曲の解釈ってなに?作曲者や時代を知って、歌をもっと深めるための考え方
「もう少し、この曲の解釈を考えてきてね」 声楽のレッスンで、先生からこんなふうに言われたことはありませんか。
音程やリズムは、練習すればたしかめられます。でも「解釈」と言われると、何をどうすればいいのか、よくわからないという方も多いと思います。
わたしは息子といっしょに、たくさんのコンクールに出てきました。歌は、楽譜の音をなぞるだけでなく、その曲のことを知るほど、歌い方が少しずつかわっていくものだと感じています。
この記事では、声楽を学んでいる中学生・高校生や大人の方に向けて、「曲の解釈」とは何か、どうやって考えていけばよいかを、順番にまとめます。むずかしい音楽の勉強をしなくても、今日からできることばかりです。
曲の解釈とは?
「この曲を、どう歌うか」を自分で考えること
曲の解釈とは、かんたんに言うと「この曲は何を伝えようとしているのか」「それをどう歌えば伝わるのか」を、自分で考えることです。
楽譜には、音の高さや長さ、強さの記号などが書かれています。でも、楽譜にすべてが書いてあるわけではありません。
- このことばを、どんな気持ちで歌うか
- どこをいちばん大切に聞かせたいか
- 速さを、どのくらいゆらしてよいか
- 声の明るさや暗さを、どうかえるか
こうしたことは、歌う人が考えて決める部分です。ここに、その人らしさがあらわれます。
「正しい答え」はひとつではない
解釈には、テストのような正解はありません。同じ曲でも、歌う人によってちがう歌い方になります。それが音楽のおもしろさです。
ただし、「なんでも自由」というわけでもありません。楽譜に書かれていることや、作曲者が生きた時代の歌い方を知ったうえで、自分の考えを重ねていくことが大切です。土台をしっかり知ることで、自分らしい歌い方にも説得力が生まれます。
まずは歌詞を深く読む
ことばの意味を、ひとつずつたしかめる
解釈の第一歩は、歌詞をよく読むことです。日本語の歌でも、昔のことばや、ふだんつかわないことばが出てくることがあります。意味があいまいなまま歌っていると、気持ちをこめるのがむずかしくなります。
外国語の歌なら、まず日本語の訳を用意しましょう。できれば、ことば一つひとつの意味がわかる「逐語訳(ことばごとの訳)」があると、どのことばがどの音にのっているかがわかり、歌いやすくなります。イタリア語の歌の発音については、こちらの記事にまとめています。イタリア歌曲の発音のきほん。声楽をならう子ども・大人のために
詩の中の「だれが」「だれに」「どんな場面で」
歌詞を読むときは、次のようなことを考えてみてください。
- この歌で話しているのは、だれか
- だれに向かって話しているのか
- どんな場所、どんな季節、どんな時間か
- はじめとおわりで、気持ちはどうかわるか
これを考えるだけで、どこをやさしく歌い、どこを強く歌うか、自然と見えてくることがあります。
歌詞を声に出して読んでみる
メロディをつけずに、歌詞をふつうに読んでみましょう。詩を朗読するつもりで読むと、ことばのリズムや、強く言いたいところがわかってきます。
楽譜から読みとれること
記号は作曲者からのメッセージ
楽譜には、強さや速さ、表情をあらわす記号がたくさん書かれています。これらは、作曲者が「こう歌ってほしい」と伝えるメッセージです。
- 強弱の記号(大きく、小さく、だんだん大きく など)
- 速さの記号や、速さをゆるめる・もどす記号
- 「やさしく」「歌うように」などの表情のことば
知らない記号があれば、そのままにせず、音楽の辞典やインターネットで調べたり、先生に聞いたりしましょう。
伴奏にも耳をむける
歌の曲では、伴奏も大切な役わりをもっています。伴奏が、風や水の流れ、馬の走る音、心臓のどきどきなどをあらわしていることもあります。伴奏だけを聞いてみると、曲の場面がうかびやすくなります。
メロディの動きを見る
メロディが高く上がっていくところ、くりかえされるところ、急に音がかわるところには、何か意味があることが多いです。「なぜここで高くなるのだろう」と考えてみると、解釈のヒントになります。
作曲者と時代を知る
作曲者がどんな人だったか
曲をつくった人が、どんな時代に、どんな場所で生きていたのかを知ると、曲の見え方がかわってきます。
- いつごろ、どこの国で生まれた人か
- ほかにどんな曲をつくっているか
- その曲をつくったころ、どんなことがあったか
すべてを調べる必要はありません。作曲者の名前と、だいたいの時代がわかるだけでも、大きな手がかりになります。
時代によって、歌い方の考え方がちがう
西洋のクラシック音楽は、時代ごとに「バロック」「古典派」「ロマン派」などに分けて語られることが多いです。時代によって、好まれた表現がちがいます。
- バロックのころ:形がととのった、きっちりとした表現が多い
- 古典派のころ:バランスのよさ、明るさや品のよさが大切にされる
- ロマン派のころ:気持ちの動きや、ことばの表情がより強く出る
これはおおまかな目安です。くわしくは、先生や本で学んでみてください。時代を知ると、「この曲で、あまり大げさにしないほうがよさそう」「ここはもっと気持ちをこめてよさそう」といった判断がしやすくなります。
同じ詩でも、作曲者がちがえば曲がちがう
おもしろい例として、ゲーテの詩「野ばら」があります。この詩には、シューベルトをはじめ、ヴェルナーなど何人もの作曲者が曲をつけています。同じことばでも、作曲者によってメロディのふんいきや、伴奏のつけ方がちがいます。
聞きくらべてみると、「同じ詩でも、作曲者によって受けとり方がちがうのだな」と感じられると思います。これは、作曲者もまた、詩を「解釈」して曲をつくっているということです。
日本の歌でも同じように考えられる
日本の歌でも、考え方は同じです。たとえば、滝廉太郎が作曲し、土井晩翠が作詞した「荒城の月」は、明治のころにつくられた歌です。歌詞には、むかしのお城のさかえていたころと、いまのさびしいすがたがえがかれています。
歌詞の意味と、つくられた時代を知ってから歌うと、ことばの一つひとつに重みを感じやすくなります。
いろいろな歌手の演奏を聞きくらべる
2人以上の演奏を聞く
解釈を考えるときは、プロの歌手の演奏を聞くのもよい方法です。ただし、1人の演奏だけを聞くと、その歌い方をまねするだけになってしまうことがあります。できれば2人以上、ちがう歌手の演奏を聞きくらべてみましょう。
- 速さはどうちがうか
- どこで声を大きく、小さくしているか
- 声の明るさや、ことばの言い方はどうか
「自分はどちらが好きか」を考える
聞きくらべたら、「自分はこっちの歌い方が好き」「この部分はこの人、あの部分はあの人の考え方がいいな」と感じたことを、メモしておきましょう。それが、自分の解釈をつくる材料になります。
解釈を歌にうつす練習
楽譜に書きこむ
考えたことは、楽譜にえんぴつで書きこんでおきましょう。
- 「ここはささやくように」
- 「ここから気持ちが明るくなる」
- 「このことばをいちばん大切に」
書いておくと、練習のたびに思い出しやすくなります。
録音して聞いてみる
自分では気持ちをこめているつもりでも、録音を聞くと、思ったほど伝わっていないことがあります。録音を聞いて、考えた解釈が歌にあらわれているかをたしかめてみましょう。
気持ちと声の出し方のバランス
気持ちをこめようとして、のどに力が入りすぎることがあります。表現は、むりのない声の出し方の上にのせるものです。のどがつかれたり、痛みやかすれが続いたりするときは、練習を休み、必要なら耳鼻科などのお医者さんに相談してください。
歌に気持ちをこめる方法については、こちらの記事もあわせて読んでみてください。歌に気持ちをこめるには?歌詞の読みこみ方と、表情・声の色のつけ方
先生と話し合う
自分の考えを伝えてみる
解釈は、先生と話し合いながらつくっていくものです。「この部分は、こういう気持ちで歌いたいと思いました」と伝えてみましょう。先生は、その考えを生かしながら、声の出し方や表現の方法をアドバイスしてくれることが多いです。
ちがう意見をもらったときは
先生から、自分とちがう考えを言われることもあると思います。そのときは「なぜそう考えるのか」を聞いてみてください。理由を知ると、新しい見方が身につきます。
まとめ
- 曲の解釈とは、「この曲を、どう歌えば伝わるか」を自分で考えること
- まずは歌詞をよく読み、だれが、だれに、どんな場面で話しているかを考える
- 楽譜の記号や伴奏、メロディの動きから、作曲者のメッセージを読みとる
- 作曲者と時代を知ると、表現の方向が決めやすくなる
- いろいろな歌手の演奏を聞きくらべて、自分の好みを知る
- 考えたことは楽譜に書きこみ、録音してたしかめる
- 解釈は、先生と話し合いながら少しずつ深めていく
曲のことを知るほど、歌はもっと楽しくなります。いっしょに曲を深めてくれる先生をさがしたいときは、こちらのページもつかってみてください。歌の教室さがしじっくり考えて仕上げた歌をだれかに聞いてもらいたくなったら、こどもの歌声グランプリものぞいてみてください。オンラインの動画審査だけで出られて、幼児からシニア(65歳以上)までの8部門があり、ジャンルは自由です。講評とデジタル賞状がとどくので、自分の歌のよいところを知るきっかけになると思います。こどもの歌声グランプリ