歌に気持ちをこめるには?歌詞の読みこみ方と、表情・声の色のつけ方
「もっと気持ちをこめて歌ってみよう」
歌のレッスンや合唱の練習で、こんなことばを聞いたことはありませんか。言われたほうは、「気持ちって、どうやってこめるの?」とこまってしまいますよね。お子様に言ってあげたいけれど、どう説明したらいいかわからない、というお父様・お母様もいらっしゃると思います。
わたしは息子といっしょに、たくさんの歌のコンクールに出てきました。そのなかで、音程やリズムがととのっている歌のなかにも、「心にのこる歌」と「さらっと流れていく歌」があると感じてきました。そのちがいのひとつが、歌い手が歌詞のことばをどれだけ自分のものにしているか、ということだと思います。
この記事では、歌に気持ちをこめるために、歌詞をどう読みこむか、表情や声の色をどうつけるかを、順番にまとめます。お子様にも大人の方にもつかえる方法です。お子様と練習するときは、お父様・お母様がいっしょに読みすすめてみてください。
「気持ちをこめる」って、どういうこと?
大きな声や、大げさな顔ではない
「気持ちをこめて」と言われると、声を大きくしたり、顔をくしゃっとさせたりしたくなるかもしれません。でも、気持ちをこめることは、大げさにすることとはちがいます。
気持ちをこめるとは、かんたんに言うと、
- 歌詞の意味を知っている
- その歌の場面や、だれの気持ちなのかを思いうかべている
- その思いが、声や顔に自然に出ている
ということです。いちばん大切なのは、まず歌い手自身が、歌の中の景色や気持ちを「見ている」ことです。
聞く人には、ちゃんとつたわる
ふしぎなことに、歌い手が場面を思いうかべながら歌っていると、聞いている人にもそれがつたわります。反対に、歌詞を「音」としておぼえているだけだと、声はきれいでも、どこか遠くに感じることがあります。
審査がある場では、こうした「表現」も見られることが多いです。審査員がどこを見ているかについては、こちらの記事でくわしく書いています。歌のコンクール、審査員はどこを見ている?点数につながる7つのポイント
歌詞の読みこみ方
1. まずは、メロディなしで声に出して読む
歌詞を読みこむとき、さいしょにおすすめしたいのは、メロディをつけずに、ふつうの話しことばとして読んでみることです。
- 句読点(「、」や「。」)があるつもりで、区切りながら読む
- だれかに話しかけるように読む
- 読みにくいところ、意味がわからないところに印をつける
歌として歌っているときには気づかなかった、ことばのつながりや、文のおわりが見えてきます。
2. わからないことばを、しらべる
童謡や古い歌には、いまはあまりつかわないことばが出てくることがあります。お子様といっしょに、辞書やスマホでしらべてみてください。
- そのことばは、どんな意味か
- どんなものか(写真や絵を見てみる)
- いまのことばで言うと、どうなるか
意味がわかるだけで、歌い方がかわることがあります。「なんとなく」歌っていたことばが、「知っている」ことばにかわるからです。
3. 「だれが」「どこで」「なにを思っているか」を考える
歌詞には、たいてい主人公がいます。次のことを、ノートに書き出してみましょう。
- だれが歌っている歌か(子ども、お母さん、旅をする人など)
- どこにいるのか(海、山、まちの中、家の中など)
- いつのことか(朝、夕方、春、冬など)
- その人は、なにを感じているのか(うれしい、さびしい、なつかしいなど)
小さなお子様なら、絵をかいてもらうのもよい方法です。歌の場面を絵にしてみると、「この子は、どんな顔をしているかな?」と、気持ちを考えるきっかけになります。
4. 1番と2番、3番のちがいを見る
同じメロディでも、1番と2番、3番では、場面や気持ちがかわっていることがよくあります。
- 時間がすすんでいる(朝から夕方へ、など)
- 場所がかわっている
- 気持ちが、少しずつ変化している
「1番はわくわく、2番は少しさびしく、3番はやさしく」のように、それぞれの番に小さなテーマをつけてみると、同じメロディをくりかえしても、たいくつに聞こえにくくなります。
5. いちばんつたえたいことばを、えらぶ
歌詞の中から、「ここがいちばん大切」と思うことばを、1つか2つえらびます。そのことばを、ていねいに、大切にとどけようと思って歌うだけで、歌全体に芯(しん)が通ります。
全部のことばを強く歌おうとすると、かえって何をつたえたいのかがわかりにくくなります。強めるところと、やわらかく流すところがあるから、大切なことばが生きてきます。
表情のつけ方
顔は「歌の主人公の顔」に
表情は、作るものというより、場面を思いうかべたときに自然に出てくるものです。それでも、なれないうちは、少しだけ意識してみるとよいと思います。
- 明るい歌:目を少し大きく開け、口角(口のはし)を少し上げる
- やさしい歌:目もとをやわらかくし、まゆの力をぬく
- さびしい歌:まゆを少しだけよせ、目線を少しおとす
どれも「少しだけ」がポイントです。やりすぎると、歌よりも顔のほうが気になってしまいます。
目線を決めておく
歌っているとき、目がきょろきょろしたり、ずっと下を見ていたりすると、気持ちがつたわりにくくなります。
- 遠くの景色を歌うところは、会場のおくのほうを見る
- 近くのだれかに話しかけるところは、少し手前を見る
- 思い出をふりかえるところは、少し上を見る
こうして、歌詞に合わせて目線を決めておくと、聞く人も同じ景色を思いうかべやすくなります。
鏡や動画で、たしかめる
自分の顔は、自分では見えません。鏡の前で歌ってみたり、スマホで録画して見てみたりすると、「思っていたより無表情だった」ということに気づくことがあります。お子様の場合は、見たあとに「ここの顔、すてきだったね」と、よいところから声をかけてあげてください。
声の色のつけ方
「声の色」ってなに?
同じ高さ、同じ大きさの声でも、明るく聞こえる声、くらく聞こえる声、やわらかい声、かたい声があります。これを、ここでは「声の色」とよびます。気持ちは、声の大きさだけでなく、この声の色でもつたわります。
口の形と、息の量でかわる
声の色は、むずかしいテクニックがなくても、少しの工夫でかわります。
- 明るい声:口角を少し上げ、口を横に少しひろげるイメージ
- あたたかい声:口の中を少しひろくして、息をやわらかく流す
- ささやくような声:息を少し多めにまぜて、声をやさしく出す
- 力強い声:おなかからしっかり息をささえて、ことばをはっきり言う
「ほほえんでいる顔で歌うと、声も明るくなる」というように、表情と声の色はつながっています。
ことばの「はじめの音」を大切に
気持ちをつたえるとき、ことばのはじめの音を、少しだけていねいに歌うと効果的です。たとえば、なつかしい気持ちのことばは、はじめの音をそっとおくように。うれしい気持ちのことばは、はじめの音をはずむように。ことばがはっきり聞こえることも、気持ちをつたえる土台になります。
のどに力を入れすぎない
気持ちを入れようとすると、のどにぎゅっと力が入ってしまうことがあります。とくに、さびしい歌やかなしい歌で、声をふるわせようとして、のどをしめてしまう方がいます。
のどが苦しくなったり、声がかすれたりするときは、表現よりも、まずらくに声を出すことを大切にしてください。かすれやいたみが何日もつづくときは、耳鼻科などのお医者さんに相談しましょう。
お子様と練習するときのコツ
「どう思う?」と聞いてみる
お子様に「ここは、さびしく歌って」と言うより、「この子は、いまどんな気持ちだと思う?」と聞いてみてください。自分で考えた気持ちのほうが、歌に自然に出てきます。お子様の答えが大人の考えとちがっていても、まずは「そう思ったんだね」と受けとめてあげることが大切です。
お話をつくってみる
歌詞の前とあとに、どんなことがあったのか、お子様といっしょにお話をつくってみるのも楽しい方法です。「この子は、このあとどうしたのかな?」と想像がふくらむと、歌う顔もいきいきしてきます。
曲えらびのときから、気持ちを考える
お子様が気持ちをこめやすいのは、歌詞の内容がわかる歌、共感できる歌です。コンクールや発表会の曲をえらぶときは、お子様が「この歌、すき」と思えるかどうかも大切にしてみてください。童謡の曲のえらび方は、こちらの記事にまとめています。童謡コンクールの曲のえらび方。年れい別のおすすめと、さけたいえらび方
大人の方へ
大人の方は、人生の経験があるぶん、歌詞の気持ちをふかく感じとれることが多いと思います。いっぽうで、「はずかしい」という気持ちから、表情をおさえてしまう方もいます。
- まずは、ひとりのときに、思いきって表情をつけて歌ってみる
- 歌詞を自分の思い出とかさねてみる
- 先生に「この歌の主人公は、どんな人だと思いますか」と相談してみる
歌の先生といっしょに歌詞を読む時間をもつと、新しい見え方に気づくこともあります。表現について相談できる先生をさがすときは、こちらのページもつかってみてください。歌の教室さがし
まとめ
- 気持ちをこめるとは、大げさにすることではなく、歌の場面と気持ちを思いうかべて歌うこと
- 歌詞は、メロディなしで読む、ことばをしらべる、場面を考える、番ごとのちがいを見る、大切なことばをえらぶ、の順に読みこむ
- 表情は「少しだけ」。目線を決めておくと、気持ちがつたわりやすい
- 声の色は、口の形と息の量でかえられる
- のどに力を入れすぎず、かすれやいたみがつづくときはお医者さんに相談する
- お子様には「どう思う?」と聞いて、自分で考えた気持ちを大切にする
歌詞を読みこんで、気持ちをこめて歌えるようになったら、その歌をだれかに聞いてもらうのもよい経験になります。こどもの歌声グランプリは、オンラインの動画審査だけで出られるコンクールです。幼児からシニア(65歳以上)までの8部門があり、ジャンルは自由です。出場した方には講評とデジタル賞状がとどくので、自分の表現がどうつたわったかを知るきっかけに、よかったらのぞいてみてください。こどもの歌声グランプリ