小学校の先生の歌唱指導のコツ。音楽の授業で歌の声が出ないとき、クラスで声を出しやすくする工夫
「音楽の授業で歌っても、クラスの声がなかなか出ない」 「歌唱指導のコツが知りたい。どう声をかければ、子どもたちが歌ってくれるのかな」
小学校の先生は、音楽が専門でなくても、担任として歌の授業をすることがあります。音楽の授業で歌の声が出ないとき、どうしたらいいのかとなやむ先生は、少なくないと思います。
わたしは息子といっしょに、たくさんのコンクールに出てきました。歌は、のびのびと声を出せる空気があるかどうかで、ずいぶんかわるものだと感じています。
この記事では、小学校の音楽の授業にしぼって、歌唱指導のコツと、クラスで声を出しやすくする工夫をまとめました。合唱コンクールに向けた練習ではなく、ふだんの授業で、子どもたちが歌いやすくなることを中心にお話しします。
音楽の授業で歌の声が出ない理由
まわりの目が気になる
学年が上がるにつれて、子どもたちは「まちがえたらはずかしい」「目立ちたくない」と感じやすくなります。声が出ないのは、歌がきらいだからではなく、まわりの目が気になっているだけ、ということも多いです。
何をすればいいのか、わかっていない
「大きな声で歌いましょう」と言われても、どうすれば大きな声が出るのかは、子どもにはわかりにくいものです。体の使い方や、息のすい方がわからないまま、声だけを求められると、子どもたちはこまってしまいます。
曲になじんでいない
メロディーや歌詞があやふやなままだと、自信がなくて声が小さくなります。歌えない理由が、じつは「おぼえていないから」ということもあります。
体がかたまっている
授業の前に長い時間すわっていたり、休み時間のあとで気持ちが切りかわっていなかったりすると、体がかたく、声も出にくくなります。
授業のはじめにする声出しの工夫
体をほぐしてから歌う
いきなり歌いはじめるのではなく、まずは体をほぐす時間をつくりましょう。
- 立って、のびをする
- 肩を上げて、すとんと下ろす
- 首をゆっくり回す
- その場で軽くジャンプする
1分くらいでも、体がやわらかくなると、声が出やすくなります。
声を出すことを、あそびにする
声出しは、楽しくするのがいちばんです。
- 先生のまねをして「ほー」とフクロウのような声を出す
- サイレンのように、低い声から高い声までなめらかにつなげる
- 「ドン、ドン」と、手びょうしに合わせて声を出す
- 口をとじて「んー」とハミングし、だんだん口をあけていく
「歌う」というより「声であそぶ」時間にすると、はずかしさが少なくなります。
先生がまず声を出す
先生がはずかしがっていると、子どもたちも声を出しにくくなります。上手でなくても、先生がまず楽しそうに声を出すことで、クラスに「声を出していいんだ」という空気が生まれます。
クラスの空気づくり
まちがえても大丈夫と伝える
音楽の授業では、まちがえることを気にしすぎない空気がとても大切です。「まちがえても大丈夫」「声を出したことが、まずすばらしい」と、くり返し伝えていきましょう。
いきなり1人で歌わせない
声が出ないクラスで、いきなり1人ずつ歌わせると、かえって声が小さくなってしまうことがあります。
- まずはクラス全員で歌う
- 次に、列やグループで歌う
- なれてきたら、少人数で歌う
大きな集まりから少しずつ小さくしていくと、子どもたちも安心して声を出せます。
立つ場所や向きをかえてみる
いつもの席のままだと、まわりの目が気になって声が出にくいこともあります。輪になって歌う、黒板に背を向けて歌う、ペアで向き合って歌うなど、立つ場所や向きをかえるだけで、声が出やすくなることがあります。
歌唱指導で伝わりやすい声のかけ方
「大きな声で」より、体の動きで伝える
「もっと大きな声で」と言うより、具体的な体の動きを伝えるほうが、子どもたちにはわかりやすいです。
- 「遠くの窓まで声をとどけてみよう」
- 「口の中に、たまごが入るくらいあけてみよう」
- 「息をたくさんすってから、歌いはじめよう」
- 「背中をのばして、足のうらで床をおすように立ってみよう」
イメージしやすいことばをつかうと、自然と声がかわることがあります。
できたところを、すぐにほめる
声が少しでも大きくなったら、すぐにことばにして伝えましょう。
- 「いまの声、教室のうしろまでとどいたよ」
- 「さっきより、口がよくあいていたね」
- 「ことばがはっきり聞こえたよ」
どこがよかったのかを具体的に伝えると、子どもたちは次も同じようにしようと思えます。
どならない声を出す
元気に歌ってほしいからといって、どなるような声を出させると、のどをいためることがあります。「大きな声」と「どなる声」はちがうことを、先生がお手本で見せるのもよい方法です。のどにやさしい声で歌うことも、大切な指導のひとつです。
曲になじむための工夫
聞く時間をしっかりとる
新しい曲を習うときは、まず何回か聞く時間をとりましょう。メロディーが耳になじんでいると、自信を持って歌いやすくなります。
短く区切って練習する
1曲を通して何回も歌うより、短いフレーズに区切って練習するほうが、おぼえやすいことが多いです。
- 先生が1フレーズ歌う
- 子どもたちがまねをして歌う
- できたら、次のフレーズにすすむ
- 最後に、つなげて歌う
歌詞の意味を話し合う
歌詞にどんなことが書かれているのか、どんな気持ちの歌なのかをみんなで話し合うと、歌に気持ちがこもりやすくなります。ことばの意味がわかると、声も自然と出やすくなります。
学年ごとの工夫
低学年
低学年の子どもたちは、体を動かしながら歌うのが大好きです。手びょうしやふりつけを入れたり、歌に合わせて歩いたりと、あそびの要素を多めに取り入れると、楽しく声を出せます。
中学年
中学年になると、少しずつまわりの目が気になりはじめます。グループで歌う、パートに分かれて歌うなど、なかまといっしょに歌う形をふやすと、安心して声を出しやすくなります。
高学年
高学年では、はずかしさが強くなることが多いです。歌い方の理由を説明したり、録音を聞いて自分たちで気づいたことを話し合ったりと、考えながら歌う活動を取り入れると、取り組みやすくなることがあります。声がわりの時期の子もいるので、むりに高い声を出させないように気をつけましょう。
先生ご自身が歌に自信がないとき
音源やお手本の動画をつかう
音楽が専門でない先生は、「自分の歌でお手本を見せるのが不安」と感じることもあると思います。そんなときは、教科書の音源や、お手本の歌をつかってもかまいません。先生は音源といっしょに歌いながら、子どもたちの表情や口の動きを見ることに集中できます。
先生も「いっしょに学ぶ人」になる
「先生もこの曲ははじめてだから、いっしょにおぼえよう」と伝えるのも、1つの方法です。先生ががんばって歌う姿は、子どもたちにとって「声を出してみよう」と思えるきっかけになります。上手に歌うことより、楽しそうに取り組む姿を見せることを大切にしてみてください。
声が出にくい子への配慮
クラスのなかには、どうしても声が出にくい子もいます。むりに歌わせるのではなく、口を動かすだけでもよい、小さな声でもよい、とまずは参加できたことをみとめてあげてください。声が小さい子への関わり方は、こちらの記事でもまとめています。声が小さい子が、のびのび歌えるようになるには。お父様・お母様ができること
また、音程が合いにくい子については、こちらの記事も参考になると思います。子どもの歌の音程が合わないとき。おうちでできるやさしい練習
のどの痛みやかすれが続いている子がいるときは、むりに歌わせず、おうちの方に伝えて、耳鼻科などのお医者さんへの相談をすすめましょう。
まとめ
- 音楽の授業で歌の声が出ないのは、まわりの目やわからなさが理由のことが多い
- 授業のはじめに、体をほぐし、声であそぶ時間をつくる
- 先生がまず楽しそうに声を出す
- いきなり1人で歌わせず、大きな集まりから少しずつ小さくしていく
- 「大きな声で」より、体の動きやイメージで伝える
- できたところを、具体的に、すぐにほめる
- 学年に合わせて、あそび・なかま・考える活動を取り入れる
音楽の授業で歌うことが楽しいと感じられた子は、きっと歌がもっと好きになっていきます。歌が好きな子どもたちが、学校の外でも歌を楽しめるように、こどもの歌声グランプリも開いています。オンラインの動画審査だけで出られて、幼児からシニア(65歳以上)までの8部門があり、ジャンルは自由です。講評とデジタル賞状がとどくので、歌が好きなお子様の目標のひとつとして、ご家庭に紹介していただけたらうれしいです。こどもの歌声グランプリ