謡(うたい)とは?能の謡を習ってみたい方へ
「能を見に行って、あの低くひびく声に心をうばわれた」 「謡を習ってみたいけれど、初心者でもはじめられるのだろうか」
謡(うたい)は、能の舞台でうたわれることばと節のことです。むずかしそうに感じるかもしれませんが、謡は、能の舞台に立つ人だけのものではなく、趣味として習っている大人の方もいます。
わたしは息子といっしょに、たくさんのコンクールに出てきました。
この記事では、謡とはどんなものか、謡曲とは何か、そして初心者の方が謡を習うときに知っておきたいことをまとめます。流派や先生によって、教え方や考え方がちがうこともありますので、ここでは広く知られている一般的なお話にとどめます。くわしいことは、習う先の先生にたしかめてみてください。
謡とは?謡曲とは?
能のことばと節
能は、日本で長く受けつがれてきた舞台芸能です。舞台では、役者が舞い、笛や鼓などの楽器が鳴り、そして、ことばに節をつけてうたう声がひびきます。このうたう部分を「謡(うたい)」といいます。
謡曲とは
謡曲(ようきょく)とは、能の台本にあたることばや、そのことばに節をつけてうたうもののことをいいます。物語の場面や登場人物の気持ちが、むかしのことばでつづられています。
舞台の中の謡
能の舞台では、主人公を演じる役者や、その相手役が謡をうたいます。また、舞台のわきに何人かがならんで座り、声をそろえて謡う人たちもいます。これを「地謡(じうたい)」といい、物語の場面や、主人公の気持ちを声で表します。
謡の特ちょう
ふだんの歌とのちがい
- ピアノのような決まった音の高さではなく、声の高さはうたう人に合わせることが多い
- おなかから出す、ひくく、ふかい声がよく使われる
- ことばを長くのばしたり、声をゆらしたりする節がある
- 伴奏がなくても、謡だけでうたうことができる
西洋の歌になれている方には、はじめは聞きなれない声に感じるかもしれません。でも、そのちがいこそが、謡のおもしろさでもあります。
声のつかい分け
謡には、やわらかくしっとりとうたう謡い方と、力強くうたう謡い方があるといわれています。場面や役の気持ちによって、声の出し方をかえることがあります。
拍子のこと
謡には、ことばと拍子を合わせる、独特のリズムのきまりがあります。はじめはむずかしく感じるかもしれませんが、先生のお手本をまねしながら、少しずつ体で覚えていくことが多いようです。
知っておきたい演目
能には、たくさんの演目があります。たとえば「高砂(たかさご)」は、めでたい内容の能として広く知られています。ほかにも「羽衣(はごろも)」や「鶴亀(つるかめ)」など、名前を聞いたことがある方もいるかもしれません。
どの演目から習うかは、流派や先生によってちがいます。はじめは、短めの謡や、謡の一部分から練習することが多いようです。
謡を習う楽しみ
声を出す気持ちよさ
謡では、おなかからしっかり声を出します。正座をして背すじをのばし、ふかい声を出していると、気持ちがおちつくと感じる方も多いようです。
ことばと物語を知る楽しさ
謡曲には、むかしの物語や和歌、季節の景色などがたくさん出てきます。謡を習うことは、日本のことばや文化にふれることでもあります。意味がわかってくると、能を見に行ったときの楽しさも、ぐっとふえると思います。
能を見るのがもっと楽しくなる
自分で謡をうたってみると、能の舞台で役者や地謡が、どのように声を出しているのかが、よくわかるようになります。舞台を見る楽しみが広がるのも、謡を習うよさの一つです。
仕舞とあわせて習う
能の一部を、面や装束をつけずに舞う「仕舞(しまい)」を、謡といっしょに習う方もいます。謡だけを習うことも、仕舞とあわせて習うこともできる教室が多いようです。
謡の習い方
流派のこと
能には、いくつかの流派があります。流派によって、節まわしや、使う本(謡本)がちがいます。はじめに習う先生の流派で、続けて習っていくことが多いので、体験や見学のときに、どの流派かをたしかめておくとよいでしょう。
教室のさがし方
- 能楽堂や、能の団体の案内を見る
- カルチャーセンターや公民館の講座をさがす
- 能を見に行ったときに、稽古の案内がないか見てみる
- 知り合いに、習っている人がいないか聞いてみる
子ども向けの教室や、体験の会がひらかれることもあります。お子様に日本の伝統にふれてほしいと考えるお父様・お母様は、そうした会からはじめてみるのもよいと思います。
体験や見学でたしかめたいこと
- 個人の稽古か、何人かでいっしょに習うのか
- 月に何回、1回どれくらいの時間か
- 謡本や扇など、そろえるものはあるか
- 発表会(おさらい会など)はあるか、出なくてもよいか
- 正座がつらいとき、いすに座ってもよいか
料金や会のしくみは、先生や教室によって大きくちがいます。気になることは、はじめに聞いておくと安心です。
稽古の流れ
お手本を聞いて、まねをする
謡の稽古では、先生がうたうお手本を聞き、そのあとに生徒さんがまねをしてうたう、という形がよく見られます。少しずつ区切りながら、何度もくりかえして覚えていきます。
謡本を読む
謡本には、ことばのよこに、節をあらわす小さな印が書かれています。はじめは読み方がわからなくても、先生が一つずつ教えてくれるので、心配しなくてだいじょうぶです。
稽古のときの作法
稽古では、正座をして、扇を前に置いておじぎをしてからはじめる、といった作法があることが多いです。作法は流派や先生によってちがうので、はじめての稽古で教えてもらいましょう。
おうちでの練習のコツ
姿勢をととのえる
謡は、正座でうたうことが多いです。背すじをのばし、肩の力をぬいて、まっすぐ前を見るようにすると、声が出しやすくなります。
おなかから息を出す
長くのばす声が多い謡では、息のつかい方が大切です。肩を上げずに息をすい、少しずつはくように意識してみてください。息が続かないときの見直し方は、こちらの記事でもまとめています。歌で息が続かないときの練習。肺活量より大事な、息のつかい方
お手本を録音して聞く
先生にゆるしてもらえるなら、稽古のお手本を録音しておくと、家での練習に役立ちます。自分の謡も録音して聞きくらべると、節や声の出し方のちがいに気づきやすくなります。
ことばの意味を知る
謡曲のことばは、むかしの日本語なので、はじめは意味がわかりにくいかもしれません。解説の本などで、物語のあらすじや、ことばの意味をしらべておくと、気持ちをこめてうたいやすくなります。
はじめての方によくあるなやみ
ことばがむずかしい
謡曲のことばは、いまの日本語とはちがうところが多く、はじめはとまどうかもしれません。はじめから全部を理解しようとしなくても、だいじょうぶです。うたいながら、少しずつ意味を知っていけば、それで十分です。
声がひくく出せない
謡のふかい声は、すぐには出せないこともあります。むりにのどをおしつけて低い声を出そうとすると、のどがつかれてしまいます。まずは、自分のらくな声の高さで、おなかから声を出すことを大切にしましょう。
正座がつらい
長い正座は、なれないうちは足がしびれたり、ひざが痛くなったりすることもあります。座いすや小さないすを使ってもよいか、先生に聞いてみてください。
のどと体への気づかい
- 稽古の前に、首や肩をかるくほぐす
- 低い声を、むりにおしつけて出そうとしない
- 水をこまめに飲む
- のどがつかれたら、その日は休む
長い時間の正座がつらいときは、むりをせず、先生に相談してみてください。のどの痛みやかすれが何日も続くときは、耳鼻科などのお医者さんに相談しましょう。
日本の声の芸能には、謡のほかにも民謡などがあります。民謡に興味のある方は、こちらの記事もあわせて読んでみてください。民謡をはじめたい。民謡の歌い方の特ちょうと、習い方
まとめ
- 謡(うたい)とは、能の舞台でうたわれることばと節のこと
- 謡曲とは、能の台本にあたることばや、それに節をつけてうたうもの
- ふかい声、ことばを長くのばす節、独特の拍子が特ちょう
- 「高砂」など、広く知られた演目もある
- いくつかの流派があり、節まわしや謡本がちがうので、はじめにたしかめる
- 稽古は、先生のお手本をまねしながら、少しずつ覚えていくことが多い
- のどの痛みやかすれが続くときは、お医者さんに相談する
謡は、声とことばをとおして、日本の文化をじっくりあじわえる習い事です。まずは体験や見学から、気軽にはじめてみてください。歌の教室もあわせてさがしてみたい方は、こちらのページもつかってみてください。歌の教室さがし声を出すことが楽しくなって、歌もだれかに聞いてもらいたくなったら、こどもの歌声グランプリものぞいてみてください。オンラインの動画審査だけで出られて、幼児からシニア(65歳以上)までの8部門があり、ジャンルは自由です。講評とデジタル賞状がとどくので、新しい目標のきっかけになると思います。こどもの歌声グランプリ