童謡の昔のことばを子どもに伝える。意味のしらべ方と、気持ちのこめ方
「この歌のことば、どういう意味?」 お子様に童謡を教えていると、こんなふうに聞かれて、こまったことはありませんか。
童謡や唱歌には、いまの生活ではあまりつかわない、昔のことばがたくさん出てきます。大人でも、なんとなく歌っていて、意味をよく知らないまま、ということもめずらしくありません。
わたしは、息子といっしょに、たくさんの歌のコンクールに出てきました。童謡を歌うお子様もたくさん見てきましたが、ことばの意味を知って歌っている子の歌は、聞いている人の心にすっと入ってくるように感じます。
この記事では、童謡の昔のことばを、お子様にどう伝えるか、意味のしらべ方、そして意味を知ってから気持ちをこめて歌うコツをまとめます。
なぜ、ことばの意味を知ることが大切なのか
歌に「場面」がうかぶようになる
童謡の多くは、季節や自然、家族やふるさとの様子をえがいています。ことばの意味が分かると、お子様の頭の中に、その場面が絵のようにうかぶようになります。
場面がうかぶと、どこをやさしく歌うか、どこを明るく歌うか、自分で考えられるようになります。
聞きまちがいに気づける
昔のことばは、いまのことばと音がにていて、べつの意味に聞きまちがえやすいものもあります。意味を知らないまま歌っていると、まったくちがう場面を思いうかべていることもあります。
歌が「自分のもの」になる
意味を知って歌うと、ただ音をなぞるのではなく、自分のことばとして歌えるようになります。歌に気持ちをこめることについては、こちらの記事にもまとめています。歌に気持ちをこめるには?歌詞の読みこみ方と、表情・声の色のつけ方
聞きまちがえやすい、昔のことばの例
ここでは、作られてから長い年月がたち、多くの人に歌いつがれている童謡・唱歌から、いくつか例をあげます。歌詞そのものは、楽譜や歌の本でたしかめてみてください。
「ふるさと」(作詞・高野辰之、作曲・岡野貞一)
歌い出しのほうに、いまの「おいしい」と聞きまちがえやすいことばが出てきます。じつは、これは「追いかけた」という意味です。うさぎを食べる歌ではなく、子どものころに野山でうさぎを追いかけてあそんだ、という思い出の歌なのです。
この意味を知ると、なつかしい気持ちで、やさしく歌いたくなりますね。
「赤とんぼ」(作詞・三木露風、作曲・山田耕筰)
「おわれて」ということばが出てきます。追いかけられる、という意味に思われやすいのですが、ここでは「背中におんぶされて」という意味だといわれています。
また、「ねえや」ということばも出てきます。これは、昔、家で子どものおせわをしてくれていた、若い女の人のことです。小さいころ、おんぶされて見た夕やけの赤とんぼを、大人になって思い出している歌、と伝えると、お子様にも場面がうかびやすくなります。
「七つの子」(作詞・野口雨情、作曲・本居長世)
カラスの親子の歌です。「七つ」が、7羽のことなのか、7歳のことなのか、いくつかの考え方があります。
このように、意味がひとつに決まっていないことばもあります。「どっちだと思う?」と、親子で話してみるのも楽しいと思います。
「朧月夜」(作詞・高野辰之、作曲・岡野貞一)
題名の「おぼろ」は、かすんで、ぼんやり見える様子のことです。春の夕方、菜の花畑の上に、かすんだ月がうかんでいる景色をえがいた歌です。
「ぼんやりやわらかい景色の歌だから、声もやわらかくしてみようか」と話すと、歌い方のヒントにもなります。
意味のしらべ方
歌の本や楽譜の解説を読む
童謡や唱歌の歌の本には、ことばの意味や、歌が作られたころの様子が書いてあるものがあります。図書館には、童謡の解説の本もおいてあることが多いです。
国語辞典をいっしょに引く
小学生くらいのお子様なら、国語辞典をいっしょに引くのもおすすめです。自分でしらべたことばは、心にのこりやすくなります。
ただ、昔のことばは、辞典に「古い言い方」としてのっていたり、べつの漢字で書かれていたりします。分からないときは、お父様・お母様がいっしょにさがしてあげてください。
インターネットでしらべるときの注意
インターネットでしらべると、すぐにいろいろな説明が見つかります。べんりですが、書いてあることがちがう場合もあります。
- いくつかのページを見くらべる
- 図書館や出版社など、信頼できるところの説明を見る
- 意味がはっきりしないことばは「いくつか考え方がある」と受けとめる
先生に聞いてみる
歌の教室に通っている場合は、先生に聞いてみるのもよいと思います。ことばの意味だけでなく、その意味をどう歌にいかすかも、いっしょに教えてもらえることが多いです。
お子様への伝え方
小さな子には、絵やジェスチャーで
幼稚園くらいの小さなお子様には、むずかしい説明はいりません。
- 絵本や写真で、景色を見せる
- 「おんぶ」のまねをしてみる
- 「ぼんやり」を、目を細めて見るまねであらわす
体をつかって伝えると、小さな子でもイメージしやすくなります。
小学生には「お話」として
小学生くらいになったら、歌をひとつの「お話」として伝えるのがおすすめです。
- だれが出てくるお話か
- いつ、どこのお話か
- そのとき、どんな気持ちだったか
この3つを親子で話すだけでも、歌の見え方がかわります。
昔のくらしの話もそえる
童謡には、いまのくらしでは見かけなくなったものや、昔の遊びが出てくることがあります。
- 子どもが外で、虫やうさぎを追いかけて遊んでいたこと
- 小さな子を、家の人がおんぶして子守をしていたこと
- 夜は、いまよりずっと暗くて、月や星がよく見えたこと
こうした昔のくらしの話をそえると、お子様は「だから、こういうことばなんだ」と、なっとくしやすくなります。おじいさま・おばあさまに、子どものころの話を聞いてみるのもよいと思います。
「いまのことば」に言いかえてみる
意味が分かったら、歌の1行を、いまのことばに言いかえてみるのもおすすめです。お子様が自分のことばで言いかえられたら、意味がしっかり分かっているしるしです。
言いかえたことばを、ノートや歌詞カードの横に小さく書いておくと、練習のときにも思い出しやすくなります。
全部を一度に教えない
1曲の中に、分からないことばがいくつも出てくることがあります。一度に全部を教えようとすると、お子様がつかれてしまいます。
練習のたびに、1つか2つずつ話していくくらいで、じゅうぶんです。歌詞を早くおぼえるコツは、こちらの記事にもまとめています。子どもが歌詞と曲を早くおぼえるコツ。暗譜がにがてな子も楽しくできる6つの方法
意味を知ってから、気持ちをこめて歌うコツ
いちばん伝えたいことばを決める
1曲の中で、「ここがいちばん大切」と思うことばを、お子様といっしょに1つ決めてみましょう。そのことばを、ていねいに、はっきり歌うだけで、歌の伝わり方がかわります。
場面を思いうかべながら歌う
歌う前に、目をとじて、歌の景色を思いうかべてみるのもおすすめです。夕やけの空、春の野原、カラスの巣など、場面が見えていると、声の出し方も自然にかわってきます。
昔のことばも、はっきり発音する
意味が分かりにくいことばほど、ぼんやり歌ってしまいがちです。ひとつひとつの音を、口をしっかり動かして歌うと、聞いている人にもことばが伝わりやすくなります。
大げさにしすぎない
気持ちをこめるといっても、顔や声を大げさにする必要はありません。童謡は、すなおな気持ちで、まっすぐに歌うのがよく合う歌が多いです。
童謡を上手に歌うコツは、こちらの記事にもまとめています。童謡を上手に歌うコツ。「ことば」を大切にすると歌はかわる
親子で童謡を楽しむ時間に
ことばの意味をしらべる時間は、親子でゆっくり話せる、すてきな時間にもなります。
- 寝る前に、1曲だけいっしょに歌う
- 季節に合った童謡を、その季節に歌ってみる
- しらべたことばを、家族に「クイズ」として出してみる
お父様・お母様も、子どものころに意味を知らずに歌っていた歌があるかもしれません。「お母さんも、知らなかったよ」と、いっしょに発見を楽しむ気持ちで取り組んでみてください。
まとめ
- 童謡の昔のことばは、意味を知ると場面がうかび、歌が自分のものになる
- いまのことばと聞きまちがえやすいものもあるので、親子でたしかめる
- しらべるときは、歌の本、辞典、先生など、いくつかの方法で
- 意味がひとつに決まっていないことばは、親子で話してみる
- 小さな子には絵や体の動きで、小学生にはお話として伝える
- いちばん伝えたいことばを決めて、場面を思いうかべながら歌う
ことばの意味を知って歌う童謡は、お子様にとっても、聞く人にとっても、心にのこる歌になります。練習してきた童謡を、だれかに聞いてもらいたくなったら、こどもの歌声グランプリものぞいてみてください。オンラインの動画審査だけで出られて、幼児からシニア(65歳以上)までの8部門があり、ジャンルは自由です。講評とデジタル賞状がとどくので、お子様の歌のよいところを知るきっかけになると思います。こどもの歌声グランプリ