イタリア歌曲の発音のきほん。声楽をならう子ども・大人のために
「声楽の先生に、イタリア語の歌をわたされた。どう読めばいいの?」 「ローマ字みたいに読めばいいのかな。でも、ところどころちがう気がする」
声楽を習いはじめると、イタリア語の歌、いわゆる「イタリア歌曲」を練習することがよくあります。はじめて楽譜を見たときは、知らないことばがならんでいて、おどろく方も多いと思います。
わたしは、息子といっしょにたくさんの歌のコンクールに出てきました。声楽の部門では、お子様から大人の方まで、多くの方がイタリア歌曲を歌っていました。はじめはむずかしく感じても、きほんの決まりを知ると、ぐっと読みやすくなります。
この記事では、イタリア歌曲を歌うときに知っておきたい、発音のきほんをまとめました。くわしい発音は、先生によって教え方が少しちがうこともあるので、ここでは一般的な決まりをしょうかいします。
なぜ声楽ではイタリア歌曲を歌うの?
母音がはっきりしていて、歌いやすい
イタリア語は、母音(ア・エ・イ・オ・ウ)がはっきりしたことばです。ことばのおわりも母音でおわるものが多く、声をのびやかに出しやすいといわれています。そのため、声楽のはじめのころの練習曲として、よくえらばれます。
声楽の練習によくつかわれる曲がたくさんある
声楽のレッスンでは、昔のイタリアの作曲家の歌がよくつかわれます。たとえば、ジョルダーニの作とされる「Caro mio ben(カーロ・ミオ・ベン)」や、カルダーラの「Sebben, crudele(セッベン・クルデーレ)」などは、声楽を習う方が早い時期に出会うことが多い曲です。
子どもの声楽の曲えらびについては、こちらの記事でもまとめています。子どもの声楽で歌われることが多い曲のジャンル。日本歌曲・イタリア歌曲・童謡のちがいと、えらび方
まずは母音から
5つの母音は、日本語に近い
イタリア語の母音は、日本語の「ア・イ・ウ・エ・オ」に近い音です。日本語を話す人にとっては、なじみやすいといわれています。
- a 「ア」 口をたてに大きく開ける
- e 「エ」
- i 「イ」
- o 「オ」
- u 「ウ」 くちびるを丸くして前に出す
日本語の「ウ」は、くちびるをあまり丸めずに言うことが多いですが、イタリア語の u は、くちびるをしっかり丸めて前に出します。口笛をふくときのような形をイメージすると、わかりやすいと思います。
母音をつぶさない
歌うときは、ひとつひとつの母音を、はっきり、まっすぐのばすことが大切です。「ア」が「ァ」のように小さくなったり、「エ」と「イ」のあいだのような音になったりしないように気をつけましょう。
「開いたエ・オ」と「閉じたエ・オ」
イタリア語には、口を少し大きめに開ける「エ」「オ」と、少しせまめに言う「エ」「オ」があります。はじめのうちは、むずかしく考えなくてだいじょうぶです。先生に「ここは少し開けて」と言われたら、そのつど楽譜にメモしておきましょう。
子音のきほんの決まり
イタリア語は、だいたいローマ字に近い読み方をします。でも、いくつか、ローマ字とちがう読み方をする決まりがあります。ここでは、よく出てくるものをしょうかいします。
c と g は、あとにつづく母音で読み方がかわる
- c + a・o・u →「カ・コ・ク」 (例:caro カーロ)
- c + e・i →「チェ・チ」 (例:cielo チェーロ)
- g + a・o・u →「ガ・ゴ・グ」
- g + e・i →「ジェ・ジ」 (例:gioia ジョイア)
h が入ると、かたい音になる
- ch + e・i →「ケ・キ」 (例:che ケ)
- gh + e・i →「ゲ・ギ」
ローマ字の感覚で che を「チェ」と読みたくなりますが、イタリア語では「ケ」になります。まちがえやすいところなので、気をつけましょう。
h は読まない
h は、それだけでは音になりません。ho(オ)のように、h がないものとして読みます。
gn と gli
- gn →「ニャ・ニョ」のような音 (例:ogni オンニ)
- gli →「リ」に近い、舌を広くつかう音
gli は、日本語にない音なので、少しむずかしく感じるかもしれません。先生のお手本をよく聞いて、まねしてみましょう。
sc + e・i は「シェ・シ」
- sc + e・i →「シェ・シ」 (例:scena シェーナ)
- sc + a・o・u →「スカ・スコ・スク」
z は「ツ」か「ヅ」
z は、ことばによって「ツ」に近い音になったり、「ヅ」に近い音になったりします。辞書や先生にたしかめるのがいちばんです。
r の音は、舌をはじく
イタリア語の r は、舌の先を、上の歯のうらのあたりで軽くはじいて出す音です。日本語の「ラ行」に近いですが、もう少しはっきりはじきます。ことばによっては、舌をふるわせる「巻き舌」で歌うこともあります。
巻き舌が苦手な方も多いと思います。できなくても、歌が歌えないわけではありません。まずは、舌を1回はじく「ラ」をはっきり言えるようにしてみましょう。
二重子音は「小さなつ」のように
同じ子音が2つならぶとき
イタリア語には、同じ子音が2つならぶことばがたくさんあります。たとえば、bella(ベッラ)、notte(ノッテ)などです。
二重子音は、日本語の「っ」のように、少し間をとってから次の音を出すイメージです。ただし、歌のときは、音を切ってしまわないように、なめらかにつなげることが大切です。
一つの子音とのちがいを大切に
子音が1つか2つかで、ことばの意味がかわることもあります。楽譜を見て、二重子音のところには、しるしをつけておくと練習しやすくなります。
アクセントの位置
うしろから2番目の母音が強くなることが多い
イタリア語のことばは、うしろから2番目の母音にアクセントがくることが多いです。たとえば、amore(アモーレ)は「モ」、cuore(クオーレ)は「オ」のところが少し長く、強めになります。
ただし、例外もたくさんあります。ことばのおわりに「à」「è」のような記号がついているときは、そこにアクセントがきます。
歌では、メロディーとことばのアクセントが合っていることが多い
作曲家は、ことばのアクセントを大切にして、メロディーをつけていることが多いです。歌っていて「なんだか不自然だな」と感じたら、アクセントの位置を見なおしてみましょう。
家でできる発音の練習
1. 歌詞を読むことからはじめる
いきなり歌うのではなく、まずは歌詞を声に出して読んでみましょう。ゆっくり、はっきり、ひとつひとつの音をたしかめます。
2. リズムに合わせて読む
次に、歌のリズムに合わせて、ことばだけを読んでみます。手をたたきながら読むと、リズムがつかみやすくなります。
3. 母音だけで歌う
ことばの子音をぬいて、母音だけでメロディーを歌ってみる練習もあります。たとえば、caro なら「ア・オ」と歌います。声の流れが切れにくくなり、なめらかに歌えるようになることがあります。
4. ことばをつけて歌う
最後に、ことばをつけて歌います。録音して聞きかえすと、自分では気づかなかった発音のくせに気づけることがあります。
意味を知っておく
ことばの意味を知ると、気持ちをこめて歌いやすくなります。楽譜に日本語の訳がついていることも多いので、1行ずつ意味をたしかめておきましょう。
子どもと大人、それぞれのポイント
子どもの場合
小さなお子様には、むずかしい決まりを全部説明する必要はありません。先生や、お父様・お母様のお手本を聞いて、まねするところからはじめましょう。カタカナのふりがなを楽譜に書くのも、はじめのうちはよい方法です。
大人の場合
大人の方は、決まりを知ることで、ぐっと読みやすくなることが多いです。この記事の決まりを、楽譜のはしにメモしておくのもおすすめです。大人から声楽をはじめる方は、こちらの記事も読んでみてください。大人から声楽をはじめる。クラシックの歌のたのしさと、教室えらび
のどにむりをさせない
発音を気にしすぎて、口やあごに力が入りすぎると、のどがつかれてしまうことがあります。こまめに休けいをとり、のどの痛みやかすれが何日も続くときは、耳鼻科などのお医者さんに相談しましょう。
まとめ
- イタリア語は母音がはっきりしていて、声楽の練習に向いている
- 母音は日本語に近いが、u はくちびるを丸めて前に出す
- c・g は、あとにつづく母音で読み方がかわる
- che は「ケ」、h は読まない、sc + e・i は「シェ・シ」
- 二重子音は「っ」のように、でも歌はなめらかに
- アクセントは、うしろから2番目の母音にくることが多い
- 読む、リズム読み、母音だけで歌う、ことばをつけて歌う、の順で練習する
イタリア歌曲の発音は、はじめはむずかしく感じても、きほんの決まりを知ると少しずつなれていきます。練習してきたイタリア歌曲を聞いてもらいたくなったら、こどもの歌声グランプリに挑戦してみてください。オンラインの動画審査だけで出られて、幼児からシニア(65歳以上)までの8部門があり、ジャンルは自由です。講評とデジタル賞状がとどくので、これからの練習の目標にもなると思います。こどもの歌声グランプリ