日本語を学ぶお子様・大人と日本の歌。外国にルーツのある方が歌を楽しむために
「日本語を勉強している子に、歌をつかってみたい」 「外国から来たお子様と、いっしょに日本の歌を楽しみたい」
日本でくらす、外国にルーツのある方はふえています。お子様が日本の学校や園に通っていたり、大人の方が仕事やくらしのために日本語を学んでいたりと、その形はさまざまです。
歌は、日本語の学習を楽しくしてくれるもののひとつです。いっしょに歌うことで、ことばのひびきやリズムに、自然にふれることができます。
わたしは息子といっしょに、たくさんのコンクールに出てきました。
この記事では、日本語を学ぶお子様や大人の方と、日本の歌を楽しむためのヒントをまとめました。日本語を学んでいるご本人にも、そのご家族にも、教室や地域で日本語の学習をささえている方にも、読んでいただけたらうれしいです。
日本語の学習に歌が役立つ理由
ことばのリズムに、自然になれる
日本語には、日本語らしいリズムがあります。とくに、のばす音(「おかあさん」の「かあ」)、つまる音(「きって」の「っ」)、はねる音(「みかん」の「ん」)などは、日本語を学ぶ方にとって、むずかしく感じやすいところだといわれます。
歌では、こうした音が、メロディーにのって何度もくりかえされます。話すときよりもゆっくりで、音の長さもはっきりしているので、ことばのリズムをつかみやすくなります。
何度くりかえしても、あきにくい
ことばの練習は、くりかえしが大切です。でも、同じ文を何度も読むのは、たいくつに感じることもありますよね。歌なら、楽しみながら何度でもくりかえせます。
声を出すことに、なれていく
まだ日本語に自信がないと、人前で話すのがはずかしく感じることもあると思います。みんなでいっしょに歌うと、自分の声だけが目立たないので、声を出すことへのハードルが下がりやすくなります。
日本の行事や季節を知るきっかけになる
日本の歌には、春の花、夏の行事、秋の実り、冬の雪など、季節や行事をテーマにしたものがたくさんあります。歌をきっかけに、日本のくらしや季節を知ることができます。季節の童謡については、こちらの記事にもまとめています。子どもと歌いたい季節の童謡・唱歌|春夏秋冬の歌と、歌い方のコツ
はじめに歌いやすい日本の歌
短くて、くりかえしの多い歌から
はじめは、短くて、同じことばがくりかえし出てくる歌が歌いやすいです。昔から歌いつがれている童謡には、こうした歌がたくさんあります。
- 「チューリップ」
- 「むすんでひらいて」
- 「かえるの合唱」
- 「ぶんぶんぶん」
- 「どんぐりころころ」
どれも、日本の園や学校でよく歌われている歌です。お子様が園や学校で歌っている歌を、おうちでもいっしょに歌えるようになると、自信につながりやすくなります。
手あそびや動きのある歌
「むすんでひらいて」のように、手の動きがある歌は、ことばの意味がわからなくても、まねをしながら楽しめます。動きとことばがむすびつくので、意味もおぼえやすくなります。
大人の方には、季節の歌もおすすめ
大人の方には、「さくらさくら」や「ふるさと」のように、日本で長く親しまれてきた歌もおすすめです。日本の人といっしょに歌える機会があると、会話のきっかけにもなります。
昔のことばに気をつける
古い童謡や唱歌には、いまはあまりつかわないことばが出てくることがあります。日本語を学んでいる方にとっては、ふだんの会話でつかうことばとちがうので、まよってしまうこともあります。「これは昔のことばで、いまは別の言い方をすることが多いよ」と、そえて伝えてあげると安心です。童謡の昔のことばについては、こちらの記事でくわしくお話ししています。童謡の昔のことばを子どもに伝える。意味のしらべ方と、気持ちのこめ方
歌をつかった日本語の練習のすすめ方
1 まずは聞くだけ
はじめは、歌わなくてもだいじょうぶです。何度か聞いて、メロディーやことばのひびきになれるところからはじめましょう。
2 ことばの意味をかんたんに伝える
歌の中に出てくることばの意味を、かんたんに伝えます。絵や写真、実物を見せると、わかりやすくなります。
- 「チューリップ」なら、チューリップの花の写真を見せる
- 「どんぐりころころ」なら、どんぐりを見せたり、さわったりする
- 色や数のことばが出てきたら、いっしょに指さしてみる
ぜんぶのことばの意味をわからなくても、歌は楽しめます。大切なことばを、少しずつ伝えていけばじゅうぶんです。
3 ゆっくり、いっしょに歌う
歌うときは、ゆっくりのテンポで、いっしょに歌いましょう。速いと、ことばが口についていきにくくなります。
4 ひらがなで歌詞を見る
文字を読める方なら、ひらがなで書いた歌詞を見ながら歌うと、ことばと音がむすびつきやすくなります。漢字にふりがなをつけるのもよい方法です。
5 歌のことばを、ふだんの会話でつかう
歌でおぼえたことばを、ふだんの会話でもつかってみましょう。たとえば、「チューリップ」を歌ったあとに、公園で花を見て「何色かな」と話してみるなど、歌とくらしをつなげると、ことばが身につきやすくなります。
発音で気をつけたいこと
完ぺきをもとめない
日本語を学んでいる方の発音が、日本語を母語とする人とちがって聞こえることがあるのは、自然なことです。歌の練習で、発音を細かく直しすぎると、歌うことそのものが楽しくなくなってしまうことがあります。
まずは、楽しく歌えていることを大切にしましょう。気になる音があるときも、「ここはこう言うと歌いやすいよ」と、やさしく伝える程度にしておくのがおすすめです。
日本語らしい音をあそびながら
のばす音、つまる音、はねる音などは、手をたたきながら歌うと、音の長さがわかりやすくなります。1つの音に1回手をたたくようにすると、「きって」の「っ」が1拍分あることなどに気づきやすくなります。
それぞれの国の歌も大切に
日本の歌だけにしない
日本の歌を楽しむことは、すてきなことです。でも、それと同じくらい、その方が生まれ育った国や、家族のふるさとの歌も大切にしたいですね。
- お子様に、おうちのことばの歌を教えてもらう
- 園や教室で、いろいろな国の歌を紹介しあう
- 同じテーマ(花、星、雨など)の歌を、それぞれの国のことばで歌ってみる
いろいろな国の歌にふれることは、まわりのお子様や大人にとっても、よい学びになります。
おうちのことばを大切にする
外国にルーツのあるお子様の場合、日本語だけでなく、おうちでつかうことばも、その子にとって大切なことばです。日本の歌を歌うことが、おうちのことばを忘れることにつながらないよう、どちらのことばの歌も楽しめるとよいと思います。
押しつけない
日本の歌を歌いたいかどうかは、その方自身の気持ちを大切にしましょう。「いっしょに歌ってみる?」と声をかけて、いやそうなときは、むりにすすめないようにします。聞いているだけでも、じゅうぶん参加していることになります。
歌を楽しめる場所
地域の日本語教室
地域によっては、日本語教室の中で、歌をつかった活動をしているところもあります。くわしくは、お住まいの地域の国際交流の窓口などでたずねてみてください。
歌の教室や合唱
日本語にもう少しなれてきたら、歌の教室や合唱団に入ってみるのもひとつの方法です。歌が好きな人どうしでつながることができ、日本語でのやりとりもふえていきます。先生によっては、外国語での説明ができる方や、ゆっくり説明してくれる方もいますので、体験レッスンのときにたずねてみるとよいでしょう。
まわりの人ができること
いっしょに楽しむ気持ちで
日本語を学んでいる方と歌うときは、「教える」よりも「いっしょに楽しむ」気持ちでいることが大切です。まちがえても笑ったりせず、歌えたところをいっしょによろこびましょう。
ことばの説明は短く
歌のとちゅうで、ことばの説明を長くすると、歌の楽しさがとぎれてしまいます。説明は歌う前か歌ったあとに、短く伝えるくらいがちょうどよいと思います。
のどの話
歌の練習をするときは、大きな声を出しすぎないように気をつけましょう。のどの痛みやかすれが続くときは、むりをせず、耳鼻科などのお医者さんに相談してください。
まとめ
- 歌は、日本語のリズムや音に、楽しみながらなれることができる
- はじめは、短くてくりかえしの多い童謡から
- ことばの意味は、絵や実物を見せながら、少しずつ伝える
- 発音は完ぺきをもとめず、楽しく歌えることを大切にする
- 日本の歌だけでなく、それぞれの国の歌やおうちのことばも大切にする
- 歌いたいかどうかは、その方の気持ちを大切にして、押しつけない
日本の歌を楽しめるようになったら、だれかに聞いてもらうのも、よい目標になります。こどもの歌声グランプリは、オンラインの動画審査だけで出られるコンクールです。幼児からシニア(65歳以上)までの8部門があり、ジャンルは自由です。講評とデジタル賞状がとどくので、がんばったことの記念にもなると思います。こどもの歌声グランプリ