ピアニッシモの歌い方。とても弱い声を、きれいにひびかせるコツ
「ピアニッシモのところになると、声がかすれてしまう」 「弱く歌おうとすると、音が下がったり、声がふるえたりする」
楽譜に「pp」と書いてあると、どきっとする方は多いと思います。大きな声よりも、小さな声のほうがむずかしいと感じるのは、ふしぎなことではありません。弱い声は、ごまかしがききにくく、息や体のつかい方がそのまま出てしまうからです。
わたしは息子といっしょに、たくさんのコンクールに出てきました。
この記事では、ピアニッシモの歌い方にしぼってお話しします。ただ声を小さくするのではなく、「弱いけれど、ちゃんとひびく声」で歌うためのコツと、おうちでできる練習をまとめました。お子様にも大人の方にもつかえる内容です。
ピアニッシモとは?歌の弱い声で大切なこと
ピアニッシモは、イタリア語で「とても弱く」という意味のことばです。楽譜では「pp」と書かれます。「p(ピアノ)」よりも、さらに弱く歌うところです。
「小さい声」と「弱くてもひびく声」はちがう
ピアニッシモでよくあるのが、声を「しぼって」しまうことです。音を小さくしようとして、のどをきゅっとしめたり、息をとめぎみにしたりすると、声はかすれて、遠くまでとどかなくなります。
きれいなピアニッシモは、音の大きさは小さくても、声のひびきがのこっています。会場のうしろの席まで、細い糸のように声がとどいていくイメージです。
- 小さい声 音量をへらしただけで、ひびきも消えている
- 弱くてもひびく声 音量はひかえめでも、声の芯(しん)がのこっている
この「芯」をのこすことが、ピアニッシモをきれいに歌ういちばんのコツです。
ウィスパーボイスとのちがい
息をたくさんまぜた、ささやくような声は、ウィスパーボイスとよばれます。ポップスなどでは、やさしいふんいきを出すためにつかわれることがあります。
いっぽう、声楽や童謡のピアニッシモでは、息ばかりの声ではなく、すんだ声のまま弱くすることが多いです。息の多い声のつかい方については、こちらの記事でまとめています。ウィスパーボイスの出し方。息の多いやさしい声のつかい方と、のどを守る注意
ピアニッシモがうまくいかない、よくある理由
のどに力が入ってしまう
弱く歌おうとすると、声をおさえこもうとして、のどや首に力が入りやすくなります。のどがかたくなると、声がふるえたり、急に声が出なくなったりします。
息の流れがとまってしまう
「小さい声=息を少なく」と考えて、息をほとんど流さなくなる方もいます。でも、息の流れがとまると、声はつづきません。ピアニッシモでも、息はやさしく、とぎれずに流れていることが大切です。
口の中がせまくなる
声を小さくしようとすると、口の開きや、口の中の広さまで小さくなってしまうことがあります。口の中がせまくなると、声がこもり、ひびきがへってしまいます。
音の高さが下がる
弱く歌うところで、音程が少しずつ下がってしまうのもよくあるなやみです。気持ちまで「しずかに、しずかに」と下を向いてしまうと、声も下がりやすくなります。
弱くてもひびく声を出すコツ
息は「少なく」より「細く、まっすぐ」
ピアニッシモのときの息は、量をへらすというより、細く、まっすぐ流すイメージをもつと歌いやすくなります。ストローで、そっと長く息をふくような感じです。
息がまっすぐ流れていると、声も安定します。体で息をささえる考え方は、こちらの記事でくわしく書いています。歌の「支え」とは?息と体で声を安定させる考え方
口の中は、大きな声のときと同じくらい広く
声は小さくても、口の中の広さはかえないようにします。あくびをする少し前のような、口のおくが広がった感じをたもちます。
- 口の中を広くたもつ
- ほおや目もとの表情は明るく
- くちびるの力はぬく
こうすると、弱い声でも、ひびきが口の中でまるくなり、きれいに聞こえやすくなります。
声の位置を高めに感じる
ピアニッシモのときは、声を鼻のおくや、おでこのあたりでひびかせるイメージをもつと、声の芯がのこりやすくなります。のどで声を出すのではなく、頭のほうで鳴っている感じです。
これは「感じ方」の話なので、人によってしっくりくることばがちがいます。先生に習っている方は、どんなイメージがよいか聞いてみてください。
気持ちは前向きに、少し上へ
弱く歌うところでも、気持ちまで小さくならないようにします。「そっと話しかける」「遠くの人に、ないしょの話をとどける」など、聞いている人に向かうイメージをもつと、音程も下がりにくくなります。
おうちでできるピアニッシモの練習
大きな声を出さなくてもできる練習が多いので、家でも取り組みやすいと思います。むりのない短い時間からはじめてください。
ハミングで弱い声のひびきをつかむ
口をとじて「んー」とハミングします。はじめはふつうの大きさで、そこから少しずつ小さくしていきます。小さくしても、鼻やくちびるのあたりがかすかにふるえているかをたしかめましょう。
ふるえが消えてしまったら、ひびきもなくなっているサインです。少し大きさをもどして、もう一度ためしてみます。
強いところから弱いところへ、だんだん小さく
ひとつの音を「あー」とのばしながら、強いところからだんだん弱くしていく練習です。
- ふつうの大きさで声をのばす
- 声の高さをかえずに、ゆっくり小さくしていく
- いちばん小さくなっても、声がかすれないところでとめる
音を小さくするときに、のどに力が入っていないか、音が下がっていないかに気をつけます。できるようになったら、反対に、弱いところからだんだん強くする練習もしてみましょう。
母音をかえてためす
「う」や「お」は、口の中が広くなりやすく、弱い声でもひびきをつくりやすい母音です。まずは「う」で弱い声を出し、そのひびきのまま「あ」「い」にかえていきます。
「い」や「え」は、口が横に広がって、声がうすくなりやすい母音です。口のおくの広さをたもったまま歌うようにすると、ひびきがのこりやすくなります。
曲の中のピアニッシモだけをぬき出す
練習している曲に「pp」のところがあれば、そこだけをぬき出して練習します。いきなり弱く歌うのではなく、まずはふつうの大きさで歌い、だんだん弱くしていくと、音程や口の形をたもちやすくなります。
録音して聞いてみると、自分では弱く歌っているつもりでも、思ったより大きかったり、反対にかすれていたりすることに気づけます。
ピアニッシモを歌う前の準備
前の音から、弱い声の準備をする
曲の中でいきなりピアニッシモになるところは、とくにむずかしく感じます。その前の音を歌っているうちから、「つぎは弱くなる」と心の中で準備しておくと、あわてずに声をきりかえやすくなります。
息つぎを、ていねいに
弱い声は、息のささえがあってこそ安定します。ピアニッシモの前の息つぎで、あわてて浅く息をすうと、声がふるえやすくなります。肩を上げずに、おなかのまわりがふくらむように、しずかに息をすってから歌いはじめましょう。
会場の広さもイメージする
本番の会場や、動画をとる部屋の広さによって、声の聞こえ方はかわります。ひびきの少ない部屋では、弱い声がとどきにくく感じることもあります。録音したものを聞いて、聞く人にちゃんととどいているかをたしかめておくと安心です。
子どもにピアニッシモを教えるときの声かけ
お子様に「もっと小さく」と言うと、声をとめてしまったり、ひそひそ声になったりすることがあります。お父様・お母様がおうちで声をかけるときは、イメージで伝えるとわかりやすいです。
- 「ねている赤ちゃんに、子守歌を歌うように」
- 「ちょうちょが、ふわっととんでいくように」
- 「声を細い糸にして、遠くまでのばしてみよう」
うまくできたときは、「いまの声、小さいのにきれいに聞こえたよ」と、具体的にほめてあげてください。弱い声をきれいに出すのは、大人でもむずかしいことです。できなくても、しからずに見まもってあげましょう。
のどを守るために気をつけたいこと
ピアニッシモの練習では、のどに力が入りやすいので、つかれを感じたら、すぐに休みましょう。
- 声がかすれてきたら、その日の練習は終わりにする
- 水をのんで、のどをうるおす
- 弱い声を、むりに長くのばしつづけない
弱い声は、体の力がぬけていてこそ出しやすくなります。肩や首をまわして、体をほぐしてから練習するのもおすすめです。のどの痛みやかすれがしばらく続くときは、むりをせず、耳鼻科などのお医者さんに相談してください。
まとめ
- ピアニッシモは、ただ小さい声ではなく「弱くてもひびく声」をめざす
- のどをしめない、息をとめない、口の中をせまくしないことが大切
- 息は「細く、まっすぐ」、口の中は大きな声のときと同じくらい広く
- ハミングや、強いところからだんだん弱くする練習が取り組みやすい
- お子様には、イメージのことばで伝えて、できたところをほめる
- のどがつかれたら休み、痛みやかすれが続くときはお医者さんに相談する
ピアニッシモをきれいに歌えるようになると、強い声とのちがいがはっきりして、歌全体の表現がぐっとゆたかになります。練習してきた歌を聞いてもらいたくなったら、こどもの歌声グランプリにも出てみませんか。オンラインの動画審査だけで出られて、幼児からシニア(65歳以上)までの8部門があり、ジャンルは自由です。講評とデジタル賞状がとどくので、弱い声の表現がどう伝わったかを知るきっかけにもなります。こどもの歌声グランプリ