胸声と頭声とは?違いと「声区」の考え方を、やさしく
「先生に、もう少し頭声で歌ってみてと言われたけれど、どういうこと?」 「胸声と頭声の違いが、本を読んでもよくわからない」
歌のレッスンに通いはじめると、こんなことばに出会うことがあります。声楽や合唱の本にもよく出てきますが、はじめての方には、少しむずかしく聞こえますよね。
わたしは息子といっしょに、たくさんのコンクールに出てきました。歌のレッスンでは、「胸声」「頭声」「声区」ということばがよくつかわれます。
この記事では、胸声と頭声の違い、そして「声区とは何か」を、できるだけやさしいことばでお話しします。地声と裏声の切りかえ方そのものではなく、ことばの意味と、声楽での考え方にしぼってまとめました。
胸声と頭声、ことばの意味
胸声とは
胸声(きょうせい)は、歌っているときに、胸のあたりがひびくように感じる声のことです。ふだん話している声に近く、低めの音で出しやすい声です。
胸に手をあてて、低い声で「あー」と言ってみてください。手のひらに、ふるえのようなものを感じる方が多いと思います。この「胸がひびく感じ」から、胸声とよばれています。
頭声とは
頭声(とうせい)は、歌っているときに、頭のほうがひびくように感じる声のことです。高めの音で出しやすく、やわらかく、すんだ感じに聞こえることが多い声です。
高めの音で「うー」や「ほー」とやさしく声を出すと、おでこや頭のてっぺんのあたりに、声がうかんでいるように感じる方もいます。この感じから、頭声とよばれています。
声が「胸」や「頭」から出ているわけではない
ここで大切なことがあります。胸声も頭声も、声そのものは、のどにある声帯でつくられています。胸や頭から声が出ているわけではありません。
「胸」「頭」というのは、歌う人が体の中で感じる「ひびきの場所」をあらわしたことばです。むかしから歌の先生たちが、目に見えない声の感じを伝えるために、こうしたことばをつかってきました。
ですから、感じ方には人によって少しずつ違いがあります。「先生の言う感じが、まだよくわからない」というのは、ふつうのことです。
声区とは?
声区は「同じ感じで出せる音のはんい」
声区(せいく)とは、かんたんに言うと、「同じような声の感じで出せる音のはんい」のことです。
低い音から高い音まで、ゆっくり声を出していくと、とちゅうで声の感じがかわるところがあります。そのかわり目を境にして、
- 低い音のほうの声のまとまり
- 高い音のほうの声のまとまり
というように、声をいくつかのグループに分けて考えるのが、声区の考え方です。
胸声区・中声区・頭声区
声楽では、声区を2つや3つに分けて考えることが多いです。
- 胸声区 低めの音のはんい。胸がひびく感じがしやすい
- 中声区 まん中あたりのはんい。胸と頭、両方のひびきがまじる感じ
- 頭声区 高めの音のはんい。頭のほうがひびく感じがしやすい
どこからどこまでを何声区とするかは、声の種類や、その人の声によって違います。また、先生や本によって、分け方やよび方が少し違うこともあります。
声のかわり目のこと
声区と声区のさかいめを、「換声点(かんせいてん)」とよぶことがあります。イタリア語で「パッサッジョ」とよぶ先生もいます。
このあたりの音では、声がひっくりかえったり、急にうすくなったりしやすくなります。声楽のレッスンでは、このかわり目を目立たせず、低い音から高い音まで、なめらかにつなげて歌えるように練習していきます。
地声・裏声とは、どう違う?
「胸声は地声、頭声は裏声のこと?」と思う方も多いと思います。にている部分はありますが、まったく同じことばではありません。
- 地声・裏声 声の出し方(声帯のつかい方)の違いをいうことが多い
- 胸声・頭声 歌う人が感じるひびきの場所をいうことが多い
たとえば声楽では、高い音でも、裏声のようにうすい声ではなく、しっかりとした芯のある声で歌うことがあります。これも「頭声」とよばれることがあります。つまり、頭声は、ただの裏声とはかぎらないのです。
地声と裏声の違いや、切りかえのコツについては、こちらの記事でくわしくお話ししています。地声と裏声の違いとは?切り替えのコツと、境目をなめらかにする練習
声楽では、胸声と頭声をどう考える?
「まぜる」「つなぐ」という考え方
声楽では、胸声だけ、頭声だけで歌うというより、2つのひびきをうまくまぜて、つなげていく考え方が大切にされています。
低い音でも、頭のほうのひびきを少しのこしておく。高い音でも、胸の支えをなくさない。こうすることで、音の高さがかわっても、声の色があまりかわらずに聞こえるようになります。
女性の声と男性の声
女性の声は、声楽では、頭声のひびきを中心にして歌うことが多いといわれます。低い音で胸声をつかうこともありますが、つかいすぎないように気をつける先生も多いです。
男性の声は、ふだんの話し声に近い胸声のひびきが中心になります。高い音に上がっていくときに、頭のほうのひびきをまぜていく練習をします。
これはあくまで一般的な考え方です。声の種類や曲によって、つかい方はかわります。声の種類については、こちらの記事も参考になります。声楽の声の種類とは?ソプラノ・メゾソプラノ・アルト・テノール・バリトン・バスのちがい
子どもの声と頭声
子どもの合唱や童謡では、「頭声的発声(とうせいてきはっせい)」ということばが使われることがあります。大きな声でさけぶのではなく、頭のほうにひびかせるように、やわらかく歌う声のことです。
小さなお子様は、楽しくなると、つい胸声で大きな声を出しつづけてしまうことがあります。頭のほうのひびきを知っておくと、のどに負担をかけにくく、高い音もらくに歌いやすくなります。
ひびきの場所を感じてみる練習
ここからは、胸声と頭声の「感じ」を知るための、かんたんな練習をしょうかいします。どれも小さな声でできます。
手をあてて、ひびきをさがす
- 胸に手をあてて、低めの音で「あー」と声を出す
- 次に、おでこに手をあてて、高めの音で「うー」と声を出す
- 手のひらに伝わるふるえの違いを感じてみる
ふるえがよくわからなくても、だいじょうぶです。「なんとなく違う気がする」くらいでじゅうぶんです。
サイレンのように、上がって下がる
「うー」や「ほー」の音で、救急車のサイレンのように、低い音から高い音へ、また高い音から低い音へと、なめらかに声を動かしてみましょう。
とちゅうで声の感じがかわるところがあったら、そこがあなたの声のかわり目かもしれません。ひっくりかえっても、気にせずに、小さな声で何回かくりかえしてみてください。
ハミングでやさしく
口をとじて「んー」とハミングすると、鼻やおでこのあたりがひびく感じがつかみやすくなります。頭のほうのひびきを知る入り口として、ためしてみてください。
よくある質問
胸声と頭声、どちらがよい声なの?
どちらがよい、わるいということはありません。低い音には胸声のひびきが、高い音には頭声のひびきが合いやすく、曲や音の高さによって、どちらも大切な役わりがあります。大切なのは、どちらか一方だけにかたよらず、2つのひびきをうまくつかえるようになることです。
頭声で歌うと、声が小さくならない?
はじめのうちは、頭声で歌うと、声がうすく、小さく感じることがあります。でも、練習をつづけて、息の支えやひびきがととのってくると、頭声でもよくとおる声で歌えるようになっていくことが多いです。あせらず、少しずつ育てていきましょう。
子どもにも、声区の話は必要?
小さなお子様に、むずかしいことばを教える必要はありません。「お山のてっぺんにとどける声」「おなかの下からの声」など、イメージしやすいことばで、いろいろな声をあそびながら出してみるだけでじゅうぶんです。
気をつけたいこと
- 大きな声で、むりに高い音を出そうとしない
- 胸声のまま、高い音まで押し上げない
- 「先生と同じ感じ」にならなくても、あせらない
- のどがつかれたら、すぐに休む
声の感じ方は、ことばだけでは伝わりにくいものです。ひとりでなやむより、先生に「いまの声はどうでしたか」と聞きながら、いっしょにたしかめていくのが近道です。
歌ったあとに、のどの痛みやかすれが何日も続くときは、むりをせず、耳鼻科などのお医者さんに相談してください。
まとめ
- 胸声は胸がひびく感じの声、頭声は頭がひびく感じの声
- どちらも声は声帯でつくられていて、「胸」「頭」はひびきの感じをあらわすことば
- 声区とは、同じような声の感じで出せる音のはんいのこと
- 声楽では、胸声区・中声区・頭声区のように分けて考えることが多い
- 声楽では、2つのひびきをまぜて、なめらかにつなぐことが大切にされる
- 感じ方は人それぞれ。先生といっしょに、少しずつたしかめていく
胸声と頭声のことばがわかると、レッスンで先生が言っていることが、ぐっとわかりやすくなります。練習してきた歌を、だれかに聞いてもらいたくなったら、こどもの歌声グランプリものぞいてみてください。オンラインの動画審査だけで出られて、幼児からシニア(65歳以上)までの8部門があり、ジャンルは自由です。講評とデジタル賞状がとどくので、いまの声のよいところを知るきっかけになると思います。こどもの歌声グランプリ