ヘンデル「メサイア」を歌ってみよう。年末の合唱の楽しみ方と、初心者の練習のしかた
「年末にメサイアを歌う合唱の募集があって、気になっている」 「メサイアの合唱は初心者でも歌えるのかな。どんなふうに練習すればいいの?」
ヘンデルの「メサイア」は、合唱の名曲として長く親しまれてきた作品です。とくに冬から年末にかけて演奏されることが多く、市民の合唱団が参加する演奏会もあります。「ハレルヤ」の合唱だけは聞いたことがある、という方も多いのではないでしょうか。
わたしは息子といっしょに、たくさんのコンクールに出てきました。
この記事では、メサイアにしぼって、どんな曲なのか、合唱の楽しみ方、そして初心者の方の練習のしかたをまとめます。
メサイアってどんな曲?
ヘンデルが作曲した合唱の大作
「メサイア」は、ドイツに生まれ、イギリスで活やくした作曲家ヘンデルの作品です。1742年に、アイルランドのダブリンではじめて演奏されたと伝えられています。
オペラのような衣装や演技はなく、ソロの歌手、合唱、オーケストラで演奏される形の作品です。全部を演奏すると長い時間がかかるため、一部の曲をえらんで演奏する演奏会もあります。
3つの部分からできている
メサイアは、大きく3つの部分にわかれています。キリスト教の聖書のことばをもとにした作品で、物語のように場面がすすんでいきます。演奏会では、信じている宗教に関係なく、音楽の作品として楽しんでいる方がたくさんいます。
よく知られている合唱曲
メサイアの中には、合唱が歌う曲がたくさんあります。たとえば、次のような曲がよく知られています。
- And the glory of the Lord(主の栄光)
- For unto us a child is born(ひとりのみどりごが)
- Hallelujah(ハレルヤ)
- 作品のさいごをしめくくる、大きな合唱
日本語の曲名は、楽譜や演奏会によって書き方がちがうことがあります。
年末に歌われることが多いわけ
メサイアは、冬の季節や、1年のしめくくりの時期に演奏されることが多い作品です。年末の演奏会の定番として、毎年たのしみにしている方もいます。年末の合唱の楽しみとしては、ベートーヴェンの「第九」もよく知られています。第九については、こちらの記事でまとめています。年末の「第九」を歌ってみよう。市民合唱への参加のしかたと、練習のすすめ方
メサイアの合唱の楽しみ方
4つのパートがおいかけっこする
メサイアの合唱は、ソプラノ、アルト、テノール、バスの4つのパートで歌うのが基本です。1つのパートがメロディを歌いはじめると、ほかのパートがあとからおいかけるように入ってくる場面がたくさんあります。自分のパートと、ほかのパートが重なっていくおもしろさは、メサイアならではの楽しみです。
明るく、軽やかなひびき
メサイアは、バロックとよばれる時代の音楽です。重く大きな声でおしきるよりも、明るく、軽やかなひびきで歌うことが大切にされることが多いです。どんな声で歌うかは、指揮者や指導者の考えによってもちがうので、練習で言われたことを大切にしましょう。
ハレルヤの合唱
ハレルヤの合唱では、聞いている人が立ち上がる習慣があると伝えられています。ただ、いまの演奏会でどうするかは、会場や演奏会によってちがいます。歌う側としては、気持ちが自然にもりあがる、力強い1曲です。
初心者のための練習のしかた
まずは全体を聞いてみる
練習をはじめる前に、メサイアの録音を通して聞いてみましょう。とくに自分が歌う合唱曲は、何度もくりかえして聞いておくと、曲の流れがつかみやすくなります。楽譜を見ながら聞くと、いまどこを歌っているのかがわかるようになってきます。
自分のパートの音をとる
つぎに、自分のパートの音をおぼえます。練習用の音源が用意されている場合は、それを使うと便利です。おいかけっこのように入る場面が多いので、自分がどこから入るのかを、楽譜にしるしをつけておくとよいでしょう。合唱の音とりのコツは、こちらの記事でもまとめています。合唱の音取りのやり方。自分のパートを早くおぼえる練習のコツ
英語のことばの準備
メサイアは英語で歌われます。英語が苦手でも、心配しすぎなくてだいじょうぶです。
- まずは、ゆっくり読み方を声に出してみる
- よく出てくる単語の意味をしらべる(たとえば glory は「栄光」、Lord は「主」など)
- 歌詞を見ながら、音源に合わせて小さな声で口ずさむ
- 指導者の発音を、よく聞いてまねする
英語は、ことばのさいごの音(子音)をどこで出すかが、合唱でそろえにくいところです。合唱団で決めた出し方に合わせると、すっきりとしたひびきになります。
長くころがる音の流れを練習する
メサイアの合唱には、1つのことばの母音の上で、たくさんの音がころがるように動く場面がよく出てきます。たとえば「For unto us a child is born」では、born のことばの上で、こまかい音が長くつづく場面があります。初心者の方がいちばん苦労しやすいところかもしれません。
- はじめは、ゆっくりのテンポで練習する
- 「ラ」や「ア」など、1つの母音で音の動きだけをなぞる
- 音を1つずつ「ハハハ」と軽く区切ってみる
- なれてきたら、少しずつテンポを上げる
のどで押すのではなく、息の流れにのせて軽く動かすイメージです。むりに速く歌おうとすると、のどに力が入りやすいので、あせらずに練習しましょう。
息つぎの場所を決める
長いフレーズが多いので、どこで息をすうかを前もって決めておくと、楽に歌えます。息つぎの場所は、楽譜に小さくしるしをつけておきましょう。パートのみんなで場所をそろえるか、少しずらすかは、指導者の指示にしたがいます。
強弱をつけて歌う
メサイアの合唱には、静かにはじまって、少しずつ大きくなっていく場面や、急に力強くなる場面があります。楽譜に書かれた強弱の記号に、色えんぴつでしるしをつけておくと、歌うときに気づきやすくなります。大きな声を出す場面でも、どなるような声にならないよう、ひびきを大切にしましょう。
家での練習は短い時間でも
いそがしい方は、毎日長い時間をとるのはむずかしいと思います。家での練習は、短い時間でもかまいません。
- 通勤や家事のあいだに、自分のパートの音源を聞く
- 苦手な数小節だけを、ゆっくり何回か歌う
- 英語の読み方を、声に出して1回たしかめる
- 練習で言われたことを、楽譜に書きこんでおく
短い時間でも、こまめにふれることで、曲が体になじんでいきます。大きな声を出しにくいおうちでは、小さな声や、口の中でことばをとなえるだけの練習でもかまいません。ことばと音の流れを頭に入れておくだけでも、つぎの合唱練習で歌いやすくなります。
パートの人と声を合わせる
合唱の練習では、自分の声だけでなく、となりの人の声を聞くことも大切です。同じパートの人の声にとけこむように歌うと、パート全体のひびきがまとまります。ほかのパートの音も聞こえてくると、曲の中での自分の役わりがわかって、歌うのがもっと楽しくなります。
本番までのすごし方
練習のスケジュール
メサイアの演奏会に向けた練習は、数か月かけて行われることが多いです。はじめは合唱だけで練習し、本番が近づくと、指揮者やソロの歌手、オーケストラと合わせる練習があります。練習の回数や期間は、団体や演奏会によってちがいます。
楽譜の「版」に気をつける
メサイアの楽譜には、いくつかの版(エディション)があり、ページ番号や細かいところがちがうことがあります。楽譜を買う前に、合唱団でどの楽譜を使うかをたしかめておきましょう。
のどを守る
本番が近づくと、練習の時間がふえて、のどがつかれやすくなります。寒い季節なので、部屋の乾燥や、体の冷えにも気をつけましょう。痛みやかすれが続くときは、むりをせず、耳鼻科などのお医者さんに相談してください。
本番の日
- 楽譜を持って歌う演奏会では、楽譜の持ち方も練習しておく
- 長い時間、立ったり座ったりするので、楽な靴をえらぶ
- 出番を待つあいだも、ほかの曲を聞いて、気持ちをつなげておく
まとめ
- メサイアは、ヘンデルが作曲した、合唱の名曲として親しまれる作品
- 冬から年末にかけて演奏されることが多い
- 4つのパートがおいかけっこする、明るく軽やかなひびきが楽しみ
- 初心者は、全体を聞く、音とり、英語の準備の順にすすめる
- 長くころがる音の流れは、ゆっくり、母音だけで練習する
- 楽譜の版をたしかめ、のどを大切にする
メサイアの合唱は、ほかのパートと声が重なっていくよろこびを、全身で感じられる体験です。合唱で歌うことになれてきて、ひとりで歌う歌にもちょうせんしてみたくなったら、こどもの歌声グランプリをのぞいてみてください。オンラインの動画審査だけで出られて、幼児からシニア(65歳以上)までの8部門があり、ジャンルは自由です。講評とデジタル賞状がとどくので、自分の歌を見つめなおすきっかけになると思います。こどもの歌声グランプリ