歌うと声が裏返るのはなぜ?原因と直し方、なめらかにつなぐ練習
「サビの高いところで、声がひっくり返ってしまう」 「人前で歌うと、なぜか声が裏返って、はずかしい」
歌っていて、思ってもいないところで声が裏返ると、びっくりしますよね。とくに歌のテストや発表会、カラオケなど、人に聞いてもらう場面だと、そのあと歌うのがこわくなってしまう方もいると思います。
わたしは息子といっしょに、たくさんのコンクールに出てきました。歌で声が裏返るのは、とてもよくあることです。声が裏返るのには、たいてい理由があります。理由がわかると、少しずつ直していくことができます。
この記事では、歌うと声が裏返る原因と、声が裏返るときの直し方、そして、地声から高い音へなめらかにつなぐための練習をまとめます。ここでは、自分で切りかえようとしていないのに、声が勝手に裏返ってしまうときのお話にしぼります。地声と裏声のちがいや、わざと切りかえるときのコツは、こちらの記事にまとめています。地声と裏声の違いとは?切り替えのコツと、境目をなめらかにする練習
歌で声が裏返るのは、どんなとき?
よくある場面
声が裏返りやすいのは、たとえばこんなときです。
- 高い音に、いきなりとぶとき
- サビなど、大きな声で歌いたいところ
- 低い音から、少しずつ高くなっていくとちゅう
- 歌いはじめの1音目
- 緊張して、体がかたくなっているとき
- のどがかわいているときや、つかれているとき
いつも同じところで裏返る方もいれば、日によってちがう方もいます。まずは「どんなときに裏返るのか」に気づくことが、直すための一歩になります。
声が裏返るって、どういうこと?
わたしたちの声には、ふだん話すときのような「地声」と、高くてやわらかい「裏声」があります。声が裏返るのは、地声で歌っているとちゅうで、声の出し方が急に裏声のほうへかわってしまうことです。
のどの中では、声を出すための小さなひだがふるえて、音をつくっています。高い音になるほど、のどの中の動きもかわっていきます。そのかわり目を、なめらかにこえられないと、「ひっくり返った」ように聞こえることが多いのです。
つまり、声が裏返るのは、のどがこわれているわけではありません。地声と裏声のあいだを、まだうまくつなげていない、ということです。
声が裏返る主な原因
1 のどに力が入りすぎている
高い音を出そうとすると、首やあごに、ぐっと力が入りやすくなります。のどがかたくなると、声の出し方をなめらかにかえることがむずかしくなり、ある音で急にぷつっと切りかわってしまいます。
2 息を一気に強く出している
「大きな声で歌おう」と思うほど、息をたくさん、強く出してしまいがちです。息の勢いが強すぎると、のどがその勢いをささえきれず、声が裏返ることがあります。高い音ほど、息は「強く」より「ていねいに」が大切です。
3 高い音の前で、かまえてしまう
「次の高い音、出るかな」と心配になると、その前から体がかたくなります。肩が上がったり、あごが前に出たりすると、声が出しにくくなります。じつは、高い音そのものより、その前の「かまえ」が原因になっていることも多いです。
4 地声のまま、むりに上まで押し上げている
地声の力強さのまま、どこまでも高く上がろうとすると、あるところで、のどががまんできなくなります。そこで声が裏声へとびうつるように切りかわり、裏返って聞こえます。
5 緊張や体のつかれ、のどのかわき
緊張していると、息が浅くなり、体にも力が入ります。また、ねぶそくやかぜのあと、空気がかわいている日なども、のどがいつもどおりに動きにくくなり、声が裏返りやすくなります。
声が裏返るときの直し方(その場でできること)
音を「上からそっととる」イメージで歌う
高い音を「下からよいしょと持ち上げる」と思うと、力が入ります。反対に、「上からそっと、その音にのせる」ようなイメージで歌うと、のどの力がぬけやすくなります。高い音の前では、目線を少し遠くにむけて、顔の力をぬいてみましょう。
息の量を少しへらす
裏返りやすいところだけ、声を少し小さめにしてみます。息の量をへらすと、のどがあわてずにすみ、声がつながりやすくなります。まずは小さな声でつながるようになってから、少しずつ声を大きくしていくと安心です。
母音を少しかえてみる
「あ」や「い」の音で高く上がると、口の形が横にひろがり、のどに力が入りやすいことがあります。「あ」を少し「お」に近づける、「い」を少し「う」に近づけるなど、口の中を少しひろげるイメージで歌うと、らくになることがあります。ことばが聞こえなくなるほど、かえすぎないようにしましょう。
キーを下げる
カラオケや、えらべる曲なら、キーを1つか2つ下げてみるのも、りっぱな方法です。むりな高さで何回も裏返るより、らくに歌える高さで、つなぎ方を身につけていくほうが近道になることもあります。
なめらかにつなぐ、おうちでの練習
声が裏返らないようにするには、地声と裏声のあいだを、少しずつ行き来できるようにしていくことが大切です。おうちでできる練習を、いくつか紹介します。どれも、小さめの声で、5分くらいからはじめてみてください。
「うー」でサイレンのように上り下り
口を小さくすぼめて、「うー」と言いながら、低い音から高い音へ、救急車のサイレンのように、すーっと上がって下がります。とちゅうで声がかわっても、とめずにそのまま続けるのがポイントです。何回かくり返すと、かわり目が少しずつ目立たなくなっていきます。
ハミングやリップロールで行き来する
口をとじた「んー」というハミングや、くちびるをぷるぷるとふるわせるリップロールで、同じように上り下りします。口をとじたり、くちびるをふるわせたりすると、息の量が安定しやすく、のどに力が入りにくいので、裏返りやすい方にむいている練習です。
地声と裏声をつなぐ声の出し方については、こちらの記事もあわせて読んでみてください。ミックスボイスとは?地声と裏声をつなぐ、やさしい練習
裏返るところだけを、ゆっくり練習する
歌の中で、いつも裏返るところがあれば、その前後の2〜3音だけをとり出して練習します。
- まずは「うー」や「んー」で、メロディだけをゆっくり歌う
- つながったら、「まー」「のー」など、やさしい音で歌う
- さいごに、歌詞をつけて歌う
いきなり歌詞で歌うより、こうして少しずつ近づけていくほうが、成功しやすくなります。
「ドレミレド」を半音ずつ上げていく
「ドレミレド」のように、5つの音を上がって下がる練習を、少しずつ高くしていきます。裏返りそうなあたりにきたら、声を大きくしようとせず、むしろ小さく、やわらかく歌います。むりに上までいかず、らくに歌えるところでやめておきましょう。
録音して、かわり目を聞いてみる
自分の声をスマホで録音して聞くと、どこで声がかわっているのかが、よくわかります。きのうより、かわり目がなめらかになっていたら、それが上達のしるしです。
お子様の声が裏返るとき(お父様・お母様へ)
お子様が歌っていて声が裏返ったとき、まわりがわらってしまうと、お子様は「もう歌いたくない」と思ってしまうことがあります。声が裏返るのは、上手な人でもあることです。「高いところ、がんばったね」と、まずはチャレンジしたことをみとめてあげてください。
- 練習は、短い時間で、小さな声からにする
- 高い音を、むりに大きな声で歌わせない
- うまくいったときに、その場でほめる
また、小学校の高学年から中学生くらいになると、声がわりの時期に入るお子様もいます。この時期は、声が裏返りやすくなることが多いので、むりに高い音を出させないようにしましょう。不安なときは、歌の先生に相談してみてください。
本番で声が裏返らないための準備
- 本番の前に、ハミングやサイレンで軽く声をならしておく
- 水をのんで、のどをうるおしておく
- 肩を上げ下げしたり、首をゆっくり回したりして、体をほぐす
- 高い音の前で、息をすいすぎない
- 「裏返ってもだいじょうぶ」と思っておく
さいごの「裏返ってもだいじょうぶ」は、とても大切です。「ぜったい失敗できない」と思うほど、体はかたくなります。もし裏返っても、そのまま歌いつづければ、聞いている人はあまり気にしていないことも多いです。
のどのために気をつけたいこと
声が裏返るのがいやで、何回も何回も高い音をくり返すと、のどがつかれてしまいます。練習は「少しつかれたかな」と感じる前に、やめるくらいがちょうどよいです。
歌ったあとに、のどの痛みが続く、声のかすれがなかなか治らない、話し声まで出にくくなった、というときは、むりをせず、耳鼻科などのお医者さんに相談してください。
まとめ
- 歌で声が裏返るのは、地声と裏声のかわり目を、うまくつなげていないことが多い
- 主な原因は、のどの力み、強すぎる息、高い音の前のかまえ、地声のままの押し上げ、緊張やのどのかわき
- その場では「上からそっととる」「息を少しへらす」「母音を少しかえる」「キーを下げる」をためしてみる
- おうちでは、サイレン、ハミング、リップロールで、小さな声から上り下りの練習をする
- 裏返るところだけを、ゆっくりとり出して練習する
- お子様が裏返ったときは、わらわずに、チャレンジをみとめる
- のどの痛みやかすれが続くときは、お医者さんに相談する
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