歌の先生になるには。ボイストレーナーなど、教える仕事のはじめ方と身につけたいこと
「歌が好きだから、いつか歌の先生になってみたい」 「ボイストレーナーになるには、何から始めればいいんだろう」
歌を習ってきた方や、合唱や音楽の部活を続けてきた方の中には、こんなふうに考えたことがある方も多いと思います。お子様が「将来は歌を教える人になりたい」と話すこともあるかもしれません。
わたしは息子といっしょに、たくさんのコンクールに出てきました。歌の先生には、いろいろなタイプの方がいます。歌の先生になる道は、1つだけではありません。
この記事では、歌の先生になるには、どんな道があるのか、どんな力を身につけたいのかを、やさしくまとめました。学校名や資格名は人によって合うものがちがうので、ここではあげません。「教える仕事って、どんなものかな」と考えるきっかけにしてもらえたらうれしいです。
歌の先生には、どんな働き方がある?
音楽教室やボイトレ教室の講師
いちばんイメージしやすいのが、音楽教室やボイトレ教室で、講師として教える働き方です。教室に所属して、生徒さんを受けもつ形が多いです。
- 子ども向け、大人向け、シニア向けなど、クラスがわかれていることがある
- 個人レッスンとグループレッスンの両方を受けもつこともある
- 教室ごとに、講師をぼしゅうするときの条件がちがう
自宅やレンタルスタジオで、個人で教える
自分で生徒さんをあつめて、自宅やレンタルスタジオで教える先生もいます。時間や内容を自分で決められるよさがある一方で、生徒さんをあつめること、場所の用意、お金の管理なども自分でする必要があります。
オンラインで教える
最近は、オンラインで歌を教える先生もふえています。住んでいる場所にしばられずに教えられるのがよいところです。ただ、音の遅れや聞こえ方など、オンラインならではの工夫も必要になります。
合唱団や地域の歌の会で教える
子どもの合唱団、大人のコーラス、シニアの歌の会などで、指導をする先生もいます。1人ひとりの声だけでなく、みんなの声をまとめる力が求められます。
学校で音楽を教える
学校の音楽の先生として、歌を教える道もあります。学校の先生になるには、決められた勉強や手つづきが必要になります。くわしくは、大学などの案内でたしかめてみてください。
ボイストレーナーになるには、何が必要?
決まった道は、1つではない
ボイストレーナーになるには、こうしなければいけない、という決まった道は、一般的にはないといわれます。人によって、こんな道を通ってきています。
- 音楽の大学や専門学校で、歌や声のことを学んだ
- 長く歌を習い、先生のもとでアシスタントをしながら教え方を学んだ
- 歌手や合唱の活動をしながら、教えることもはじめた
- 民間の講座などで、声の仕組みや教え方を学んだ
どの道がよいかは、教えたい相手や、めざしたい先生の形によってちがいます。
「どんな人に、何を教えたいか」を考える
先生になる前に、まず考えておきたいのが、「だれに、どんな歌を教えたいか」です。
- 小さなお子様に、歌の楽しさを伝えたい
- コンクールをめざすお子様を、しっかり支えたい
- 大人の方の、カラオケや趣味の歌を応援したい
- 声楽やクラシックの歌を、ていねいに教えたい
- シニアの方と、歌で元気になる時間をつくりたい
教えたい相手がはっきりすると、学ぶことや、身につけたい力も見えてきます。
歌の先生として身につけたいこと
自分の歌を、学びつづける力
歌の先生は、まず自分自身が歌を学びつづけることが大切です。先生になったあとも、自分の先生についてレッスンを受けている方は多いです。
- 発声や呼吸の基本を、しっかり身につける
- いろいろなジャンルの歌を聞いて、歌ってみる
- 自分の声のよいところ、苦手なところを知っておく
声と体の仕組みを知る
声は、体の中でつくられます。息のつかい方、のどの動き、体のどこにひびかせるのかなど、声の仕組みを知っておくと、生徒さんに説明しやすくなります。
とくに、お子様や年配の方を教えるときは、のどにむりをさせないことが何より大切です。声の変わる時期のお子様や、声が出にくくなってきた方には、その人に合ったペースで進める知識が必要です。生徒さんののどの痛みやかすれが続くときは、むりに練習をすすめず、耳鼻科などのお医者さんへの相談をすすめられる先生でいたいですね。
わかりやすく伝える力
歌がうまいことと、教えるのがうまいことは、少しちがいます。自分ができることを、相手にわかることばで伝えるのは、意外とむずかしいものです。
- むずかしいことばを、やさしく言いかえる
- 「こうして」だけでなく、「なぜそうするのか」も伝える
- 1回で伝わらなかったら、ちがう言い方をためす
- 見本を見せたり、たとえを使ったりする
聞く力と、ほめる力
生徒さんの声を、よく聞くことも大切です。声だけでなく、生徒さんの気持ちや、なやみにも耳をかたむけましょう。
できていないところを伝えるだけでなく、よくなったところを見つけて、ことばにして伝えることも、先生の大事な仕事です。小さな変化をほめてもらえると、生徒さんは続けやすくなります。
楽譜とピアノの力
歌の先生は、楽譜を読んだり、ピアノで伴奏をしたり、音をとったりすることが多いです。むずかしい曲を弾けなくても、音を確かめたり、簡単な伴奏をつけたりできると、レッスンがぐっと進めやすくなります。
仕事としての力
個人で教える場合は、歌のほかにも、こんな力が必要になります。
- 予約やスケジュールの管理
- 月謝や入会のきまりをつくる
- 生徒さんやお父様・お母様との連絡
- 教室の案内をつくって、知ってもらう
はじめから全部できなくても、だいじょうぶです。少しずつ、できることをふやしていきましょう。
はじめの一歩の踏み出し方
自分の先生に相談してみる
歌を習っている方は、まず自分の先生に「教える仕事に興味がある」と相談してみるのもよい方法です。先生がどうやって教える仕事をはじめたのかを聞くだけでも、大きなヒントになります。
教えるところを、見せてもらう
ほかの先生のレッスンを見学させてもらうと、教え方のちがいがよくわかります。同じことを伝えるのにも、先生によって言い方や進め方がちがいます。
身近な人に教えてみる
家族やお友だちに、発声のしかたを少し教えてみるのもよい練習になります。「伝わらなかったところ」に気づけるのは、実際に教えてみたときです。
アシスタントや講師ぼしゅうに応募する
音楽教室の中には、講師やアシスタントをぼしゅうしているところもあります。条件や仕事の内容は、教室によってちがいます。気になる教室があれば、ぼしゅうの案内を見てみましょう。
人前で歌う経験をつむ
コンクールや発表会、ライブなどで人前で歌う経験は、先生になってからも役に立ちます。本番の緊張や、準備のたいへんさを知っていると、生徒さんの気持ちによりそいやすくなります。審査員がどこを見ているのかを知っておくのもおすすめです。歌のコンクール、審査員はどこを見ている?点数につながる7つのポイント
教える仕事で大変なこと、うれしいこと
大変なこと
歌の先生の仕事には、大変なこともあります。
- 生徒さんごとに、合う教え方を考える必要がある
- 自分の声の調子を、いつもととのえておく必要がある
- 夕方や休みの日にレッスンが集まりやすい
- 個人で教える場合は、収入が安定しにくいこともある
はじめる前に、こうしたことも知っておくと、あとで「思っていたのとちがった」となりにくくなります。
うれしいこと
一方で、教える仕事には、大きなよろこびもあります。生徒さんが、出なかった音を出せたとき、本番を楽しんで歌えたとき、歌がもっと好きになったと話してくれたとき。そうした瞬間に立ち会えるのは、先生ならではのよろこびです。
お子様が「歌の先生になりたい」と言ったら
お子様が歌の先生にあこがれるのは、とてもすてきなことです。いまの時点では、こんなことを応援してあげるとよいと思います。
- 歌のレッスンを楽しく続ける
- いろいろな歌を聞く
- 楽譜やピアノに少しずつふれる
- 人前で歌う機会をつくる
音楽の学校を考える時期になったら、学ぶ内容を早めに調べておくと安心です。声楽科でどんなことを学ぶのかは、こちらの記事でもまとめています。声楽科とは?何を学ぶの?ピアノが弾けなくてもだいじょうぶ?
まとめ
- 歌の先生には、教室の講師、個人教室、オンライン、合唱指導、学校など、いろいろな働き方がある
- ボイストレーナーになる道は1つではなく、人によってさまざま
- まず「だれに、どんな歌を教えたいか」を考える
- 自分の歌を学びつづける力、声の仕組みの知識、伝える力、聞く力が大切
- 生徒さんののどにむりをさせないことを、いちばんに考える
- 自分の先生への相談や見学、身近な人に教えることから、一歩を踏み出してみる
歌の先生をめざす方にとって、自分が人前で歌う経験は、何よりの学びになります。こどもの歌声グランプリは、オンラインの動画審査だけで出られて、幼児からシニア(65歳以上)までの8部門があり、ジャンルは自由です。講評とデジタル賞状がとどくので、自分の歌を見つめなおすきっかけにもなります。将来、生徒さんといっしょに挑戦する場としても、のぞいてみてください。こどもの歌声グランプリ