軟口蓋を上げるってどういうこと?歌のひびきが変わる練習
「先生に『軟口蓋(なんこうがい)を上げて』と言われたけれど、どこのことなのか、よくわからない」 「上げようとすると、かえって声がへんになってしまう」
歌のレッスンや声楽の本で、「軟口蓋を上げる」ということばを目にした方は多いと思います。でも、ふだんの生活で使うことばではないので、どこを、どうすればいいのか、ぴんとこないのは当たり前です。
わたしは息子といっしょに、たくさんのコンクールに出てきました。
この記事では、軟口蓋とは口の中のどこなのか、歌で「軟口蓋を上げる」とはどういうことなのかを、できるだけやさしいことばでお話しします。あわせて、自分で軟口蓋の動きを感じる方法や、ひびきが変わる練習、上げようとして力みすぎないための注意もまとめました。軟口蓋は目に見えにくい場所ですが、感じ方のコツがわかると、練習のヒントがぐっと増えます。
軟口蓋とは?口の中のどこにある?
上あごの「おくの、やわらかいところ」
舌の先で、上あごを前歯のうらから、おくのほうへなぞってみてください。はじめは、かたくて、でこぼこした感じがします。ここは「硬口蓋(こうこうがい)」とよばれる、骨のある部分です。
そのまま、もう少しおくへ舌をすすめると、とちゅうから、やわらかい場所にかわります。ここが「軟口蓋」です。「軟」は、やわらかいという意味です。
のどちんこも、軟口蓋の一部
鏡の前で口を大きくあけ、「アー」と言ってみると、口のおくに、のどちんこ(口蓋垂)がぶら下がっているのが見えると思います。のどちんこは、軟口蓋のいちばんうしろについている部分です。
軟口蓋は、ふだんから動いている
軟口蓋は、ものを飲みこむときや、話すときに、上がったり下がったりしています。たとえば、「ン」や「マ」のように、鼻に息がぬける音を出すときは、軟口蓋が下がって、鼻への通り道がひらきます。「ア」や「オ」のような音では、軟口蓋が上がって、鼻への通り道がとじる方向に動きます。
つまり、軟口蓋は、口と鼻のどちらに息や声を通すかを切りかえる、とびらのような役わりをしているのです。
歌で「軟口蓋を上げる」とはどういうこと?
口のおくの空間を、上に広げるイメージ
歌で「軟口蓋を上げる」と言うときは、口のおくの天井を少し持ち上げて、口の中の空間を上のほうへ広げるイメージをさしていることが多いです。
軟口蓋が上がると、口のおくの空間がたてに広がり、声のひびきがゆたかに聞こえやすくなると言われています。
「のどを開く」とのちがい
「軟口蓋を上げる」と似たことばに、「のどを開く」があります。のどを開くは、のどのまわりの力をぬいて、のどのおくをゆったりさせることを、広くさしていることが多いことばです。
軟口蓋を上げるのは、その中でも、口の中の天井、上のほうに注目した言い方と考えると、わかりやすいかもしれません。のどを開くことについては、こちらの記事でくわしくまとめています。「のどを開く」ってどういうこと?声がらくに出るからだの使い方
先生によって、言い方や感じ方はちがう
軟口蓋の感じ方は、人によってちがいます。先生によっても、「軟口蓋を上げる」「上あごのおくを高く」「口の中にドームを作る」など、いろいろな言い方をします。どれも、目指しているところは近いことが多いです。わからないときは、レッスンで「こんな感じで合っていますか」と先生に聞いてみましょう。
軟口蓋を上げると、ひびきはどう変わる?
声が、平たく聞こえにくくなる
軟口蓋が下がりぎみのまま歌うと、声が平たく、うすく聞こえることがあります。軟口蓋を少し上げる意識を持つと、声にまるみや深さが出て、ひびきがやわらかく聞こえやすくなります。
鼻声っぽさがへることがある
軟口蓋が下がっていると、声が鼻にぬけやすくなり、鼻声っぽく聞こえることがあります。軟口蓋の動きを意識すると、鼻にかかりすぎた声がすっきりすることもあります。
ただし、鼻声の原因は、軟口蓋だけとはかぎりません。
ひびきの感じ方が変わる
軟口蓋が上がると、顔のおくや頭のほうに、声がひびいているように感じる方もいます。体のどこがひびくのかという話は、こちらの記事でもまとめています。歌の共鳴とは?体のどこがひびくの?ひびきを感じる練習
軟口蓋の動きを感じる練習
1 あくびのはじめを、ゆっくり感じる
あくびをしかけたときに、口のおくがふわっと持ち上がる感じがあると思います。これが、軟口蓋が上がっている感じに近いものです。あくびを大きくしきってしまわず、はじめの、ふわっと広がるところで止めて、その感じを味わってみましょう。
2 「ン」と「ア」を行き来する
「ン」と言ったあとに、口をあけて「ア」と言ってみます。「ンーアー、ンーアー」と、ゆっくりくりかえします。
「ン」のときは軟口蓋が下がり、「ア」のときは上がります。鏡で口のおくを見ながらくりかえすと、のどちんこのあたりが上下に動くのが見えることもあります。この動きを感じることが、軟口蓋を意識する第一歩です。
3 息をすうときに、つめたい空気を感じる
口を少しあけて、ゆっくり息をすってみます。そのとき、口のおくの上のほうに、ひんやりとした空気があたる感じがあれば、そこが軟口蓋のあたりです。驚いたときに、はっと息をすう感じも、軟口蓋が上がりやすい動きです。
4 「ガ」「カ」で、軟口蓋の位置をたしかめる
「ガ」「カ」という音は、舌のおくと軟口蓋がふれて出る音です。「ガ、ガ、ガ」とゆっくり言ってみると、舌のおくが上あごのおくにふれる場所がわかります。そこが軟口蓋のあたりです。場所がわかると、上げるイメージも持ちやすくなります。
ひびきが変わる、軟口蓋を意識した発声練習
1 ハミングから「ア」へ
口をとじて「んー」とハミングをし、そのまま口をひらいて「アー」へつなげます。ハミングのときのひびきをのこしたまま、口のおくが少し持ち上がるイメージで、「ア」に広げていきます。
2 「オ」の母音で、楽な高さから
軟口蓋を意識する練習は、「オ」の母音がはじめやすいです。口の中がたてに広がりやすく、口のおくの空間を感じやすい母音だからです。
- 楽な高さで「オー」とのばす
- ドレミレドのように、ゆっくり上がっておりる
- 1回ごとに半音ずつ高さをかえる
3 ほかの母音にも広げる
「オ」でひびきがつかめたら、「ア」「ウ」「エ」「イ」へと広げていきます。とくに「イ」や「エ」は、口が横に広がりやすく、軟口蓋が下がりやすい母音です。「オ」のときの口のおくの広さを、少しのこすようなイメージで練習してみましょう。
4 高い音のときに、そっと意識する
高い音に上がるとき、口を横に広げるのではなく、口のおくの天井が少し持ち上がるイメージを持つと、声がのびやかになりやすいことがあります。ただし、高い音ほど力が入りやすいので、「そっと意識する」くらいがちょうどよいです。
5 録音して聞きくらべる
軟口蓋を意識しないで歌ったときと、意識して歌ったときを、それぞれ録音して聞きくらべてみましょう。声のまるみや、ひびきのちがいに気づきやすくなります。
上げすぎ、力みすぎに気をつけて
上げようとして、のどや舌に力を入れない
軟口蓋を上げようとするあまり、舌のつけねをぐっと下げたり、のどをおしつけたりすると、こもった声になることがあります。舌は、口の中でしずかに休ませておくくらいの気持ちで歌いましょう。
いつも、あくびのように大きくあけない
あくびの形は、軟口蓋の動きを感じるためのきっかけです。歌っているあいだずっと、大あくびのような口にしなければいけない、というわけではありません。ことばがはっきり伝わることも、歌ではとても大切です。
つかれたら休む
軟口蓋のあたりの使い方をかえる練習は、なれないうちはつかれやすいものです。練習は短めにし、つかれを感じたら休みましょう。歌ったあとにのどの痛みやかすれが何日も続くときは、むりをせず、耳鼻科などのお医者さんに相談してください。
まとめ
- 軟口蓋とは、上あごのおくにある、やわらかい部分のこと
- 歌で「軟口蓋を上げる」とは、口のおくの空間を上に広げるイメージのことが多い
- 軟口蓋を意識すると、声にまるみや深さが出やすくなる
- あくびのはじめ、「ン」と「ア」の行き来、「ガ」の音で、場所と動きを感じる
- 「オ」の母音からはじめ、ほかの母音にも広げていく
- 上げようとして、のどや舌に力を入れすぎない
軟口蓋は目に見えにくい場所なので、ひとりではつかみにくいこともあります。先生にみてもらいながら練習すると、感じ方のコツがわかりやすくなります。通いやすいボイトレや声楽の教室は、こちらからさがせます。歌の教室さがし練習の成果をだれかに聞いてもらいたくなったら、こどもの歌声グランプリもあります。オンラインの動画審査だけで出られて、幼児からシニア(65歳以上)までの8部門があり、ジャンルは自由です。講評とデジタル賞状がとどくので、いまの声のよいところを知るきっかけになると思います。こどもの歌声グランプリ