歌に抑揚をつける方法。強弱と声の色で、気持ちが伝わる歌に
「音程は合っているのに、なんだか平らに聞こえる」 「先生に、歌に抑揚がないと言われてしまった」
歌の練習をしていると、こんななやみにぶつかることがあります。音程もリズムもまちがえていないのに、聞いている人の心にとどきにくい。そんなとき、足りないことが多いのが「抑揚」です。
わたしは息子といっしょに、たくさんのコンクールに出てきました。心にのこる歌には、声の大きさや明るさが、曲の中で自然にかわっていくものが多いと感じます。
この記事では、歌に抑揚をつける方法を、強弱のつけ方と、声の色のかえ方にしぼってお話しします。歌詞の意味を読みこんで気持ちをこめる方法は、こちらの記事にまとめていますので、あわせて読んでみてください。歌に気持ちをこめるには?歌詞の読みこみ方と、表情・声の色のつけ方
歌の抑揚とは?
声の「山」と「谷」のこと
歌の抑揚とは、声の大きさや強さ、明るさなどを、曲の中でかえていくことです。ずっと同じ大きさ、同じ声で歌うと、平らな道を歩いているように聞こえます。そこに山や谷があると、聞いている人は「次はどうなるのかな」と、歌に引きこまれていきます。
抑揚をつくる3つの道具
抑揚は、主にこの3つでつくることができます。
- 強弱:声を大きくしたり、小さくしたりする
- 声の色:明るい声、くらい声、やわらかい声、かたい声をつかい分ける
- 間(ま)とはやさ:少しためる、すっと進む
この記事では、とくに「強弱」と「声の色」を中心に、練習のしかたをお話しします。
歌に抑揚がないと感じる原因
ずっと同じ大きさで歌っている
いちばん多いのが、さいしょからさいごまで、同じくらいの声の大きさで歌っていることです。とくに、「大きな声で歌わなきゃ」と思っていると、ずっと強い声のまま歌い続けて、かえって平らに聞こえてしまいます。
音をとるだけで、せいいっぱいになっている
新しい曲をおぼえたばかりのときは、音程や歌詞をまちがえないことに気持ちがいっぱいで、強弱まで考えるよゆうがありません。これは、だれにでもあることです。曲になれてきたら、少しずつ抑揚のことを考えていけばだいじょうぶです。
自分では、つけているつもりになっている
歌っている本人は「強弱をつけている」つもりでも、録音して聞くと、あまりかわっていないことがよくあります。歌っているときに感じるより、少し大げさにかえるくらいで、聞いている人にはちょうどよく聞こえることが多いです。
強弱のつけ方
曲の中で、いちばん大きいところを決める
まずは、曲の中で「ここがいちばん大きく歌いたいところ」を1か所決めましょう。多くの曲では、さいごのサビのあたりになることが多いです。いちばん大きいところが決まると、そこに向かって、ほかの部分をどのくらいの大きさで歌うかを考えやすくなります。
「5段階の大きさ」をつくってみる
声の大きさを、1から5の数字で考えてみるのも、わかりやすい方法です。
- 1:ささやくくらいの、小さな声
- 2:やさしく話しかけるくらいの声
- 3:ふつうに歌う声
- 4:少し力強い声
- 5:いちばん大きく、ひびかせる声
歌詞カードや楽譜に、フレーズごとに「2」「3」「5」と数字を書きこんでみましょう。楽譜にある強弱記号の意味は、こちらの記事でくわしく紹介しています。歌の楽譜によく出る記号の意味。強弱記号の一覧と、速さ・くりかえしの記号
フレーズの中でも、小さな山をつくる
ひとつのフレーズの中でも、声の大きさは少しずつかわります。多くのフレーズは、まん中あたりや、大切なことばのところに向かって少しふくらみ、おわりに向かって、やさしくおさまっていくと自然に聞こえます。
たとえば「ふるさとの山を思う」というフレーズなら、「山」に向かって少しふくらみ、「思う」で、ゆっくりおさめていく、というイメージです。
小さな声こそ、ていねいに
強弱をつけるとき、むずかしいのは、じつは小さな声のほうです。小さく歌おうとすると、声がかすれたり、音程が下がったりしやすくなります。小さな声でも、息をしっかり流して、声のひびきはたもったまま、ボリュームだけをしぼるイメージで歌いましょう。
大きな声は、どならない
大きく歌うところでは、のどに力を入れてさけぶのではなく、体ぜんたいでひびかせるように歌います。どなるような声になると、聞いている人には、強弱よりも「苦しそう」という印象がのこってしまいます。
つけすぎにも気をつける
抑揚は、つければつけるほどよい、というものではありません。1つのフレーズの中で、大きくなったり小さくなったりを何回もくり返すと、落ちつかない歌に聞こえてしまいます。
- 大きな山は、1曲の中で1つか2つにしぼる
- 小さな山は、フレーズに1つくらいにする
- 曲のふんいきに合っているか、録音してたしかめる
「平らすぎず、ゆれすぎず」をめざすと、聞いている人が気持ちよく聞ける歌になっていきます。
声の色のかえ方
明るい声と、くらい声
同じ大きさでも、声の明るさをかえると、ちがった感じに聞こえます。
- 明るい声:口角を少し上げて、ほほえむような顔で歌う
- くらい声:口の中をたてにひろげて、少しおちついた顔で歌う
楽しい歌詞のところは明るく、さびしい歌詞のところは少しくらく、と色をかえるだけで、歌の表情がぐっとゆたかになります。
やわらかい声と、かたい声
息を少し多めにまぜると、やわらかい声になります。反対に、息をおさえて、声をしっかりあてると、かたく、はっきりした声になります。やさしい気持ちのところはやわらかく、決意や強い気持ちのところは、はっきりした声で、とつかい分けてみましょう。
顔の表情をかえてみる
声の色は、顔の表情と深くつながっています。鏡の前で、笑顔で歌ったり、少しかなしい顔で歌ったりしてみると、声がしぜんにかわるのがわかると思います。お子様には、「うれしい顔で歌ってみよう」「さびしい顔で歌ってみよう」と声をかけると、あそびのように楽しめます。
抑揚をつける練習のしかた
1 同じフレーズを、3つの大きさで歌う
短いフレーズを1つえらび、「小さく」「ふつう」「大きく」の3通りで歌ってみます。そのあと、小さくはじめて、だんだん大きくする、大きくはじめて、だんだん小さくする、という歌い方もためしてみましょう。
2 同じフレーズを、ちがう気持ちで歌う
同じフレーズを、「うれしそうに」「さびしそうに」「おこったように」など、ちがう気持ちで歌ってみます。声の色が、どのようにかわるかを感じてみてください。
3 歌詞カードに、山と谷を書きこむ
曲ぜんたいを見て、どこが山で、どこが谷かを、えんぴつで書きこんでみます。線をかいて、上がるところ、下がるところを目で見えるようにするのもおすすめです。
4 録音して、聞きくらべる
抑揚の練習でいちばん大切なのが、録音です。歌っているときの感じと、録音で聞いた感じは、かなりちがうことが多いです。「もっと小さくてもいいかも」「ここは、もっとふくらませたい」と気づいたら、また歌ってみる。このくり返しで、抑揚は少しずつ身についていきます。
5 上手な歌手の歌を、強弱に注目して聞く
好きな歌手の歌を、「どこで大きくなるか」「どこで小さくなるか」だけに注目して聞いてみましょう。同じ曲でも、歌手によって山のつくり方がちがうことに気づくと思います。
お子様の練習では
お子様に「抑揚をつけて」と言っても、なかなか伝わりにくいものです。そんなときは、ことばをかえてみましょう。
- 「ここは、ないしょ話の声で歌ってみよう」
- 「ここは、遠くのお友だちに聞こえるように歌ってみよう」
- 「ここは、うれしい気持ちで歌ってみよう」
できたときは、「今の小さな声、すてきだったね」と、具体的にほめてあげてください。大きな声だけでなく、小さな声もほめてもらえると、お子様は強弱のおもしろさに気づきやすくなります。
気をつけたいこと
大きな声を出す練習を、長い時間続けると、のどがつかれてしまいます。練習は短い時間で区切り、つかれたら休みましょう。歌ったあとに、のどの痛みやかすれが続くときは、むりをせず、耳鼻科などのお医者さんに相談してください。
まとめ
- 歌の抑揚とは、声の大きさや明るさを、曲の中でかえていくこと
- 抑揚がないと感じる原因は、ずっと同じ大きさで歌っていることが多い
- まず、曲の中でいちばん大きいところを1か所決める
- 声の大きさを5段階で考え、歌詞カードに書きこむ
- フレーズの中にも、小さな山をつくる
- 明るい声、くらい声、やわらかい声、はっきりした声をつかい分ける
- 録音して、思っているより少し大げさにかえてみる
- のどの痛みやかすれが続くときは、お医者さんに相談する
抑揚がつくと、同じ歌でも、聞いている人への伝わり方が大きくかわります。練習した歌をだれかに聞いてもらいたくなったら、こどもの歌声グランプリものぞいてみてください。オンラインの動画審査だけで出られて、幼児からシニア(65歳以上)までの8部門があり、ジャンルは自由です。講評とデジタル賞状がとどくので、自分の歌の表現が、聞いている人にどう伝わっているかを知るきっかけになると思います。こどもの歌声グランプリ