子どもの声楽で歌われることが多い曲のジャンル。日本歌曲・イタリア歌曲・童謡のちがいと、えらび方
「声楽を習いはじめたけれど、どんな曲を歌うのかよくわからない」 「日本歌曲とか、イタリア歌曲とか言われても、ちがいがわからない」
お子様が声楽のレッスンを始めると、聞きなれないことばがたくさん出てきますよね。先生から曲をわたされても、どんな曲なのか、なぜこの曲なのか、わからないままのお父様・お母様も多いと思います。
わたしは、息子といっしょに、たくさんの声楽や童謡のコンクールに出てきました。会場では、日本の歌も、外国のことばの歌も、いろいろなジャンルの曲を聞いてきました。
この記事では、子どもの声楽で歌われることが多い曲のジャンルとして、日本歌曲、イタリア歌曲、童謡の3つをとりあげ、それぞれのちがいと、えらび方のポイントをまとめます。
なお、この記事でとりあげる曲は、作詞・作曲をした人がはっきりしている、広く知られた曲だけにしています。
子どもの声楽で歌われる曲は、大きく3つ
子どもの声楽のレッスンやコンクールでは、こんな曲が歌われることが多いです。
| ジャンル | どんな曲? | ことば |
|---|---|---|
| 童謡 | 子どものためにつくられた日本の歌 | 日本語 |
| 日本歌曲 | 日本の詩に、ピアノ伴奏つきでつくられた歌 | 日本語 |
| イタリア歌曲 | 声楽の勉強でよく歌われる、イタリア語の歌 | イタリア語 |
このほかに、ドイツ語の歌(ドイツ歌曲)や、ミュージカルの歌などを歌うお子様もいます。どの曲を歌うかは、お子様の年齢や声、先生の考え方、コンクールの決まりによってちがいます。
童謡
童謡ってどんな歌?
童謡は、子どもが歌うためにつくられた日本の歌です。大正時代のころから、子どものための歌がたくさんつくられるようになり、今も歌いつがれている曲がたくさんあります。
ことばがやさしく、メロディーもおぼえやすい曲が多いので、小さなお子様が声楽を始めるときの入り口になりやすいジャンルです。
よく知られた童謡
- 「七つの子」作詞:野口雨情 作曲:本居長世
- 「シャボン玉」作詞:野口雨情 作曲:中山晋平
- 「ぞうさん」作詞:まど・みちお 作曲:團伊玖磨
- 「サッちゃん」作詞:阪田寛夫 作曲:大中恩
- 「めだかの学校」作詞:茶木滋 作曲:中田喜直
- 「ちいさい秋みつけた」作詞:サトウハチロー 作曲:中田喜直
童謡のよいところ
- 日本語なので、ことばの意味がわかりやすい
- お子様が、歌の場面を思いうかべやすい
- 音の高さのはばが、あまり広くない曲が多い
- 家族みんなが知っている曲も多く、いっしょに歌える
童謡はやさしい歌に見えますが、ことばをはっきりつたえること、気持ちをこめることなど、じっくり向き合うと、とても奥の深いジャンルです。童謡を上手に歌うコツは、こちらの記事にまとめています。童謡を上手に歌うコツ。「ことば」を大切にすると歌はかわる
日本歌曲
日本歌曲ってどんな歌?
日本歌曲は、日本の詩人が書いた詩に、作曲家がメロディーとピアノ伴奏をつけた歌です。明治から昭和にかけて、たくさんの名曲がつくられました。
童謡とかさなる曲もありますが、日本歌曲は、ピアノ伴奏と歌がいっしょになって、詩の世界をあらわすようにつくられているのが特徴です。ことばの美しさや、ひびきを大切にする歌が多いです。
よく知られた日本歌曲
- 「この道」作詞:北原白秋 作曲:山田耕筰
- 「赤とんぼ」作詞:三木露風 作曲:山田耕筰
- 「からたちの花」作詞:北原白秋 作曲:山田耕筰
- 「浜辺の歌」作詞:林古溪 作曲:成田為三
- 「早春賦」作詞:吉丸一昌 作曲:中田章
- 「花」作詞:武島羽衣 作曲:滝廉太郎
- 「荒城の月」作詞:土井晩翠 作曲:滝廉太郎
- 「夏の思い出」作詞:江間章子 作曲:中田喜直
「この道」や「赤とんぼ」は、童謡として親しまれている曲でもあります。こうした曲は、童謡の部でも、声楽の部でも歌われることがあります。
日本歌曲のよいところ
- 日本語の美しいひびきを、ていねいに学べる
- 詩の意味を考えることで、表現する力がそだつ
- ピアノ伴奏をよく聞いて歌う練習になる
いっぽうで、詩のことばが古く、お子様にはむずかしいこともあります。そんなときは、お父様・お母様がことばの意味をいっしょに調べて、「どんな景色の歌かな」と話してみてください。歌の場面が思いうかぶと、お子様の歌い方もかわってくることがあります。
イタリア歌曲
イタリア歌曲ってどんな歌?
声楽を習っていると、イタリア語の歌を歌うことがよくあります。イタリア語は、母音(あ・い・う・え・お のような音)がはっきりしていて、声をのびやかに出す練習に向いていると言われています。そのため、声楽の勉強のはじめのころに、イタリア語の歌をとりあげる先生が多いです。
子どもや、声楽をはじめたばかりの人がよく歌うのは、昔のイタリアでつくられた歌や、オペラの中の歌を集めた「イタリア歌曲集」などの曲集にのっている曲です。
よく知られたイタリアの歌
- 「Nel cor più non mi sento(ネル・コル・ピウ・ノン・ミ・セント)」作曲:パイジェッロ
この曲は、パイジェッロというイタリアの作曲家のオペラの中の1曲で、声楽の勉強でよく歌われています。
イタリアの古い歌の中には、本当はだれが作曲したのか、はっきりしていない曲もあります。曲集では作曲者の名前がのっていても、研究によって説がわかれていることがあるのです。この記事では、そうした曲の名前は出していません。先生からわたされた楽譜で、どんな曲なのか、いっしょにたしかめてみてください。
イタリア歌曲のよいところ
- 母音をのびやかに出す練習になる
- 声楽らしい、まっすぐなひびきを学びやすい
- 短くて、1曲の中で声のつかい方をじっくり練習できる曲が多い
気をつけたいこと
外国のことばなので、意味がわからないまま歌ってしまうことがあります。楽譜についている日本語のやくや、先生の説明で、どんな気持ちの歌なのかを知っておくと、歌いやすくなります。
また、イタリア語の読み方は、先生にていねいに教えてもらうのがいちばんです。おうちで練習するときは、レッスンを録音しておいて、読み方を聞きなおせるようにしておくと安心です。
お子様に合う曲のえらび方
どのジャンルにも、それぞれのよさがあります。ここでは、曲をえらぶときに見ておきたいことをまとめます。
1. 年齢と、ことばのわかりやすさ
小さなお子様は、意味がわかる日本語の歌のほうが、気持ちをこめやすいことが多いです。まずは童謡から始めて、少しずつ日本歌曲やイタリア歌曲にふれていく先生もいます。
2. 声に合った音の高さ
むりに高い音や低い音が出てくる曲は、のどに負担がかかることがあります。いまのお子様の声で、らくに出せる高さの曲かどうかを大切にしてください。調(キー)をかえて歌える曲もあるので、先生に相談してみましょう。
3. 曲の長さ
長い曲は、それだけ息や体力が必要です。はじめは短めの曲から始めて、少しずつ長い曲にチャレンジしていくと、むりがありません。
4. お子様が好きかどうか
いちばん大切なのは、お子様が「この歌、好き」と思えることです。好きな曲は、練習もすすみやすく、気持ちもこもりやすくなります。いくつか候補を聞いてみて、お子様の反応を見てみてください。
5. コンクールの決まり
コンクールに出るときは、部門ごとに歌える曲のジャンルや、曲の長さ、ことばなどの決まりがあることがあります。曲をえらぶ前に、かならず募集の要項をたしかめましょう。
童謡コンクールでの曲のえらび方は、こちらの記事でもくわしく書いています。童謡コンクールの曲のえらび方。年れい別のおすすめと、さけたいえらび方
先生と相談しながらえらぼう
声楽の曲は、お子様の声の状態や、いま練習していることに合わせて、先生がえらんでくれることが多いです。「この曲を歌わせたい」という希望があるときは、えんりょなく先生に話してみてください。そのうえで、お子様の声に合うかどうかを、いっしょに考えてもらえると安心です。
まだ教室が決まっていない方は、体験レッスンで、どんな曲をつかって教えているのかを聞いてみるのもよいと思います。近くの教室は、こちらのページからさがせます。歌の教室さがし
まとめ
- 子どもの声楽では、童謡・日本歌曲・イタリア歌曲が歌われることが多い
- 童謡は、ことばがやさしく、声楽の入り口になりやすい
- 日本歌曲は、日本の詩とピアノがいっしょになって、詩の世界をあらわす歌
- イタリア歌曲は、母音をのびやかに出す練習になり、声楽の勉強でよく歌われる
- 曲えらびでは、年齢、声の高さ、長さ、お子様の好き、コンクールの決まりを見る
- わからないことは、先生と相談しながらえらぶ
ジャンルを知っておくと、先生からわたされた曲にも、ぐっと親しみがわいてくると思います。練習してきた歌を聞いてもらう場として、こどもの歌声グランプリものぞいてみてください。幼児の部、小学生の低学年・高学年の部、中学生・高校生の部などがあり、おうちでとった動画で、どんなジャンルの歌でも応募できます。出場した全員に講評が届くので、お子様の歌のよいところを知るきっかけになればうれしいです。こどもの歌声グランプリ