練習・発声のコツ

古楽の歌とは?バロック時代の声楽の歌い方の特ちょうと、はじめての楽しみ方

更新日:2026年11月7日 ・ 書いた人:うみ

「古楽って、むかしの音楽のこと?」 「バロックの歌は、ふつうの声楽と歌い方がちがうの?」

声楽を習っていると、ヘンデルやバッハの歌に出会うことがあります。そのとき「古楽」や「バロック」ということばを聞いて、少しむずかしそうだと感じる方もいるかもしれません。

わたしは息子といっしょに、たくさんのコンクールに出てきました。歌にはいろいろな時代やジャンルがあり、それぞれに歌い方のよさがあります。古楽の歌は、すっきりとした、すんだひびきが心地よく、聞くのも歌うのも楽しい世界です。

この記事では、古楽の声楽とは何か、バロック時代の歌い方の特ちょう、はじめて聞く・歌うときの楽しみ方を、やさしくまとめます。曲の解釈の考え方は別の記事にまとめているので、ここでは古楽ならではのお話にしぼります。

古楽とは?

むかしの音楽を、そのころのやり方で

古楽は、おもにバロック時代やそれより前の、ずっとむかしの音楽のことをいいます。また、そうした音楽を、作られたころの楽器や演奏のしかたを調べて、それに近い形で演奏しようとする考え方をさすこともあります。

バロック時代っていつごろ?

バロック時代は、だいたい1600年ごろから1750年ごろまでといわれています。この時代に、オペラが生まれ、歌の世界も大きく広がりました。

この時代の作曲家で、歌の曲がよく知られている人には、次のような人がいます。

  • モンテヴェルディ(イタリア) 初期のオペラや、マドリガーレという歌を多く書いた
  • パーセル(イギリス) 英語の歌やオペラを書いた
  • ヘンデル(ドイツ生まれで、イギリスで活やく) イタリア語のオペラや、英語のオラトリオを書いた
  • バッハ(ドイツ) 教会のためのカンタータや受難曲など、ドイツ語の歌を多く書いた

同じバロック時代でも、国や作曲家によって、ことばや曲のふんいきはちがいます。

バロックの声楽の歌い方の特ちょう

すっきりとしたひびき

古楽の演奏では、すっきりとまっすぐなひびきを大切にすることが多いです。ほかの楽器や声と、きれいに重なり合うように歌うためです。

大きなホールで大きなオーケストラに負けないように歌う、あとの時代のオペラとくらべると、声の量よりも、ひびきのすみ方や、ことばの伝わり方に耳を向ける歌い方といえます。

ビブラートのつかい方

ビブラートは、声がゆれるように聞こえるひびきのことです。古楽では、ビブラートを少しひかえめにして、まっすぐな声と組み合わせて歌うことがよくあります。

ただ、「ビブラートをつけてはいけない」というわけではありません。どのくらいつかうかは、演奏する人や先生によって考え方がちがいます。むりにビブラートをおさえようとして、のどに力が入ってしまうと、かえって歌いにくくなります。まずは、らくに出せるまっすぐな声を知ることからはじめるとよいでしょう。ビブラートそのものについては、こちらの記事にまとめています。ビブラートのかけ方。むりにゆらさない、自然なビブラートの練習

ことばを大切にする

バロックの歌では、ことばの意味やひびきが、とても大切にされています。強く言いたいことば、やさしく言いたいことばによって、音の強さや長さを工夫することが多いです。歌うというより、ことばを語るような気持ちで歌う場面もあります。

装飾(かざり)をつける

バロックの歌でよく出てくるのが、装飾です。楽譜に書かれたメロディに、歌い手が小さな音のかざりをつけて歌います。

  • 音と音のあいだを、細かい音でつなぐ
  • のばす音に、小さなゆれやまわる音をつける
  • 同じメロディが2回目に出てくるとき、少し形を変えて歌う

たとえば、ヘンデルのオペラのアリアには、前半、中間、前半のくりかえしという形の曲があります。くりかえしの部分で、歌い手が装飾をくわえて、1回目とはちがう表情を見せることがよくあります。装飾は、むりにたくさんつける必要はありません。先生と相談しながら、自分の声に合うものを少しずつ試していくのがおすすめです。

通奏低音といっしょに歌う

バロックの歌の伴奏には、通奏低音(つうそうていおん)というしくみがよくつかわれます。低い音のパートを、チェンバロやオルガン、リュートなどの楽器と、チェロなどの低い弦楽器でいっしょに演奏し、その上で和音をくわえていくものです。

ピアノ伴奏で歌うことも多いですが、チェンバロなどの音で歌うと、軽やかで、ことばの動きがよく聞こえるひびきになります。

音の高さが少しちがうことも

古楽の演奏では、むかしの楽器に合わせて、ふだんより少し低めの音の高さで演奏することがあります。いつもより少し低く聞こえて、おどろく方もいるかもしれません。

はじめて聞くときの楽しみ方

短い歌から聞いてみる

古楽を聞きはじめるときは、短い歌から聞いてみるのがおすすめです。パーセルの英語の歌や、ヘンデルのオペラのアリア、バッハのカンタータの中のアリアなどは、1曲が数分のものも多く、聞きやすいです。

声と楽器のかけ合いに耳をすます

バロックの歌では、歌と楽器がおしゃべりするように、同じメロディをまねし合う場面がよくあります。歌だけでなく、伴奏の楽器の動きにも耳を向けると、楽しみが広がります。

同じ曲を、いろいろな演奏でくらべる

古楽の世界では、同じ曲でも、演奏する人によって速さや装飾、ひびきが大きくちがうことがあります。いくつかの録音を聞きくらべると、「こんな歌い方もあるんだ」と発見があります。

演奏会で聞いてみる

チェンバロやリュートの音は小さめで、やさしいひびきです。小さめのホールや教会などで聞くと、楽器と声がまざり合うようすを、近くで感じられます。

はじめて歌うときのコツ

らくなまっすぐの声を知る

まずは、のどに力を入れずに、まっすぐな声をのばす練習からはじめましょう。ハミングから「う」や「お」の母音につなげて、声がしずかにまっすぐのびるかをたしかめます。

細かい音は、ゆっくりから

バロックの歌には、ひとつの母音で細かい音がたくさん続く場面があります。これをメリスマといいます。はじめは、とてもゆっくりの速さで、1つ1つの音をていねいに歌います。なれてきたら、少しずつ速くしていきます。メトロノームを使うと、速さを少しずつ上げやすくなります。

ことばを読んでから歌う

歌う前に、歌詞を声に出して読んでみましょう。どのことばを大切にしたいかを考えてから歌うと、バロックらしい、ことばの生きた歌になりやすいです。外国語の場合は、意味を調べてから読むと、よりわかりやすくなります。イタリア語の発音については、こちらの記事も参考にしてください。イタリア歌曲の発音のきほん。声楽をならう子ども・大人のために

先生をえらぶとき

古楽の歌い方にくわしい先生もいます。古楽をしっかり学びたい方は、体験レッスンのときに、バロックの歌を習いたいことを伝えてみるとよいでしょう。教え方は先生によってちがうので、自分がわかりやすいと感じる先生を見つけることが大切です。

のどを守るために

細かい音の練習は、くりかえすうちに、のどがつかれやすくなります。少し練習したら休む、という流れをつくりましょう。痛みやかすれが続くときは、むりをせず、耳鼻科などのお医者さんに相談してください。

お子様と古楽

古楽の歌の中には、メロディがすっきりしていて、お子様にも聞きやすい曲があります。お子様が声楽を習っている場合、先生と相談しながら、短くて歌いやすいバロックの歌に取り組むこともあります。ただし、声の高さや曲の長さが合っているかは、お子様によってちがいます。お父様・お母様だけで決めず、先生の意見を聞いてみてください。

まとめ

  • 古楽は、バロック時代などのむかしの音楽を、そのころのやり方に近い形で演奏する考え方
  • バロック時代はだいたい1600年ごろから1750年ごろ
  • モンテヴェルディ、パーセル、ヘンデル、バッハなどの歌がよく知られている
  • すっきりしたひびき、ひかえめなビブラート、ことばを大切にする歌い方が特ちょう
  • 装飾や通奏低音など、バロックならではの楽しみがある
  • はじめて歌うときは、まっすぐな声と、ゆっくりの練習から

古楽の歌い方を教えてくれる先生や、声楽の教室をさがすときは、こちらのページをつかってみてください。歌の教室さがし練習したバロックの歌を聞いてもらいたくなったら、こどもの歌声グランプリもおすすめです。オンラインの動画審査だけで出られて、幼児からシニア(65歳以上)までの8部門があり、ジャンルは自由です。講評とデジタル賞状がとどくので、新しい歌い方に取り組んだ成果をたしかめるきっかけになると思います。こどもの歌声グランプリ

高校生大学生おとな声楽

つぎの一歩を さがす

あわせて読みたい