歌の声の調子が悪い日は、どう練習する?声が日によって違うときの考え方とすごし方
「きのうはきれいに出た高い音が、今日はまったく出ない」 「同じ歌なのに、日によって声の感じが違う」 「声の調子が悪い日は、練習したほうがいいの?休んだほうがいいの?」
歌を習っていると、こんなふうに声の調子のゆれに、とまどうことがあります。がんばって練習しているからこそ、うまく声が出ない日は、気持ちまで落ちこんでしまいますよね。
わたしは息子といっしょに、たくさんのコンクールに出てきました。
この記事では、「その日の声の調子のゆれ」にしぼって、考え方とすごし方をまとめます。声が日によって違うのはどうしてなのか、調子をたしかめる方法、調子が悪い日にできる軽い練習、そして、むりをしないためのめやすをお伝えします。
はじめにお伝えしたいのは、声の調子が日によって違うのは、ふしぎなことではない、ということです。声は、体の一部をつかって出す音です。体の調子が日によってかわるように、声もかわることがあります。どうか、調子の悪い日の自分をせめないでください。
声が日によって違うのは、ふしぎなことではない
声は「体でつくる音」
ピアノやギターは、同じようにひけば、だいたい同じ音が出ます。でも、歌の声は、のど、息、体の力のぬけぐあいなど、いろいろなものが合わさってできる音です。そのため、その日の体のようすが、声にそのままあらわれやすいと言われることもあります。
声の調子がゆれるのは、練習が足りないからとはかぎりません。歌を長くつづけている方でも、調子のよい日と、そうでない日があると言われます。
声の調子にかかわると言われること
声の調子が悪い日には、こんなことが重なっていることもあります。
- ねむりが浅かった、ねる時間が足りなかった
- 空気が乾燥していた、のどがかわいていた
- 前の日に、たくさん話した・大きな声を出した
- 仕事や家のことで、つかれがたまっている
- 気持ちが落ちこんでいる、心配ごとがある
- 気温や天気がかわって、体がだるい
- 食事の時間がずれた、おなかがすいている
どれが声に強くかかわるかは、人によってちがいます。また、思いあたることがなくても、声の調子がいまひとつな日もあります。理由がはっきりしない日があっても、それもふつうのことだと受けとめてみてください。
自分の耳の聞こえ方がかわることもある
声そのものではなく、自分の耳への聞こえ方がかわって、「今日は声が悪い」と感じることもあります。つかれている日や、気持ちがあせっている日は、ふだんより自分の声がきびしく聞こえることもあるようです。
「調子が悪い」と感じたときほど、少し落ちついて、本当に声が出にくいのか、気持ちのほうがつかれているのかを、分けて考えてみると、楽になることがあります。
今日の声の調子をたしかめる方法
歌う前に、小さな声で話してみる
いきなり歌いはじめる前に、まずはふつうの話し声で、少しおしゃべりをしてみてください。話し声が出しにくい、のどにひっかかる感じがする日は、歌う声にも、その感じが出ることがあります。
ハミングで、ひびきをたしかめる
口をとじて「んー」と、らくな高さでハミングをしてみます。鼻や口のまわりが、ほんのりひびく感じがあるか、とちゅうで声がとぎれないかを、やさしくたしかめます。強く出そうとせず、小さな声でかまいません。
自分だけの「調子のものさし」をつくる
毎回同じ、かんたんな練習をひとつ決めておくと、その日の調子をくらべやすくなります。
- いつも歌っている、らくな高さのフレーズを少しだけ歌う
- 同じ発声練習を、同じ高さからはじめる
- 声を出したときの感じを、「らく」「ふつう」「重い」のどれに近いか、心の中でつける
このものさしがあると、「今日は少し重いから、軽めにしよう」と、その日の練習の中身を決めやすくなります。
調子のメモを、かんたんにつける
ノートやスマートフォンのメモに、その日の声の感じと、思いあたることを、ひとことだけ書いておくのもよい方法です。
- 「声が重い。前の日によく話した」
- 「高い音が出にくい。部屋が乾燥していた」
- 「声がらく。よくねむれた」
しばらくつづけると、「自分は、ねむりが足りないと声が重くなりやすいかも」のように、自分なりの傾向が見えてくることもあります。上達の記録とはちがい、「調子の記録」と考えると、気軽につづけやすくなります。
声の調子が悪い日の、軽い練習メニュー
体と顔をほぐすところから
声の調子が悪い日は、いきなり歌うより、まずは体をほぐすところからはじめてみてください。肩をゆっくり回す、首をやさしくかたむける、ほおや口のまわりを手で軽くマッサージするなど、力をぬく動きがむいています。くわしいやり方は、こちらの記事でも紹介しています。歌う前の準備運動。体と顔をほぐす、やさしいストレッチ
声を出さない練習にきりかえる
声を出すのがつらい日は、声を出さない練習にきりかえるのもひとつの方法です。
- 楽譜を見ながら、心の中でメロディをたどる
- 歌詞のことばの意味を、ゆっくり読みかえす
- 先生のお手本や、自分の録音を聞いて、気づいたことをメモする
- 息をゆっくり、長くはく練習をする(声はつけない)
声を出さなくても、歌について考える時間は、ちゃんと練習になります。声を出さない練習のくわしい方法は、こちらにまとめています。声を出さない歌の練習。通勤中や家族がいるときにもできること
声を出すなら、らくな高さ・小さな声で
声を出せそうな日は、ふだんより音の高さを下げ、小さめの声で練習してみてください。
- 出にくい高い音は、今日はむりに出さない
- 曲を練習するときは、キーを下げて歌ってみる
- 大きな声を出すところは、ひかえめな気持ちでやさしく歌う
- ひとつの練習を、短めに切りあげる
調子の悪い日に、出にくい音を何回もためすと、声をつかいすぎてしまうことがあります。「今日はここまで」と、早めに区切ることも、大切な練習のうちです。
できたことを、ひとつ見つけて終わる
調子の悪い日は、「できなかったこと」ばかりが気になりやすいものです。練習の終わりには、「ハミングはらくだった」「歌詞の意味が深くわかった」など、できたことをひとつ見つけて、そこで終わりにしてみてください。それだけで、次の練習に向かう気持ちがかわることもあります。
練習を休んだほうがいいときのめやす
こんなときは、声を休める日に
次のようなときは、歌の練習はお休みにして、声をやすめることを考えてください。
- のどに痛みがある
- 声がかすれて、話すのもつらい
- 歌おうとすると、せきが出る
- 熱がある、体がだるくて起きているのもつらい
「休むと下手になるのでは」と心配になるかもしれません。でも、体がつらい日に歌いつづけるより、しっかり休んだほうが、あとで気持ちよく歌えることもあります。休む日も、歌をつづけるための大事な日です。
気になるようすが続くときは、お医者さんへ
のどの痛み、声のかすれ、声の出にくさなどが続くときや、いつもとちがうと感じる変化があるときは、自分だけで判断せず、耳鼻科(耳鼻咽喉科)などのお医者さんに相談してください。体のだるさや、気持ちの落ちこみが続くときも、内科などのお医者さんに話してみると安心です。
声の調子のゆれは、だれにでもあるものですが、「いつものゆれ」かどうかを決めるのは、自分ひとりではむずかしいこともあります。気になったら、早めに相談してみてください。
レッスンや本番の日に、調子が悪いとき
レッスンの前に、先生に伝える
レッスンの日に声の調子が悪いときは、はじめに先生に伝えてみてください。
- 「今日は、声が少し重いです」
- 「高い音が出にくい感じがします」
- 「のどが少しかわいた感じがします」
伝えておくと、先生がその日に合った練習を考えてくれることもあります。調子が悪い日だからこそ、体の力のぬき方や、声を守る歌い方を教えてもらえる、よい機会になることもあります。
本番は「その日の声で歌う」と考える
本番の日に、思うような声が出ないこともあります。そんなときは、「調子がよかった日の声」とくらべるのではなく、「今日の声で、ていねいに歌う」と考えてみてください。
- 出にくい音があっても、ことばを大切に歌う
- 気持ちをこめることに目を向ける
- 終わったら、「今日の声で歌いきった」と自分をほめる
体調が悪い日に、本番に出るか休むかで迷うときもあると思います。その考え方は、こちらの記事にまとめています。コンクール当日に体調がわるいとき。出るか休むかの考え方と、その日にできること
調子のゆれを小さくする、ふだんの工夫
声をつかいすぎない日をつくる
声の調子は、前の日のすごし方にもかかわると言われることがあります。たくさん話す予定の日のあとや、長く歌った日のあとは、意識して声をやすめる時間をつくってみてください。
ねむりと水分を大切にする
よくねむること、こまめに水分をとること、部屋の乾燥に気をつけることは、声の調子をととのえる助けになると言われることもあります。どれも、むりのない範囲でできることからはじめてみてください。
「調子の悪い日もある」と、前もって思っておく
いつも同じ声が出るのが当たり前、と思っていると、調子の悪い日に大きく落ちこんでしまいます。「声には波がある。今日はたまたま低いところ」と、前もって思っておくだけで、気持ちがずいぶん楽になることもあります。
まとめ
- 声の調子が日によって違うのは、ふしぎなことではない
- ねむり、乾燥、つかれ、気持ちなど、いろいろなことがかかわると言われるが、人によってちがう
- 話し声やハミング、いつもの練習をものさしにして、その日の調子をたしかめる
- 調子が悪い日は、体をほぐす、声を出さない練習、らくな高さ・小さな声の練習にきりかえる
- 痛みやかすれがあるときは休み、続くときは耳鼻科などのお医者さんに相談する
- レッスンでは先生に伝え、本番では「今日の声でていねいに歌う」と考える
声の調子とうまくつきあえるようになると、歌の時間が、もっと気楽で楽しいものになります。自分に合ったペースで声を見てくれる先生をさがしたいときは、歌の教室さがしもつかってみてください。そして、歌を楽しむ目標のひとつとして、こんな場もあります。こどもの歌声グランプリは、オンラインの動画審査だけで出られる歌のコンクールです。幼児からシニア(65歳以上)までの8部門があり、ジャンルは自由です。出た方には、講評とデジタル賞状がとどきます。こどもの歌声グランプリ