声楽の発声のきほん。はじめての人がおさえたいコツと練習
「声楽の発声って、ふつうの歌い方と何がちがうの?」 「声楽をはじめてみたいけれど、発声のコツや基礎がよくわからない」
声楽に興味をもった方の多くが、さいしょにこんな疑問をもつと思います。テレビや演奏会で聞く声楽の声は、マイクをつかわなくても、広いホールのすみずみまでとどきます。あの声は、どうやって出しているのでしょうか。
わたしは、息子といっしょに、たくさんのコンクールに出てきました。そのなかで、声楽の発声は、特別な人だけのものではなく、きほんを少しずつ身につけていくものなのだと感じてきました。
この記事では、はじめて声楽にふれる方に向けて、声楽の発声のきほんと、おさえておきたいコツ、家でもできるやさしい発声練習をまとめます。お子様から大人の方まで、どなたにも通じるきほんのお話です。
声楽の発声は、どんな声?
「ひびき」で遠くまでとどける声
声楽の発声のいちばんの特徴は、マイクにたよらず、体のひびきをつかって声を遠くまでとどけることです。大きな声をむりに出すのではなく、体の中で声をよくひびかせることで、自然と声がとおるようになります。
ポップスとのちがい
ポップスでは、マイクをつかうことが多いので、話し声に近い歌い方や、息まじりの声など、いろいろな表現がつかわれます。声楽では、ひびきのある、まっすぐな声をきほんにすることが多いです。
どちらがよい、わるいということではありません。歌うジャンルによって、声のつかい方がちがうのだと考えてみてください。
きほんは、どのジャンルにも役立つ
声楽の発声で大切にする、姿勢や息のつかい方は、ほかのジャンルの歌にも役立ちます。合唱や童謡、ミュージカルなどを歌う方にとっても、知っておいてそんはありません。
声楽の発声の基礎1 姿勢
体の「軸」をまっすぐに
声楽の発声は、まず姿勢から始まります。体がまっすぐだと、息の通り道もまっすぐになり、声が出しやすくなります。
- 足は肩はばくらいに開いて立つ
- ひざはピンとのばさず、軽くゆるめる
- 背中をのばし、頭のてっぺんを糸で上から引っぱられるイメージ
- 肩の力をぬいて、胸は軽く開く
- あごは引きすぎず、上げすぎず
力を入れすぎない
「よい姿勢」というと、体をかたくしてしまう方がいます。でも、声楽の姿勢は、まっすぐでありながら、力がぬけていることが大切です。どこにも力が入りすぎず、すぐに動ける、しなやかな立ち方をめざしましょう。
声楽の発声の基礎2 息のつかい方
肩を上げずに、深く息をすう
声楽では、おなかや背中、わき腹のまわりがふくらむように、深く息をすうことが多いです。肩が上がるような浅い息だと、のどや首に力が入りやすくなります。
ゆっくり鼻から息をすって、体のまわりがぐるりと広がる感じをたしかめてみましょう。
息を「ささえる」
声楽の練習では、「息をささえる」ということばをよく聞きます。これは、すった息をいっぺんにはき出さず、少しずつ、安定してはきつづけることをいいます。
息がゆれると、声もゆれてしまいます。細く長く、同じ強さで息をはく練習をすると、声も安定しやすくなります。
苦しくなるまでがんばらない
息を長くはく練習は大切ですが、苦しくなるまで続ける必要はありません。らくにはける長さから始めて、少しずつのばしていきましょう。
声楽の発声の基礎3 ひびきをつくる
のどを開くイメージ
声楽では、「のどを開く」という言い方をよくします。あくびをする前の、口の中のおくがふわっと広がる感じが、そのイメージに近いといわれています。のどの通り道が広がると、声がよくひびきやすくなります。
のどを開く感覚については、こちらの記事でもくわしくまとめています。「のどを開く」ってどういうこと?声がらくに出るからだの使い方
ひびく場所を感じる
声を出しながら、顔のまわりにそっと手をあててみてください。ハミングをすると、鼻のまわりやおでこのあたりが、ビリビリとふるえるのを感じることがあります。これが、声がひびいている感覚です。
声楽の発声では、このひびきを大切にしながら、声を前へ、遠くへとどけるイメージをもちます。
大きな声とひびく声はちがう
ひびく声は、大きな声とはちがいます。のどで声をおし出して大きくしても、遠くまではとどきにくく、のどもつかれます。小さめの声でも、よくひびいていれば、しっかりとどく声になります。
声楽の発声の基礎4 母音をそろえる
「あ・え・い・お・う」をそろえる
声楽の練習では、母音(あ・え・い・お・う)の発音をとても大切にします。母音によって声の明るさやひびきがばらばらになると、歌全体がまとまりにくくなるからです。
どの母音でも、口の中の広さや、ひびきの場所ができるだけそろうように練習していきます。
口をたてに開ける
日本語は、口を横に開いて話すことが多いことばです。声楽では、口をたてに開けるイメージをもつと、ひびきのある声になりやすいです。「い」や「え」のような横に開きやすい母音でも、口の中はたてに広げる意識をもってみましょう。
はじめての人がおさえたい声楽の発声のコツ
コツ1 「らくに」を大切にする
声楽の発声は、がんばればがんばるほど、うまくいかないこともあります。力をぬいて、らくに声を出すことを、いつも心がけてみてください。
コツ2 いきなり高い声や大きな声を出さない
声楽の曲には、高い音がたくさん出てくるものもあります。でも、はじめのうちは、出しやすい高さで、やさしい声を出すことから始めましょう。
コツ3 自分の声を録音して聞く
自分の声は、歌っている自分には、ほかの人とはちがって聞こえています。スマホで録音して聞いてみると、ひびきや母音のちがいに気づきやすくなります。
コツ4 先生に見てもらう
声楽の発声は、ことばだけでは伝わりにくい感覚がたくさんあります。先生に、姿勢や息のつかい方を見てもらいながら練習すると、自分では気づかなかったくせを知ることができます。
はじめての声楽レッスンでどんなことをするのかは、こちらの記事でまとめています。はじめての声楽レッスンでは何をする?体験の流れと、持ち物・服装
家でできる、声楽のやさしい発声練習
長い時間でなくても、1日5分から10分くらいでかまいません。毎日少しずつ続けることが大切です。
1 体をほぐす
首や肩をゆっくり回したり、のびをしたりして、体の力をぬきます。
2 息をはく練習
鼻からゆっくり息をすって、「スー」と細く長くはきます。同じ強さで、ゆれないようにはくのがポイントです。
3 ハミング
口をとじて、「んー」とやさしくハミングします。鼻のまわりや顔に、ひびきを感じられたら十分です。
4 リップロール
くちびるを軽くとじて、息で「ブルブル」とふるわせます。くちびるやほおの力がぬけて、声を出す準備になります。うまくできないときは、ほおを指で軽くささえてみてください。
5 母音で短いフレーズを歌う
「ドレミレド」のような短いフレーズを、「あ」や「お」などの母音で歌ってみましょう。出しやすい高さから始めて、少しずつ高さを変えていきます。
練習で気をつけたいこと
- のどが痛い、つかれたと感じたら、すぐにやめる
- 大きな声を出しつづけない
- 練習のあとは、水分をとって声を休める
痛みやかすれが何日も続くときは、むりをせず、耳鼻科などのお医者さんに相談してください。
はじめのうちによくある、つまずきと考え方
声がふるえる、ゆれる
はじめのうちは、のばした声がふるえたり、ゆれたりすることがあります。多くの場合、息がまだ安定していないことが理由のひとつと考えられます。息をはく練習を続けていくと、少しずつ落ちついてくることが多いので、あせらなくてだいじょうぶです。
声がこもって聞こえる
ひびきをつくろうとして、口の中をおくに引きすぎると、声がこもって聞こえることがあります。声を前に、遠くへとどけるイメージをもってみてください。録音して聞きくらべると、ちがいがわかりやすくなります。
練習しても、変化がわからない
発声の変化は、毎日少しずつなので、自分では気づきにくいものです。月に一度くらい、同じフレーズを録音しておくと、あとから聞きくらべたときに、変化に気づけることがあります。
まとめ
- 声楽の発声は、体のひびきで声を遠くまでとどけるもの
- 基礎は「姿勢」「息のつかい方」「ひびき」「母音をそろえる」の4つ
- 力をぬいて、らくに声を出すことを大切にする
- 大きな声より、よくひびく声をめざす
- 家では、体ほぐし、息、ハミング、リップロール、母音の練習を少しずつ
- 自分ではわかりにくい感覚は、先生に見てもらいながら身につける
声楽の発声は、すぐに身につくものではありませんが、少しずつ練習していくと、声がかわっていくのを感じられると思います。先生に習ってみたいときは、こちらのページから教室をさがしてみてください。歌の教室さがし練習してきた歌をだれかに聞いてもらいたくなったら、こどもの歌声グランプリものぞいてみてください。オンラインの動画審査だけで出られて、幼児からシニア(65歳以上)までの8部門があり、ジャンルは自由です。講評とデジタル賞状がとどくので、自分の声のよいところを知るきっかけになると思います。こどもの歌声グランプリ