地声と裏声の違いとは?切り替えのコツと、境目をなめらかにする練習
「地声と裏声の違いって、何だろう」 「高い音になると、急に声がひっくり返ってしまう」 「地声と裏声の切り替えが、ガクッとなって目立ってしまう」
歌を練習していると、こんななやみにぶつかることがあります。とくに、地声と裏声の境目で声がゆれたり、ひっくり返ったりするのは、大人の方にもお子様にもよくあることです。
わたしは、息子といっしょに、たくさんのコンクールに出てきました。歌を聞いていると、地声と裏声のつなぎ目がなめらかな歌は、とても自然に耳に入ってきます。
この記事では、地声と裏声の違いを、できるだけやさしいことばで説明します。そのうえで、地声と裏声の切り替えのコツと、境目をなめらかにするための練習をしょうかいします。
地声と裏声の違い
地声とは
地声は、ふだん話しているときに出している声です。しっかりとした、太めの声で、低い音から真ん中くらいの高さを出すのが得意です。
- 話し声に近い
- 力強く、はっきりした感じがする
- 胸のあたりに、ひびきを感じやすい
裏声とは
裏声は、地声よりも高いところで出す、やわらかく軽い声です。「ファルセット」や「頭声(とうせい)」とよばれることもありますが、先生によって言い方や分け方は少しちがいます。
- 高い音を、らくに出しやすい
- やわらかく、息がまじったような感じがすることもある
- 頭のほうに、ひびきを感じやすい
どうして2つの声があるの?
かんたんに言うと、声を出すときの、のどの中の「声のもと」の動き方がちがうからです。地声では、声のもとが厚めにふれあってふるえ、裏声では、うすくのびた形でふるえることが多いといわれています。
むずかしく考えなくてもだいじょうぶです。「同じ楽器でも、弦をはる強さがちがうと音がかわる」くらいのイメージで十分です。
どちらがよい、ということはない
地声も裏声も、どちらも大切な声です。曲の雰囲気や高さに合わせて、つかい分けることで、歌の表現がゆたかになります。「裏声は弱いからダメ」「地声だけで歌うのがえらい」ということはありません。
地声と裏声の境目で、声がひっくり返るのはなぜ?
境目は、だれにでもある
地声から裏声にうつるあたりには、声がかわりやすい高さがあります。これを「境目」や「換声点(かんせいてん)」とよぶことがあります。境目がある高さは、人によってちがいます。
境目があること自体は、ふつうのことです。だれにでもあるので、心配しなくてだいじょうぶです。
ひっくり返りやすくなる主なわけ
- 地声のまま、高いところまでむりにおし上げている
- 境目の前で、息の量が急にかわる
- のどや首に力が入っている
- 「ひっくり返ったらどうしよう」と緊張している
とくに多いのが、地声をむりに高いところまで引っぱってしまうことです。のどががんばりきれなくなったところで、急に裏声にかわり、ガクッとした切り替えになってしまいます。
自分の境目を知ってみよう
地声と裏声の切り替えを練習する前に、まず自分の境目がどのあたりかを知っておくと、練習しやすくなります。
- 低い音から、「あー」と地声で、ゆっくり音を上げていく
- 声がかわりそうになるところ、ゆれるところをさがす
- ピアノアプリなどで、その高さをたしかめてメモしておく
むりに高く上げる必要はありません。「このあたりで、かわりやすいんだな」とわかれば、それで十分です。
地声と裏声の切り替えのコツ
1 地声を、少しかるめにしておく
境目の少し手前から、地声をほんの少しかるく、やわらかくしておくと、裏声にうつりやすくなります。地声をおし上げるのではなく、「声を細くしていく」イメージです。
2 息の流れを、とめない
切り替えのところで息がとまったり、急にふえたりすると、声がゆれやすくなります。地声から裏声まで、同じくらいの息を、ずっと流しつづけるつもりで歌ってみてください。
3 口の形を、大きくかえない
音が高くなると、口を急に大きく開けたり、あごを上げたりしがちです。口の中の形は、なるべく同じままにしておくと、声のつながりがよくなります。
4 曲の中で、どこで切り替えるかを決めておく
歌の中で、地声から裏声にかわる場所を、楽譜や歌詞に書きこんでおくのも1つの方法です。決めておくと、心の準備ができて、あわてにくくなります。
境目をなめらかにする練習
ここからは、家でできる練習をしょうかいします。どれも、小さめの声で、むりのない高さではじめてください。
練習1 サイレンのように、上がって下がる
「うー」や「ほー」の音で、救急車のサイレンのように、低いところから高いところへすべり上がり、また下りてきます。
- 声がかわるところで、ひっくり返ってもかまわない
- 何回かくりかえすうちに、ガクッとなる感じが少しずつ小さくなることが多い
- なれてきたら、上がるはばを少しずつ広げる
練習2 裏声から地声へ、上から下りてくる
地声から上がるより、裏声から下りてくるほうが、なめらかにつなぎやすい人もいます。
- かるい裏声で「ほー」と高めの音を出す
- そのまま、ゆっくり音を下げていく
- 地声にかわるところで、声の明るさをかえないように気をつける
上から下りてくると、地声がかるくなりやすく、境目がつながりやすくなります。
練習3 リップロールやハミングで、境目をこえる
くちびるを「ぷるるる」とふるわせるリップロールや、口をとじた「んー」のハミングで、境目をまたいで上がり下がりします。
ことばを歌うより、のどに力が入りにくいので、切り替えの感覚をつかみやすい練習です。
練習4 短いフレーズで、ゆっくりつなぐ
「ドレミレド」など、5つくらいの音を、境目をまたぐ高さで歌います。
- はじめは、ゆっくりのテンポで
- 「あ」より「う」や「お」のほうが、つなぎやすいことが多い
- うまくいったら、同じ形を半音ずつ上げ下げする
練習5 録音して、つなぎ目を聞いてみる
自分で歌っているときは、境目がどう聞こえているか、わかりにくいものです。スマホで録音して、つなぎ目だけを聞きなおしてみましょう。前より少しでもなめらかになっていたら、それは大きな前進です。
地声と裏声が、ひとつにつながってきたら
地声と裏声の切り替えになれてくると、「2つの声を、まぜるように出せないかな」と思う方もいると思います。こうした声は「ミックスボイス」とよばれることがあります。ミックスボイスについては、こちらの記事でくわしくまとめています。ミックスボイスとは?地声と裏声をつなぐ、やさしい練習
まずは、この記事でしょうかいした「ちがいを知る」「切り替えになれる」ことを、土台にしてみてください。
お子様と地声・裏声で遊ぼう
お子様は、地声と裏声の切り替えを、あそびの中で自然におぼえていくことが多いです。お父様・お母様といっしょに、楽しくためしてみてください。
- おばけの「ひゅーどろどろ」で、高い声から低い声へ
- ふくろうの「ほーほー」を、裏声でまねする
- すべり台をすべるように、「わー」と声を上から下ろす
「ひっくり返っちゃった!」と笑いながらできるくらいが、ちょうどよいと思います。うまくできなくても、たくさんほめてあげてください。
練習で気をつけたいこと
- 高い音を、むりに地声でおし上げない
- 練習は5分から10分くらいにして、休みをはさむ
- のどがつかれたら、その日はおしまいにする
- 痛みやかすれが続くときは、耳鼻科などのお医者さんに相談する
声の境目は、ひと晩で消えるものではありません。あせらず、少しずつなれていくことが大切です。
また、日によって、境目の高さや声のつながり方がちがうこともあります。ねむい朝や、つかれている日は、うまくいかなくてもふつうのことです。調子のよい日と悪い日があると知っておくだけでも、気持ちがらくになると思います。
まとめ
- 地声は話し声に近い太めの声、裏声は高いところで出すやわらかい声
- どちらがよいということはなく、曲に合わせてつかい分ける
- 地声と裏声の境目は、だれにでもある
- 切り替えのコツは、地声をかるくする、息をとめない、口の形をかえない
- サイレン、上から下りる、リップロール、短いフレーズ、録音の練習がおすすめ
- ミックスボイスは、切り替えになれてから
地声と裏声の違いがわかると、自分の声とのつきあい方が少しかわってきます。境目のなやみを先生に見てもらいたいときは、通いやすい教室をさがしてみてください。歌の教室さがし練習の成果を形にしたくなったら、こどもの歌声グランプリもおすすめです。オンラインの動画審査だけで出られて、幼児からシニア(65歳以上)までの8部門があり、ジャンルは自由です。講評とデジタル賞状がとどくので、次の練習のヒントにもなると思います。こどもの歌声グランプリ