練習・発声のコツ

軟口蓋を上げるってどういうこと?歌のひびきが変わる練習

更新日:2026年11月7日 ・ 書いた人:うみ

「先生に『軟口蓋(なんこうがい)を上げて』と言われたけれど、どこのことなのか、よくわからない」 「上げようとすると、かえって声がへんになってしまう」

歌のレッスンや声楽の本で、「軟口蓋を上げる」ということばを目にした方は多いと思います。でも、ふだんの生活で使うことばではないので、どこを、どうすればいいのか、ぴんとこないのは当たり前です。

わたしは息子といっしょに、たくさんのコンクールに出てきました。

この記事では、軟口蓋とは口の中のどこなのか、歌で「軟口蓋を上げる」とはどういうことなのかを、できるだけやさしいことばでお話しします。あわせて、自分で軟口蓋の動きを感じる方法や、ひびきが変わる練習、上げようとして力みすぎないための注意もまとめました。軟口蓋は目に見えにくい場所ですが、感じ方のコツがわかると、練習のヒントがぐっと増えます。

軟口蓋とは?口の中のどこにある?

上あごの「おくの、やわらかいところ」

舌の先で、上あごを前歯のうらから、おくのほうへなぞってみてください。はじめは、かたくて、でこぼこした感じがします。ここは「硬口蓋(こうこうがい)」とよばれる、骨のある部分です。

そのまま、もう少しおくへ舌をすすめると、とちゅうから、やわらかい場所にかわります。ここが「軟口蓋」です。「軟」は、やわらかいという意味です。

のどちんこも、軟口蓋の一部

鏡の前で口を大きくあけ、「アー」と言ってみると、口のおくに、のどちんこ(口蓋垂)がぶら下がっているのが見えると思います。のどちんこは、軟口蓋のいちばんうしろについている部分です。

軟口蓋は、ふだんから動いている

軟口蓋は、ものを飲みこむときや、話すときに、上がったり下がったりしています。たとえば、「ン」や「マ」のように、鼻に息がぬける音を出すときは、軟口蓋が下がって、鼻への通り道がひらきます。「ア」や「オ」のような音では、軟口蓋が上がって、鼻への通り道がとじる方向に動きます。

つまり、軟口蓋は、口と鼻のどちらに息や声を通すかを切りかえる、とびらのような役わりをしているのです。

歌で「軟口蓋を上げる」とはどういうこと?

口のおくの空間を、上に広げるイメージ

歌で「軟口蓋を上げる」と言うときは、口のおくの天井を少し持ち上げて、口の中の空間を上のほうへ広げるイメージをさしていることが多いです。

軟口蓋が上がると、口のおくの空間がたてに広がり、声のひびきがゆたかに聞こえやすくなると言われています。

「のどを開く」とのちがい

「軟口蓋を上げる」と似たことばに、「のどを開く」があります。のどを開くは、のどのまわりの力をぬいて、のどのおくをゆったりさせることを、広くさしていることが多いことばです。

軟口蓋を上げるのは、その中でも、口の中の天井、上のほうに注目した言い方と考えると、わかりやすいかもしれません。のどを開くことについては、こちらの記事でくわしくまとめています。「のどを開く」ってどういうこと?声がらくに出るからだの使い方

先生によって、言い方や感じ方はちがう

軟口蓋の感じ方は、人によってちがいます。先生によっても、「軟口蓋を上げる」「上あごのおくを高く」「口の中にドームを作る」など、いろいろな言い方をします。どれも、目指しているところは近いことが多いです。わからないときは、レッスンで「こんな感じで合っていますか」と先生に聞いてみましょう。

軟口蓋を上げると、ひびきはどう変わる?

声が、平たく聞こえにくくなる

軟口蓋が下がりぎみのまま歌うと、声が平たく、うすく聞こえることがあります。軟口蓋を少し上げる意識を持つと、声にまるみや深さが出て、ひびきがやわらかく聞こえやすくなります。

鼻声っぽさがへることがある

軟口蓋が下がっていると、声が鼻にぬけやすくなり、鼻声っぽく聞こえることがあります。軟口蓋の動きを意識すると、鼻にかかりすぎた声がすっきりすることもあります。

ただし、鼻声の原因は、軟口蓋だけとはかぎりません。

ひびきの感じ方が変わる

軟口蓋が上がると、顔のおくや頭のほうに、声がひびいているように感じる方もいます。体のどこがひびくのかという話は、こちらの記事でもまとめています。歌の共鳴とは?体のどこがひびくの?ひびきを感じる練習

軟口蓋の動きを感じる練習

1 あくびのはじめを、ゆっくり感じる

あくびをしかけたときに、口のおくがふわっと持ち上がる感じがあると思います。これが、軟口蓋が上がっている感じに近いものです。あくびを大きくしきってしまわず、はじめの、ふわっと広がるところで止めて、その感じを味わってみましょう。

2 「ン」と「ア」を行き来する

「ン」と言ったあとに、口をあけて「ア」と言ってみます。「ンーアー、ンーアー」と、ゆっくりくりかえします。

「ン」のときは軟口蓋が下がり、「ア」のときは上がります。鏡で口のおくを見ながらくりかえすと、のどちんこのあたりが上下に動くのが見えることもあります。この動きを感じることが、軟口蓋を意識する第一歩です。

3 息をすうときに、つめたい空気を感じる

口を少しあけて、ゆっくり息をすってみます。そのとき、口のおくの上のほうに、ひんやりとした空気があたる感じがあれば、そこが軟口蓋のあたりです。驚いたときに、はっと息をすう感じも、軟口蓋が上がりやすい動きです。

4 「ガ」「カ」で、軟口蓋の位置をたしかめる

「ガ」「カ」という音は、舌のおくと軟口蓋がふれて出る音です。「ガ、ガ、ガ」とゆっくり言ってみると、舌のおくが上あごのおくにふれる場所がわかります。そこが軟口蓋のあたりです。場所がわかると、上げるイメージも持ちやすくなります。

ひびきが変わる、軟口蓋を意識した発声練習

1 ハミングから「ア」へ

口をとじて「んー」とハミングをし、そのまま口をひらいて「アー」へつなげます。ハミングのときのひびきをのこしたまま、口のおくが少し持ち上がるイメージで、「ア」に広げていきます。

2 「オ」の母音で、楽な高さから

軟口蓋を意識する練習は、「オ」の母音がはじめやすいです。口の中がたてに広がりやすく、口のおくの空間を感じやすい母音だからです。

  • 楽な高さで「オー」とのばす
  • ドレミレドのように、ゆっくり上がっておりる
  • 1回ごとに半音ずつ高さをかえる

3 ほかの母音にも広げる

「オ」でひびきがつかめたら、「ア」「ウ」「エ」「イ」へと広げていきます。とくに「イ」や「エ」は、口が横に広がりやすく、軟口蓋が下がりやすい母音です。「オ」のときの口のおくの広さを、少しのこすようなイメージで練習してみましょう。

4 高い音のときに、そっと意識する

高い音に上がるとき、口を横に広げるのではなく、口のおくの天井が少し持ち上がるイメージを持つと、声がのびやかになりやすいことがあります。ただし、高い音ほど力が入りやすいので、「そっと意識する」くらいがちょうどよいです。

5 録音して聞きくらべる

軟口蓋を意識しないで歌ったときと、意識して歌ったときを、それぞれ録音して聞きくらべてみましょう。声のまるみや、ひびきのちがいに気づきやすくなります。

上げすぎ、力みすぎに気をつけて

上げようとして、のどや舌に力を入れない

軟口蓋を上げようとするあまり、舌のつけねをぐっと下げたり、のどをおしつけたりすると、こもった声になることがあります。舌は、口の中でしずかに休ませておくくらいの気持ちで歌いましょう。

いつも、あくびのように大きくあけない

あくびの形は、軟口蓋の動きを感じるためのきっかけです。歌っているあいだずっと、大あくびのような口にしなければいけない、というわけではありません。ことばがはっきり伝わることも、歌ではとても大切です。

つかれたら休む

軟口蓋のあたりの使い方をかえる練習は、なれないうちはつかれやすいものです。練習は短めにし、つかれを感じたら休みましょう。歌ったあとにのどの痛みやかすれが何日も続くときは、むりをせず、耳鼻科などのお医者さんに相談してください。

まとめ

  • 軟口蓋とは、上あごのおくにある、やわらかい部分のこと
  • 歌で「軟口蓋を上げる」とは、口のおくの空間を上に広げるイメージのことが多い
  • 軟口蓋を意識すると、声にまるみや深さが出やすくなる
  • あくびのはじめ、「ン」と「ア」の行き来、「ガ」の音で、場所と動きを感じる
  • 「オ」の母音からはじめ、ほかの母音にも広げていく
  • 上げようとして、のどや舌に力を入れすぎない

軟口蓋は目に見えにくい場所なので、ひとりではつかみにくいこともあります。先生にみてもらいながら練習すると、感じ方のコツがわかりやすくなります。通いやすいボイトレや声楽の教室は、こちらからさがせます。歌の教室さがし練習の成果をだれかに聞いてもらいたくなったら、こどもの歌声グランプリもあります。オンラインの動画審査だけで出られて、幼児からシニア(65歳以上)までの8部門があり、ジャンルは自由です。講評とデジタル賞状がとどくので、いまの声のよいところを知るきっかけになると思います。こどもの歌声グランプリ

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