声明(しょうみょう)とは?仏教に伝わる音楽、お寺の歌の世界をやさしく
「声明(しょうみょう)ということばを聞いたけれど、どんなものなのだろう」 「仏教の音楽といわれても、お経とどうちがうのか、よくわからない」
声明は、お寺で大切に伝えられてきた、節のついた仏教の音楽です。ふだんの生活ではあまり耳にしないかもしれませんが、日本の歌の歴史を考えるうえで、とても大事なものといわれています。
わたしは息子といっしょに、たくさんのコンクールに出てきました。
この記事では、声明とは何か、仏教の音楽としてどんな特ちょうがあるのか、そしてはじめての方が声明を聞くときに知っておきたいことを、やさしくお話しします。特定の宗派をすすめるものではなく、歌や声の文化のひとつとして、声明の世界をのぞいてみる記事です。
声明とは?
仏教の儀式でとなえられる、節のついたことば
声明とは、仏教の儀式(法要など)の中で、おぼうさんが節をつけてとなえる声の音楽のことです。仏さまをたたえることばや、お経の一部などに、ゆったりとした節をつけてとなえます。
ふだん耳にするお経の読み方は、同じ高さで、一定のリズムでとなえることが多いです。それにくらべて声明は、音の高さが上がったり下がったり、ひとつの音を長くのばしたりと、より歌に近い形をしているのが特ちょうです。
「声明」ということばの意味
声明ということばは、もともと、古いインドの学問のひとつ(ことばや文法についての学問)をさすことばだったといわれています。それが、日本では、仏教の儀式でとなえる節のついた声をさすことばとして、つかわれるようになったと伝えられています。
インドから中国をへて日本へ
声明のもとになる仏教の声の文化は、インドから中国をへて、日本につたわったといわれています。日本では、長い年月をかけて、お寺の中で受けつがれてきました。
宗派によって、声明のとなえ方や節、つかうことばにはちがいがあります。同じ「声明」でも、お寺や宗派によって、聞こえ方がずいぶんちがうことがあるのも、声明のおもしろいところです。
仏教の音楽としての声明の特ちょう
楽器を中心にしない、声の音楽
声明は、声が中心の音楽です。儀式の中では、かねなどの仏具の音が入ることもありますが、伴奏の楽器にあわせて歌うというよりも、声そのものをひびかせる音楽といえます。
ゆったりとした、長くのびる節
声明には、ひとつの文字を長くのばして、その中で音をゆらしたり、高さをかえたりしながらとなえる部分があります。ことばの意味を伝えるだけでなく、声のひびきで、おごそかな空気をつくっているようにも感じられます。
ひとりでとなえる部分と、みんなでとなえる部分
声明には、ひとりのおぼうさんがとなえる部分と、何人ものおぼうさんがいっしょにとなえる部分があることが多いです。ひとりの声からはじまり、そこにたくさんの声がかさなっていくと、お堂いっぱいに声がひろがるような感じがします。
節を書きあらわす記号
声明には、節を書きあらわすための記号が伝えられてきたといわれています。ことばの横に、音の上がり下がりや、のばし方をしめすしるしをつけたものです。ただし、記号だけでなく、先輩から後輩へ、口伝えで受けつがれてきた部分も大きいといわれます。
声明と日本の歌のつながり
声明は、日本のいろいろな歌や語りものに、えいきょうをあたえたともいわれています。たとえば、能の謡や、物語を節にのせて語る芸などに、声明のなごりを感じるという話を聞くことがあります。
どこまでえいきょうがあったのかについては、いろいろな考え方があります。ただ、「ことばを長くのばして、節をつけてひびかせる」という歌い方が、日本の古い歌の中に広く見られることを考えると、声明は日本の歌のルーツのひとつとして、大切にされているといえそうです。
能の謡については、こちらの記事でもまとめています。謡(うたい)とは?能の謡を習ってみたい方へ
声明の声の出し方の特ちょう
おなかからの、ゆったりとした声
声明の声は、大きな声をはり上げるというより、ゆったりと、深くひびく声であることが多いです。長くのばす部分が多いので、息を長くつかう力が必要になります。
ことばを大切にとなえる
声明は、もとになることばを大切にとなえる音楽です。中には、古い中国の読み方や、インドのことばに近い音をのこしたものもあるといわれます。ことばの意味がすぐにはわからなくても、ひとつひとつの音をていねいにとなえている様子が伝わってきます。
声をそろえるむずかしさ
みんなでとなえるときは、声の高さや、のばす長さ、息をすう場所をそろえることが大切になります。合唱にも通じるところがあり、声を合わせることの美しさを感じられます。
はじめての方の声明の聞き方
法要や行事で耳にする
声明は、もともとお寺の儀式の中でとなえられるものです。お寺の行事や法要に参列したときに、耳にすることがあります。参列するときは、そのお寺のきまりやマナーにしたがい、しずかに聞きましょう。
コンサートや公演で聞く
近年は、ホールなどで声明を聞いてもらう公演がひらかれることもあるようです。お寺の儀式に参列するのは少しきんちょうする、という方には、こうした場で声明にふれてみるのもひとつの方法です。開催があるかどうかや内容は、その時々でちがうので、公式の案内でたしかめてください。
録音で聞く
声明をおさめたCDや音源もあります。家でゆっくり聞いてみると、声のひびきや、節の上がり下がりに耳をすませることができます。
聞くときのポイント
- ことばの意味がわからなくても、声のひびきを感じてみる
- ひとつの音が、どんなふうにのびて、ゆれているかを聞く
- ひとりの声と、みんなの声のちがいを感じる
- しずかな部分、間(ま)の時間も大切に味わう
声明は、テンポのはやい音楽になれていると、はじめはゆっくりに感じるかもしれません。急がずに、声のひびきそのものを味わうつもりで聞いてみてください。
声明から、歌に生かせること
声明を聞くと、ふだんの歌の練習にも生かせるヒントが見つかることがあります。
- 息を長くつかい、音をていねいにのばすこと
- ことばのひとつひとつを大切にとなえること
- まわりの声をよく聞いて、声をそろえること
- 声を張り上げなくても、深いひびきで人の心にとどくこと
たとえば、長い音をきれいにのばす練習は、どんなジャンルの歌にも役立ちます。息を長くつかうコツは、こちらの記事でもふれています。歌で息が続かないときの練習。肺活量より大事な、息のつかい方
なお、声明を実際にとなえることは、そのお寺や宗派の中で受けつがれているものです。興味がある場合は、無理に自分でまねをするのではなく、公開されている講座や行事などの案内をたしかめてみるとよいでしょう。
お子様と声明を聞くとき
声明は、お子様にとっては、ふだん聞く歌とはずいぶんちがう音楽です。はじめは、ふしぎそうな顔をするかもしれません。
- 「どんな声に聞こえる?」と、感じたことを聞いてみる
- 声が長くのびているところで、いっしょに耳をすませてみる
- お寺の行事や公演では、しずかに聞くことを先に伝えておく
お子様が長い時間しずかにすごすのがむずかしいときは、録音で少しだけ聞いてみるところからはじめても、だいじょうぶです。いろいろな声の音楽にふれることは、お子様の耳を育てるきっかけにもなります。
長い音を歌うときに気をつけたいこと
声明のように長くのばす声をまねして歌ってみると、のどがつかれることがあります。長い音を出すときは、のどに力を入れず、楽な声で、短めのところから練習しましょう。のどの痛みやかすれが続くときは、無理をせず、耳鼻科などのお医者さんに相談してください。
まとめ
- 声明(しょうみょう)とは、仏教の儀式でおぼうさんが節をつけてとなえる声の音楽
- お経にくらべて、音の上がり下がりや長くのばす部分が多く、歌に近い
- インドから中国をへて日本につたわり、お寺の中で受けつがれてきたといわれる
- 宗派によって、となえ方や節にちがいがある
- 日本の古い歌や語りものとのつながりがいわれることもある
- 法要や行事、公演、録音などで耳にすることができる
- 声のひびき、のばし方、声のそろえ方は、ふだんの歌のヒントにもなる
声明は、声だけで空間をつつむような、ふしぎな力をもった音楽です。日本の歌や、声のひびきに興味がわいたら、歌の教室で声の出し方を学んでみるのもよいと思います。歌の教室さがし歌を練習してだれかに聞いてもらいたくなったときは、こどもの歌声グランプリもあります。オンラインの動画審査だけで出られて、幼児からシニア(65歳以上)までの8部門があり、ジャンルは自由です。講評とデジタル賞状がとどくので、歌をつづけるはげみにしてみてください。こどもの歌声グランプリ