歌で息が続かないときの練習。肺活量より大事な、息のつかい方
「歌のとちゅうで、いつも息が続かなくなる」 「フレーズの最後になると、声が小さくなってしまう」 「肺活量をきたえないと、だめなのかな」
歌を練習していると、こんななやみをもつ方は多いと思います。歌で息が続かないと、苦しくなるだけでなく、歌詞の最後がきえてしまったり、あわてて息をすって次の出だしがおくれたりします。
わたしは、息子といっしょに、たくさんのコンクールに出てきました。歌を聞いていると、息にゆとりのある歌は、聞いている側も安心して楽しめるものだと感じます。
息が続かない原因は、肺活量だけではありません。じつは、「どこで息をすうか」と「すった息をどうつかうか」が、とても大きくかかわっています。この記事では、歌で息が続かないときのトレーニングとして、息つぎの場所の決め方と、息の配分のしかたにしぼってお話しします。
歌で息が続かない、主な原因
1 息つぎの場所が決まっていない
いちばん多いのが、息つぎの場所を決めずに歌っていることです。「苦しくなったら、すう」という歌い方だと、息がなくなるまで歌ってしまい、毎回ぎりぎりになります。
2 歌いはじめに、息をつかいすぎている
フレーズの出だしで、元気よく声を出そうとして、たくさんの息を一気につかってしまうことがあります。そうすると、フレーズの後半で息が足りなくなります。
3 息つぎが、あさく短い
急いで息をすうと、肩が上がって、あさい息になりがちです。すえた気がしても、じっさいには少ししか入っていないこともあります。
4 声に息がまじりすぎている
声に息がたくさんまじると、同じ長さを歌うのに、多くの息が必要になります。やわらかい声をつくろうとして、知らないうちに息をもらしていることもあります。
肺活量だけで決まるわけではない
もちろん、体力や肺活量も関係します。ただ、同じ体でも、息つぎの場所と息の配分をかえるだけで、ぐっとらくに歌えるようになることがあります。まずは、つかい方を見なおしてみましょう。
息つぎの場所を決めよう
歌詞のくぎりで、息をすう
息つぎの場所をえらぶときは、歌詞の意味のくぎりを目安にします。文章の「、」や「。」にあたるところで息をすうと、ことばのまとまりがこわれにくく、聞いている人にも自然に伝わります。
- ことばのとちゅうでは、なるべく息をすわない
- 「〜の」「〜に」のあとより、意味がひとまとまりになったあとがすいやすい
- 休符(音がないところ)があれば、そこはよい息つぎの場所
楽譜や歌詞カードに、しるしをつける
息つぎの場所が決まったら、楽譜や歌詞カードに「V」などのしるしを書きこんでおきましょう。目で見てわかると、歌いながらあわてにくくなります。
長いフレーズは、「にげ道」の息つぎも決めておく
どうしても息が続かない長いフレーズでは、本番用の息つぎとは別に、「ここなら、すってもいい」という予備の場所を決めておくと安心です。練習ではがんばって通して、苦しい日は予備の場所でかるくすう、というつかい分けもできます。
先生や伴奏の人と相談する
息つぎの場所は、曲の解釈ともかかわります。習っている先生がいる場合は、「ここで息をすってもいいですか」と相談してみてください。
フレーズの中での息の配分
出だしは、少しひかえめに
フレーズの歌いはじめは、すった息をいちばん多くもっているときです。ここで一気につかわず、「最後まで同じ量で流す」つもりで、少しひかえめに出してみましょう。
息を「お金」のようにつかう
1つのフレーズを、おこづかいでたとえてみます。
- すった息が、手もちのお金
- フレーズの長さが、つかう日数
- はじめの日にたくさんつかうと、さいごの日に足りなくなる
フレーズの長さを見て、「どのくらいずつつかえばいいか」を考えると、息の配分がしやすくなります。
フレーズの最後まで、息の流れをとめない
息が足りなくなりそうになると、のどをしめて声をのばそうとしがちです。最後の音まで、息を細く流しつづける意識をもつと、声がきえにくくなります。
息をすいすぎない
意外かもしれませんが、たくさんすえばよいというわけではありません。むりに息をつめこむと、体がかたくなって、かえって息をコントロールしにくくなります。「8わりくらい」のつもりで、らくにすうのがおすすめです。
息のすい方そのものについては、腹式呼吸の記事でくわしくまとめています。歌の腹式呼吸のやり方。子どもにも大人にもわかる、やさしい練習
歌で息が続かないときのトレーニング
ここからは、家でできる練習をしょうかいします。どれも、むりのない長さではじめてください。
トレーニング1 歌詞を、息だけで読む
声を出さずに、歌詞を「ふー」という息だけで、曲のリズムに合わせて読みます。決めた息つぎの場所で、すいなおします。
声を出さないぶん、息の流れと、すう場所に集中できます。最後まで同じ強さで息が流れているかを、感じてみてください。
トレーニング2 フレーズをハミングで歌う
口をとじて、フレーズを「んー」のハミングで歌います。ハミングは、声に息がもれにくいので、息が足りなくなる場所が見つけやすくなります。
トレーニング3 息つぎの練習だけをする
決めた息つぎの場所の前後だけを、何回もくりかえします。
- 息つぎの前の、2〜3音を歌う
- 口を少し開けて、すばやく、でも肩を上げずに息をすう
- 次のフレーズの出だしを歌う
息つぎは、すう時間が短くても、体の力がぬけていれば、しっかり入ります。
トレーニング4 フレーズをゆっくり歌ってから、もとにもどす
ふだんよりゆっくりのテンポで歌うと、1つのフレーズが長くなり、息の配分を考える練習になります。ゆっくりでも最後まで歌えるようになったら、もとのテンポにもどしてみましょう。らくに感じられることが多いです。
トレーニング5 録音して、息の音を聞く
スマホで録音して、息つぎの音や、フレーズの最後の声を聞いてみます。
- 息つぎの音が大きすぎないか
- フレーズの最後が、小さくきえていないか
- 決めた場所以外で、息をすっていないか
自分では気づきにくいことも、録音すると見えてきます。
声を長くのばす練習については、ロングトーンの記事もあわせて読んでみてください。ロングトーンの練習。息を長く、声をまっすぐのばすコツ
本番で息が続かなくならないために
本番では、緊張で息があさくなりやすいものです。ふだんより早く息がなくなることも考えて、練習のときから、息つぎの場所と予備の場所を体にしみこませておきましょう。
- 歌う前に、ゆっくり息をはいて、体の力をぬく
- 出だしを、あわてて出さない
- 息が足りなくなったら、予備の場所でかるくすう
「決めたとおりにできなくても、だいじょうぶ」と思っておくと、気持ちにもゆとりが生まれます。
曲えらびで、息にゆとりをつくる
練習している曲が、いまの息のつかい方に合っていないこともあります。テンポがとてもゆっくりな曲や、休符が少なく長いフレーズが続く曲は、息のやりくりがむずかしくなりがちです。
はじめのうちは、休符が適度にあり、フレーズの長さがほどよい曲をえらぶと、息つぎと配分の練習がしやすくなります。なれてきたら、少しずつ長いフレーズの曲にチャレンジしてみてください。
お子様と練習するときは
お子様は、楽しくなると、息つぎのことをわすれて、一気に歌ってしまうことがあります。お父様・お母様は、いっしょに歌詞カードを見ながら、「ここで、すってみようか」と、しるしをつけてあげてください。
- 息つぎの場所に、好きなシールをはる
- 「ふー」と息だけで歌うあそびをする
- 最後まで歌えたら、たくさんほめる
むりに長くのばさせるより、「ここですえば、らくだね」と気づかせてあげるほうが、楽しく続けやすいと思います。
練習で気をつけたいこと
- 苦しくなるまで、がまんしてのばさない
- 頭がくらくらしたら、すぐに休む
- 練習は5分から10分くらいにして、休みをはさむ
- のどの痛みやかすれ、息苦しさが続くときは、お医者さんに相談する
まとめ
- 歌で息が続かないのは、肺活量だけが原因ではない
- 息つぎの場所は、歌詞の意味のくぎりや休符を目安に決める
- 楽譜や歌詞カードに、しるしと予備の場所を書きこんでおく
- フレーズの出だしで息をつかいすぎず、最後まで同じ量で流す
- 息だけで読む、ハミング、息つぎだけの練習、ゆっくり歌う、録音がおすすめ
- 苦しくなるまでがまんせず、体の調子を大切にする
息のつかい方がととのうと、歌うときの気持ちにもゆとりが生まれます。練習してきた歌を、だれかに聞いてもらいたくなったら、こどもの歌声グランプリもおすすめです。オンラインの動画審査だけで出られて、幼児からシニア(65歳以上)までの8部門があり、ジャンルは自由です。講評とデジタル賞状がとどくので、息つぎや歌い方を見なおすヒントにもなると思います。こどもの歌声グランプリ