歌の楽譜によく出る記号の意味。強弱記号の一覧と、速さ・くりかえしの記号
「楽譜に、pやfって書いてあるけれど、どういう意味?」 「くりかえしの記号があって、どこにもどればいいのか、わからなくなる」
歌の楽譜には、音符のほかにも、いろいろな記号が書かれています。お子様の楽譜を見て、「これは何だろう」と思ったことがあるお父様・お母様も多いと思います。大人になってから歌をはじめた方も、同じようにまよいやすいところです。
わたしは、息子といっしょに、たくさんのコンクールに出てきました。楽譜の記号は、作曲した人が「こんなふうに歌ってほしい」とのこしてくれた、大切なメッセージです。意味がわかると、歌い方のヒントがぐっとふえます。
この記事では、歌の楽譜によく出る記号の意味を、強弱、速さ、くりかえし、音のつなぎ方に分けて、一覧にしてまとめます。音符や休符のよみ方からはじめたい方は、こちらの記事を先に読んでみてください。楽譜が読めなくても歌える?楽譜のよみ方のはじめの一歩
楽譜の記号は、作った人からの手紙
楽譜の記号の多くは、イタリア語がもとになっています。むずかしそうに見えますが、歌によく出てくる記号は、そんなに多くありません。
記号を見たときに考えたいのは、次の3つです。
- どのくらいの強さで歌うのか
- どのくらいの速さで歌うのか
- どこをくりかえして、どこで終わるのか
この3つがわかるだけでも、楽譜を見ながら歌うのが、ずっとらくになります。
強弱記号の一覧
基本の強弱記号
強弱記号は、音の強さ、つまり声の大きさや勢いをあらわす記号です。よく出てくるものを、弱いものから順にならべました。
| 記号 | 読み方 | 意味 |
|---|---|---|
| pp | ピアニッシモ | とても弱く |
| p | ピアノ | 弱く |
| mp | メゾピアノ | 少し弱く |
| mf | メゾフォルテ | 少し強く |
| f | フォルテ | 強く |
| ff | フォルティッシモ | とても強く |
pは「ピアノ」と読みますが、楽器のピアノではなく「弱く」という意味です。fは「フォルテ」で「強く」です。「メゾ」は「少し」という意味なので、mpは少し弱く、mfは少し強く、となります。
歌うときのポイント
強弱記号は、声の大きさだけで考えないことが大切です。
- p(弱く)でも、息を止めずに、声がとどくように歌う
- f(強く)でも、どならずに、ひびきのある声で歌う
- mpとmfのちがいは、少しでもいいので、意識してみる
とくにお子様は、fを見ると、つい大きな声でさけぶように歌ってしまうことがあります。のどに力が入ると、声がつかれやすくなります。「大きな声」より「ゆたかな声」をイメージするように伝えてあげてください。
だんだん強く・だんだん弱く
| 記号 | 読み方 | 意味 |
|---|---|---|
| cresc. または < の形 | クレッシェンド | だんだん強く |
| decresc. または > の形 | デクレッシェンド | だんだん弱く |
| dim. | ディミヌエンド | だんだん弱く |
横に長い「<」の形の記号は、口が開いていくように、だんだん強くします。「>」の形は、その反対で、だんだん弱くします。形が、ひらいた口やとじていく口のように見えるので、お子様にも伝えやすい記号です。
歌うときは、記号のはじめから急に強くするのではなく、少しずつかえていくのがコツです。
1つの音を強くする記号
- アクセント(音符の上や下の「>」の形):その音を、とくに強く、はっきりと
- sf、sfz(スフォルツァンド):その音だけを、急に強く
- fp(フォルテピアノ):強く出して、すぐに弱く
アクセントは、だんだん強くの記号とにていますが、音符のすぐそばに小さく書かれます。歌では、ことばのはじめを少しはっきり言うようなイメージで歌うと、のどにやさしく表現できます。
速さの記号
速さをあらわすことば
曲のはじめに書かれていることが多いのが、速さの記号です。
| 記号 | 読み方 | 意味 |
|---|---|---|
| Largo | ラルゴ | ゆるやかに、はばひろく |
| Adagio | アダージョ | ゆるやかに |
| Andante | アンダンテ | 歩くような速さで |
| Moderato | モデラート | 中くらいの速さで |
| Allegretto | アレグレット | やや速く |
| Allegro | アレグロ | 速く |
Andanteの「歩くような速さ」は、走らず、のんびりしすぎない速さです。童謡や唱歌にも、よく出てきます。
数字で書かれた速さ
音符と「=」と数字がならんでいる記号もあります。たとえば「四分音符=96」なら、1分間に四分音符を96回打つ速さ、という意味です。メトロノームをつかうと、この速さをたしかめることができます。
速さをかえる記号
| 記号 | 読み方 | 意味 |
|---|---|---|
| rit. | リタルダンド | だんだんおそく |
| rall. | ラレンタンド | だんだんおそく |
| accel. | アッチェレランド | だんだん速く |
| a tempo | ア・テンポ | もとの速さで |
rit.は、曲の終わりの近くによく出てきます。急におそくするのではなく、ブレーキを少しずつかけるようにします。そのあとにa tempoがあれば、もとの速さにもどります。
のばす記号
- フェルマータ(半円の中に点がある形):その音や休みを、ほどよく長くのばす
どのくらいのばすかは、決まっていません。曲のふんいきや、先生の指示によってかわります。伴奏の人と合わせるときは、息をそろえるところなので、練習のときに、のばす長さを話しておくと安心です。
くりかえしの記号
リピート記号
太い線と細い線に、点が2つついた記号です。「:」が右がわについている記号から、左がわについている記号までを、くりかえして歌います。はじめの記号がないときは、曲のはじめにもどります。
1かっこ・2かっこ
くりかえしのところに、「1.」「2.」と書かれたかっこがあることがあります。1回目は「1.」のところを歌い、くりかえした2回目は「1.」をとばして、「2.」のところを歌います。歌詞の1番と2番で、終わり方がちがうときによくつかわれます。
D.C.、D.S.、Fine、Coda
| 記号 | 読み方 | 意味 |
|---|---|---|
| D.C. | ダ・カーポ | 曲のはじめにもどる |
| D.S. | ダル・セーニョ | セーニョ記号のところにもどる |
| Fine | フィーネ | ここで終わり |
| Coda | コーダ | 曲の終わりの部分 |
セーニョ記号は、Sの字にななめの線と点がついた形です。Codaへ進む場所には、まるに十字の形の記号が書かれることが多いです。
くりかえしの記号が多い曲は、はじめに楽譜をながめて、「どこからどこへ進むのか」を指でたどってみましょう。歌いながらだと、まよいやすいからです。
音のつなぎ方の記号
スラーとタイ
どちらも、音符と音符をむすぶ、弓のような線です。
- スラー:ちがう高さの音を、なめらかにつなげて歌う
- タイ:同じ高さの音をつないで、1つの長い音として歌う
歌では、1つのことばを、いくつかの音にのせて歌うところにスラーがつくことがよくあります。タイは、ことばを言いなおさずに、そのまま声をのばします。
スタッカートとテヌート
- スタッカート(音符の上や下の小さな点):音を短く切って歌う
- テヌート(音符の上や下の短い横線):その音の長さを、じゅうぶんにたもって歌う
スタッカートは、はずむような明るい曲によく出てきます。音を切るときも、のどをしめずに、おなかからはずむように息をつかうと歌いやすくなります。
息つぎの記号
楽譜によっては、小さな「V」の形や「,」のような記号で、息つぎの場所が書かれていることがあります。書かれていないときは、ことばの切れ目などで、自分で息つぎの場所を決めます。
歌の表情をあらわすことば
強弱や速さのほかに、歌い方の気持ちをあらわすことばが書かれていることもあります。
- dolce(ドルチェ):やさしく、あまく
- cantabile(カンタービレ):歌うように
- espressivo(エスプレッシーヴォ):表情ゆたかに
- legato(レガート):なめらかに
- grazioso(グラツィオーソ):かわいらしく、優雅に
こうしたことばは、「どんな気持ちで歌うか」を考えるヒントになります。意味を知ったうえで、歌詞の内容とあわせて考えてみると、歌の表情がゆたかになります。
記号をおぼえるコツ
- 一度に全部おぼえようとしない
- いま練習している曲に出てくる記号から、意味をしらべる
- 意味がわかったら、楽譜のそばに小さくメモしておく
- 声に出して読み方を言ってみる
記号は、曲の中で出会うたびに、少しずつおぼえていけばだいじょうぶです。課題曲の練習のすすめ方は、こちらの記事でもまとめています。コンクールの課題曲の練習のすすめ方。楽譜をもらってから本番までの流れ
まとめ
- 楽譜の記号は、作った人からの「こう歌ってほしい」というメッセージ
- 強弱記号は、pp・p・mp・mf・f・ffの6つが基本
- fでもどならず、pでも息を止めずに歌う
- 速さの記号は、曲のはじめや、速さがかわるところに書かれる
- くりかえしの記号は、歌う前に指でたどって進み方をたしかめる
- スラー・タイ・スタッカートなど、音のつなぎ方の記号も歌い方のヒントになる
記号の意味がわかると、楽譜を見ながら歌うのが、ぐっと楽しくなります。練習してきた歌をだれかに聞いてもらいたくなったら、こどもの歌声グランプリものぞいてみてください。オンラインの動画審査だけで出られて、幼児からシニア(65歳以上)までの8部門があり、ジャンルは自由です。講評とデジタル賞状がとどくので、強弱や表情をつけて歌えているか、ふりかえるきっかけにもなると思います。こどもの歌声グランプリ