外国語の歌の対訳の作り方。ことばの意味を知って、歌を深めよう
「イタリア語の歌を習いはじめたけれど、何を歌っているのか、よくわからない」 「先生に『対訳を作ってきてね』と言われたけれど、どうやって作ればいいの?」
声楽を習うと、イタリア語やドイツ語、フランス語など、外国語の歌に出会うことが多くなります。読み方はおぼえても、ことばの意味まではわからないまま歌っている、という方も少なくないと思います。
わたしは息子といっしょに、たくさんのコンクールに出てきました。
この記事では、外国語の歌の対訳の作り方にしぼってお話しします。歌詞を自分で訳すときに用意するもの、単語ごとに意味を調べる方法、楽譜への書きこみ方、そして訳を歌にいかすコツまでをまとめました。外国語が得意でなくても、だいじょうぶです。
対訳とは?なぜ自分で作るといいの?
対訳は、もとのことばと訳をならべたもの
対訳とは、もとの外国語の歌詞と、日本語の訳をならべて書いたものです。声楽では、歌の意味を知るために、対訳を作ったり、読んだりすることがよくあります。
楽譜集や本に、対訳がのっていることもあります。それを読むのも、もちろんよい方法です。
自分で作ると、ことばが体に入る
それでも、自分で対訳を作ってみるのには、よいところがあります。
- ひとつひとつの単語の意味がわかる
- どのことばが、どの音にのっているかがわかる
- 大切なことばが、どこにあるかに気づける
- 歌うときに、気持ちをこめる場所がはっきりする
本の訳は、日本語としてきれいにととのえてあることが多く、どの単語がどの意味なのか、わかりにくいこともあります。自分で単語ごとに調べると、ことばと音のつながりが見えてきます。
対訳づくりに用意するもの
楽譜と、歌詞をうつしたノート
まずは、歌う曲の楽譜を用意します。楽譜とは別に、歌詞だけをノートにうつしておくと、書きこみがしやすくなります。
ノートに歌詞をうつすときは、行と行のあいだを広くあけておきましょう。下に、単語の意味や訳を書きこむためです。
辞書や、調べる道具
単語の意味を調べるための道具を用意します。
- 紙の辞書
- 辞書のアプリや、インターネットの辞書
- 声楽の歌詞の訳がのっている本
外国語の歌詞は、ふだんの会話では使わない、古いことばや詩のことばがつかわれていることもあります。辞書にのっていない形のときは、先生に聞いたり、声楽の本を見たりするとよいと思います。
本の訳は「答え合わせ」につかう
本やインターネットにのっている訳は、はじめから見るのではなく、自分で調べたあとの「答え合わせ」につかうのがおすすめです。先に答えを見てしまうと、単語を調べる楽しさがへってしまいます。
対訳の作り方、すすめる順番
はじめに 歌詞を、ことばのまとまりに分ける
まずは、歌詞をながめて、ことばのまとまりに分けてみましょう。点やピリオドなどの記号を目じるしにすると、分けやすくなります。
ひとつのまとまりが、日本語でいう「ひとつの文」にあたることが多いです。
つぎに 単語ごとに、意味を書く(逐語訳)
次に、ひとつひとつの単語の下に、日本語の意味を書いていきます。これを「逐語訳(ちくごやく)」といいます。むずかしいことばですが、「単語ごとの訳」という意味です。
たとえば、イタリア語なら、こんなふうに書きます。
- amore → 愛
- cuore → 心
- caro → いとしい
- mio → わたしの
このとき、日本語としてきれいにしようとしなくてだいじょうぶです。単語の意味を、そのまま書いていきましょう。
そのあと ことばの形に気をつける
外国語では、同じ単語でも、形がかわることがあります。
- だれが、のことか(わたし、あなた、など)
- いつのことか(いま、むかし、これから)
- ひとつか、たくさんか
辞書を引くときは、もとの形をさがす必要があることもあります。わからないときは、「ここがわからなかった」としるしをつけておき、レッスンで先生に聞いてみましょう。
さらに 文として、日本語にととのえる
単語の意味がそろったら、ことばのまとまりごとに、日本語の文にととのえていきます。外国語と日本語では、ことばのならび方がちがうことが多いので、意味が通るようにならびかえてみましょう。
この訳は、自分がわかればじゅうぶんです。かっこいい日本語にしなくてもかまいません。
ことばのならびをかえるときは、外国語の単語と、日本語の訳を線でむすんでおくのもおすすめです。どの単語が、日本語のどこに入ったのかが、あとで見てもすぐにわかります。歌うときに、その単語がどんな意味だったかを思い出しやすくなります。
さいごに 本の訳と、くらべてみる
自分の訳ができたら、本やインターネットの訳とくらべてみましょう。
- 意味が大きくちがうところはないか
- 自分の訳のほうが、わかりやすいところはないか
- 本の訳で、はじめて気づいたことはないか
まちがえていたところは、なおしておきます。いくつかの訳をくらべると、同じ歌詞でも、訳す人によって、ことばのえらび方がちがうことにも気づけます。
楽譜への書きこみ方
歌詞の上や下に、単語の意味を書く
対訳ができたら、楽譜にも書きこんでおきましょう。楽譜の歌詞の近くに、えんぴつで、単語の意味を小さく書いておきます。
楽譜がごちゃごちゃして見にくくなるときは、大切な単語だけにしぼって書くのがおすすめです。
大切なことばに、しるしをつける
歌詞の中で、とくに大切なことばに、しるしをつけておきましょう。
- 歌の気持ちの中心になることば
- 何回もくりかえされることば
- 長くのばす音や、高い音にのっていることば
大切なことばが、高い音や長い音にのっていることは、よくあります。作曲した人が、そのことばを大切にしていたのかもしれない、と考えてみるのも楽しいものです。
訳ノートは、ずっと取っておく
作った対訳のノートは、取っておきましょう。次に同じことばが別の曲で出てきたとき、見かえすことができます。続けていくうちに、知っている単語がふえていきます。
対訳を、歌にいかすコツ
意味を思いうかべながら歌う
対訳ができたら、ことばの意味を思いうかべながら歌ってみましょう。意味がわかると、同じ音でも、歌い方がかわってくることがあります。
- やさしいことばは、やわらかく
- よろこびのことばは、明るく
- かなしいことばは、しずかに
意味を知ることで、強さや声の色を、自分でえらべるようになっていきます。
だれが、だれに歌っている歌かを考える
歌詞の意味がわかったら、「だれが、だれに向けて歌っているのか」を考えてみましょう。恋人に向けた歌なのか、自然をたたえる歌なのか、オペラの中で、ある人物が気持ちを話している歌なのか。
歌の場面を思いうかべられると、歌に気持ちがこもりやすくなります。曲の解釈については、こちらの記事でくわしく書いています。曲の解釈ってなに?作曲者や時代を知って、歌をもっと深めるための考え方
発音の練習とは、分けて考える
対訳は、ことばの意味を知るためのものです。読み方や発音の練習は、それとは別に、先生に教わりながらすすめましょう。イタリア語の発音のきほんは、こちらの記事でもまとめています。イタリア歌曲の発音のきほん。声楽をならう子ども・大人のために
対訳づくりで、気をつけたいこと
はじめから、完ぺきをめざさない
はじめての対訳づくりは、時間がかかることもあります。わからないところがあっても、気にしなくてだいじょうぶです。わかるところから少しずつ、で十分です。
先生のことばを、大切にする
先生によっては、その曲の意味や、場面について、くわしく話してくださることがあります。レッスンで聞いたことは、訳ノートに書きそえておきましょう。辞書だけではわからない、歌の気持ちのヒントがつまっています。
訳を人にくばるときは、気をつける
自分で作った訳を、発表会のプログラムなどにのせたいときは、先生に相談してからにしましょう。本の訳をそのままうつしてのせるのは、さけたほうが安心です。
まとめ
- 対訳は、もとの外国語の歌詞と、日本語の訳をならべたもの
- 自分で作ると、ことばと音のつながりがわかる
- 歌詞をまとまりに分けて、単語ごとに意味を書くところからはじめる
- 日本語の文にととのえたら、本の訳とくらべて答え合わせをする
- 楽譜には、大切なことばの意味と、しるしを書きこむ
- 意味と、歌の場面を思いうかべながら歌う
- はじめから完ぺきをめざさず、わからないところは先生に聞く
ことばの意味を知ると、外国語の歌が、ぐっと身近になります。声楽を教えてくれる先生をさがしたいときは、こちらのページもつかってみてください。歌の教室さがし意味を知って歌えるようになった歌を、だれかにとどけたくなったら、こどもの歌声グランプリもおすすめです。オンラインの動画審査だけで出られて、幼児からシニア(65歳以上)までの8部門があり、ジャンルは自由です。講評とデジタル賞状がとどくので、歌の深め方を考えるきっかけにもなると思います。こどもの歌声グランプリ