絶対音感と相対音感のちがい。歌に必要なのはどっち?
「絶対音感がないと、歌は上手にならないの?」 「うちの子、小さいうちに音感を育てたほうがいいのかな」
歌の習い事をはじめると、「絶対音感」という言葉を耳にすることがあります。なんだかすごい力のようで、「うちの子にはないから、むずかしいかも」と心配になるお父様・お母様もいるかもしれません。大人の方でも、「自分は音感がないから」と、歌をあきらめかけている方がいるかもしれません。
わたしは息子といっしょに、たくさんのコンクールに出てきました。歌を楽しむうえで、音感は大切な力のひとつです。でも、それは「あるか、ないか」だけで決まるものではありません。
この記事では、絶対音感と相対音感のちがい、歌に役立つのはどんな力か、そしておうちでできる音感あそびまで、やさしくまとめました。
絶対音感と相対音感、それぞれどんな力?
絶対音感とは
絶対音感は、ほかの音とくらべなくても、聞こえた音が「ド」なのか「ミ」なのかが、そのままわかる力のことをいいます。
たとえば、ピアノの音をひとつ鳴らしたとき、鍵盤を見なくても「これはソ」と答えられる人がいます。身のまわりの音、たとえば電子レンジの音やチャイムの音まで、音の名前で聞こえるという人もいるようです。
相対音感とは
相対音感は、ある音を基準にして、「そこからどれくらい高いか、低いか」を感じとる力です。
たとえば、「ド」の音を聞かせてもらったあとなら、つぎの音が「ミ」だとわかる。あるいは、音の名前はわからなくても、「さっきより少し高い」「3つ上がった」と感じられる。これが相対音感です。
じつは、多くの人がふだんから、この相対音感をつかっています。知っている歌を、どんな高さから歌いはじめても、メロディーとして歌えるのは、音と音の「間かく」を感じとっているからです。
かんたんにくらべると
- 絶対音感:ひとつの音だけで、音の名前がわかる
- 相対音感:音と音の関係(高さのちがい)がわかる
どちらがすぐれている、というものではありません。それぞれに、得意なことと、少しこまることがあります。
歌を歌うときに、役立つのはどっち?
歌でとくにつかうのは「音と音の関係」
歌を歌うとき、大切なのは、メロディーの音の上がり下がりを感じとり、ひとつ前の音から、つぎの音へ正しくうつっていくことです。また、伴奏やほかの人の声を聞いて、そこに自分の声を合わせることも大切です。
こうした力は、相対音感と深くかかわっています。そのため、絶対音感がなくても、歌を楽しむことも、上達することも十分にできます。
絶対音感があると、べんりなこと
絶対音感がある人は、楽譜を見なくても、聞いた曲の音をそのまま知ることができます。耳コピがしやすかったり、音の高さをすばやくつかめたりと、べんりな場面もあります。
絶対音感があっても、こまることもある
一方で、こんな話を聞くこともあります。
- 曲の高さ(キー)をかえて歌うと、知っている音とずれて気持ちが悪く感じる
- 合唱で、まわりと少し高さがずれていると、気になってしまう
- 楽器の調律がずれていると、歌いにくく感じる
歌では、声の高さに合わせて、曲のキーを上げたり下げたりすることがよくあります。そうしたときに、相対音感の力があると、らくに合わせられます。
いちばん大切なのは「聞く力」と「合わせる力」
絶対音感か相対音感か、ということよりも、歌では「よく聞いて、声で合わせる力」が大切です。音程がうまく合わないときの練習は、こちらの記事にもまとめています。子どもの歌の音程が合わないとき。おうちでできるやさしい練習
「何歳までに」と、あせらなくてだいじょうぶ
音感は、人それぞれ
絶対音感について、「小さいうちでないと身につかない」という話を聞いて、あせってしまうお父様・お母様もいるかもしれません。でも、音感の育ち方には、とても個人差があります。
小さなお子様に、無理に音あてのテストをくりかえすと、音楽そのものが楽しくなくなってしまうこともあります。音感は、「身につけさせなければ」とがんばるものではなく、音楽を楽しむ中で、自然に育っていくものだと考えてみてください。
大人になってからでも、育てられる力がある
「自分は音感がない」と感じている大人の方も、あきらめなくてだいじょうぶです。音と音の関係を感じる力、伴奏を聞いて合わせる力は、大人になってからでも、練習で少しずつ育てていくことができます。
はじめは「さっきより高い?低い?」がわかるだけでも、立派な一歩です。
おうちでできる、音感を育てるあそび
小さなお子様むけ
- 高い音・低い音あそび:ピアノやおもちゃの楽器で、高い音のときは手を上に、低い音のときは手を下にする
- まねっこ歌:お父様・お母様が短く「ラララ」と歌い、お子様が同じ高さでまねをする
- 動物の声あそび:小鳥は高い声、くまは低い声など、高さを声で表してみる
- 知っている童謡を、手をたたきながらいっしょに歌う
どれも、正解か不正解かを気にせず、楽しむことがいちばんです。
小学生くらいのお子様むけ
- ドレミで歌う:知っている曲を、歌詞ではなく「ドレミ」で歌ってみる
- 音あてクイズ:「ド」を鳴らしたあとに、ほかの音を鳴らして、何の音かを考える
- ハモリあそび:かんたんな曲で、ちがう音を同時に歌ってみる
ドレミで歌う練習や、音を聞きとる練習は、ソルフェージュとよばれることもあります。くわしくは、こちらの記事でもふれています。ドレミで歌う練習。ソルフェージュとは?子どもにも大人にもやさしく
大人の方むけ
- アプリやピアノで「ド」の音を出し、そこから「ドレミファソ」と声で上がってみる
- 好きな曲を歌って録音し、伴奏とずれていないか聞いてみる
- 鼻歌で、聞いた音と同じ高さを出してみる
1回5分くらいの短い時間でも、くりかえすうちに、音のちがいに気づきやすくなります。
音感を育てるときに、気をつけたいこと
「できない」を責めない
音がずれても、「ちがう」と強く言うのではなく、「もう一回、いっしょに聞いてみよう」と声をかけてあげてください。音感は、くりかえしの中で少しずつ育つものです。
のどに無理をさせない
音を合わせようとして、高い声を何度も出しすぎると、のどがつかれてしまいます。練習は短めにして、こまめに水を飲みましょう。のどの痛みやかすれが続くときは、無理をせず、耳鼻科などのお医者さんに相談してください。
先生に相談してみる
歌の教室に通っている場合は、「音程をとるのが苦手」「音感を育てたい」と先生に伝えてみましょう。いまの声や耳の状態に合わせて、練習のしかたを考えてくれることが多いです。
音感と、歌の「表現」の関係
音程が合うことは、スタートライン
音程が合っていると、聞いている人は安心して歌に耳をかたむけられます。でも、歌の魅力は、それだけではありません。ことばの伝え方、声の強弱、気持ちのこめ方など、音程の上に重ねていくものがたくさんあります。
音感は「聞く耳」を育ててくれる
音感が育つと、自分の声だけでなく、伴奏のひびきや、ほかの人の声にも気づきやすくなります。「ここは伴奏がやさしいから、声もやわらかくしよう」といったように、まわりをよく聞くことが、表現のゆたかさにもつながっていきます。
音感は、表現の土台をささえる力のひとつ、と考えてみてください。
よくある質問
絶対音感がないと、コンクールで不利になる?
歌のコンクールでは、音程のほかにも、声の出し方、ことばの伝え方、表現など、いろいろなところが聞かれます。絶対音感があるかないかだけで、結果が決まるわけではありません。
楽器を習うと、音感は育つ?
ピアノなどの楽器を習うことで、音の高さや音名にふれる機会がふえるのは、たしかです。ただ、楽器を習わないと音感が育たない、というわけではありません。歌うこと、よく聞くことも、十分に音感を育てる練習になります。
子どもに「絶対音感があるか」を調べたほうがいい?
無理に調べる必要はありません。それよりも、お子様が歌や音楽を楽しめているかを、大切にしてあげてください。
まとめ
- 絶対音感は、ひとつの音だけで音の名前がわかる力
- 相対音感は、音と音の関係(高さのちがい)を感じとる力
- 歌で大切なのは、よく聞いて、声で合わせる力
- 絶対音感がなくても、歌を楽しみ、上達することはできる
- 「何歳までに」とあせらず、楽しみながら音感を育てる
- おうちでは、高い音・低い音あそびや、ドレミで歌う練習がおすすめ
- のどに無理をさせず、痛みやかすれが続くときはお医者さんに相談する
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