メッサ・ディ・ヴォーチェとは?のばす音を小さく→大きく→小さくする練習
「声楽のレッスンで、メッサ・ディ・ヴォーチェという練習をすすめられた」 「メッサディヴォーチェとは、どんな意味で、何のためにするのだろう」
声楽を習いはじめると、聞きなれないことばに出会うことがあります。メッサ・ディ・ヴォーチェも、そのひとつです。むずかしそうな名前ですが、やることはとてもシンプルです。
わたしは息子といっしょに、たくさんのコンクールに出てきました。
この記事では、メッサ・ディ・ヴォーチェとは何か、どんなねらいがあるのか、そして、はじめての方でもとり入れやすいやり方を、ひとつずつお話しします。声を長くまっすぐのばす練習や、歌全体の強弱のつけ方とはちがう、このテクニックだけにしぼってまとめました。
メッサ・ディ・ヴォーチェとは
イタリア語で「声を置く」という意味
メッサ・ディ・ヴォーチェは、イタリア語で「声を置く」といった意味をもつことばです。声楽では、ひとつの音をのばしながら、声の大きさをかえていく練習やテクニックのことをいいます。
小さく→大きく→小さく
やり方の形は、とてもかんたんです。
- 小さな声で、音を出しはじめる
- 同じ音のまま、少しずつ大きくしていく
- いちばん大きくなったら、また少しずつ小さくしていく
楽譜の記号でいうと、だんだん大きく(クレッシェンド)と、だんだん小さく(デクレッシェンド)を、ひとつの音の中で続けて行う形です。紙に書くと、ひし形や、ふくらんだ木の葉のような形になります。
声楽で大切にされてきた練習
メッサ・ディ・ヴォーチェは、昔から、イタリアの声楽の歌い方の中で大切にされてきた練習です。むずかしい曲を歌う前の、声のきほんをそだてる練習として、今も多くの先生がとり入れています。
メッサ・ディ・ヴォーチェで身につくこと
息と声のバランス
声を小さくしたり大きくしたりするには、息の量や、息をおくり出す力を、細かく調整しなければなりません。この練習を続けると、息と声のバランスを感じとる力がそだっていきます。
音程を保ったまま大きさをかえる力
声を大きくすると音が上ずり、小さくすると音が下がる、ということは、よくおこります。メッサ・ディ・ヴォーチェでは、音の高さはそのままで、大きさだけをかえることをめざします。これができると、歌の中で強弱をつけても、音程がゆれにくくなります。
声の色をそろえる力
小さな声と大きな声で、声の感じがまったくちがってしまうことがあります。小さいときは息っぽく、大きいときはかたい声、という具合です。この練習では、大きさがかわっても、同じ声の色のままでいられることを大切にします。
声の切りかわりをなめらかにする
声を大きくしたり小さくしたりするとき、声の感じがぱっと切りかわってしまうことがあります。メッサ・ディ・ヴォーチェをていねいに続けると、そのつなぎめが少しずつなめらかになっていきます。
メッサ・ディ・ヴォーチェのやり方
準備:姿勢と息をととのえる
まずは、体をほぐして、姿勢をととのえます。足のうらで床を感じ、肩の力をぬいて、らくに立ちましょう。息は、肩を上げずに、おなかのまわりやわき腹がふくらむように、ゆったりすいます。
音の高さと母音をえらぶ
はじめは、自分にとって出しやすい、真ん中くらいの高さの音をえらびます。高すぎる音や低すぎる音は、さけましょう。
母音は「あ」や「お」など、自分がらくに声を出せる音で大丈夫です。むずかしければ、ハミングからはじめてもかまいません。
手順
- 息をすって、ごく小さな声で音を出しはじめる
- 音の高さはそのままに、ゆっくり声を大きくしていく
- むりのない大きさまできたら、そこから、ゆっくり小さくしていく
- はじめと同じくらいの小さな声で、そっと音をおえる
大きくするところと、小さくするところが、同じくらいの長さになるように意識すると、形がととのいやすくなります。
「いちばん大きい声」はひかえめに
いちばん大きくするところで、どなるような声を出す必要はありません。自分が気持ちよく出せる大きさの、少し手前くらいで十分です。大切なのは、大きさよりも、なめらかにかわっていくことです。
うまくいかないときのコツ
小さな声がかすれる・息っぽくなる
小さな声のところで、声がかすれたり、息だけになったりすることがあります。小さな声でも、声のひびきはなくさないように、遠くの人にささやきかけるような気持ちで出してみてください。はじめは、そこまで小さくしなくても大丈夫です。
大きくすると音が上ずる
声を大きくするとき、息をいきおいよく押し出すと、音が高くなりやすくなります。体の下のほうで支えるような感じを保ちながら、息の量を少しずつふやしていきましょう。
小さくするときに音が下がる
声を小さくするとき、息の流れまで弱めてしまうと、音が下がりやすくなります。声は小さくしても、息の流れは止めない、というイメージが大切です。
とちゅうで段がついてしまう
なめらかにかわらず、階段のように声の大きさが急にかわってしまうこともあります。そのときは、音をのばす長さを短くして、かわる幅も小さくしてみましょう。少しずつ形をととのえていけば大丈夫です。
録音してたしかめる
自分ではなめらかなつもりでも、録音して聞くと、段がついていたり、音程がゆれていたりすることがあります。スマホで録音して、形がととのっているか、聞いてみるのがおすすめです。
練習にとり入れるときのポイント
発声練習のあとに、短く
メッサ・ディ・ヴォーチェは、声がまだ温まっていないときに行うと、のどに負担がかかりやすくなります。軽い発声練習やハミングで、声をほぐしてから行いましょう。また、集中力がいる練習なので、短い時間で切り上げるのがおすすめです。
先生に聞いてもらう
声の大きさや色のかわり方は、自分ではわかりにくいものです。声楽の先生に聞いてもらうと、どこで声がかわっているか、どこに力が入っているかを教えてもらえることが多いです。
曲の中のロングトーンに生かす
練習で身につけた感覚は、曲の中で音をのばすところにも生かせます。のばす音の中で、少しふくらませたり、そっと小さくしたりすると、歌に表情が生まれます。声を長くまっすぐのばす練習は、こちらの記事でくわしく書いています。ロングトーンの練習。息を長く、声をまっすぐのばすコツ
また、曲全体での強弱や、気持ちの伝え方については、こちらの記事も参考にしてみてください。歌に抑揚をつける方法。強弱と声の色で、気持ちが伝わる歌に
よくある質問
毎回の練習でしたほうがいい?
先生によって、とり入れ方はちがいます。声のきほんの練習として毎回とり入れる先生もいれば、声がととのってきてからすすめる先生もいます。自分ひとりで決めずに、いま習っている先生に聞いてみるのが安心です。
どの高さでもできるようにしたほうがいい?
はじめは、出しやすい高さだけで大丈夫です。なれてきたら、その上や下の音でも、少しずつためしてみましょう。高い音や低い音では、形がくずれやすくなります。むりをしないことがいちばん大切です。
お子様が練習するときは
メッサ・ディ・ヴォーチェは、大人の声楽の練習というイメージがあるかもしれません。でも、小さく、大きく、また小さく、という形は、お子様にもわかりやすいものです。
- 風船がふくらんで、またしぼむイメージで歌う
- 手を広げたり、とじたりしながら声の大きさをかえる
- 遠くの人と近くの人によびかけるような、ごっこあそびにする
小さなお子様は、大きな声を出しすぎてしまうことがあります。お父様・お母様は、「いちばん大きいところも、やさしい声でね」と声をかけてあげてください。
のどを守るために
声の大きさを何回もかえる練習は、思ったより、のどをつかいます。のどがつかれたと感じたら、すぐに休み、水をのんでのどをうるおしましょう。痛みやかすれが続くときは、むりをせず、耳鼻科などのお医者さんに相談してください。
まとめ
- メッサディヴォーチェとは、ひとつの音をのばしながら、小さく→大きく→小さくする声楽の練習
- 息と声のバランス、音程を保ったまま大きさをかえる力、声の色をそろえる力がそだつ
- 出しやすい高さと母音で、いちばん大きい声はひかえめにする
- 小さな声でもひびきをのこし、小さくするときも息の流れを止めない
- 声をほぐしてから、短い時間で、録音や先生の耳もつかって練習する
- のどの痛みやかすれが続くときは、お医者さんに相談する
メッサ・ディ・ヴォーチェで身につけた、なめらかな声のかわり方は、歌の中のいろいろなところで生きてきます。練習してきた歌をだれかに聞いてもらいたくなったら、こどもの歌声グランプリにもチャレンジしてみてください。オンラインの動画審査だけで出られて、幼児からシニア(65歳以上)までの8部門があり、ジャンルは自由です。講評とデジタル賞状がとどくので、ていねいにつくってきた声の表情が伝わっているか、たしかめるきっかけにもなると思います。こどもの歌声グランプリ