ビブラートのかけ方。むりにゆらさない、自然なビブラートの練習
「歌の上手な人みたいに、声をきれいにゆらしてみたい」 「ビブラートをかけようとすると、声がガタガタになってしまう」
歌が上手な人の声を聞くと、のばす音のさいごに、声がふわっとゆれていることがあります。このゆれを「ビブラート」と言います。カラオケの採点でも、ビブラートが出てくることがあるので、気になっている方も多いのではないでしょうか。
わたしは、息子といっしょに、たくさんの歌のコンクールに出てきました。いろいろな方の歌を聞く中で感じたのは、きれいなビブラートは「ゆらそう」としてゆらしているのではなく、声がらくに、まっすぐ出ているときに、自然に生まれていることが多い、ということです。
この記事では、ビブラートについて、むずかしいことばをできるだけつかわずにまとめます。むりにゆらさないための考え方と、家でできるやさしい練習、曲で使うときのコツを書いています。中学生・高校生の方や、大人の方に読んでほしい内容です。
ビブラートってなに?
のばす声が、ゆるやかにゆれること
ビブラートは、のばしている声の高さが、少し上がったり下がったりを、くりかえすことです。波のように、ゆるやかにゆれて聞こえます。
ビブラートがあると、声にあたたかさや、ゆたかさが出て聞こえることがあります。そのため、多くのジャンルの歌で使われています。
ジャンルによって、ゆれ方はちがう
ビブラートのゆれ方は、歌のジャンルによってもちがいます。
- クラシックの歌:声全体に、ゆたかなゆれがあることが多い
- ポップス:まっすぐのばしてから、さいごに少しゆらすことが多い
- 合唱:みんなの声をそろえるために、ゆれを小さくおさえることが多い
- 演歌や民謡:ゆれを大きく、はっきり聞かせることもある
どのゆれ方がよい、わるいということではありません。歌う曲や、ジャンルに合ったゆれ方があると考えておくとよいと思います。
かならず必要なものではない
ビブラートがないと上手に聞こえない、というわけではありません。まっすぐな声で歌うほうが、曲に合うこともあります。たとえば、童謡や合唱では、まっすぐなすんだ声が大切にされることが多いです。
ビブラートは、歌の「かざり」のひとつです。まずは、まっすぐに声をのばせることを大切にしましょう。
むりにゆらすと、どうなる?
ビブラートをかけようとして、つぎのようなゆらし方をしてしまう方がいます。
- あごを上下に動かして、声をゆらす
- のどに力を入れて、ふるわせる
- おなかを手でおしたり、体をゆすったりする
- 頭を小きざみにふる
こうしたゆらし方は、見た目にもわかりやすく、声がかたくなったり、のどがつかれたりすることがあります。ゆれがこまかすぎて、声がふるえているように聞こえることもあります。
自然なビブラートは、のどや体に力が入っていないときに出やすいと言われています。「ゆらす」より先に、「力をぬく」ことを考えるのがおすすめです。
ビブラートの前に、ととのえたいこと
まっすぐのばせるか、たしかめる
まずは、「あー」と、同じ高さで、まっすぐ声をのばしてみてください。
- 声の高さが、とちゅうで上がったり下がったりしないか
- 声の大きさが、とちゅうで急にかわらないか
- さいごまで、息がつづくか
まっすぐのばすことがむずかしいときは、ビブラートの練習より先に、この練習をつづけるのがおすすめです。音程が合わないときのことは、こちらの記事も参考になります。子どもの歌の音程が合わないとき。おうちでできるやさしい練習
姿勢と息
- 足を肩はばくらいに開いて、まっすぐ立つ
- 肩の力をストンとぬく
- あごは引きすぎず、前にも出さない
- 息は、おなかやわきばらがふくらむのを感じながら、しずかにすう
声をのばすときは、息を強くおし出すのではなく、細く、一定にながします。息のつかい方は、腹式呼吸の練習が土台になります。歌の腹式呼吸のやり方。子どもにも大人にもわかる、やさしい練習
家でできる、自然なビブラートの練習
ここからは、家でできる練習をしょうかいします。どれも、らくに出せる高さと、小さめの声で行ってください。
1. 息だけで「スー、スー」とゆらす
声を出さずに、息だけで練習します。歯をかるく合わせて「スー」と息をはきながら、息の強さを「つよく、よわく、つよく、よわく」と、ゆっくり波のようにかえてみます。
おなかのまわりが、やわらかく動くのを感じられたら、よいサインです。おなかをかたくしめないように気をつけましょう。
2. 2つの音を、ゆっくり行き来する
となりあった2つの音を、ゆっくり行き来します。たとえば「ド」と「レ」を、「あーあーあーあー」と、なめらかにつなげて歌ってみます。
さいしょは、とてもゆっくりでかまいません。なれてきたら、行き来する音のはばを、半音くらいにせまくしていきます。音のはばがせまく、なめらかになってくると、ビブラートに近いゆれになっていきます。
ピアノのアプリやキーボードで音をたしかめながらやると、音のはばがわかりやすくなります。
3. 速さを少しずつかえる
2つの音の行き来になれたら、速さを少しずつかえてみます。
- 1秒に1回くらいの、ゆっくりした行き来
- 1秒に2回くらい
- 1秒に3〜4回くらい
自然なビブラートは、1秒に5〜7回くらいゆれることが多いと言われます。ただ、これはあくまで目安です。むりに速くしようとすると、のどに力が入りやすくなるので、ゆっくりした行き来を大切にしてください。
つづけていくうちに、「ゆらしている」というより、「声が自然にゆれている」ように感じるときがくるかもしれません。その感じを、大切にしてみてください。
4. まっすぐのばしてから、さいごだけゆらす
「あー」とまっすぐのばして、さいごの1〜2秒だけ、ふわっとゆらしてみます。ポップスでよく聞かれる、ビブラートのかけ方です。
まっすぐの部分と、ゆれる部分の切りかえが、なめらかになるように練習します。
5. 上手な人の歌を、よく聞く
好きな歌手の歌を聞くとき、のばす音のさいごに注目してみてください。
- どのくらいの長さ、まっすぐのばしているか
- どのくらいの速さで、ゆれているか
- どの音でゆらして、どの音でゆらしていないか
よく聞くことも、りっぱな練習です。耳でおぼえたゆれ方を、自分の声でためしてみましょう。
曲で使うときのコツ
ゆらすところを決める
曲の中で、すべての音をゆらす必要はありません。まずは、フレーズのさいごの、長くのばす音だけに使ってみましょう。歌詞カードや楽譜に、ゆらしたいところの印をつけておくと、練習しやすくなります。
曲に合っているかを考える
ビブラートを入れたら、曲のイメージに合っているかを考えてみます。しずかな曲、明るい曲、元気な曲で、合うゆれ方はちがいます。童謡を歌うときのコツについては、こちらの記事にまとめています。童謡を上手に歌うコツ。「ことば」を大切にすると歌はかわる
録音して聞いてみる
自分では自然にゆれているつもりでも、録音して聞くと、ゆれが大きすぎたり、こまかすぎたりすることがあります。スマホで録音して、聞いてみてください。
ついやってしまいがちなこと
- すべての音に、ビブラートをかけてしまう
- ゆれを大きくしようとして、あごや体を動かす
- まっすぐのばす練習をとばして、ゆらす練習ばかりする
- 声がふるえているのを、ビブラートだと思ってしまう
ビブラートは、まっすぐな声の上にのせる、かざりのようなものです。かざりばかりをふやすより、まずは土台になる声を大切にしましょう。
むりをしないための注意
- のどがくるしい、いたいと感じたら、すぐにやめる
- 1回の練習は10〜15分くらいを目安にする
- 声がかすれたら、その日は練習をお休みする
- かぜのときや、のどが赤いときは歌わない
のどのいたみや、声のかすれが何日もつづくときは、耳鼻科などのお医者さんに相談してください。
ひとりで練習するのがむずかしいときは
ビブラートは、自分の声を自分で聞いて、たしかめることがむずかしいものです。家での練習でなやんだら、歌の先生にみてもらうのもひとつの方法です。体験レッスンのときに、「自然なビブラートを身につけたい」と伝えてみてください。近くの教室をさがすときは、こちらのページもつかってみてください。歌の教室さがし
まとめ
- ビブラートは、のばす声が、ゆるやかにゆれること
- ジャンルによって、ゆれ方はちがう。かならず必要なものではない
- あごや体を動かして、むりにゆらさない
- まずは、まっすぐ声をのばせるようにする
- 息のゆらし、2つの音の行き来、速さをかえる練習、さいごだけゆらす練習が家でできる
- 曲では、長くのばす音から使ってみる
- いたみやかすれがつづくときは、耳鼻科などのお医者さんに相談する
声が自然にゆれるようになると、歌に気持ちをこめやすくなり、歌うことがもっと楽しくなります。練習してきた歌を、だれかに聞いてもらいたくなったら、こどもの歌声グランプリものぞいてみてください。オンラインの動画審査だけで出られて、幼児からシニア(65歳以上)までの8部門があります。ジャンルは自由で、出場した方には講評とデジタル賞状がとどきます。こどもの歌声グランプリ