リートとは?ドイツ歌曲の楽しみ方と、はじめて歌うときのコツ
「声楽のレッスンで、リートを歌ってみましょうと言われたけれど、リートとは何だろう」 「ドイツ歌曲って、むずかしそうなイメージがある」 「イタリアの歌とは、どこがちがうの?」
声楽を習っていると、「リート」ということばを耳にすることがあります。オペラのアリアにくらべると、名前を聞く機会が少なく、どんな歌なのかわかりにくいかもしれません。
わたしは、息子といっしょに、たくさんのコンクールに出てきました。声楽のステージでは、ドイツ語の歌がうたわれることもよくあります。はなやかなオペラの歌とはちがい、しずかに心にしみこんでくるような歌が多いのが、リートの魅力だと感じています。
この記事では、声楽のリートとは何か、ドイツ歌曲の特徴や楽しみ方、はじめて歌うときのコツをまとめます。むずかしそうに思えるドイツ歌曲も、ポイントを知ると、ぐっと身近に感じられると思います。
声楽のリートとは
リートは「歌」という意味のことば
リートは、ドイツ語で「歌」という意味のことばです。声楽の世界では、おもに、ドイツ語の詩にメロディーをつけた、ピアノと歌のための歌曲のことを「リート」とよびます。日本語では「ドイツ歌曲」とよばれることも多いです。
詩と音楽がひとつになった歌
リートのいちばんの特徴は、詩と音楽がしっかりむすびついていることです。リートの多くは、すでにある詩をもとに作られています。作曲者は、詩のことばの意味やひびき、情景を大切にしながら、メロディーやピアノの音を考えています。
- 自然の景色をえがいた歌
- 恋の気持ちを歌った歌
- 昔話や物語を歌った歌
- 心のさびしさや、なつかしさを歌った歌
1曲が数分ほどの短い曲も多く、その中に、ひとつの小さな物語や気持ちがぎゅっとつまっています。
ピアノは「伴奏」以上の役わり
リートでは、ピアノがとても大切な役わりをもっています。ピアノは、歌をささえるだけではなく、川の流れや風の音、馬の走る音、心のゆれなどを音で表すこともあります。歌とピアノが、いっしょにひとつの物語を語っていくイメージです。
そのため、リートは「歌の人とピアノの人の、ふたりでつくる音楽」ともいわれます。
オペラのアリアとのちがい
声楽の曲には、リートのほかに、オペラの中で歌われる「アリア」があります。どちらも声楽の大切な曲ですが、ふんいきは少しちがいます。
- アリア オペラという大きな物語の中で、役の人物として歌う。オーケストラといっしょに、大きな会場でひびかせることが多い
- リート 1曲ごとに、ひとつの詩の世界を歌う。ピアノといっしょに、ことばをていねいに伝えることが多い
アリアがはなやかな舞台の歌だとすると、リートは、すぐそばで語りかけるような歌といえるかもしれません。大きな声をひびかせることよりも、ことばの意味や、声の色のちがいを大切にするのが、リートの特徴です。
リートの代表的な作曲者
シューベルト
リートといえば、まず名前があがるのがシューベルトです。とてもたくさんのリートを作曲したことで知られ、「歌曲の王」とよばれることもあります。「野ばら」や「魔王」は、日本でもよく知られている曲です。「冬の旅」のように、いくつもの曲がつながって、ひとつの物語になっている作品もあります。
シューマン
シューマンも、たくさんのリートを作曲しました。ピアノのパートがとても美しく、歌とピアノが語り合うような曲が多いのが特徴です。「詩人の恋」は、いくつもの曲がつながった作品として知られています。
ブラームス
ブラームスのリートには、あたたかく、どっしりとした曲が多くあります。「子守歌」は、ドイツ歌曲を知らない方でも、メロディーを聞いたことがあるかもしれません。
このほかにも、たくさんの作曲者がリートを残しています。気に入った作曲者が見つかったら、その人のほかの曲も聞いてみると、楽しみが広がります。
ドイツ歌曲の楽しみ方
まずは、日本語の意味を知ってから聞く
ドイツ語の歌は、ことばの意味がわからないと、少しとっつきにくく感じるかもしれません。はじめて聞くときは、日本語の訳を読んで、どんな詩なのかを知ってから聞いてみてください。
「いまは、森の中を歩いている場面なんだな」「ここで気持ちが急にかわるんだな」とわかると、同じ曲でも、聞こえ方がまったくかわってきます。
ピアノの音にも耳をすます
リートを聞くときは、歌だけでなく、ピアノの音にも耳をすませてみてください。前奏や間奏、後奏で、ピアノが何を表しているのかを想像するのも楽しいものです。水の流れのような音、鳥の声のような音など、いろいろな景色が見えてくることがあります。
いろいろな歌い手で聞きくらべる
同じリートでも、歌う人によって、テンポや声の色、ことばの伝え方がちがいます。女性の声と男性の声で聞きくらべたり、高い声用と低い声用の楽譜で歌われたものを聞いたりすると、曲のちがう顔が見えてきます。
短い曲から、少しずつ
リートには、2〜3分ほどで終わる短い曲もたくさんあります。いきなり長い作品を聞くより、まずは短い曲をいくつか聞いてみるのがおすすめです。
はじめてリートを歌うときのコツ
曲は先生と相談してえらぶ
はじめてリートを歌うときは、レッスンの先生と相談して曲をえらびましょう。
- メロディーがおぼえやすい曲
- 自分の声の高さに合った曲
- テンポがゆっくりすぎず、速すぎない曲
- 曲の長さが、あまり長くない曲
リートの多くは、高い声用、中くらいの声用、低い声用など、高さをかえた楽譜が出ています。自分に合った高さの楽譜をえらべるのも、リートのよいところです。
詩を、日本語で声に出して読む
歌う前に、まず詩の日本語訳を声に出して読んでみましょう。だれが、どこで、どんな気持ちでいるのかを考えながら読むと、歌い方のヒントが見えてきます。曲の解釈については、こちらの記事でもくわしく書いています。曲の解釈ってなに?作曲者や時代を知って、歌をもっと深めるための考え方
ドイツ語は、ゆっくり読む練習から
ドイツ語の歌詞は、はじめはむずかしく感じるかもしれません。でも、いきなり歌おうとしなくてだいじょうぶです。
- 先生にお手本を読んでもらい、録音する
- 歌詞にカタカナや印をつけて、ゆっくり読む
- メロディーをつけずに、リズムだけで読む
- なれてきたら、小さめの声で歌ってみる
ドイツ語には、子音がいくつも続くことばや、日本語にはない音がたくさんあります。たとえば、Liebe(愛)や Herz(心)、Nacht(夜)など、リートによく出てくることばから練習してみると、少しずつ口がなれていきます。
外国のことばの歌の練習については、イタリア語の発音の記事も参考になると思います。イタリア歌曲の発音のきほん。声楽をならう子ども・大人のために
声の大きさより、ことばを大切に
リートでは、大きな声で歌い上げることよりも、ことばをていねいに伝えることが大切にされます。しずかな場面では声をやわらかく、気持ちが高まる場面では少し明るく、というように、詩の内容に合わせて声の色をかえてみましょう。
小さな声で歌うときも、のどをしめずに、息にのせて声をひびかせることを意識すると、遠くまでとどきやすくなります。
ピアノといっしょに練習する時間をとる
リートは、歌とピアノでひとつの音楽です。できれば、本番の前に何回か、ピアノの方といっしょに合わせる時間をとりましょう。前奏で気持ちをつくり、後奏が終わるまで、歌の世界の中にいることを意識すると、まとまりのある演奏になります。
のどにむりをさせない
ドイツ語の子音を強く言おうとして、のどに力が入りすぎてしまうことがあります。のどがつかれたと感じたら、休けいをとりましょう。痛みやかすれが何日も続くときは、むりをせず、耳鼻科などのお医者さんに相談してください。
まとめ
- 声楽のリートとは、ドイツ語の詩に音楽をつけた、ピアノと歌のための歌曲のこと
- 詩と音楽がひとつになり、ピアノも大切な役わりをもっている
- アリアにくらべて、ことばをていねいに伝える、語りかけるような歌が多い
- 代表的な作曲者は、シューベルト、シューマン、ブラームスなど
- 聞くときは、日本語の意味を知ってから、ピアノの音にも耳をすます
- 歌うときは、先生と曲をえらび、詩を読み、ドイツ語をゆっくり練習する
- 声の大きさより、ことばと声の色を大切にする
リートは、知れば知るほど味わいの深い歌の世界です。ドイツ歌曲に挑戦してみたい方は、声楽の先生に相談しながら、自分に合った1曲をさがしてみてください。練習してきた歌を聞いてもらいたくなったら、こどもの歌声グランプリものぞいてみてください。オンラインの動画審査だけで出られて、幼児からシニア(65歳以上)までの8部門があり、ジャンルは自由です。講評とデジタル賞状がとどくので、ドイツ歌曲で出てみるのもすてきだと思います。こどもの歌声グランプリ