声が小さい子が、のびのび歌えるようになるには。お父様・お母様ができること
「家ではよく歌っているのに、人の前だと、声がほとんど聞こえない」 「発表会で、口は動いているのに、声が出ていなかった」
お子様の歌う声が小さくて、気になっているお父様・お母様は多いと思います。「もっと大きな声で」と言いたくなる気持ちも、よくわかります。
わたしは、息子といっしょに、たくさんの歌のコンクールに出てきました。そのあいだ、いろいろなお子様が歌う姿を見てきました。そこで感じたのは、声が小さいことは、わるいことではない、ということです。声が小さいのには、その子なりのわけがあることが多く、そのわけに合わせてささえていくと、少しずつ声が出てくることがあります。
この記事では、お子様の声が小さくなるわけと、お父様・お母様が家でできること、言わないほうがよい声かけ、人前で歌うときのささえ方をまとめます。
お子様の声が小さくなるのは、なぜ?
声が小さいといっても、そのわけは一人ひとりちがいます。まずは、どれに近いかを考えてみてください。
はずかしい、自信がない
いちばん多いのは、気持ちの面です。
- まちがえたら、はずかしい
- みんなに見られるのが、こわい
- 自分の声が、すきではない
- 前に、だれかに笑われたことがある
こうした気持ちがあると、体がかたくなり、声も小さくなりやすいです。とくに、まじめで、ていねいなお子様ほど、「まちがえないように」と気をつけて、声がひかえめになることがあります。
歌や歌詞に、まだ自信がない
歌詞やメロディーをまだしっかりおぼえていないと、「ここであっているかな」と心配になって、声が小さくなります。これは、気持ちの問題というより、練習の量の問題であることも多いです。歌詞を見なくても歌えるくらいになると、声がぐっと前に出てくることもあります。
声の出し方を、まだ知らない
小さなお子様は、「大きな声で」と言われても、どうしたら声が大きくなるのか、まだわからないことがあります。息のつかい方や、口の開け方がわかってくると、自然に声がとどくようになることもあります。
体調や、のどのこと
かぜぎみのとき、ねむいとき、つかれているときは、だれでも声が出にくくなります。また、いつも声がかすれている、話す声もとても小さい、というときは、のどや耳のことも考えてみてください。気になることがつづくときは、耳鼻科などのお医者さんに相談すると安心です。
言わないほうがよい声かけ
お子様のためを思って言ったことばが、かえって声を小さくしてしまうことがあります。
- 「もっと大きな声で!」と、何度もくりかえす
- 「なんで声が出ないの?」と、理由をせめる
- 「〇〇ちゃんは大きな声なのに」と、ほかの子とくらべる
- 歌っているとちゅうで、止めて直す
- みんなの前で、「この子、声が小さくて」と話す
どれも、お子様が「わたしの声はだめなんだ」と感じてしまうきっかけになりやすいです。大人にとっては何気ないひと言でも、お子様の心には長くのこることがあります。
かわりに、こんなことばを
- 「歌ってくれて、うれしいな」
- 「今のところ、ことばがよく聞こえたよ」
- 「〇〇のところ、やさしい声ですてきだったね」
- 「いっしょに歌おうか」
声の大きさではなく、歌ってくれたこと、できたところに目を向けて、ことばにしてみてください。「聞いてもらえてうれしい」という気持ちが、声を出す力になっていきます。
家でできること1 安心して声を出せる場所をつくる
お父様・お母様が先に歌う
お子様は、大人の様子をよく見ています。お父様・お母様が、おふろや料理のときに、楽しそうに歌っていると、「声を出すのは楽しいこと」と感じやすくなります。上手に歌う必要はありません。楽しそうに歌うことが大切です。
いっしょに歌う
ひとりで歌うのがはずかしいお子様も、だれかといっしょなら声を出せることがあります。はじめは、お父様・お母様がいっしょに歌い、少しずつ大人の声を小さくしていくと、お子様の声が前に出てきやすくなります。
「聞いているよ」と伝える
歌っているときは、スマホを見ずに、お子様のほうを向いて聞いてあげてください。歌いおわったら、はく手をしたり、「もう1回聞きたいな」と言ったりするだけでも、お子様はうれしく感じるものです。
家でできること2 あそびながら声を出す
「練習しよう」と言うと、お子様はかまえてしまうことがあります。あそびの中で、自然に声を出せるとよいと思います。
やまびこごっこ
部屋のはしとはしに分かれて、「やっほー」と言い合います。お父様・お母様が「やっほー」と言ったら、お子様が同じように返します。だんだんはなれていくと、自然と声がとどくように出せるようになることがあります。さけび声にならないよう、「やさしくとどけてね」と声をかけてあげてください。
どうぶつの声まね
「ライオンは?」「ねこは?」「ことりは?」と、いろいろな声を出してあそびます。大きな声、小さな声、高い声、低い声を、楽しみながら出せる練習です。
声のボール投げ
「あー」と言いながら、ボールを投げるまねをします。遠くに投げるときは、声も遠くにとばすイメージです。体を動かすと、声も出やすくなります。
おなかで笑う
「はっはっはっ」と、おなかに手をあてて笑ってみます。おなかが動くのを感じると、息をつかって声を出す感じがつかみやすくなります。
息のつかい方や、おうちでできる発声練習については、こちらの記事でもくわしく書いています。おうちでできる子どもの発声練習。5分でできる遊びのような練習法
さけばせないことも大切
「声を大きく」と思うと、さけぶような声になってしまうことがあります。さけび声は、のどをいためやすい声です。声の大きさよりも、「遠くの人にとどける」「ひびかせる」イメージを大切にしてください。のどを守ることについては、こちらの記事にまとめています。子どもののどを守るためにできること。歌をがんばる子の毎日のケア
家でできること3 声がとどきやすくなる、ちょっとしたコツ
姿勢
- 足を少し開いて、まっすぐ立つ
- 下を向かず、前を見る
- 肩の力をぬく
下を向いて歌うと、声が床にむかってしまいます。目の高さに好きなぬいぐるみをおいて、「ぬいぐるみに聞かせてあげよう」と言うと、自然と顔が上がりやすくなります。
口の開け方
声が小さいお子様は、口があまり開いていないことがあります。鏡を見ながら、「あ・い・う・え・お」と大きく口を動かしてみましょう。いつもより少し大きめに、あごに力を入れずに口を開けると、声が出やすくなることがあります。あごがいたくなるほど大きく開ける必要はありません。
すきな歌をえらぶ
むずかしい歌より、お子様がすきな歌、よく知っている歌のほうが、のびのびと声が出やすいです。まずは、すきな歌で「声を出すのは楽しい」と感じることから始めてみてください。
人前で歌うときのささえ方
家では歌えても、人前だと声が小さくなる。これは、多くのお子様にあることです。
小さな「人前」からなれていく
いきなり大きな舞台に立つのではなく、小さな人前から、少しずつなれていくのがおすすめです。
- お父様・お母様の前で歌う
- おじいさま・おばあさまや、きょうだいの前で歌う
- 動画にとって、家族で見る
- 仲のよいお友だちの前で歌う
動画にとって見るのは、人前で歌う練習にもなります。はじめは、お子様がいやがったら、むりにとらないでください。
本番の前の声かけ
本番の前は、「大きな声でね」と言うより、「楽しんでおいで」「いつもどおりでだいじょうぶ」と伝えるほうが、お子様の気持ちがかるくなることが多いです。
本番で緊張してしまうお子様へのことばは、こちらの記事にまとめています。本番で緊張する子へのことば。歌のコンクール前に親ができること
おわったあとは、まずほめる
声が小さかったとしても、本番に出て、さいごまで歌ったことは、とても大きな一歩です。「さいごまで歌えたね」「がんばったね」と、まずはその気持ちを受けとめてあげてください。直したいことは、また別の日に、楽しく練習すればだいじょうぶです。
先生にみてもらうのもひとつの方法
家での練習で行きづまったときは、歌の先生にみてもらうのもひとつの方法です。先生は、お子様の声や性格に合わせて、むりのない声の出し方を教えてくれます。
体験レッスンのときは、「声が小さくてなやんでいる」と、先生に伝えてみてください。お子様のペースを大切にしてくれる先生か、えがおで声をかけてくれる先生かを、見ておくとよいと思います。近くの教室をさがすときは、こちらのページもつかってみてください。歌の教室さがし
まとめ
- 声が小さいのは、わるいことではない。その子なりのわけがあることが多い
- はずかしさ、歌詞への自信、声の出し方、体調など、わけを考えてみる
- 「もっと大きな声で」「なんで」は、くりかえさない
- 声の大きさより、歌ってくれたこと、できたところをほめる
- お父様・お母様が楽しく歌い、いっしょに歌う
- やまびこごっこや声まねなど、あそびの中で声を出す
- さけばせず、「とどける」「ひびかせる」イメージを大切にする
- 人前は、小さな場からなれていく
- かすれや声の出にくさがつづくときは、耳鼻科などのお医者さんに相談する
お子様の声は、安心できる場所で、少しずつ育っていくものです。おうちで楽しく歌えるようになってきたら、こどもの歌声グランプリものぞいてみてください。オンラインの動画審査だけで出られるので、大きな会場で歌うのがまだ不安なお子様でも、おうちでとった動画で応募できます。幼児からシニア(65歳以上)までの8部門があり、ジャンルは自由です。出場すると講評とデジタル賞状がとどくので、がんばったしるしとして、お子様の自信にもつながるかもしれません。こどもの歌声グランプリ