年末の「第九」を歌ってみよう。市民合唱への参加のしかたと、練習のすすめ方
「年末になると聞こえてくる『第九』。いつか、あの合唱の中で歌ってみたい」 「楽譜は読めないし、ドイツ語もわからない。それでも参加できるのかな」
12月になると、全国のいろいろな場所で「第九」の演奏会がひらかれます。ステージの上で、たくさんの人が声を合わせて歌う姿を見て、「わたしも歌ってみたい」と感じた方もいるのではないでしょうか。
わたしは息子といっしょに、たくさんのコンクールに出てきました。歌は、何歳からでも、どこからでもはじめられます。そして「第九」は、はじめて合唱をする大人の方にも、門がひらかれていることが多い曲です。
この記事では、「第九」がどんな曲なのか、市民合唱に参加するまでの流れ、そして、歌えるようになるための練習のすすめ方をまとめました。
「第九」ってどんな曲?
ベートーヴェンの「交響曲第9番」
「第九」は、ベートーヴェンが作曲した「交響曲第9番」のことです。交響曲は、オーケストラのための長い曲で、ふつうはいくつかの部分(楽章)に分かれています。
「第九」は4つの楽章でできていて、さいごの第4楽章で、ソリスト(ひとりで歌う歌手)と合唱が入ります。オーケストラの曲の中に、人の声がくわわるのが、この曲の大きな特徴です。
歌詞のテーマは「よろこび」
第4楽章の歌詞は、ドイツの詩人シラーの詩をもとにしています。テーマは「よろこび」で、人と人がつながることのすばらしさを歌っています。
有名なメロディーは、だれもが一度は耳にしたことがあると思います。あの明るく、力強いメロディーを、自分の声で歌えたときのよろこびは、とても大きなものです。
日本の年末に歌われることが多い
日本では、年末に「第九」の演奏会がひらかれることが多く、冬の風物詩のようになっています。プロの合唱団だけでなく、ふだんは別の仕事をしている大人の方が集まる「市民合唱」で歌われることも多いのが、日本ならではの特徴です。
市民合唱ってどんなもの?
はじめての人も参加しやすい
市民合唱は、地域の人が集まって、演奏会に向けて練習する合唱のことです。「第九」の市民合唱では、はじめての方を広く受け入れているところも多くあります。
- 楽譜が読めなくても参加できるところがある
- はじめての人向けの練習日を用意しているところがある
- 年れいのはばが広く、学生からシニアまでいることも多い
参加の条件や練習の回数、費用などは、団体によってちがいます。気になる団体を見つけたら、募集の案内をよく読んで、わからないことは問い合わせてみましょう。
参加までのおおまかな流れ
一般的には、次のような流れで参加することが多いです。
- 地域の広報紙やホームページなどで、募集の案内を見つける
- 申しこみをする
- 練習がはじまる(演奏会の数か月前から、ということが多い)
- 本番前に、オーケストラや指揮者との練習がある
- 本番の演奏会で歌う
練習は、週に1回や月に数回など、団体によってさまざまです。仕事や家のことと両立できそうか、さいしょに予定を確認しておくと安心です。
募集の時期に気をつける
年末の演奏会に向けた募集は、夏ごろから秋のはじめにかけて行われることが多いようです。「今年の年末に歌いたい」と思ったときには、もう募集が終わっていることもあります。来年に向けて、早めに情報を集めておくのもよい方法です。
パートのえらび方
4つのパートに分かれる
「第九」の合唱は、ふつう4つのパートに分かれています。
- ソプラノ:女性の高い声
- アルト:女性の低い声
- テノール:男性の高い声
- バス:男性の低い声
団体によっては、ふりわけのために声の高さをたしかめてくれることもあります。
「楽に出せる高さ」で考える
パートは、いちばん高い声が出るかどうかより、「長い時間、楽に歌える高さ」で考えるのがおすすめです。「第九」は高い音が続くところもあり、むりなパートをえらぶと、のどがつかれてしまいます。
迷ったときは、指導者の方に相談してみてください。大人の合唱そのものについては、こちらの記事もあわせて読んでみてください。大人の合唱団・コーラスのはじめ方|見学のしかた、パートの決まり方、長くつづけるコツ
ドイツ語の歌詞へのなれ方
さいしょは「ことばの音」になれる
「第九」は、ドイツ語で歌うことが多い曲です。はじめての方は、ここがいちばん不安かもしれません。でも、ドイツ語を話せるようになる必要はありません。まずは、ことばの「音」になれることからはじめましょう。
たとえば、こんな単語がよく出てきます。
- Freude(フロイデ):よろこび
- Brüder(ブリューダー):兄弟、なかま
- Tochter(トホター):むすめ
カタカナはあくまで目安です。じっさいの発音は、練習で指導者の方に教わりながらなおしていきましょう。
意味を知ると、歌いやすくなる
単語の意味を少しでも知っておくと、どこを明るく歌えばいいのか、どこに気持ちをこめればいいのかが、わかりやすくなります。全部の意味をおぼえなくても、「この部分は、よろこびを歌っている」くらいのイメージでじゅうぶんです。
読み方を楽譜に書きこむ
練習で教わった読み方は、楽譜にえんぴつで書きこんでおきましょう。あとで消せるように、ペンではなくえんぴつがおすすめです。
- 息つぎをする場所に、小さなしるしをつける
- 読みにくい単語に、ふりがなを書く
- 指導者の方に言われた注意を、短いことばでメモする
家での練習のすすめ方
1日10分でも、毎日ふれる
週に1回の練習だけだと、つぎの練習までに忘れてしまうことがあります。家でも、1日10分くらいでいいので、毎日「第九」にふれる時間をつくってみましょう。
- 演奏の音源を聞く
- 歌詞を声に出して読む
- 自分のパートのメロディーを口ずさむ
自分のパートの音を聞く
合唱の練習では、自分のパートの音だけを聞ける練習用の音源を用意している団体もあります。そうした音源があれば、くり返し聞いて、耳でおぼえていきましょう。
楽譜が読めなくても、耳でおぼえて歌えるようになる方はたくさんいます。もう少し楽譜となかよくなりたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。楽譜が読めなくても歌える?楽譜のよみ方のはじめの一歩
むずかしいところは、ゆっくり
テンポが速いところや、ことばがつまっているところは、はじめはゆっくり練習しましょう。
- ことばだけを、リズムに合わせて読む
- ゆっくりのテンポで、メロディーをつけて歌う
- なれてきたら、少しずつ速くする
いきなり本番のテンポで歌おうとすると、ことばも音もあいまいになってしまいます。
声を出せない日は「聞く練習」を
家で大きな声を出しにくい日や、のどがつかれている日は、むりをせず「聞く練習」にきりかえましょう。楽譜を見ながら音源を聞くだけでも、どこで何を歌うのかが、頭に入っていきます。
練習のときに気をつけたいこと
のどを大切にする
「第九」は、高い音や大きな声で歌う部分が多い曲です。練習が続くと、のどがつかれやすくなります。
- 練習の前に、肩や首をほぐす
- こまめに水をのむ
- 高い音は、どならずに、息にのせるイメージで
- つかれたら、とちゅうで休む
年末は空気がかわき、かぜもはやる時期です。のどの痛みや声のかすれが何日も続くときは、むりをせず、耳鼻科などのお医者さんに相談してください。
まわりの声を聞く
合唱では、自分の声を出すことと同じくらい、まわりの声を聞くことが大切です。となりの人より大きな声を出そうとするより、パートの中で声がとけあうことを意識してみてください。
できないところがあっても、気にしすぎない
はじめての「第九」で、全部をかんぺきに歌える人は多くありません。むずかしいところは、まわりの人の声にささえてもらいながら、少しずつ歌えるようにしていけばだいじょうぶです。
本番の日にむけて
本番の日は、朝から体をあたためて、のどをうるおしておきましょう。服そうは団体ごとに決まりがあることが多いので、早めに確認して準備しておくと安心です。
ステージに立つと、きんちょうするかもしれません。でも、たくさんの人といっしょに声を合わせる「第九」は、ひとりで歌うのとはちがう安心感があります。練習してきた時間を信じて、楽しんで歌ってください。
まとめ
- 「第九」は、ベートーヴェンの「交響曲第9番」。第4楽章で合唱が入る
- 市民合唱では、はじめての人を受け入れているところも多い
- 参加の条件や費用、練習の回数は団体によってちがうので、案内をよく読む
- 募集は早めに行われることが多いので、情報は早めに集める
- パートは「楽に長く歌える高さ」でえらぶ
- ドイツ語は、まず「ことばの音」になれることから
- 家では1日10分でも、毎日ふれる
- のどの痛みやかすれが続くときは、お医者さんに相談する
「第九」をきっかけに、歌うことがもっと好きになったら、近くの歌の教室で声の出し方を習ってみるのもおすすめです。合唱で長く歌うための、息のつかい方や体のつかい方を教わることができます。歌の教室さがしひとりで歌う歌にもちょうせんしてみたくなったら、こどもの歌声グランプリものぞいてみてください。オンラインの動画審査だけで出られて、幼児からシニア(65歳以上)までの8部門があり、ジャンルは自由です。講評とデジタル賞状がとどきます。こどもの歌声グランプリ