどってくればいいのです。
お子様が「才能がない」と言ったとき
まずは、気持ちを受けとめる
お子様が「ぼく、歌の才能ないもん」と言ったとき、お父様・お母様は「そんなことないよ」と、すぐに言いたくなるかもしれません。
でも、まずは「そう思ったんだね」「くやしかったね」と、気持ちを受けとめてあげてください。気持ちをわかってもらえると、お子様は少し落ちつきます。
理由を、そっと聞いてみる
落ちついてきたら、「どうしてそう思ったの?」とやさしく聞いてみましょう。
- お友だちのほうが上手だった
- 先生に注意された
- 発表会で、思うように歌えなかった
- だれかに何か言われた
理由がわかると、どんなことばをかければいいか、考えやすくなります。からかわれたことがきっかけのときは、お子様の心のきずに、ていねいによりそってあげてください。
結果ではなく、とりくんだことをほめる
「上手だったね」だけでなく、「毎日練習していたね」「さいごまで歌いきったね」など、お子様がとりくんだことをことばにして伝えてみてください。
結果は、その日の体調や、まわりの人とのめぐり合わせでもかわります。でも、がんばった時間は、お子様の中にちゃんとのこります。
歌が子どもの自信につながっていくことについては、こちらの記事でもお話ししています。歌で子どもの自信を育てる。ほめ方とことばかけ
お父様・お母様の気持ちも、大切に
お子様がうまくいかないと、お父様・お母様のほうが不安になることもあります。「才能がないなら、やめさせたほうがいいのかな」と考えてしまう日もあるかもしれません。
そんなときは、「この子は、歌うことが好きかな」というところに、もう一度目をむけてみてください。好きな気持ちがあるなら、それはとても大切なたからものです。
才能より大切にしたいこと
「好き」という気持ち
歌をつづけるうえで、いちばんの力になるのは「好き」という気持ちだと思います。好きだから、もう一度歌ってみようと思える。好きだから、うまくいかない日もすごせる。
上手かどうかより、歌っているときに楽しいと感じられるかどうか。そこを大切にしてほしいと思います。
つづけること
声は、少しずつかわっていくものです。すぐに結果が見えなくても、つづけているうちに、ふと「前より楽に歌えている」と感じる日がくることがあります。
毎日長い時間でなくてもかまいません。好きな歌を口ずさむだけでも、歌とのつながりはたもたれます。
自分の声を、大切にすること
「才能がない」と思うと、自分の声まできらいになってしまうことがあります。でも、あなたの声は、あなたにしか出せない声です。
のどにむりをさせない、つかれたら休む、という小さな心がけも、自分の声を大切にすることにつながります。のどの痛みやかすれがつづくときは、むりをせず、耳鼻科などのお医者さんに相談してください。
聞いてくれる人がいること
家族や友だち、先生など、歌を聞いてくれる人がいると、それだけで歌う楽しさがふえます。「その歌、いいね」と言ってもらえたひとことが、つぎの一歩につながることもあります。
歌とのむき合い方を、少しかえてみるヒント
- 目標を「上手になる」から「この1曲を楽しく歌いきる」にかえてみる
- 練習のあとに、できたことを1つだけメモする
- 自分の声に合う曲を、先生といっしょにさがしてみる
- ときどき、だれかに聞いてもらう場をつくる
- 歌えなかった日があっても、自分をせめない
先生にみてもらうと、自分では気づかなかったよさを教えてもらえることもあります。近くの教室やオンラインのレッスンをさがすときは、こちらのページもつかってみてください。歌の教室さがし
まとめ
- 「歌の才能がない」と感じるのは、まじめに歌とむき合っているからこそ
- 才能がある人に見えても、見えているのは「いま」の姿だけ
- 歌のよさは、高い声や大きな声だけではなく、ひとりひとりちがう
- くらべる相手は「前の自分」に。録音をのこすと変化に気づきやすい
- お子様が「才能がない」と言ったら、まず気持ちを受けとめて、とりくんだことをほめる
- 才能より大切なのは、「好き」という気持ちと、むりなくつづけること
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