練習・発声のコツ

イタリア歌曲の発音のきほん。声楽をならう子ども・大人のために

更新日:2026年11月7日 ・ 書いた人:うみ

「声楽の先生に、イタリア語の歌をわたされた。どう読めばいいの?」 「ローマ字みたいに読めばいいのかな。でも、ところどころちがう気がする」

声楽を習いはじめると、イタリア語の歌、いわゆる「イタリア歌曲」を練習することがよくあります。はじめて楽譜を見たときは、知らないことばがならんでいて、おどろく方も多いと思います。

わたしは、息子といっしょにたくさんの歌のコンクールに出てきました。声楽の部門では、お子様から大人の方まで、多くの方がイタリア歌曲を歌っていました。はじめはむずかしく感じても、きほんの決まりを知ると、ぐっと読みやすくなります。

この記事では、イタリア歌曲を歌うときに知っておきたい、発音のきほんをまとめました。くわしい発音は、先生によって教え方が少しちがうこともあるので、ここでは一般的な決まりをしょうかいします。

なぜ声楽ではイタリア歌曲を歌うの?

母音がはっきりしていて、歌いやすい

イタリア語は、母音(ア・エ・イ・オ・ウ)がはっきりしたことばです。ことばのおわりも母音でおわるものが多く、声をのびやかに出しやすいといわれています。そのため、声楽のはじめのころの練習曲として、よくえらばれます。

声楽の練習によくつかわれる曲がたくさんある

声楽のレッスンでは、昔のイタリアの作曲家の歌がよくつかわれます。たとえば、ジョルダーニの作とされる「Caro mio ben(カーロ・ミオ・ベン)」や、カルダーラの「Sebben, crudele(セッベン・クルデーレ)」などは、声楽を習う方が早い時期に出会うことが多い曲です。

子どもの声楽の曲えらびについては、こちらの記事でもまとめています。子どもの声楽で歌われることが多い曲のジャンル。日本歌曲・イタリア歌曲・童謡のちがいと、えらび方

まずは母音から

5つの母音は、日本語に近い

イタリア語の母音は、日本語の「ア・イ・ウ・エ・オ」に近い音です。日本語を話す人にとっては、なじみやすいといわれています。

  • a 「ア」 口をたてに大きく開ける
  • e 「エ」
  • i 「イ」
  • o 「オ」
  • u 「ウ」 くちびるを丸くして前に出す

日本語の「ウ」は、くちびるをあまり丸めずに言うことが多いですが、イタリア語の u は、くちびるをしっかり丸めて前に出します。口笛をふくときのような形をイメージすると、わかりやすいと思います。

母音をつぶさない

歌うときは、ひとつひとつの母音を、はっきり、まっすぐのばすことが大切です。「ア」が「ァ」のように小さくなったり、「エ」と「イ」のあいだのような音になったりしないように気をつけましょう。

「開いたエ・オ」と「閉じたエ・オ」

イタリア語には、口を少し大きめに開ける「エ」「オ」と、少しせまめに言う「エ」「オ」があります。はじめのうちは、むずかしく考えなくてだいじょうぶです。先生に「ここは少し開けて」と言われたら、そのつど楽譜にメモしておきましょう。

子音のきほんの決まり

イタリア語は、だいたいローマ字に近い読み方をします。でも、いくつか、ローマ字とちがう読み方をする決まりがあります。ここでは、よく出てくるものをしょうかいします。

c と g は、あとにつづく母音で読み方がかわる

  • c + a・o・u →「カ・コ・ク」 (例:caro カーロ)
  • c + e・i →「チェ・チ」 (例:cielo チェーロ)
  • g + a・o・u →「ガ・ゴ・グ」
  • g + e・i →「ジェ・ジ」 (例:gioia ジョイア)

h が入ると、かたい音になる

  • ch + e・i →「ケ・キ」 (例:che ケ)
  • gh + e・i →「ゲ・ギ」

ローマ字の感覚で che を「チェ」と読みたくなりますが、イタリア語では「ケ」になります。まちがえやすいところなので、気をつけましょう。

h は読まない

h は、それだけでは音になりません。ho(オ)のように、h がないものとして読みます。

gn と gli

  • gn →「ニャ・ニョ」のような音 (例:ogni オンニ)
  • gli →「リ」に近い、舌を広くつかう音

gli は、日本語にない音なので、少しむずかしく感じるかもしれません。先生のお手本をよく聞いて、まねしてみましょう。

sc + e・i は「シェ・シ」

  • sc + e・i →「シェ・シ」 (例:scena シェーナ)
  • sc + a・o・u →「スカ・スコ・スク」

z は「ツ」か「ヅ」

z は、ことばによって「ツ」に近い音になったり、「ヅ」に近い音になったりします。辞書や先生にたしかめるのがいちばんです。

r の音は、舌をはじく

イタリア語の r は、舌の先を、上の歯のうらのあたりで軽くはじいて出す音です。日本語の「ラ行」に近いですが、もう少しはっきりはじきます。ことばによっては、舌をふるわせる「巻き舌」で歌うこともあります。

巻き舌が苦手な方も多いと思います。できなくても、歌が歌えないわけではありません。まずは、舌を1回はじく「ラ」をはっきり言えるようにしてみましょう。

二重子音は「小さなつ」のように

同じ子音が2つならぶとき

イタリア語には、同じ子音が2つならぶことばがたくさんあります。たとえば、bella(ベッラ)、notte(ノッテ)などです。

二重子音は、日本語の「っ」のように、少し間をとってから次の音を出すイメージです。ただし、歌のときは、音を切ってしまわないように、なめらかにつなげることが大切です。

一つの子音とのちがいを大切に

子音が1つか2つかで、ことばの意味がかわることもあります。楽譜を見て、二重子音のところには、しるしをつけておくと練習しやすくなります。

アクセントの位置

うしろから2番目の母音が強くなることが多い

イタリア語のことばは、うしろから2番目の母音にアクセントがくることが多いです。たとえば、amore(アモーレ)は「モ」、cuore(クオーレ)は「オ」のところが少し長く、強めになります。

ただし、例外もたくさんあります。ことばのおわりに「à」「è」のような記号がついているときは、そこにアクセントがきます。

歌では、メロディーとことばのアクセントが合っていることが多い

作曲家は、ことばのアクセントを大切にして、メロディーをつけていることが多いです。歌っていて「なんだか不自然だな」と感じたら、アクセントの位置を見なおしてみましょう。

家でできる発音の練習

1. 歌詞を読むことからはじめる

いきなり歌うのではなく、まずは歌詞を声に出して読んでみましょう。ゆっくり、はっきり、ひとつひとつの音をたしかめます。

2. リズムに合わせて読む

次に、歌のリズムに合わせて、ことばだけを読んでみます。手をたたきながら読むと、リズムがつかみやすくなります。

3. 母音だけで歌う

ことばの子音をぬいて、母音だけでメロディーを歌ってみる練習もあります。たとえば、caro なら「ア・オ」と歌います。声の流れが切れにくくなり、なめらかに歌えるようになることがあります。

4. ことばをつけて歌う

最後に、ことばをつけて歌います。録音して聞きかえすと、自分では気づかなかった発音のくせに気づけることがあります。

意味を知っておく

ことばの意味を知ると、気持ちをこめて歌いやすくなります。楽譜に日本語の訳がついていることも多いので、1行ずつ意味をたしかめておきましょう。

子どもと大人、それぞれのポイント

子どもの場合

小さなお子様には、むずかしい決まりを全部説明する必要はありません。先生や、お父様・お母様のお手本を聞いて、まねするところからはじめましょう。カタカナのふりがなを楽譜に書くのも、はじめのうちはよい方法です。

大人の場合

大人の方は、決まりを知ることで、ぐっと読みやすくなることが多いです。この記事の決まりを、楽譜のはしにメモしておくのもおすすめです。大人から声楽をはじめる方は、こちらの記事も読んでみてください。大人から声楽をはじめる。クラシックの歌のたのしさと、教室えらび

のどにむりをさせない

発音を気にしすぎて、口やあごに力が入りすぎると、のどがつかれてしまうことがあります。こまめに休けいをとり、のどの痛みやかすれが何日も続くときは、耳鼻科などのお医者さんに相談しましょう。

まとめ

  • イタリア語は母音がはっきりしていて、声楽の練習に向いている
  • 母音は日本語に近いが、u はくちびるを丸めて前に出す
  • c・g は、あとにつづく母音で読み方がかわる
  • che は「ケ」、h は読まない、sc + e・i は「シェ・シ」
  • 二重子音は「っ」のように、でも歌はなめらかに
  • アクセントは、うしろから2番目の母音にくることが多い
  • 読む、リズム読み、母音だけで歌う、ことばをつけて歌う、の順で練習する

イタリア歌曲の発音は、はじめはむずかしく感じても、きほんの決まりを知ると少しずつなれていきます。練習してきたイタリア歌曲を聞いてもらいたくなったら、こどもの歌声グランプリに挑戦してみてください。オンラインの動画審査だけで出られて、幼児からシニア(65歳以上)までの8部門があり、ジャンルは自由です。講評とデジタル賞状がとどくので、これからの練習の目標にもなると思います。こどもの歌声グランプリ

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