手話で歌う。子どもと手話歌を楽しむときに、大切にしたい心がまえ
「子どもが学校で手話歌を習ってきて、家でもやりたがっている」 「歌に手話をつけて、発表会で歌ってみたい」
歌いながら手話で歌詞をあらわす「手話歌」は、学校や園、地域の行事などで見かけることがあります。手話で歌うことをきっかけに、手話や、聞こえない・聞こえにくい方のことを知りたいと思うお子様も多いと思います。
わたしは、息子といっしょに、たくさんの歌のコンクールに出てきました。歌はことばを伝えるものです。手話もまた、ひとつのことばです。
この記事では、手話の形のこまかい教え方ではなく、子どもと手話歌を楽しむときに大切にしたい心がまえを中心にお話しします。手話そのものは、手話を使う方や、手話を教える人から教わってください。
手話は「ことば」
手話は、身ぶりやダンスではない
まず知っておきたいのは、手話はひとつのことばだということです。日本語や英語と同じように、ことばのきまりがあり、手話を使って毎日くらしている方がいます。
手話歌を見ると、手の動きがおどりのように見えることもあります。でも、ひとつひとつの動きには意味があります。「きれいに見える動き」ではなく、「意味を伝えることば」として向き合うことが、いちばんの心がまえです。
手話にもいろいろある
日本で使われている手話には、いくつかの形があると言われています。
- ろう者(耳が聞こえない方)のあいだで育ってきた、日本語とはちがうきまりをもつ手話
- 日本語の順番にそって、手話の単語をならべていく形
手話歌は、日本語の歌詞にそって手話をつけることが多いので、後の形に近くなることがよくあります。手話を使う方の中には、手話歌についてさまざまな考えをもつ方がいます。そのことを知っておくだけでも、手話への向き合い方がかわってくると思います。
ろう者の文化を大切に
手話は、ろう者の方々が長い時間をかけて育ててきたことばです。手話には、そのことばを使う人たちのくらしや文化がつまっています。
手話歌を楽しむときも、「手話をかりている」という気持ちを、どこかにもっておきたいものです。お子様にも、「手話は、手話を使う人たちの大切なことばなんだよ」と伝えてあげてください。
手話は、手話を使う方から教わる
動画や本だけで、自己流にしない
ネットの動画や本で、手話歌を見ることもできます。でも、手の形や向き、動かす場所が少しちがうだけで、意味がかわってしまうことがあります。動画を見てまねするだけだと、まちがった形のまま、おぼえてしまうこともあります。
できれば、手話を使う方や、手話を教える人から、直接教わる機会をもちましょう。
教わる場所の見つけ方
- 地域の手話サークル
- 市区町村などがひらく手話講座
- 学校や園の先生に相談する
手話サークルや講座には、手話を使う方が参加していることもあります。歌の前に、まずあいさつや自己紹介の手話から教わるのもよいと思います。
教わるときに伝えたいこと
教わるときは、「この歌に手話をつけたい」ということを、先に伝えておきましょう。
- どんな歌か(歌詞を見せる)
- だれが、どこで、だれに向けて歌うか
- 発表するのか、家で楽しむだけか
歌詞の中には、そのまま手話にしにくいことばもあります。教えてくれる方といっしょに、どうあらわすかを考えていくことになります。
歌詞の意味を、まずことばで考える
歌詞を、ゆっくり読んでみる
手話歌でいちばん大切なのは、歌詞の意味を伝えることです。手の動きをおぼえる前に、お子様といっしょに歌詞をゆっくり読んでみましょう。
- この歌は、だれが、だれに向けて歌っている歌か
- どんな気持ちが歌われているか
- むずかしいことばや、昔のことばはないか
意味がわかると、手話の動きにも、自然と気持ちがこもってきます。歌詞の読みこみ方については、こちらの記事でくわしく書いています。歌に気持ちをこめるには?歌詞の読みこみ方と、表情・声の色のつけ方
ことばを「おきかえる」こともある
日本語の歌詞を、一語ずつ手話にするのは、むずかしいことがあります。手話では、同じ意味を、別のあらわし方で伝えることも多いからです。どうおきかえるかは、手話を使う方や教える人に相談しましょう。
表情も、手話の大切な一部
顔の表情にも意味がある
手話では、手の動きだけでなく、顔の表情や、まゆ、口の動き、うなずきなども、意味を伝える大切な一部だと言われています。
歌うときに顔がこわばっていると、手話の意味が伝わりにくくなることもあります。うれしい歌ならうれしい顔、さびしい歌ならさびしい顔を、むりなく自然に出せるとよいですね。
歌と手話、どちらも大切に
手話歌では、声で歌いながら、手でも歌詞をあらわします。はじめのうちは、手に気をとられて、声が小さくなったり、手がおくれたりすることもあります。
- まず、歌だけをしっかりおぼえる
- 次に、手話だけを、ゆっくりおぼえる
- さいごに、ゆっくりのテンポで合わせる
あせらず、ひとつずつすすめていきましょう。
子どもと楽しむときのポイント
「上手さ」より「伝えたい気持ち」
小さなお子様は、手の形がまだうまく作れないこともあります。それでも、「伝えたい」という気持ちをもって手話をしていることを、まずほめてあげてください。
ゆっくりのテンポで練習する
歌のテンポのまま手話をつけるのは、大人でもむずかしいものです。練習のときは、歌をゆっくりにしたり、ことばだけを読みながら手話をしたりして、少しずつなれていきましょう。
手話そのものに興味をもったら
手話歌をきっかけに、「手話をもっと知りたい」とお子様が言ったら、すてきなチャンスです。歌だけでなく、あいさつや、ふだんの会話の手話にも、少しずつふれてみてください。家族みんなで、手話の本を見たり、講座に行ったりするのもよいと思います。
発表や動画で気をつけたいこと
教えてくれた方に、相談しておく
学校や地域の発表会で手話歌をするときは、教えてくれた方に、発表することを伝えておきましょう。手話の形がまちがっていないか、本番の前に見てもらえると安心です。
聞こえない方も、いっしょに楽しめる工夫
手話歌は、聞こえる人だけでなく、聞こえない・聞こえにくい方も見ています。
- 歌詞を、字幕や紙でうつす
- 手話がよく見える位置と明るさで立つ
- 手話通訳の方がいる場合は、見やすい場所を用意する
こうした工夫があると、会場のみんながいっしょに楽しめる時間になります。合唱で手話歌をするときのならび方や練習のすすめ方は、合唱団や学校の先生とも相談してみてください。合唱のはじめ方については、こちらの記事も参考になると思います。子どもの合唱団・合唱コンクールのこと。合唱で身につく力と、はじめ方
動画をネットにのせるとき
手話歌の動画をネットにのせるときは、まちがった手話が広がってしまわないよう、教えてくれた方に見てもらってからにしましょう。お子様の顔や名前の出し方も、家族でよく話しあって決めてください。
よくある心配
手話を知らないのに、手話歌をしてもいいの?
はじめはだれでも、手話を知らないところからスタートします。大切なのは、「知らないから、教わろう」という気持ちです。自己流ですませず、手話を使う方や教える人に教わりながらすすめれば、手話歌は、手話を知るよい入り口になります。
手話の形をまちがえてしまったら?
まちがえることは、はずかしいことではありません。教えてくれた方に「ここは、これで合っていますか」と聞いてみましょう。ことばは、使いながら少しずつ身についていくものです。お子様がまちがえたときも、せめずに、いっしょにたしかめる姿を見せてあげてください。
聞こえない方と出会ったら、手話で話しかけていいの?
手話を少しおぼえると、使ってみたくなることもあると思います。ただ、聞こえない・聞こえにくい方の中にも、手話を使う方、文字や口の動きで話す方など、いろいろな方がいます。まずは相手の方が、どんな伝え方を望んでいるかを大切にしましょう。紙に書く、ゆっくり口を動かして話すなど、手話のほかにも伝える方法はたくさんあります。
まとめ
- 手話は、身ぶりやダンスではなく、ひとつのことば
- 手話を育ててきた、ろう者の文化を大切にする
- 動画や本だけで自己流にせず、手話を使う方や教える人から教わる
- 手の動きをおぼえる前に、歌詞の意味をことばで考える
- 表情も、手話の大切な一部
- 歌と手話は、べつべつにおぼえてから、ゆっくり合わせる
- 発表や動画の前には、教えてくれた方に相談する
手話歌でも、ふつうの歌でも、「ことばを伝えたい」という気持ちは同じです。お子様が歌うことを楽しめるようになったら、こどもの歌声グランプリものぞいてみてください。オンラインの動画審査だけで出られて、幼児からシニア(65歳以上)までの8部門があり、ジャンルは自由です。講評とデジタル賞状がとどくので、お子様の歌のよいところを知るきっかけになると思います。こどもの歌声グランプリ