合唱の指揮のやり方。はじめて指揮者になった人のための、振り方の基本と練習
「合唱コンクールで、指揮者をやることになった」 「指揮の振り方なんて、習ったことがない。どうしよう」
合唱の指揮者にえらばれると、うれしい気持ちと同じくらい、不安な気持ちになる方も多いと思います。歌うのとちがって、指揮は手のうごきでみんなに伝える役目です。何から練習すればいいのか、わからなくなりますよね。
わたしは、息子といっしょに、たくさんの歌のコンクールに出てきました。歌う人たちにとって、前に立つ人の手の動きは、思っている以上に大きな助けになります。
この記事では、合唱の指揮のやり方を、はじめての方にむけてお話しします。クラスでのまとめ役のことではなく、「指揮の振り方」そのものにしぼりました。かまえ方、拍子ごとの振り方、入りと終わりの合図、そして家でできる練習のしかたまで、順番に見ていきましょう。
指揮は、むずかしい技を見せるものではありません。初心者でも、いくつかの基本をおさえれば、歌う人に「わかりやすい」と思ってもらえる指揮に近づけます。
合唱の指揮者の、いちばん大事な役目
「テンポ」と「入り」をそろえる
合唱の指揮のやり方を考える前に、指揮者の役目をかんたんにまとめておきます。
- みんなの速さ(テンポ)をそろえる
- 歌いはじめと、歌い終わりをそろえる
- 強く歌うところ、やさしく歌うところを伝える
- 歌う人が安心して歌えるように、前で見守る
この中で、はじめての方がまず目ざしたいのは、上の2つです。速さと、入りと終わりがそろうだけで、合唱はぐっとまとまって聞こえます。
かっこよさより「見やすさ」
指揮というと、大きく手をふる姿を思いうかべるかもしれません。でも、合唱の指揮で大切なのは、かっこよさより見やすさです。歌っている人が、楽譜や前を見ながら、ちらっと目に入っただけで拍がわかる。そんな指揮をめざしましょう。
クラスでの役わりや、練習のすすめ方については、こちらの記事にまとめています。中学・高校の合唱コンクール、クラスで練習するときのコツ。指揮者と伴奏者の役わりも
指揮のかまえ方
立ち方
まずは、立ち方からです。
- 足は、肩はばくらいに開いて立つ
- ひざは、ピンとのばしきらず、少しゆるめる
- 背中をまっすぐにして、あごを引きすぎない
- 体をゆらしすぎないようにする
体が大きくゆれると、歌う人は手の動きを見失いやすくなります。下半身はどっしりと、手だけがやわらかく動くイメージです。
手の高さと形
手は、むねからおへそのあたりの高さでかまえます。顔より上で振りつづけると、腕がつかれてしまいますし、見る人も目線が上がって歌いにくくなります。
手の形は、力をぬいて、軽く指をそろえるくらいでだいじょうぶです。指揮棒を使わない合唱の指揮では、手のひらを少し下にむけておくと、拍が見やすくなります。
右手と左手のちがい
はじめのうちは、右手で拍を振り、左手は休ませておいてかまいません。左手は、なれてきたら「入りの合図」や「強弱」を伝えるときに使います。両手を同じように動かしつづけるより、右手で拍、左手でサインと分けたほうが、見やすい指揮になります。
拍子ごとの振り方
拍をはっきり見せる「打点」
指揮には、「打点」とよばれるポイントがあります。手がいちばん下に来て、はねかえる場所のことです。この打点がはっきりしていると、歌う人は「ここが1拍目だ」とわかります。
ボールを軽く床についたときのように、下におろした手が、ポンとはねかえる。そのイメージで振ってみてください。だらっと動かすより、打点で一度「止まるような感じ」があると、ぐっと見やすくなります。
2拍子の振り方
2拍子は、いちばんかんたんな形です。
- 1拍目 上から下へおろす
- 2拍目 はねかえって、上にもどる
下、上、下、上のくりかえしです。行進曲のように元気な曲で使われることが多い拍子です。
3拍子の振り方
3拍子は、三角形をえがくように振ります。
- 1拍目 上から下へおろす
- 2拍目 右がわ(自分から見て右)へ動かす
- 3拍目 上にもどる
下、右、上のくりかえしです。ゆったりした曲や、ワルツのような曲で使われます。
4拍子の振り方
合唱曲でいちばん多いのが、4拍子です。
- 1拍目 上から下へおろす
- 2拍目 左がわ(自分から見て左)へ動かす
- 3拍目 右がわへ大きく動かす
- 4拍目 上にもどる
下、左、右、上のくりかえしです。はじめは、ゆっくり「いち、に、さん、し」と声に出しながら、図形をなぞるように練習するとおぼえやすくなります。
拍子の形は、本や先生によって、手の動かし方が少しちがうこともあります。音楽の先生や合唱の先生に、一度見てもらうと安心です。
入りと終わりの合図
歌いはじめの合図(予備拍)
指揮のやり方で、いちばん大切といってもいいのが、歌いはじめの合図です。いきなり1拍目をふりおろしても、歌う人は息をすうひまがなく、入りがバラバラになってしまいます。
そこで、歌いはじめる前に、1拍分だけ「準備の拍」を振ります。これを予備拍といいます。
- 歌いだしの1拍前の動きを、少し大きめに見せる
- その動きのあいだに、自分も息をすう
- 次の打点で、みんなが歌いはじめる
指揮者がいっしょに息をすうと、歌う人も自然に息をすえるようになります。予備拍の速さは、そのまま曲の速さになるので、テンポを頭の中でしっかり決めてから振りましょう。
終わりの合図
曲の最後や、のばした音を止めるときにも合図が必要です。よく使われるのは、手で小さな円をえがいて、最後にキュッとにぎるような動きです。
- のばしているあいだは、手を止めずに少しずつ動かす
- 止めたいところで、はっきり手をにぎる、またはおろす
- 止めたあとも、すぐに手をおろさず、ひと呼吸おく
終わりの合図がはっきりしていると、声がきれいにそろって消えます。最後の音のひびきが消えるまで、手をしずかに保っておくと、聞いている人にも余韻が伝わります。
強弱と表情のつけ方
振りの大きさで強弱を伝える
指揮で強弱を伝えるときは、手の動きの大きさをかえます。
- 大きく歌ってほしいところは、振りを大きく
- やさしく歌ってほしいところは、振りを小さく
- だんだん大きくするところは、少しずつ振りを広げる
左手を使えるようになってきたら、手のひらを上にむけてもち上げると「大きく」、手のひらを下にむけてしずかにおろすと「小さく」という合図にもなります。
顔の表情も指揮のうち
歌う人は、指揮者の手だけでなく、顔もよく見ています。明るい曲ならやわらかい笑顔で、しっとりした曲なら少し落ち着いた表情で。指揮者が楽しそうにしていると、歌う人の声も自然と明るくなります。
家でできる、指揮の練習のしかた
鏡の前で、手の動きをたしかめる
まずは、鏡の前に立って振ってみましょう。
- 打点が、毎回同じ高さになっているか
- 体が大きくゆれていないか
- 肩に力が入っていないか
自分では見えにくいところも、鏡を使うとよくわかります。
音源に合わせて振る
練習する曲の音源や、合唱の録音があれば、それに合わせて振ってみましょう。はじめは音楽に「ついていく」だけでかまいません。なれてきたら、「自分の手で曲を進めている」つもりで振ってみてください。
メトロノームを使って、決まった速さで振る練習もおすすめです。速くなったり、おそくなったりするくせがないか、たしかめられます。
歌いながら振る
指揮者は、どのパートがどこで入るかを知っておく必要があります。自分のパートだけでなく、ほかのパートのメロディーも口ずさみながら振る練習をしてみましょう。楽譜に、各パートの入りの場所をしるしておくと、本番でもあわてにくくなります。
スマホで録画してみる
正面から自分の指揮を録画して見てみると、「思ったより手が小さい」「1拍目がわかりにくい」など、気づくことがたくさんあります。歌う人の目線で見ることが、見やすい指揮への近道です。
本番に向けて、指揮者が気をつけたいこと
伴奏者とテンポを決めておく
ピアノ伴奏がある曲では、伴奏の人と、はじめのテンポや、速さがかわるところを事前に話しておきましょう。前奏から指揮を振るのか、歌いだしから振るのかも、決めておくと安心です。
歌う人の顔を見る
楽譜ばかり見ていると、歌う人と目が合いません。本番が近づいたら、楽譜はできるだけおぼえて、みんなの顔を見ながら振れるようにしましょう。目が合うだけで、歌う人はぐっと安心します。
まちがえても、手を止めない
本番でテンポがずれたり、合図をまちがえたりすることもあるかもしれません。そんなときも、手を止めずに、落ち着いて拍を振りつづけることが大切です。指揮者が止まらなければ、歌う人もまた合わせることができます。
腕や肩がつかれやすい方は、練習のあいだにこまめに休けいをとってください。肩や腕の痛みが続くときは、むりをしないようにしましょう。
まとめ
- 合唱の指揮者の役目は、まず「テンポ」と「入り・終わり」をそろえること
- かまえは、足を肩はばに開き、手はむねからおへその高さで
- 打点を、ボールがはねかえるようにはっきり見せる
- 2拍子は下・上、3拍子は下・右・上、4拍子は下・左・右・上
- 歌いはじめは予備拍で、いっしょに息をすう
- 強弱は、振りの大きさと表情で伝える
- 鏡・音源・録画を使って、家でも練習できる
指揮は、歌う人の声をまとめる、とてもすてきな役目です。合唱の声をそろえる練習もしたいときは、こちらの記事も参考にしてみてください。合唱の発声練習メニュー。合唱部やクラス合唱で、みんなの声をそろえる練習合唱だけでなく、ひとりで歌うことにも挑戦してみたいお子様には、こどもの歌声グランプリもおすすめです。オンラインの動画審査だけで出られて、幼児からシニア(65歳以上)までの8部門があり、ジャンルは自由です。講評とデジタル賞状がとどくので、歌の励みになると思います。こどもの歌声グランプリ